足柄辰巳は勇者である   作:幻在

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四分の三タイトル詐欺です(土下座)

だってそんな描写書く暇なかったんだもん!

「言い訳しとる場合か!」

返す言葉もございません!しかしだからといってブラウザバックしないでください!

本編楽しんでください!


友の楯と弩 魔王の炎 鬼王の酒 大蛇の剣

「ふむ・・・」

御竜が、紅葉を見て、ふと声を漏らす。

「こんなものか」

そこにいるのは、紅い炎を纏った一人の少女。

彼女の周囲には何もなく、ただ、大量の()がそこら中に積もっているだけだった。

「もうよかろう。これで妾がお前に教える事は無くなった」

「ありがとうございます」

紅葉が、紅い炎を消して、頭を下げた。

「良い。妾もなかなか楽しめた故、礼はいらん。それと、早々に悪いが準備をしておけ」

「準備を・・・?」

「ああ。お前に稽古をつけている間に、準備が整った」

「・・・!では・・・」

「ああ」

御竜が、その口角を吊り上げ、これまでにないほど嗤った。

 

「攻め込むぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

樹海化した街を背景に、勇者たちは、攻め込んできた敵の大軍を見ていた。

「十天将は、残り六人。だが他のバーテックス人間がいないとも限らないからな。事実数は分からない」

「それでもやる事は変わらないわ。敵をとにかくぶっ飛ばせばいいのよ。I'm want kill!」

「ああ。どれほど敵が強大でも、私たちのやる事は変わらない。私は、ただ敵を斬るのみ」

「皆気合入ってるね。私も頑張らないと。全部殴り飛ばしてやる」

辰巳が、背中の剣を引き抜き、地面に突き立てる。

歌野が、留め具から鞭を外す。

若葉が、腰に差した刀、倶利伽羅を引き抜く。

友奈が、掌に拳を叩きつける。

「手筈通りに行くぞ。いいな?」

「ああ」

「問題ないわ」

「うん!」

「よし、それじゃあ、いくぞ!」

そして、彼らは、精霊をその身に宿す。

 

「―――来やがれ、『ファブニール』ッ!!!」

 

「―――降りよ、『大天狗』ッ!!!」

 

「―――Standby、『八岐大蛇』ッ!!!」

 

「―――来い、『酒呑童子』ッ!!!」

 

辰巳は、最強の一体と謡わられる人が成りし邪竜。

 

若葉は、神々が住む天上の世界を焼き尽くした魔縁の王にして、最強の天狗。

 

歌野は、山と水の神にして、洪水の化身とも言われる、最強の妖怪。

 

友奈は、強欲にして傲慢、かの最強の大蛇の子にして、全ての鬼の頂点にたつ、鬼の王。

 

 

それぞれが、己が持つ最強の精霊―――竜、天狗、蛇、鬼をその身に宿す。

 

 

「いくぞ、お前らァ!!」

「おう!」

「ええ!」

「うん!」

そして勇者は、同時に地面を蹴った――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――ふむ、流石だな」

送り込んだ先遣隊を、ものの数分で片付けた勇者たちに、関心する御竜。

「ちょっとちょっと御竜ちゃん、何敵を褒めてくれちゃってんのさ」

そう声を挙げるのは、赤髪の高校生ぐらいの少女、『空襲』の榛名幸恵だ。

「ふむ、気に障ったのならすまんな。本来なら、勇者全員が揃って対処すべき程の軍勢を、たった四人で片付けてしまうとは思わなくてな」

御竜は戦闘狂である。

彼女がバーテックス人間になったのは、人間への復讐心ではなく、単純に強いが故に、さらなる強敵と戦ってみたいという自分勝手な願望も良い所なのだが、それは他の奴らも同じだ。

彼女だけが、他の者達は違う感性を持っている。だが、それでも自分に与えられた役目は遂行する気らしい。

「さて、誰が私を満足させられるだろうか」

御竜は、不敵に笑う。

だが、それでも彼女は指揮官でもある、故に、命令を下さなければならない。

「そろそろ下でくすぶっている奴らを出撃させろ、これ以上不満を募らせて暴走されても困るからな」

「了解した」

御竜が命令を下したのは、体を全て隠す程の外套に見を包み、顔全体を覆う仮面を被った男だった。

「さて、お前たちの出番はまだだ。しっかりと疲労させんとな」

そこで、大きな金属音が響いた。

「お前か、閃」

そこに視線を向ければ、鎖で全身を縛られた大男が鼻息を荒げて暴れていた。

口さえも鉄のようなもので覆われているために聞こえるのは唸り声だが、それでも今すぐにでも暴れたいという思いが見て取れた。

「まだだ。我慢しろ。お前の出番はまだだ」

御竜は期待している。あの四人のなかに、与えられた絶望を切り抜けてくる、強者の存在がいる事を。

故に――――

「我が戦略的に与える絶望、凌いで見せろ勇者よ」

御竜は、指揮を執る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まずは、若葉の戦いを見て貰う事にしよう。

 

若葉の『大天狗』の能力は、単純な飛行能力。しかし、その速さは絶大で、今時のジェット機および戦闘機も眼では無い程の速さを誇っている。

だが、その反面、その速さ故に若葉の体には高い圧力がかかっており、内臓、および、脳がかなりのダメージを受けるのだ。

 

()()()()

 

 

 

『―――右だ』

「ッ!」

大天狗との対話が可能になる程に精霊との同調率を高めた若葉の肉体は、強靭な天狗の体そのものとなっていた。

故に、高速移動による圧力はないも同然で在り、叩きつける風も、どこ吹く風、なんとも気にならない。

いや、その身を大天狗へと変化している故に、()()()()()()()のかもしれないが。

そんな高速で動く中で、若葉は己が持つ反射神経を使って、横切ったバーテックスをどんどん斬り捨てていく。

その戦い方はまさしく鬼神が如し、若葉は鬼の形相で敵を屠っていた。

そんな若葉を、大天狗は咎める。

『前に出過ぎだ。外側から切り崩していけ』

「ッ!?」

大天狗の声で引き戻され、大軍へ突っ込もうとしていた若葉はすぐさま方向転換、薙いで、一度に敵を五体斬り捨てる。

『良い刀だ』

「ああ、そうだな・・・」

若葉の持つ刀、かの不動明王が振るいし、この世の悪意を斬り捨てる『倶利伽羅剣』、および倶利伽羅は、その伝承に見合うほどの切れ味を誇った。

多少、重く感じるも、それでも片手で振れない重さではない。両手で持てば、それ相応の力を発揮するであろう。

だが。

()はまだ使うな』

「ああ、分かっている!」

若葉は再度突撃を開始する。

今の若葉には、引き留めてくれる存在がいる。だから、遠慮なく突っ込める。

「何事にも報いを―――私から千景を奪ったその報い、受けて貰うぞッ!!」

『こんなところで惚気るな』

「なんでここで台無しにするんだお前は!?」

 

前言撤回、少し余計な事を言うのはどうにかしてほしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次は、歌野。

歌野の役目は、大方に言って、敵の大部分の殲滅。

歌野の能力は強大ゆえ、その力をフルに活用する気なのだ。

だから、歌野は『真ノ御姿』を使い、八つの砲塔から強力無慈悲な砲撃を敢行していた。

「こういうのは杏の役目なんでしょうけど・・・やるしかないわよね!大蛇!」

『ふん、それはどうでも良い事じゃが、思う存分使うが良い』

歌野の背後の湖が唸る。

それらが分裂し、程よい大きさの水泡となる。

「『徹甲水弾(ウォーターシェル)』ッ!!」

叫ぶと共に、それらは、強力な水弾となってバーテックスの大軍を襲う。

たったそれだけで三割は削れた。

流石に、歌野一人だけでは、敵を殲滅するのは不可能。

あまりにも威力が高いために、視野が狭くなり、小さな敵などは見逃してしまう事が多い。

空は若葉が対処している。

ならば、陸を張ってくる敵はどうするか?

「それは、王様に任せるっきゃないでしょ」

『うまくやっておろうな、あのバカ息子は』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『―――悪寒が』

「何故か私までその悪寒が来たんだけどどうしてかな?」

苦笑しつつ、友奈は目の前の敵を殴り殺す。

それだけで、直線状十メートル、幅二メートル程度、平面的に二十平方メートルの範囲内にいた敵が一瞬にして消し飛ぶ。

ただのジャブでこれ。これこそが酒呑童子の怪力と友奈の技術を合わせた力。

 

これが、現勇者中最大のパワーを有する、友奈の戦い。

 

一方的な蹂躙、殺戮。それはもはや戦闘とは呼べぬほどに圧倒的で、そして、惨たらしい。

友奈の、あまりにも強大な力が、今、歌野が打ち漏らした敵を屠りに屠っていた。

同調によって肉体的強化もさることながら、基本的なパワーまで強化された友奈の力は、これまでにないほどに強化されていた。

故に、友奈は笑っていた。

「アハハ」

それは、鬼としての自分を受け入れた故。

鬼は、力があるが故に、己が欲しいものを奪い、気に入らないものを壊してきた。

その全てが自分の愉悦および快楽の為に。酒によって踊り、蹂躙によって笑い、己が本能のまま、ただただ笑い暴れまくった。

故に、友奈は笑う。

自分は鬼だという自覚の元に。

「ほらほら、どんどん来なよ。じゃないと、一瞬に終わってつまらないよ?」

狂気的ともいえるその笑顔。

それはまさしく傲慢で、強欲で、だけど、今この戦いにおいて、彼女はまさしく最強だった。

『さあ、もっと楽しませろ』

「どんどん来い。お前たちは所詮――――」

 

「『(オレ)たちの遊び道具なんだから!」』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして――――最後に、この男。

「―――『炎輪炉心機関(タマエンジン)』、始動。回転開始」

左腕二の腕にある円盤のようなものが、かしゃん、という音と共に、回転を始める。

それが回転の速度を上げて、緑色の光を舞い散らして、その輝きを増していく。

やがて、その光が最高潮に達すると、鎧の隙間から光が迸り、燐光を撒き散らす。

目の前にはバーテックスの大軍。

辰巳は剣を大きく振りかぶり、狙いを定める。

「―――『零式吹雪撃鉄(ブリザードトリガー)』、用意(チャージ)

右腕には、黄金の杭を備えた、ボウガンの台座部分。その杭の部分が、ガキンッ!、という音と共に後ろ側から飛び出る。

その間にも、バーテックスの大軍は迫ってくる。

次の瞬間、辰巳が、右腕の撃鉄を叩き落す。

 

「―――『点火(バースト)』」

 

瞬間、バーテックスの大軍が、一瞬にして消し飛んだ。

 

「・・・・ふう」

ファブニールの力は、あまりにも()()()()()()()

それは、竜本来の気性の粗さ故か、あるいは辰巳が御しきれてないからなのかは分からない。

しかし、そのお陰で辰巳の肉体は竜に作り替えられている。

 

 

都合、三回。

 

 

それが辰巳が行使できるファブニールの使用限度。

それを過ぎれば、辰巳はその身を完全に竜へと変え、人とは違う何かになり下がってしまう。

現在、辰巳はそれを一回使用して、残りは二回となっている。

辰巳も、その使用回数を超えるつもりは毛頭ない。

かならず、生きてひなたの元に帰る為だ。

 

そして、もうお気づきかもしれないが、彼の左腕には球子の旋刃盤、右腕には杏の金弓箭が装着されている。

 

理由は、辰巳の竜化によるファブニールの急激強化。及び、エネルギーの莫大さ。

いくら勇者の中で最大の戦闘センスを持つ辰巳でも、荒ぶる竜の力を完全に御する事は出来ない。

故に、辰巳は球子の力を使う事にした。

 

円は、完全を意味する。

 

円であるが故に欠けた部分がなく、どこをとっても対照的であり、途切れる事もない。

故に『無限』。

球子の楯は丸く、そして回転する。その回転を利用して楯にエネルギーを循環させる。

まず遠心力により楯の縁へ力を貯め、そこから徐々に中心へ集める。そして満タンになると周囲に黄昏色の燐光を撒き散らす。

あとはこのまま開放すればいい。だが、その為には、()()()()()が必要だ。

その為の杏の弩。

球子の楯に溜め込まれたエネルギーを、指向性を持たせつつ解き放つためには、逆方向から叩いて、本来の方向から放出する。それこそが、辰巳が出した結論だった。

球子の楯の回転によってエネルギーを溜め込み、杏の弩による衝撃で一気に解き放つ。

これこそが、『炎輪炉心機関(タマエンジン)』と『零式吹雪撃鉄(ブリザードトリガー)』の機能。そして、それから放たれる砲撃を―――

 

 

氷火竜式能動強化(ハウリング・バースト)』と呼んだ。

 

 

「もう一発だ」

辰巳は、再度エネルギーの装填にかかる。

楯が回転する。

しかし、それをさせんとばかりに、融合した進化型バーテックスが、矢やら砲撃やらを辰巳に向かって放つ。

「ぬるい」

しかし、辰巳は、それをただの一振りで全て吹き飛ばす。

エネルギーが溜め込まれているのはあくまで楯。故に、エネルギーチャージ(装填)中でも、反撃が可能。

これがこの『氷火竜式能動強化(ハウリング・バースト)』の強み。

力を貯めている間は攻撃できないかと思われるが、これはそうでもない。

 

 

補足しておくが、これは、チャージによる()()()()()()()()()()()

 

 

故に――――

「―――『点火(バースト)』」

いきなり、辰巳が急激な加速を引き起こしてバーテックスの大軍の生き残りに向かって突っ込む。

対天剣術『疾風(はやて)』による、高速移動だ。

が、それだけではない。

氷火竜式能動強化(ハウリング・バースト)』による、行動強化による、ジェットブーストだ。

ただ、その中でも辰巳はさらに装填(チャージ)を敢行した。

「―――『点火(バースト)』」

加速による加重力。剣を振る事による斬撃、及び重量。故に―――

 

敵の残党は跡形もなく消し飛ぶ。

 

「こんなものか」

地面に着地し、辰巳は剣を払う。

ふと、辰巳は、自分の剣を持つ手を見つめた。

そして実感する。

 

 

()()()()()()()()()()()()

 

 

どうにも感じてしまう安心感。快感。

まるで、この姿が自分であるかのような、そんな、感覚。

その感覚に、辰巳は戦慄する。

「くそっ・・・」

(確実に食われてきている・・・)

もう、辰巳の体はほぼほぼ竜だ。

人間のそれとは違う。

鋼のような皮膚に加えて、この様だ。

「頼む・・・せめて、この戦いが終わるまでは――――」

辰巳は、味方と合流するべく、飛ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「歌野!」

「あ、若葉!」

あらかた、というか全てのバーテックスを相当した若葉は歌野の元へと戻ってきていた。

「どうだ、敵の動きは?」

「後ろから見てたけど、まだバーテックス人間が出てきていないところを見ると、威力偵察か体力を削るのが目的かしら・・・?」

「ならば作戦は失敗だな。全て切り捨ててやった」

「私もほとんど倒したわ。他の二人は・・・・」

歌野がこの場にいない二人の事を言いかけた所で、辰巳と友奈も戻ってくれる。

「ただいま」

「もどったぞ」

「おお!・・・しっかりやったんだろうな馬鹿野郎」

が、突然歌野の口調が代わり、それによって友奈の体が強張った。

「ひぃ!?戻ってきてそうそうそれはないだろ親父!」

「知らんな。欲張りだが傲慢なお前の事だ。何匹か逃がしたのではないだろうな?」

「んな事してねーよ!一匹残らず潰してやったわ!」

事実、八岐大蛇と酒呑童子は親子である。

故に、鬼の王である酒呑童子であっても、父親である八岐大蛇には頭が上がらない。

「おいおいお前達、そんな事をしている場合か?」

そこへ若葉が割って入り、止める。

「ぬぐ・・・勝手に体の主導権のっとるな!気持ち悪いでしょ!」

「っぷはぁ!や、やっと戻った・・・・」

それと同時に歌野と友奈も体の主導権を取り返す。

「しかし、深く潜るのはやはり危険だな・・・・」

「ああ。俺はともかく、友奈と歌野は要注意だな」

「うう、でも、これでも頼りになるんだよ?」

「パワー面においてはね。それに、精霊は今回の戦いにおいては絶対に必要な要素よ。若葉も、哮兄の剣を授かったんだから、それ相応の働きしてよね?」

「無論だ」

歌野の言葉に若葉が頷く。

そこで、辰巳が話しを切り替える。

「それじゃあ、今度は・・・・バーテックス人間だ」

四人が見る先。そこから、地面をありえない速度で走ってくる人影が見えた。

勇者以外でそんな動きを出来る存在は、この世でたった一つ。

 

バーテックスと融合した、人類滅亡を望む『バーテックス人間』だ。

 

「イケイケぇぇえ!!」

「ぶっ殺す!!」

「あそこだァ!!」

「今日こそ人間ども皆殺しにしてやる!!」

誰もかれもが人間に対する呪詛を叫びながら走ってくる。

それを見て、もはや辰巳たちは怯まないし、躊躇わない。

ただ、憐れみ、殺すだけだ。

「歌野はこのまま後方支援、俺と若葉と友奈は交代しながら打ち漏らしを片付けるぞ!」

「ええ!」

「ああ!」

「分かった!」

辰巳の指示に従い、それぞれが地面を蹴った。

まず、歌野が密集している場所へ砲撃する。

直撃したバーテックス人間たちは、塵芥と成り果て消滅する。

「怯むなァ!」

「殺してやる!」

それでも彼らは止まらない。

「そっかぁ」

しかし、そんな彼らの進撃も――――

「それは(オレ)たちも同じだよ」

―――鬼の様な笑顔で笑う彼女の前には、止められるどころか反対方向に吹き飛ばされてしまう。

「ぎゃぁぁあああ!?」

「ぐあぁあああ!?」

「アハハハハ!人がゴミのようだー!」

どこぞの大佐のようなセリフと共に、バーテックス人間たちを殴り飛ばしていく友奈。

「この、化物が!」

ふとそこへ一人の女性が、その手に剣を持って友奈に襲い掛かる。

その剣には、相手を死に至らしめる毒が塗り込まれている。

だが、そんな、()()()()()()()()()()()()()()()()()など、彼女に通用する訳もなく―――

「勇者パンチ!」

もはや、腕を振るうだけで壁を破壊出来る突風を起こせる彼女の前には、触れる前にその原型を留める事など出来なかった。

「チィ!」

「調子にのるなよ!」

だが、まだまだバーテックス人間はいる。

歌野が砲撃をくらわしたとしても、その数は悠に千はくだらない。

そして、その一人一人が、決して雑魚などではない。

突如として友奈は顔に右腕を掲げた。その直後に手甲に何か重い衝撃が走り、吹き飛ばされる。

「ぐぅ!?」

(これは・・・狙撃!?)

その衝撃の正体は、遠い建物の屋上から狙撃銃(スナイパーライフル)を構える一人のバーテックス人間の男が放った、地面をも穿つ弾丸だった。

一般に対物狙撃銃(アンチマテリアルライフル)と呼ばれる代物が存在するが、その威力はそんなものの比ではない。

だが、それでも友奈の手甲はそれを防いだ。

「くっ!」

故に友奈はそれに注意を逸らさざるを得ない。

それだけではない。

突如として地面からでた手が友奈の脚を掴む。

「!?」

「へへっ、捕まえた」

それは、一人の年端もいかない少女。その手はモグラのような手袋が装着されており、おそらくそれで地面を掘り進んできたのだろう。

さらに、動きの止まった友奈へすかさず大きなハンマーを持った男が友奈に向かってハンマーを横から叩きつける。

「死ねやッ!!」

直撃する。しかし、吹っ飛ぶ事はなく、友奈は、そのハンマーを片手で受け止めていた。

「・・・・この程度?」

その声は、僅かに怒気を孕んでいた。

「この程度で、(オレ)を倒そうなんて、自惚れるのも大概にしろ」

友奈が、掴まれていない片足を持ち上げる。

それに気付いた少女が再び地面に潜る。だが、

「せいッ!」

踏み付け(スタンプ)、よって、陥没。

それによって地面が圧縮され、密度が増し、地面にいた少女を、()()()()

「ぐぴゅ」

実際、そんな悲鳴があがったが、地面にいたため友奈には聞こえない。

さらに、ハンマーを握り、離れないようにして、もう片方の手を引き絞る。

それは、右腕。

「しま・・・・!?」

「遅いよ」

にやりと笑う友奈。

瞬間。かつて世界最大と言われた戦艦の主砲のような砲弾が放たれたかのような轟音が轟いた。

 

「――『鬼』勇者パンチ」

 

瞬間、その拳の放たれた先にいた地面及びもの全てが吹き飛ばされ、粉微塵になった。

「よっし」

軽くガッツポーズを取る友奈。

「殺せぇ!」

「俺が殺してやる!」

「殺す!殺してやる!」

友奈の強さを前にしても、怯まないバーテックス人間たち。

「まだ来るのぉ?よし、それじゃあ・・・」

「友奈、代われ」

「・・・といきたいところだけど、ここは引こうかな」

と、友奈が突然後ろを向いて逃げ出す。

「逃がすな!」

「死ね!ろくでなし共!」

その友奈を追いかけようとするバーテックス人間たち。

だが、そこへ上空から何かが落下してきた。

隕石の様に見えたそれは、地面を砕き、土煙を舞い上がらせる。

それでも、バーテックス人間たちは驚かず突き進む。

土煙の中に揺らめくシルエット。

そのシルエットに向かって、一人の女性が、戦斧(ハルバード)を横に薙ぎ払う。

だが、それが霞んだかと思うと、その一撃は空ぶっていた。

そして、その影の正体は、すでに女の懐に飛び込んでいた。

「なっ」

「ハッ」

短い掛け声と共に、刃が抜き放たれる。

その一撃は、女の胴と腰を切り離すに至った。

「・・・行くぞ」

低くそう呟くと、その影は一瞬にしてその場から姿を消した。否、一瞬にして移動した。

そして、バーテックス人間の集団をまんべんなく駆け抜け、抜き放った刃をゆっくりと鞘におさめる。

やがて鞘口と鍔が当たると、走っていたバーテックス人間たちの殆どが一刀の元に両断されていた。

今や、超高速でその刀を振れるようになり、どんな攻撃にも対処可能な力を身に着けた彼女には、こんな芸当は造作もなかった。

「天狗は、身軽だと聞く」

しかしそれでもまだバーテックス人間たちはいた。

「枝から枝へ、飛び移るその強靭な脚力は、脱ぎ飛ばした下駄が山を越える程らしい。その脚力は、初速だけでも、義経の八艘飛びを超える」

一人のバーテックス人間が、戦槌を振り下ろす。

しかし、それよりも速く、相手を斬り捨てる。

「お前たちのノロマな攻撃など、私には届かんぞ」

若葉が、彼らに向かってそう告げるのと同時に、霞の如くその場から消えた。

そして、たった一振りで三、四人を斬り捨て、返す刀でさらに斬り飛ばす。

その剣速は、もはや肉眼では追えない。

ものの数分で三百はくだらない程のバーテックス人間が切り捨てられる。

彼らは決して弱くはない。

ただ、彼女たちが強すぎるだけなのだ。

それほどまでに、彼女たちは、強くなったのだ。

「そろそろか」

若葉が空へと逃げる。

「逃がすか」

そこへ先ほど友奈に狙撃した狙撃手のバーテックス人間が若葉へ銃口を向けた。

「―――お前で最後だ」

しかし、その声が聞こえたのと同時に、喉を大剣が貫き、その直後に、ごきん、と剣が回転し首がへし折れる。

思考する間もなく絶命。

その思考を奪った相手というのは、いわずもがな、辰巳だ。

辰巳は、残るバーテックス人間たちを見下ろす。

「・・・・これぐらいなら、いいか」

辰巳は、大剣を掲げる。

 

「―――我は邪悪なる竜である」

 

黄昏色の光が天を突く。

 

「撃ち放つは竜の咆哮、染め征くは黄昏の景色――――」

 

楯が回転し、その力の上限をいかんなく引き上げる。

 

「今こそ、天上の神々を失墜させ――――」

 

撃鉄を起こせ、弾はすでに装填された。

 

 

ならば撃て、全てを黄昏へと変える、邪竜の咆哮を―――

 

 

 

 

「――――この樹海(もり)に、今一度、我が存在を刻む」

 

 

 

 

 

――――今、解き放て。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――解き放て『黄昏に咆える邪竜の咆哮(ファブニール・フォン・アテム)』」

 

 

 

 

黄昏が、飲み込む。

 

 

 

その咆哮は、ほとんどのバーテックス人間を飲み込み、跡形も無く消失させる。

それが過ぎ去った場所には何も残らず、そこにいたバーテックス人間たちは、跡形も無く消滅していた。

「・・・ふう」

辰巳は、剣を払う。

そして、楯を見た。

今の所オーバーヒートには陥っていないようだ。

しかし、先ほどのはまだ()()()()()()で放ったものだ。

「全力で撃てば・・・・」

おそらく、この程度では済まないだろう。軽く考えても重いオーバーヒートに陥るだろう。

この程度の連続使用には耐えられるだろうが、果たしてどれくらいもつか。

ふと、辰巳は、壁の方から、鋭い視線を感じた。

そちらに視線を向ければ、そこに、幾人かの人影が見えた。

おそらく、その中の誰かが、こちら見たのだろう。

しかし、辰巳は、それを無視して若葉たちの元へ飛ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アイツら・・・・」

その様子を、紅葉は、血の滲みそうな程に手を握りしめてみていた。

「御竜様!今すぐ行きましょう!今こそ奴らを殺す時です!」

紅葉が、御竜に向かってそう進言する。

しかし、御竜は答えない。

「・・・・・御竜様?」

その御竜の様子に、紅葉は思わず怪訝そうな表情となる。

だが、御竜はその眼を片手で覆うと、やがてその身を震わせた。

「・・・・くく」

僅かに聞こえた笑い声。

「くく、ハハハハハハハハッ!!!」

やがて御竜は大きく笑い声をあげた。

その様子に、紅葉のみならず、他の十天将も驚く。

「足柄辰巳よ!やはりそなたは素晴らしい!そう、そなただ。そなたこそ、この妾と対等に戦える、唯一の存在に成りえる存在だ!ああ、良い!実に気分が良い!!これほど打ち震えた事は無いぞ。ああ、戦いたい。今すぐにでも、そなたと死合(しあ)いたいぞ。だが、まだ足りん・・・」

突如として御竜が右手を前方に突き出す。

「待たせたな十天将たちよ!お前たちの出番だ!己が仕留めたいと思う存在を、己が本能のままに殺しに行け」

その声の重さに、その場にいる者が震える。

「行け!そして蹂躙せよ!我らの力を、今こそ示すのだ!」

槍を取り出し、御竜は、峻司を縛り付けていた拘束具を破壊する。

ほぼ全身を覆うようなものだったために、その全貌が露わになる。

その肌は緑に染まり、拘束具によって圧迫されていた肉体が解放されてさらに巨大になる。

 

その姿は、まさしく『怪物』

 

というか、まんま『ハ〇ク』である。

その直後に、峻司は咆哮する。

「ウォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ――――――――!!!」

「行くがよい!相当溜めていた事だろう!」

咆哮と共に、峻司が飛ぶ。

一瞬にして、瀬戸内海を超えて、陸へ。

「そんじゃ、アタシもいきましょうかね!」

幸恵も、まるで昆虫のような羽を広げて飛ぶ。

「拙者も参ろう」

五右衛門も、その手に一本の刀を持って降りる。そして、()()()()()

「僕は人形の準備でもしてるよ」

そう言って、両手を前方に突き出すのは仮面を被り、その全身を外套に身を包む男、浅井久遠。

「・・・・俺も行こう」

見た目は完全に女性なのにその正体は男の御須聖羅も飛ぶ。

「今こそ、皆の仇を討ち取ってくれる」

紅葉が腰の刀―――天羽々斬(アメノハバキリ)を抜く。

奇しくも、若葉が以前使っていた生大刀と持ち主を同じにする剣だ。

そして紅葉も飛んでいく。

その様子を見て、御竜はほくそ笑む。

「さあ、乗り越えて見せよ、足柄辰巳よ。せいぜい、妾を失望させてくれるなよ?」

御竜は、本当に、嬉しそうに笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 




次回『激突 怪物《バーテックス》と化物《ゆうしゃ》』

ぶつかるは、それぞれの怒り―――
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