足柄辰巳は勇者である   作:幻在

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ぶつかる意思

「ああぁぁぁぁぁああああああ!!!」

「ウオォォォオオオオオオォォ!!!」

錯綜する拳と拳。

衝突する度に周囲の瓦礫が吹き飛び、一面を更地にしていく。

その度に体が軋み、悲鳴をあげて、脳を激痛が貫く。

しかし、彼らは痛いとは思わない。

 

何故なら、精神が肉体を凌駕しているから。

 

友奈の細い腕が、峻司の腹に突き刺さる。

その細い腕からは考えられないような膂力によって、衝撃が突き抜ける。

それに、峻司は血を吐く。だが、持ちこたえて、反撃する。

その拳が友奈の頭を捉えて、大きく仰け反らせる。

一瞬、意識が飛ぶものの、こらえて、また反撃する。

「ウオォォオオオオオオオッ!!」

が、それよりも速く、峻司が両手を組んでそれを再度友奈の頭に叩き落す。

「がッ!?」

普通だったらここで地面に直撃する前に頭が爆散している筈だ。

だが、それに耐えて、友奈は渾身の右のフィニッシュブローを叩きつける。

強力無慈悲な友奈の『右』。

それが突き刺さり、峻司が吹き飛ぶ。建物をいくつか貫通して、めり込む。

めり込んだところをすかさず友奈の蹴りが迫る。

跳躍、からの回転しての、上からの回転蹴り。

それが峻司の頭部に直撃、思わず前のめりになったところを、着地待たずの友奈の後ろ回し蹴りのような連撃が炸裂し、地面にその頭を叩きつけられる。

だが、すかさず峻司がその足を掴むと、そのまま起き上がって、地面に叩きつける。

そのまま何度も叩きつけ、しかし七回目に地面に叩きつけた所で友奈の左腕を掴んでいた左腕が引っ張られ、その巨体が浮く。友奈が掴まれていた左足を、地面に叩きつけられると同時に力を込め、持ち上げたのだ。

そのまま、地面に叩きつける。その拍子に左手が左足から離れ、友奈は、拳を振り上げ、峻司に叩きつけようとする。

だが、その寸前で峻司の猫騙しが炸裂する。

だが、ギリギリの所で回避に成功した友奈。だが、そこで隙が出来て、峻司が立ち上がり、その腹に重厚な蹴りが炸裂し、今度は友奈が建物を何軒か貫通。そのまま壁にめり込む。

「ぐ・・・ぅ・・・・」

どうにか意識は保っている。そのままの状態で壁から脱出する友奈だったが、すぐ目の前にみた光景で、茫然とする。

 

峻司が、その手に巨大な鉄骨が握られていた。

 

「うわぁ!?」

思わず跳躍、同時に体を水平にする。直後に目の前をフルスイングされた鉄骨が通過する。

同時に、友奈は足元からとてつもない風圧が通過したのを感じた。

しかし、それを気にしている暇は無い。

すぐに、振られた鉄骨が()()()()()

それが、友奈に直撃し、振り切られる。

しかし、友奈が吹っ飛んでいった様子は無い。

峻司は、しばし友奈の姿を探し、やがて、握っていた鉄骨の重さに違和感を感じてその鉄骨を見たところ、そこに友奈が猿のようにひっついていた。

「あ、あぶない・・・」

内心ほっとしながらも、休んでいる暇が無いのは分かっている。

「ウゥゥウ・・・・!!」

「あ」

鉄骨が持ち上げられ、そのまま地面に叩きつけられる。

だが、友奈はすぐさまそれを離す。すると、峻司の丁度、頭の上に投げ出される。

友奈は、そのまま蹴りの反動を利用して体に回転を掛ける。

その回転の威力と共に、『右』を放つ。

その拳が峻司のこめかみにクリーンヒットし、大きく体を傾ける。

だが、それでも峻司は耐えて、空中で身動きのとれない友奈に拳を叩きつける。

「ぐぅ―――ッ!?」

そのまま壁に叩きつけられ、逆さまの状態で壁にめり込む。

「ハア・・・ハア・・・ハア・・・・」

体中が痛い。意識が飛びそうだ。

『大丈夫か?』

「ハア・・・うん、まだ、行ける・・・・」

壁にめり込んだまま、体の中の酒呑童子に向かってそう答える友奈。

だが、相当やばいのは確かだ。

 

完全同調。

精霊の使用は、本来なら肉体の外に強化を及ぼすものだが、精霊との同調率を高める事によって、内側にまでその体質、能力を備える事が出来る。

だが、それにはリスクが伴い、精神に異常に来たす瘴気の増加は当たり前として、肉体的には、その精霊が強力であればあるほど、()()()()()()()()()()

それが完全同調となれば、言わずもがなだろうか。

ようは、辰巳の竜化と同じ現象が起きているに等しいのだ。

友奈の場合は、『鬼化』といった所だろうか。

さらに、同時に精霊の精神に喰われるという現象も起こる。

友奈は、今、酒呑童子の自我に喰われかけている。

だが、それでも友奈は踏み止まっていた。

完全同調という、人の枠を外れる所業を行ってもなお、踏み止まっていた。

鬼に喰われる事を、無意識に拒んでいた。

鬼になる事は受け入れているのに。

 

どうにか、壁から抜け出し、そして、大きな足跡のする方向へ視線を向ける。

そこには、緑の肌の怪物が、ゆっくりこちらに向かってきていた。

友奈は、鉄の味がする液体を吐き捨て、その緑の怪物を睨み付けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空の戦いは、あまりにも速く、そして苛烈だった。

「ほらほらどうしたの?その程度?」

「くっそぉお!!」

圧倒的機動力を持つ幸恵に対して、速さでも小回りでも完全に負けている若葉は、どうにか炎で応戦していた。

さらに、炎の操作に集中しているために、その速さはさらに低下している。

槍の斬撃が若葉に迫る。

「っぷなぁ!?」

しかし、すかさず翼から炎を放出し、どうにか幸恵の接近を防ぐ。

「チッ」

(なかなか攻め込めないわね)

若葉は、どうにか幸恵の機動力を殺す為に炎を使ってその移動範囲を狭めようと躍起になっている。

しかし、幸恵の機動力は若葉の炎の動きを上回り、一瞬にして若葉に接近してくるのだ。

だが、若葉の驚異的反射神経は幸奈の機動力を上回ってその接近を防ぐように炎を噴出している。

(だけど、相当ばててるようね)

見れば、若葉は相当、息をあげていた。

「ハア・・・ハア・・・ハア・・・」

脅威的反射神経。仮に『超速反射(ハイパーリフレックス)』と名付けるとして、その超速反射(ハイパーリフレックス)には、一つの弱点が存在する。

それはスタミナ。反射というものは、通常の行動の数倍の速度で行動を起こすものであるがゆえに、その数倍分の動きのスタミナを消費しなければならない。

炎の放出。その無理矢理な操作が、若葉の体力を削りに削っていた。

このままでは、体力が尽きてしまう。

それでは炎を出すことも、高速で飛ぶことも難しくなる。

さらに、集中力も切れてくる。

このままいけば、負けるのは必至だ。

持久戦に持ってくるのは、あまりにも無謀だったか――――

幸恵が突っ込んでくる。

若葉は、すかさず炎で迎撃しようとする。

しかし、交わされ、今度はかなりの距離の接近を許してしまう。

「ッつあ!」

だが、若葉は、そこから一気に炎を放出し、交代させようとする。

だが――――

「もう効かないわ。『急加速(クイックアップ)』」

その瞬間、幸恵が急激に加速し、炎の突っ込む。

「なッ!?」

それに目をむいた若葉、だが、声を発した直後に、若葉の腹に、幸恵の槍が突き刺さっていた。

「がはっ」

バランスを崩し、地面に向かって落ちる若葉。

「他愛ないわね」

ぺろり、と血がついた槍の刃を舐める幸恵。

その間に、若葉は地面に落下。落下時のダメージをどうにか飛翔することで軽減したようだが、腹のダメージが大きいのか、腹を抑えて地面に立って、前のめりになっている。

「まだ立つのね。いいわ」

幸恵は、とどめを刺しに、若葉へ接近する。

(これで最後よ・・・年貢の納め時ね、人間!)

もはや、幸恵の勝利は揺るがない。それほどの自信が、彼女にはあった。

空中戦での、圧倒的強さと、機動力。それらにおいて、若葉は劣っており、そして圧倒されていた。

そして、若葉は自分の動きを捉えられていない。

目で追うのが精一杯のはずだ。

だから、この一撃で決まるはずだ。

この戦いのすべてが。

幸恵は、『急加速(クイックアップ)』によって、もはや肉眼では捉えられない速度で若葉に接近する。

若葉は未だ下を向いたまま。今更顔を上げたところで、反応するのは無理だ。

それほどまでに、幸恵は速いのだ。

真正面から、若葉の頭を貫くために、槍を突き出す。

その槍の切っ先が、若葉の頭部に到達する―――――

 

 

 

「―――――『鴉螺灼(アラヤ)』」

 

 

 

――――――しかし、槍は若葉の頭部を貫かず、どういうわけか若葉の左側を通過していた。

その事を疑問に思った幸恵だったが、ならばもう一度突けばいいと思い、そのまま通過して、飛び上がろうとした。だが、上手く飛べない。何故か、重心移動が上手くできない。

なぜだ。なぜ、上手く飛べない?このままでは、地面に落ちてしまう。そう思いつつ、幸恵は、自分の体を見た。

 

そこには、切断された自分の胴体があった。

 

それに目をむく幸恵。

何故?何故!?何故、こんな事になっている!?一体いつ斬られた!?

しかし、そんな思考をする前に、幸恵の体は炎の包まれる。

その思考が完遂する前に、幸恵の意識は、消滅した。

灰となった幸恵の別れた二つの体は地面に落ち、そのまま砂となって消滅する。

「ハア・・・ハア・・・ふう・・・」

一つ息を吐いて、若葉は、抜刀した刀を鞘に納める。

 

なぜ、若葉が勝利するに至ったか。

 

それは、一か八かの賭けだった。

 

若葉は、炎を使った持久戦では勝てないと戦闘中に悟り、ある作戦を思いついたのだ。

まず、幸恵に自分を地面に落としてもらう。ようは彼女が何かしらの攻撃を若葉にしかけ、若葉を地面に叩き落としてくれないか、という事だ。

ただ、その時に重要なのは、若葉の傷の治癒について。

どういうわけか若葉には他の勇者、いや、辰巳の超回復までにしてはないほどの回復能力を持っているらしい。らしい、というのは確証がないからだ。

つまり、彼女の攻撃によって落下するが、その時、上手くかわせず怪我を負ってしまうかもしれない。それでは、落下したときの幸恵への対処に支障が出てしまう。

これが、賭けの一つ。

結果的に若葉の腹に開けられた穴は多少の痕を残して完治している。

そして、次の賭けだが、それは単純に、幸恵がこちらに接近してくれるかどうかだ。

おそらく、とどめを刺そうとして、来るかもしれない。だが、逆に用心して近づかないかもしれなかったのだ。

それでは、若葉の最大の技を当てることが、できなくなってしまうからだ。

そして、結果的に、幸恵は自分の勝利を確信して接近してきた。

 

若葉最大の居合の存在を知らなかったから。

 

 

それが、超神速抜刀術『鴉螺灼(アラヤ)』。

 

 

無形の構え、背水の陣ともいえる態勢から放たれる、居合。

その速さはどの攻撃を追い越し、相手に確実なカウンターを叩き込める、超神速の若葉だけの必殺技。

驚異的反射神経と居合に対する才能(センス)によって作り上げられたこの技は、若葉の人生の集大成ともいえる一撃必殺の絶技だ。

だから、若葉はこれにかけることにしたのだ。

これが、第三の賭け。

この三つの賭けに勝った若葉だからこそ、この戦いで勝利を勝ち取ったのだ。

だが、その分の疲労も激しい。

鴉螺灼は、速さもさることながら威力も申し分ないわけなので、体力の消費が激しい。

だが、疲労が出るからって、休んではいられない。

「すぐに・・・・友奈のところへ、いかないと・・・・」

そう呟いて、飛ぼうとした、その時。

「行かせないよ。乃木若葉」

 

連戦の宣告が告げられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

周囲は一面更地・・・とは言い難く。地面は砕けに砕け、へこんだり盛り上がったり、電柱が突き刺さっていたり、とにかく凸凹で酷い有様で、言葉では形容しがたいほどに、そこは、酷い有様だった。

 

一言で言うなら、大地が砕けている。

 

その砕けた大地に、友奈は立っていた。

「ハア・・・ハア・・・ハア・・・」

体中からは血を流し、打撲や殴られた後のようなものが、体中に残っていた。

しかし、それは対峙している男も同じようなもの。

緑の肌についた傷口からは、赤い血が流れ、殴られた痕もくっきりと残っている。

まさしく、満身創痍だ。

互いににらみ合い、そんな沈黙の状態が続いていた。

だが、いずれは決着をつけなければならない。

それに、互いに撃てる一撃は、これが最後。

つまり、次の一撃で、決着だということだ。

「・・・・酒呑童子」

『おう』

「あれ・・・準備できてる?」

『ああ、用意しといたぜ』

「そっか・・・」

そう呟くと、ふう、と一息をついた。

これが、最後――――

ぐっと腰を落とし、右拳を引く友奈。

それに反応して、峻司が両手を地面につけてかがむ。

峻司の体は、どんな攻撃を跳ね返す上に、打たれ強く、友奈の攻撃の全てを耐えてきた。

しかし――――これはどうだろうか?

酒豪である鬼、その中でも一際酒好きな酒呑童子。その肌の赤さの理由は、酒の飲みすぎで赤くなったと言われている。

そして、酒を飲めば、体は熱くなる。

ならば、もっと飲めばどうなるか。体が熱くなるような、酒を飲めば、体の熱さはどれほどなものになるだろうか。

体を動かすには、エネルギーが必要だ。鬼にとっては、酒がエネルギーだ。

だからこそ―――――

 

 

 

 

手には、いつの間にか一つの盃があった。

 

 

 

 

「――――乾杯」

一言呟き、それを一気に飲み干す。

瞬間、体が()()()

「く―――かっはぁ――――」

体が燃えるように熱くなる。しかし、同時に、気分がとてもよくなる。

もう、()()()()()()()、酔うという感覚。

だが、その酔いも、今は、エネルギー。

完全同調の影響で、赤くなった肌が、更に赤くなる。

角が、更にその存在を誇張するかのように伸びる。

俯いていた状態から、友奈は顔を上げる。

「――――来い」

 

その名は、『千紫万紅(センシバンコウ)地創羅刹(チソウラセツ)』。

 

鬼の力をさらに強める為の、()()()()()()()()()()()()()

故に、これは神樹となった神々の一柱である酒の神が作り出した、鬼神強化用の火酒だ。

その効力は、飲んだ者の体を一時的に火照らせ、本来引き出せぬ筈の()()()()()()()()()()()()()()()()()()、一歩間違えれば、酒に逆に呑まれてしまうかもしれない特上の酒だ。

だが、十全にその力を全身に巡らせることが出来れば、その力は、全てを文字通り玉砕する、破壊の力を手に入れる事が出来る。

そんな、完全強化された状態で、友奈最強の右が炸裂すれば、一体どうなるか――――

だが、啖呵を切ったからには、相手も止まらない。

「ウオォォォオオオオオオオォォォォオオォォォォォォオオオォォオオオ―――――――ッッッ!!!」

咆哮が大地に轟き、峻司は、その宇宙まで一っ飛び出来る脚力で、一気に友奈に突っ込む。

それはまさしくミサイルのような勢いで、否、それ以上の勢いで突っ込んでくる。

対して友奈は前に出した左足で地面を踏み砕き、右腕を振りかぶる。

「勇者―――――」

そして、右腕に限界にまで力を込めて――――

「―――パァァァァアアアァァアアアアアンチィィィイイッッッ!!!」

 

――――峻司は両拳を前に出し、

 

――――友奈は右拳を突き出し、

 

 

 

相手に叩きつけた。

 

 

 

衝撃が轟き、地面を砕く。

友奈の足元に巨大なクレーターが作り出され、友奈の右腕の骨が――――粉砕される。

「ぐあっぁ―――――!?」

しかし、既に大量のアドレナリンが分泌されているからか、痛みは感じない。

否、酒の所為で痛みが完全に吹き飛んでいる。

だが、押し込まれているのは確かで、友奈の体は、どんどん仰け反っている。

「ウゥオオオォォォォオオオオオォォォオオオオ――――――!!!」

「くぅ――――ァ――――」

どんどん押し込まれ、その圧倒的質量の前に、成す術無く、押し込まれる。

「ァア――――」

「ウゥオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!!!!」

まるで、くたばれとでもいうかのように、地面に足をつけた峻司が、友奈を地面に圧し潰した。

「くぁぁ・・・・」

圧し潰され、意識が混濁していく。

 

 

まけ・・・た・・・・?

 

 

そう、想った時――――

 

 

 

 

 

 

一人の少女の、笑顔を思い出した。

 

 

 

 

 

 

「―――――――ッッッ!!!!!」

カッと目を見開き、咆哮を一つ。

「うぅぅぉおおおおおぉぉぉぉおおおおおぉおぉぉおおおおおあああぁぁぁあああぁぁあああぁぁぁああああああああ!!!!!」

力が溢れかえり、峻司が力を緩めた一瞬の間に、力尽きた筈の友奈が、峻司の拳を押し返す。

「――――全身」

突如として、友奈が握った右拳の指を全て弾き飛ばし、峻司の腕を弾き飛ばす。

「――――全霊」

そして、そのまま振りかぶって、峻司の顔面に、その最強の拳を叩きつけた。

 

「勇者パァァァンチッッッ!!!!」

 

そのまま、体を燃やすような衝動に任せたまま、峻司を地面に叩き落し、その顔面を叩き潰した。

同時に、拳打の衝撃で上昇気流が発生、下に放った筈のパンチの衝撃が全て空に向かって竜巻の様に巻き起こり、天を突く。

やがて、その竜巻が収まる頃には、そこには、地面にひれ伏す敗者と、満身創痍ながらも立っている勝者の姿しかなかった。

頭が破砕し、原型を留めず完全に押し潰れていた。

やがて、峻司の体は砂となり消え、友奈は、その様子を黙ってみつめていた。

友奈の右腕は、内部出血で全部青くなっており、骨は粉々。

もはや、使い物にならないであろう。

しかし、それでも、『左』は残っている。

「・・・いかない・・・と・・・」

ある方向を向いて、友奈は、ふらふらとある場所へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

若葉は、その場に立ち尽くしていた。

「いやはや、まさか、幸恵君を倒してしまうとは、少し予想外だったが、お陰で僕が出撃する羽目になってしまったよ」

そこには、顔面を覆う仮面に、体全体を覆うような大きな外套を纏った、一人の男がそこにいた。

だが、問題はそこではない。

 

若葉を取り囲むようにして、大量の人形やら、大男やらが無数にいる事だ。

 

それも、地上に限った事は無く、空中にも、空を覆うように存在していた。

「・・・・」

若葉は、冷や汗を垂れ流す。

その圧倒的な量に、絶句しているのだ。

「僕の能力は、『泥人形(ゴーレム)を作り操る事』。ただ、僕の場合はそのバリエーションが凄まじいから、こんな事になってるんだけどね」

武装も様々、剣や槍、銃や弓も、もはや武器の種類は数えるのも面倒な程に広かった。

「さて、と、乃木若葉、僕は君を殺さなければならない。これも僕たちの悲願である『人類滅亡』の為だ」

銃や弓を持ったゴーレムが、一斉にこちらにその銃口を向けた。

「では、さようなら」

男が手を振り下ろした時、飛び道具を持ったゴーレムの銃や弓から、一斉に銃弾や矢が発射される。

それも連射。

ガトリングやマシンガン、ハンドガンにアサルトライフル、スナイパーライフルなど、ありとあらゆる銃器が、連続して大小様々な弾丸を放ってくる。

若葉に、この無数の銃弾を避ける事も、かわす事も出来ない。

いくら驚異的反射神経を持っていようが、この数は防ぎきれない。

しかし、それでも、若葉は、己の本能がままに、剣を抜き、迎撃しようとした。

無駄だと分かっていても、抵抗せずには、いられなかったから。

 

しかし、銃弾が若葉に届く事は無かった。

 

「―――『昇破水壁(ウォーターウォール)』ッ!!」

突如として若葉の目の前に一人の少女が降り立ち、周囲に水の壁を形成。圧倒的圧力で噴出される水が、銃弾やら矢やらを全て弾き飛ばす。

「歌野!?」

「Goodmorning、若葉、少し寝てたわ」

それは、頭から血を流し、腹に切り傷を作った歌野だった。

他にも、傷があり、ボロボロだ。

だが、歌野は平気そうに笑う。

「すまない、助かった」

「どういたしまして。さあて、そろそろ行くわよ!」

銃撃の中、歌野は水の壁から受け止めた弾丸を逆に一斉に放つ。

それによって銃を持ったゴーレムの何十体かが一斉に砕け散る。

そして、銃撃が緩まるのと同時に、歌野は『昇破水壁(ウォーターウォール)』を解除する。

それと同時に、若葉が落ちていく水を突っ切って飛翔。

「『天空火生三昧』ッ!!」

そして、翼から炎を放出し、空中にいるゴーレムたちを一気に焼く。

だが、元が土だからか、あまり効果がないように見える。

しかし―――

「うぉぉぉぉおおおおおおおおぉぉおおおおおおおぉおおおお!!!」

若葉の放つ炎が、その火力を一層強める。

「燃えろぉぉぉぉぉおおおおおッッッ!!!」

そして、突如としてゴーレムたちがその姿を保てず、その形を崩していく。

「ふむ、炉心を破壊したか」

そう、彼の作るゴーレムには、全て動かすための『炉心』が必要なのだ。

それを、若葉は最初の放火で察知して、そして火力を強めてその核を破壊したのだ。

「だが、かなりきついだろう?それは」

しかし、それは若葉にとってはかなりの精神力を使う。

「若葉!炎を出すんじゃなくて、剣で斬る事だけを考えて!大丈夫!その刀に斬れないものなんてないから!」

地上から、歌野がそう叫んでくる。

「・・・そうだな」

若葉は、倶利伽羅を持つ手に力を込める。

「哮さんの、刀なら!」

そう叫び、若葉は、ゴーレムの集団に突っ込んで行く。

同時に、歌野も八岐大蛇の力を酷使して地上のゴーレムを破壊していく。

その様子を、男――――『傀儡』の浅井久遠は呆れ半分関心半分で見ていた。

「やれやれ、流石といった所か。俗に勇者と言われるだけはあるね・・・・む」

ふと、横から凄まじい風が叩きつけてくる。

「・・・やれやれ、あっちもあっちだね・・・せめて、もう少し静かにやり合って欲しい所だね」

そちらの視線を向ければ―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

二匹の竜が、暴れていた。




次回『邪竜(タツミ)VS悪竜(オリュウ)

英雄を纏いし邪竜は、今、最強の悪竜に立ち向かう。
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