足柄辰巳は勇者である   作:幻在

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やっと始まります、失格者の章(ルーザー)

千景改め、楔の、新たな物語が、今、開幕します!


失格者の章《ルーザー》
少女と男の邂逅 運命の始まり 蠢くは復讐の徒


勇者。

 

それは、この西暦の時代において、人々の希望ともいえる存在。

天からやってきた、人類の天敵、『バーテックス』。

その天敵を唯一倒せる存在が、勇者。

勇者は人々の為に戦った。

 

乃木若葉、足柄辰巳、高嶋友奈、土居球子、伊予島杏、そして、白鳥歌野。

 

彼女らが、人々に()()()()()()()()、そして()()()()()()()()者たちだ。

 

そう、尊敬された者達、だ。

 

だが、そんな尊敬される様な存在でありながら、最後まで、『忌み子』として、忌み嫌われ続けてきた存在がいた。

 

誰にも愛されず、疎まれ嫌われ続けたまま、終わってしまった勇者。

 

 

 

 

 

 

 

その名は―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

高知県のとある街にて。

『全チーム!位置についたな!?ならば今回の目標をさらうぞ!』

警察の特殊回線から、その様な怒号が響く。

それを聞きながら、一人の男がその手に一本の脇差を握りしめていた。

『今回の標的は『(つかさ)正勝(ただかつ)』!『(くさり)』を所持している要注意人物だ!今回はその男の確保と奴の持っている『鎖』の破壊だッ!』

男は、目の前にそびえ八階建てのビルの正面に立つ。

『すでに(あきら)は侵入している。『一般科』の奴らは俺たちの()()()の援護をしながら注意を逸らせ!容赦するな!人間と思うな!出なければ死ぬ!返事ィ!』

無線から、騒がしいまでの怒号が響く。

だが、男は気にせず、脇差の柄を握りしめる。

『よぉーッし良い返事だ!お前も準備は良いなァ!』

「ああ、いつでも行けるぞ」

『よし!()()()()()()()()()()()ッ!』

そして、男は、脇差を抜く。

 

造代(つくりよ)様の眷属たる、御神刀(ごしんとう)の担い手が(ねが)(つかまつ)る。汝が造りし武器を率いて、汝が武器を壊す事を許したてまえ」

 

祝詞と共に、その脇差の真の姿を開放する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは、絶大なる力を手に入れた『使い手』の物語では無い。

 

しかし、絶大なる力を否定する『担い手』の物語でも無い。

 

そして、人々を守り続ける『勇者』の物語でも無い。

 

 

 

これは『失格者』の物語。全てを失った少女の、成り上がりの物語。

 

 

 

 

 

 

 

人々の罵倒され続けた少女が、ただの他人の当たり前の幸せを願う、物語だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一人の少女が、空を見上げる。

そこには、夜空に輝く満天の星。

仮初の空。

「・・・・・・」

全てを失った少女は、ただの一言も言葉を発する事も無く、ただその空を見上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雨が降り注ぐ中、刑事の『久我(くが)真一(しんいち)』は、自身の机の前で突っ伏していた。

「あー、だるい」

「そんな事いうもんじゃないわよ。久我君」

そんな彼の頭を書類を挟んだファイルで叩くのは、彼の先輩である『氷室(ひむろ)聖子(せいこ)』。

「んな事言われたって、先日の事件の始末書を今さっき書き終えたばかりなんすよ」

「そんな君にとっても良いお知らせがあるわよ。新しい始末書がどーん」

と、真一の前に出されたのは、二センチ分重ねられた書類に束だった。

「・・・マジっすか?」

「ええ、マジ」

長い黒髪をなびかせて、そうにっこりと告げる聖子。

「鬼!悪魔!ドS!!」

「あらぁ?先輩に向かってその口の利き方は何かしらぁ?」

「ぎゃぁああ!?」

聖子のアイアンクローを喰らって悶絶する真一。

「全く、新人二十五歳がこの程度で喚くんじゃないわよ。もう四十の私よりは元気ありあまってるでしょ?」

「ぐおぉおお・・・」

「聞いてないか。まあいいわ。それ、帰る前までにやっておいてね」

それだけを告げて、さっさと行ってしまう聖子。

「くっそぉ・・・」

「災難でありますな、久我殿」

「ん?ああ、暁か」

ふと、真一の反対から声を掛けてきたのは、小学生と見紛う程の身長の少女だった。

長い黒髪をポニーテールにする事で、纏めているその少女は、その見た目からもう二十歳である。

そんな合法ロリな彼女の名前は『笹木野(ささきの)(あきら)』。

訳あって真一と一緒に仕事をしている。

「相も変わらず、氷室殿に仕事を押し付けられたようでありますな」

「ほんと、先輩には勘弁してほしい所だよ」

「でも、久我殿が優秀なのは、この署の誰もが知っている事実であります。だから、胸を張っても問題ないのではありませんか?」

「何言ってんだが、この仕事は慢心一つで命取りにもなるんだぞ。もうちょっとは気を引き締めろ」

「ふふ、そうでありますね」

 

彼らは警察。常に犯罪と死と隣り合わせに仕事している者たちである。

 

ふと、彼らのいる仕事場に置かれているテレビで、あるニュースが流れた。

『次は、あの『千景災害』の現状についてです――――』

「「・・・」」

真一と暁が、テレビに視線を向ける。

『復興作業が続いているものの、未だ行方不明者は多数おり、捜査は難航しているとのことです。生き残った住民たちは、病院や被災地外にある公民館などで避難生活を強いられており、元に生活に戻るにはまだ時間がかかるらしく、今後も政府はこれに対する対策を考えており――――』

「酷い話っすよね」

ふと、真一と暁の元に、段ボールを抱えた男性がやってくる。

何気に頼りなさそうな顔立ちの男は、真一と暁の後輩だった。

「祐郎か」

「どうも、久我先輩に笹木野先輩」

彼の名前は『市ヶ谷(いちがや)祐郎(ゆうろう)』。真一を慕う警部補であり、見た目通りあまり頼りにならない男。しかし、それでも必至に仕事をする様子はこの警察署ではダントツ。ちょっと有名な頑張り屋なのである。

「それにしても、あの災害引き起こしたやつは酷いっすよね。確か、こおり・・・なんでしたっけ?」

「先日、彼女に関する資料を分けられたばかりでありましょう?郡千景でありますよ」

「ああ、それそれ・・・って、久我先輩?どうかしたんすか?」

気付けば、真一の顔はかなり不機嫌になっていた。

「久我殿?そんなに彼女の名前を聞くのが嫌だったでありますか?」

「そんなんじゃねえよ。ただ・・・」

真一は、自分の机の隅に置かれた書類を見て、物思いにふけりつつ、口を開く。

「まだ十四歳の女の子から人権まで奪うのは、いささかやりすぎかと思うんだがな」

「それは、そうかもしれないっすけど・・・でも、彼女に恨みを募らせてる人も、多いんすよ?」

「まあ、それはそうだろうな・・・・」

だから、真一は強く言えない。()()()()()()()()()()()()少女一人を、庇う事は、彼には難しかった。

「『大いなる力には、大いなる責任が伴う』。トト()様の受け売りではありますが、彼女は、それ相応の責任を取らされたのでありますよ」

「そう、割り切れればいいんだがな」

真一は納得がいかない様子だった。

しかし、この問答がさらに続きそうだったので、最後の始末書を片付けて立ち上がる。

「久我殿?」

「帰る」

「あ、それじゃあ飯でも一緒に食いに行きません?」

「悪い、そんな気分じゃない」

真一はそれだけを言い、さっさと職場を出て行った。

 

 

 

久我真一。年齢二十五と若手。高卒であり、父親が怪我により退職したが刑事であり、母親はとある柔道道場所有のちょっとした名家のご息女であり、それゆえ、自然と柔道を学び、警察官となったのがつい五年前。刑事になったのは二年前であり、その時は、偶然かそうじゃないのかある事件を解決した事もあって昇進した。結果、かなり早い段階で刑事になれたある意味での天才なのだが、本人、数ある失敗も踏んでいるため、慢心はしていない。むしろ、父親があの様なので、油断していると自分も不自由な生活をおくってしまうとただ単純に恐れているだけなのだが。

「はあ・・・」

雨水が傘を叩く音を聞きながら、真一はため息を吐く。

それは、この間起きた事件の犯人を取り逃がした故の失態、そして、上司が以外とSな事に対しての不満の声だった。

仕事に忙殺されている訳ではないが、今自分がやっている()()()というものに、なんとも言えない、やる気を出せないのだ。

そのお役目というのは、とあるこの街を脅かす脅威から守るというものだ。

その為の力もあるし、守る気概は一応あるつもりだが。だが、いささか、このお役目にやりがいを出すことが出来ないのだ。

相手にしている奴らに対する法律は無い。そんな、法で裁けないような奴らを捕まえ、裁く。そんな、矛盾した事を、自分はしているのだと思うと、どうにも、自分が刑事である事に自信を持てなくなる。

「はあ・・・いつまで続くのか・・・」

そう、ぼやいた時。

「―――ッ!?」

 

突然、首を何かに締め付けられるような感触に見舞われる。

 

「くそ、こんな時にか・・・!!」

悪態を吐き、真一は、首が引っ張られている方向へ走り出す。

それと同時に、スマホが鳴る。

「暁か!」

『今、『無形刀』でそちらに向かっているであります!しかし送れるかもしれないので、被害の方だけを抑えていてくださいであります!』

「オーケーだ」

通話を切る。

「くそ、こんな時に」

路地裏に入り、真一は、懐から一本の脇差を抜いた。

「――――『連双砲』」

刀身を曝け出し、その刀の真の名を告げる。

すると刀が鞘ごと光りだし、それがそれぞれ形を変えて、やがて二丁の自動拳銃に変わる。

モデルとしては、M9に近いだろうか。

さらに、真一が来ていたスーツもその姿を変え、その手は黒の指ぬき手袋、全身を迷彩柄の入った黒のスニーキングスーツを着込み、肩及び脇にはガンホルダー。

それだけ見れば、軽装の軍人見える装備だ。

真一は、脇にあるガンホルダーに脇差から変化した拳銃『連双砲』を入れる。

「行くか」

そして、真一は地面を蹴る。すると常人ではありえない程の跳躍力を見せ、軽々と三階建ての建物の屋上へ出る。

それは、彼が纏う力が、人知を超えたものである事の証明。

 

彼らは『救導者』。この絡久良を守る、神の使いにして神が創りし武器の担い手。

 

 

 

真一は、走る。

行き先は絡久良市の西。

「近いな」

警察署からは離れている。

だが、幸い真一の自宅はこの方向にあった為、警察署から出たであろう暁は真一より遅れてくるだろう。

締め付けが強くなってきている事を認め、真一はホルダーに入れた拳銃を抜き、広い道路を挟んだ建物と建物との間を大きく跳躍する。そして、敵を視認する。

「公園だと?」

こんな雨の中、誰もいない公園で、何故、敵はここで力を――――

しかし、そんな事考えても仕方がないと真一は頭を振り、公園の雨に滑る土の地面に着地する。

土を含んだ雨水が飛び散り、真一の靴を汚す。

そして、相手が反応するよりも早く拳銃を敵に向けた。

「動くな。下手に動けば撃つ」

そして、警告。

幸い、相手は後ろを向いている。

ついで、武装も確認する。

相手の武装は・・・死神のものを彷彿とさせる、巨大な大鎌。人一人を上回るその巨大な鎌は、一種の威圧を感じさせる。

だが、そうであっても所詮は近接武器、距離でいえば拳銃であるこちらが有利だ。

しかし、真一は油断はしない。

たとえ、相手の武器が鎌であっても、相手の『字』によって、戦い方は大きく変わる。

ふと気づけば、相手はまだ高校生にも満たない中学生だと気づいた。

中途半端に切られた髪、白い装束、がっちりと躰を固めるような、拘束具。

それが、彼女の()()()()姿()なのだろうか。

「抵抗するな。ゆっくりとこちらを見ろ」

強い口調で促し、相手の出方を見る。すると少女は、こちらに向かってゆっくり振り向いた。

そして、その顔を見て、旋律する。

「・・・・郡千景」

かの、災厄の勇者と呼ばれた少女が、そこに立っていた。

しかし、その顔には、かつての面影はなく、右目は抉れているのを隠すためか包帯が巻かれ、左頬は口が裂けたのか糸で縫われており、反対の頬には深い三本の線の傷。

首にも目立つ傷があり、それだけ見てもまさしく惨いと思えた。

少女は―――郡千景はこちらの姿を認めると、ふと、ほお、と息を吐いた気がした。

その、濁りに濁り切った目が、さらに深く濁ったかと思った瞬間――――

彼女の姿が揺れた。

(来るっ・・・!?)

左に倒れそうになると思ったら、幽霊のような動きで鎌を両手で持ち、振りかぶりながらとんでもない前傾姿勢で真一を足元から攻撃してきた。

「チッ」

舌打ち、真一はすぐさま数発発砲。相手は、かの災害を引き起こした張本人であり、四年前世界中を襲った化け物『バーテックス』と戦ってきた戦闘経験者。それも、命を懸ける類のものだ。

そんな相手に、手加減なんてしていられない。

真一はすぐさま空いた手をもう一方のホルダーに突っ込みつつ右手の拳銃から三発弾丸を放つ。

その弾丸は全て千景の進行方向に向かっていき、このままいけば直撃は免れない。

しかし、それを予期していたのか、無理な態勢から足を一歩大きく踏み出し、そのまま横に転がってその弾丸を躱す。そのまま鎌を持つ位置を変えて再度突撃。

真一は冷静に右の拳銃を撃ちつつ左手に持った拳銃も同時に連発する。

しかし、当たらない。

(この程度じゃ仕留められないって事か)

真一が相手にしているのは、ただの少女じゃない。

『魔器』と呼ばれる、救導者の武器と同じ力が備わった武器を使う、悪事を働く者たち。その全員が、その魔器に込められた『悪霊の魂』によって悪意を増幅させられ、悪事を働く。

この少女も、その一人なのだ。

(体の身のこなしもさることながら、あの大鎌をうまく使って重心移動をものにしている。やはり、相当場数を・・・ッ!?)

突如、彼女背中から無数の鎖が飛んでくる。

真一は本能のまま、引き金を引いて鎖を迎撃する。

一発砲弾並みの威力を誇る、真一の『連双砲』は、その文字を『砲』とするだけあって、威力は申し分無い。だが、弾道を操作できるわけではないので、命中率は使用者のスキルに左右される。

だが、真一の銃の腕は並みの警官を上回る。

しかし、相手が一枚上手なのか、千景は、真一を鎌の射程にとらえる。

このまま振れば、鎌の刃は真一を貫くだろう。

だがしかし、真一の母親はとある柔道道場を持つ名家のご息女。故に――――

いつの間にか、千景の装束の襟を、真一の右手がひっつかむ。

「ッ・・!?」

ここで初めて千景が目をむく。

その間に左手は鎌を持つ右手首を掴み、その腕の方向に向かって引く。すると力に逆らえず、彼女の上半身が前のめりになる。当然、躰は反射的に体を支えようとして、足を前に出そうとする。しかし、その前に出そうとした足に前に、真一は右足を出す。

 

投げ技が一つ、『体落とし』

 

僅かに折り曲げた右足で、彼女の両足を跳ね、襟を掴んだ右腕を軸に、回転、濡れた土面に背中を叩きつける。

「―――ッ!!」

叩きつけられ、肺の中の空気を無理矢理吐き出される苦痛に悶える千景。

そして、真一は、すかさずその額に銃口を押し付けて、容赦無く引き金を引いた。

銃声が鳴り響き、しかし雨の打つ音がその音を掻き消す。

光が砕け散り、千景の白い装束は消えて、その体は、元の服装に戻る。

「・・・・なんだよこれ」

そして、真一は、その表情を歪める。

 

その姿は、まるで奴隷だった。

 

服は文字通りの布一枚。それ以外何も身に着けておらず、ただ上半身の前を隠すだけしか役割を果たしていない。背中は曝け出されており、うつ伏せにすれば、その背中には、資料に会った通りの、失墜を意味する枯れた木を想起させる焼き印がしてあった。

その体には、無数の傷がつけられており、スタンガンや火箸で叩かれた後、当然殴られた後もあり、さらには何か串のようなもので刺された後もある。先も見た通り、口には一度裂かれ、縫い合わされた様子もあり、その姿かしても、十分、化け物に見えた。

「・・・・」

そんな彼女の様子に歯を食いしばった後、真一は、魔器を探す。

魔器は、その人が普段身に着けている物に憑依し、それを武器へと変質させて悪事を働かせるのだ。

「・・・どこだ?」

だが、見当たらない。普通だったら、本人の周囲に落ちているもののはずなのだが。

「久我殿!」

ふと、そこへ暁がやってくる。

「終わったようでありますな」

「ああ」

「無事で良かったであります・・・あ」

ふと、暁は地面に横たわる少女を見つける。

「・・・・彼女が?」

「ああ。文字は『鎖』。この間()()()()()奴だ」

「魂だけ逃げたのでありましたね。まさか彼女に取り憑くとは・・・」

まるで憐れむかのような視線を千景に浴びせ、暁は真一の方をむく。

「それで、久我殿。魔器はどうしたでありますか?」

「それが・・・・見つからないんだ」

「え?」

真一にいわれ、暁も彼女の周りを探す。

だが、確かに魔器は見つからない。

「本当であります・・・これは一体・・・」

魔器は、必ず依り代となる道具が必要だ。

なのにそれが見当たらない。これは一体どういうことなのか。

その時、真一の携帯から着信音が響き渡る。

「ッ!」

「はい、こちら久我」

『真一さん!今回の魔器使いはどうなりましたか!?』

通話の相手の声は、まだかなり幼い。おおよそ十才程度だろうか。

「一応倒した。だが魔器の方は・・・」

『まだ壊していないんですね・・・良かった・・・』

「? なんで安心してるんだ?」

『真一さん、落ち着いて聞いてください』

真一は、暁と目を合わせる。

「・・・なんだ?」

『その人の魔器は、この間、壊し損ねた『鎖』の魔器です』

「それは知っている」

『それで、その魔器の本体なのですが・・・

 

 

 

・・・『心臓』、なんです』

 

 

 

「・・・・・は?」

真一は、その答えに、そんな間抜けの声しか発する事しかできなかった。

 

 

 

久我真一と郡千景、後の、久我楔。

 

 

後に夫婦となるこの二人の初めての邂逅は、決して、良いものではない。

しかし、運命的ではあるだろう。

 

運命に抗い戦い続ける刑事の男と、運命に縛られ従い続ける傀儡の少女。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『―――――絡久良市市長、縄間(なわま)淳太郎(じゅんたろう)市長は、本日、港の工場問題について、改善の意思を示しているという意思表明をしており、これには市内でも期待の声が上がっております。縄間市長は、今後も市の環境の改善に力を尽くす方針であると公言しており――――』

 

―――偽善者め。

 

憎き相手を賛同するような報道をするテレビの画面を破壊し、男は、背中から生える四本のアームを仕舞う。

 

―――私から全てを奪った癖に、未だ偽物の仮面を被るか。

 

男はその目に憎しみの炎を揺らめかせ、自らの技術の全てを込めて、とある薬品の研究に集中する。

完成まで、もうすぐ。

「もうすぐだ・・・もうすぐ、貴様がしてきた悪事を全て、白日の下にさらされるのだ。今に見ていろよ・・・」

男は、それほどまでに嬉しいのか、その口角を限界にまで吊り上げる。

その背後に控えるのは、五人の同志。

全員、あの男に恨みを持つ者たち。

 

 

『毒』『翼』『鋼』『雷』『悪』『染』

 

 

 

 

さあ、もうすぐだ。もうすぐ、我が大願が叶う。

 

 

 

 

縄間淳太郎に制裁を、鉄槌を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは、一人の失格勇者の、成り上がりの物語。

 

 

 

 

 

本当に大切なものを見つける、物語だ。




次回『鎖の少女は語れない』




久我真一
職業 刑事
年齢二十五
黒髪 黒目 顔立ちは男性にしては良い方。

父親が退職はしたものの元刑事、母親は柔道場を持つ名家のご息女。妹が一人おり、その妹は現在大学生。
正義感を持ち合わせており、しかし熱血という訳ではなく常に目まぐるしく変わる状況に臨機応変に対応するほどの頭の回転を持ち合わせている。
潜入などが得意で、学生時代、その銃の腕前と格闘技術、そしてスニーキングスキルから、何某スパイゲームからもじって『スネーク』というあだ名をつけられていた事がある。
その銃の腕前は署内ではトップで、立った状態で制止した的には十発撃って十発当たるほどの正確さを誇る。一応、狙撃も出来る。
柔道を嗜んでおり、得意技は体落としと大外刈り。
さらにその技術を応用して、相手を地面に叩きつけたり壁に叩きつけたりと、相手を一撃で気絶させる事においては群を抜く。

後の千景―――楔の夫となる男だが、当然の如く本人はまだ知る由もない。

御神刀『連双砲』
『砲』の文字を有する二丁拳銃型の御神刀。
銃のモデルはM9。軍隊などで幅広く使われている銃である。
能力は『弾丸の威力を自由に変える事が出来る』。


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