足柄辰巳は勇者である 作:幻在
とある公園で。
「・・・・」
辰巳は、そこで、ある人物を待っていた。
その背中には、ボディバックと大きな布包み。
ボディバックはともかく、布包みの方は、彼がいつも持ち歩いている西洋長剣だ。
服装は、リネンシャツを前開きにし、下には横縞のモノクロのシャツ。
下には、ジーンズといった服装だ。
そんな彼を、ちらほらと見る通行人たち。
初めての襲撃の際、その個人情報は大々的に放送されたために、顔はすでに四国中に知れ渡っているから当たり前だ。
さて、そんな辰巳が何故こんなところにいるのかというと。
「待たせましたか?」
ふと、そんな辰巳に声をかける一人の女性。
辰巳がそちらを向けば、ワンピースに藍色のノースリーブのシャツといった服装のひなたがそこにいた。
その肩には、趣味の良いショルダーバック。
「いや、今来た所だ」
「そうですか」
ひなたは笑う。
「さ、行きましょうか」
「ああ」
二人は並んで歩き出す。
そもそも、事の始まりは、辰巳が火野から送られたとあるペアチケットにあった。
「―――――そんな訳で、今度の日曜日、俺とここに行ってくれないか?」
「はあ・・・・」
学校で一通りの説明をした辰巳に、思わず困ったような笑みで返すひなた。
周りには、当然、クラスメイトたちがいる。
「良いんじゃないか?」
と、若葉。
「きゃー!辰巳さんがひなたさんをデートに誘ってるよタマっち先輩!」
「分かった。分かったからゆするな杏!」
辰巳のひなたへの誘いに、何故か興奮している杏。そして、その興奮ぶりに振り回されている球子。
「わー、水族館かー。私も行ってみたいな。ねえぐんちゃん!」
「え・・・・ええ、高嶋さんが行きたいなら・・・・」
と、こちらは別の意味で羨ましがっている友奈と、少し困惑している千景。
「俺としては、何故、今になってこんなものを送って来たのか訳が分からないんだが・・・・」
「そうですねぇ・・・」
辰巳はともかくとしてひなたも困惑している。
辰巳としては、いくら妹の頼みでも本人が断るなら、悪いがこの話はなかった事にしたいところだ。
しかしひなたとしては、可愛い後輩と思っている火野の想いを踏みにじりたくない。
そんな訳で、ひなたは、自分の一番の親友へ相談する事にする。
「どう思いますか、若葉ちゃん」
「行ってみたらどうだ?良い気分転換になるかもしれないしな」
「はあ・・・」
若葉の言葉に、ひなたは思わず息を吐く。
こういわれては仕方が無い。
「・・・行きましょうか」
「・・・そうか」
辰巳も、火野の苦労を無駄にする訳にはいかなかった。
電車に乗る二人。
「午前は、水族館を見て回って、昼に昼食、その後はイルカショー・・・・で、良いか?」
「はい、構いません」
火野からの物凄く簡潔なスケジュール表を読み上げ、確認を取る辰巳。ひなたは良いそうだ。
「しかし、よく行くと言ったなお前」
「本当は若葉ちゃんと一緒に過ごしたかったんですけど、若葉ちゃんに言われてしまったら、いかざるを得ません」
「そうか」
意外と混んでおり、座る場所が無いために、立っている訳だが、その態勢は向かい合っている感じだ。
そんな中で、電車がカーブに入る。
「きゃ」
「うお」
歓声の法則によってひなたが前のめりに倒れる。
それを辰巳が支える。
そして、ひなたのふくよかな胸の感触が、辰巳の胸板に伝わった。
(うわ・・・・)
その柔らかさに、思わず声が漏れそうになる。実は、辰巳は今までに女子に触った事はほとんどない。
不幸体質、と言われるが、その範囲は鳥の糞を喰らったり、犬の糞を踏んづけたり、など、いわゆるどうでも良い所でドジを踏むというものだ。
「す、すみません」
「いや、良い」
思わず密着する形になってしまったが、辰巳の強靭な精神は、男性としての野生を抑え込む。
実は、ひなたの方も理性が危ない事になっている。
(い、良い匂い・・・・)
そう、辰巳の匂いだ。
それが、あまりにも
すぐに離れたかったが、もっと嗅いでいたいという欲求が邪魔して離れられないひなた。
(だ、だめですー!こんな事で、は、発情なんて・・・!)
予想外な事に、無言の混乱を引き起こす辰巳とひなた。
そんな様子を、案外近くで見ている者たちがいた。
「きゃー!辰巳さんとひなたさんがくっついてますよ!ほら見てみて!」
「わー、二人とも顔が赤いよぐんちゃん」
「そ、そうね・・・」
「若葉はどう思うんだ?あれ」
「どうと言われてもな・・・・」
興奮して声を荒げている(結構声抑えてます)杏、辰巳とひなたの様子にわくわくしている友奈に、いきなり振られてどう返せばいいのか分からない千景と、ひなたの親友である人物に心情を聞く球子、そしてその本人である若葉は首をひねる。
一応、興味深々に二人の様子を、隣の車両で見ている一同なのだが。
「せ、狭い・・・」
千景の言う通り、辰巳たちが乗っている車両より、若葉たちが乗っている車両の方が圧倒的に混んでいるのだ。
杏は二人の様子に夢中な為に気付いていないが、他の者たちは、そのテンションが返ってうざい事になっている。
「あ、あんず、一応分かったから静かにしてくれないか?」
「あああ、二人の顔が赤くなっています。きっと、ひなたさんは辰巳さんの匂いで発情し、辰巳さんはひなたさんの胸のふくらみで興奮してるに違いありません。きゃー!」
「ちょっと、伊予島さん、静かに・・・・」
「アンちゃーん、皆苦しそうだよー?」
「そうだぞ杏、周りの客にもめいわ・・・・うわっと!?」
そこでカーブに入る電車。
当然、慣性の法則によって、車両の片側へ押し込まれる客たち。
「きゃ!?」
が、ここでなんのいたずらか、若葉と千景が密着する羽目になる。
「ちょ、ちょっと乃木さん」
「す、すまない千景」
千景がキッと若葉を睨み、若葉は申し訳無さそうな表情になる。
身長がほんの四センチしか違わない二人。当然、顔の距離も近くなる。
すぐに離れる二人。
しかし、他の三人はその様子にまるで気付かない。
理由は、明快。
辰巳達だ。
「だ、大丈夫かひなた?」
「は、はい・・・」
辰巳たちがいる側とは逆の方向に運動エネルギーが働いたため、ひなたが倒れかけ、それを辰巳が支えたのだ。
倒れなかったため、大事には至っていない。
「こんなに混むとは思わなかった」
「私もです」
そこで、電車が止まる。
辰巳たちが降りる駅では無い。
ここで、何人か降りてくれる事を祈る。だが、その祈りとは裏腹に、さらに乗客が入って来た。
「うわ!?」
「きゃ!?」
それによって、さらに密着する辰巳とひなた。
ひなたは辰巳の胸板に顔を押し付け、ひなたの豊かな胸は、さらに辰巳の体に押し付けられる事になる。
(うわぁ・・・)
(ひあぁ・・・)
人が多くなった事で熱がこもり、汗をかく二人。
しかも辰巳が汗をかいた事によりその匂いが強烈になり、ひなたはさらに悶絶する事になる。
ついでに、ひなたも汗をかいた事により、その姿がより煽情的になり、辰巳の理性を崩しにかかる。
(は、早くついてくれぇぇぇえ!!!)
(は、早くついてくださいぃぃい!!!)
(は、早くついてくれぇぇえ!!)
(は、早くついてぇぇえ!!)
それは、若葉と千景も同じだった。
せっかく離れたかと思ったら、ただでさえぎゅうぎゅう詰めだった車内にさらに降りる客がいないなか乗客が乗り込んでくるから、また千景と若葉が密着してしまったのだ。
しかも、かなりぴったりと。
さらに互いの汗が互いの服を濡らし、ある意味、精神に作用する匂いが互いの体から漂ってくる。
「の、乃木さん・・・もうちょっと離れて」
「ち、千景こそ・・・もう少し向こう行ってくれ」
どうにかして離れようとする二人。
ふと、若葉が
「んあ・・・」
思わず、声が漏れてしまった。
「千景?」
「あ、貴方・・・ひゃん!」
文句を言おうとした千景がさらに素っ頓狂な声を挙げる。
二人とも、実はスカートだ。
制服に使われている物だが、若葉はちょっとした変装のために、イメチェンまがいな事をしている。
千景も似た様なもの。
しかし、そのスカートの中にはパンツという下着一枚。つまりは布一枚。
その中には女性の性感帯ともいうべき―――――――まあ、そういう事だ。
ついでにいって、千景の右足も若葉の股に入っている。
ここで、唯一若葉に負けたくないと思っている千景が思いつく事は一つ。
仕返しだ。
「そっちがその気なら・・・・」
「千景、何を言って・・・ひぅ!?」
若葉も甘い声を漏らす。
「どう乃木さん?ここをこうされる気分は?」
「ま、待て千景・・・んあ・・・」
ついつい、若葉がよがる姿に
「な、なるほどな・・・お前がその気なら・・・・」
そして、実は電車内の暑さでまともな考えが出来なくなってきている若葉は、そんな千景に反撃する。
「んあ!?・・・やったわね・・・」
「んひ!?・・・この・・・」
なんとも変な雰囲気になっている二人。
「おい、あっちはあっちで変な事になってないか?」
「なんで二人とも怖い笑い方してるんだろ・・・それに顔赤いよ」
そんな
杏は、辰巳たちの事で気付いていない。
しかしふと杏が。
「あ、ひなたさんに痴漢している人が・・・」
「「!?」」
すぐさま視線を若葉たちから切り、隣の車両を覗き込む球子と友奈。
「ん・・・・?」
ふと、自分の尻に感じた、誰かが触ってくる感触。
(これは・・・)
さきほどまで、辰巳の匂いで悶絶していた訳だが、その感触で一気に現実に引き戻されるひなた。
そして、その手つきからして、悟る。
痴漢だ。
不愉快だ。実に不愉快だ。
自分の体を他人、しかも、邪な感情をもった者に触られるなど、吐き気がしてならない。
この場合、どうすれば良いのだろうか。
こういう時は、若葉がいち早く気付いてくれるのだが、今はその肝心な若葉はいない。
ならどうする?
どうにかしなければ、これからって時に暗い気分で行かなければならない。
いっその事、ここで痴漢と叫んで―――――
電車の扉が開いた瞬間、ひなたのすぐ後ろにいた男が、扉にむかって投げ飛ばされた。
「うわぁぁぁああ!?」
「・・・・え?」
何が起きた?
ひなたは、そう思うしかなかった。
気がついたら、ひなたの後ろにいた男は、乗客を飛び越えて駅へと放り出されていた。
「いっつつ・・・」
「おい」
そして、ひなたを片腕で抱き寄せる、一人の男。
男は、どうやら顔から地面に突っ込んだらしく、情けなく鼻血を垂らしていた。
「何、ひなたに痴漢してんだ」
ドスの効いた声で、そう脅す辰巳。
「ひぃいいい!?」
「辰巳さん・・・・」
すっかり怯える痴漢の犯人と、そんな辰巳の様子に魅入ってしまうひなた。
「すいませーん!ここに痴漢がいまーす!」
そして、辰巳が、駅員に向かって叫ぶ。
それを聞きつけた駅員たちが、慌てて逃げようとする男を捕まえて、どこかへ連れて行った。
「・・・・」
「大丈夫かひなた?」
「え、あ、はい・・・ありがとうございます」
電車の扉が閉じて、電車が出発。
相変わらず、二人は密着したまま。
ただ、二人の雰囲気は、先ほどまでとは違っていた。
ひなたは、辰巳が自分の為にしてくれた事に胸を無意識にときめかせ、辰巳は、ひなたの辛そうな顔を見た瞬間に感じた激情の余韻に浸りながら、次の駅を待った。
「ああ。痴漢で辛そうな顔をしている少女を助ける男子。まさしくお姫様と王子様・・・・えへへ・・・」
「おいあんず!よだれが口からたれてるぞ!?まるっきり変態に見えるぞ!?やめろ!」
「そうだよアンちゃん!まわりの視線がとても痛い事になってるよ!?」
そんな二人の様子を、興奮しきった様子でビデオカメラに収めている杏と、そんな杏と一緒にいる為が、同じ車両に乗っかっている乗客から奇怪な眼で見られている事に半ば顔を青ざめさせている球子と友奈。
「んあ・・・乃木さん・・・」
「んん・・・千景・・・・」
一方で、こっちは全く持って危険な雰囲気に入りかけている若葉と千景。
互いの眼はとてもとろんとしたものになっており、一歩間違えれば一線を超えそうな程に呆け切っている。
当然、二人はこの興奮の正体をしらないし、経験も無い。
故に、どうにか二人はギリギリの所で理性を保っているが、それも長くは続かないだろう。
(千景・・・こんな顔になって・・・・って、駄目だ駄目だ、これ以上は踏み込んだら絶対に戻れなくなる!)
(乃木さん・・・可愛い・・・・・って、何を考えているのよ私は!?よりにも寄って乃木さんにこんな気持ちになるなんて!)
「おい、そろそろ止めた方が良いんじゃないかあれ?」
「え?どういう事?」
その様子に、顔を引き攣らせている球子と何か分かっていない友奈。
そこで、電車が止まる。
「あ!?二人がおりますよ!急いで急いで!」
「わわ!?待ってよアンちゃーん!」
「おい二人とも!?おい、若葉に千景!変な雰囲気に飲みこまれてないで降りるぞ!」
「はッ!?あ、ああ分かった!」
「すぐ行くわ・・・・!」
大慌てで二人を追いかける一行。
「?」
「どうかしたんですか辰巳さん?」
「いや、誰かに付けられている気がしてな・・・」
「あらあら・・・」
ふい、と後ろを向いたひなた。
そこにいるであろう者たちに、顔でメッセージを送る。
――――後で覚えておいてくださいね?
それはしっかり伝わっていただろう。
「ひぃいい!?今、ひなたがこっち見ていなかったか!?」
「これは、もうバレてるんじゃないか?」
「なんだか後が怖いわ・・・」
「あ、アンちゃん、なんだかヒナちゃん、怒ってるみたいだし、今日はこれぐらいにして帰った方が良いんじゃ・・・」
「いいえ!最初から最後まで全部見ます!もちろん!寮につくまで!」
『ええ・・・』
もはや杏の暴走は誰にも留められない。
さらに若葉と千景は電車での一見でなんとも気まずい雰囲気になっている。
さらに、そもそもからして戦場に活きるタイプである辰巳に加えて巫女故か感の鋭いひなたが、五人の尾行に気付かない訳が無い。
だからこそ。
「あらあら、帰らないみたいですね。これは後で『お仕置き』が必要かもしれませんね」
「どうする?いっその事水攻めにでもするか?」
「
「おう・・・」
ひなたの黒い部分を垣間見た気分だった。
それはそうと、水族館に到着する辰巳とひなた。
「おお、混んでるな」
「休日ですからね」
その多さに思わず感嘆し、二人は受付でペアチケットを使用。中に入っていく。
付録としてストラップを貰った。
イルカのストラップで、赤と青の二つである。
「わー、可愛いですね」
「俺としてはペンギンが良かったがな」
「ペンギンがお好きなんですか?」
「水の中において、あれほど泳ぎの得意な鳥はいない」
「なるほど」
中は、意外と野外が多かった。
勿論、室内のものもあるが、それ以前に、ふれあいというものを目的とした体験が多かった。
例えば、一面透明のボートに乗って、イルカと触れ合う透明ボートイベント。
現在においてこれほど一押しのものはないらしく、さらに、こういうのは世界唯一らしい。
「わあ、見てください辰巳さん!」
「おお!」
ボートの下をイルカが通り過ぎる。
それに年相応にはしゃぐひなたと辰巳。
さらに、イルカが水面から顔を出し、ボートへ近づいてくる。
ひなたが、イルカの頭を撫でる。
「辰巳さん、イルカの肌って意外とすべすべですよ!」
「どれどれ・・・・お、本当だな」
ひなたに誘われ、辰巳も頭を撫でてみる。
なるほど、確かにすべすべだ。
次はアザラシの餌やり体験だ。しかも説明付き。
辰巳が、魚をアザラシに近付ける。
するとアザラシは、それをぱくっと加えこみ、一気に込みこんだ。
「おお・・・」
「はい、私からも・・・・わあ・・!」
ひなたからの魚も食べるアザラシ。
その様子に、更に興奮するひなた。
「辰巳さん!次はあっちに行きましょう!」
「お、おう!?なんかいつもよりはしゃいでないか!?」
「良いじゃないですか!」
ひなたに手を引っ張られ、連れていかれる辰巳。
その様子を、遠くで観察している一同と言えば・・・・
「ああああ!良い笑顔、良い笑顔です二人とも!そのまま距離をどんどん近づけて、最後には・・・ああああ!!」
「二人ともすっごく楽しそう・・・・いいなあ!」
「なんかなちゅらるにイチャイチャしてないかあの二人?」
「なんだか羽目を外してるわね・・・」
「ひなたが楽しそうで何よりだ」
もはや周囲の目を気にせずに興奮しきっている杏、二人の様子に羨ましがる友奈、引いている球子、同様の千景、微笑む若葉。
それぞれが三者三様で二人の様子を見守っていた。
あとでとんでもないお仕置きを喰らうともしらずに。
それは置いておいて。
ふと友奈の腹が鳴る。
『・・・・』
「あ、あはは、お腹すいちゃったみたい」
「そういえばもう昼だな・・・・」
「こんなこともあろうかと、お弁当持ってきましたよ」
「お、気が利くなあんず!」
「ま、仕方が無いわね」
五人は、ここは欲求に従い、しかし二人の後はしっかり
アシカプール観覧席にて、二人並んで昼食を取る辰巳とひなた。
「弁当任せてしまったが、持ってきたよな?」
「ええ、ぬかりありませんよ」
と、ひなたの持っていたバックの中からタッパが二つほど。
「軽くサンドウィッチにしてみました」
「お、美味そうだな」
「どうぞ」
ふたを開け、中身を辰巳に差し出すひなた。
一つを取り出した辰巳は、それを一口かじる。
「うん、美味い!」
「それは良かったです」
レタスによるシャキシャキ感、卵の味わいに、トマトの甘味が重なり、ドレッシングに味付けが、絶妙なうまさを生み出している。
そのうまさに、辰巳は感嘆するほか無い。
「若葉ちゃん以外に作ったのは初めてなので、気に入ってもらえたようで何よりです」
ひなたは心底嬉しそうに答える。
「ひなたは食わないのか?」
ふと辰巳は、ひなたは全く食べていない事に気付いた。
「あ、ええ。食べますよ」
ひなたは、すぐにサンドウィッチの一つを手に取り、食べ始める。
その様子は、当然、杏たちに見られている訳で。
「二人仲睦まじくお弁当を食べる、ああ、恋の物語なら定番のシーン!これは見所です!」
「あんず!痛い!周りの視線が痛いからもう少し落ち着いてくれ!」
「そうだぞ杏、これでひなたに見つかったりしたら・・・」
「もう見つかってると思うのだけれど?」
「ヒナちゃん、嬉しそうだね」
勇者一行、昼食にそれぞれの弁当を食べながら二人の様子を見ている。
杏に至ってはとうとうビデオカメラまで取り出してきた。
「しかし・・・・」
若葉は、二人仲良く話す辰巳とひなたを見る。
「ひなたが楽しそうで良かった」
ここでひなたを不機嫌な事にさせるような事をすれば、すぐさま斬りかかるところだが、今の所問題ないようだ。
ふと、昼食を終えたであろう二人が立ち上がる。
「おっと」
「追いかけますよ!」
もの凄い勢いで昼食を食べ終えた杏が立ち上がる。
それに苦笑いしながらも、一行は二人を追いかけた。
ただ、この時、彼女たちどころか、辰巳とひなたも気付かなかった。
「へっへっへ、カワイ子ちゃんみっけ♪」
危険な魔の手が迫ってきている事に。
次回『波乱のデート 後編』