足柄辰巳は勇者である   作:幻在

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邪竜の決死戦

香川県高松市。

そこは、四国有数の温泉郷が存在する都市だ。

そこにある最高級の旅館にて勇者一向は泊まっていた。

「ああぁぁぁぁぁあああぁああああああぁああああ、生き返るぅぅぅぅぅぅぅううううぅぅう~~~」

あまりにも緩み切った顔をする若葉。

「もう、オジサン臭いですよ若葉ちゃん」

そんな若葉に苦笑するひなた。

「ああ!?もう若葉が入ってる!?一番風呂狙ってたのに!」

「球子がぁぁあああ、『旅館探検だ!』といってぇぇええ、走り回ってたからだろぉぉぉぉおお?」

「うわ!?溶けかけの飴みたいな顔をしてる・・・・しかし、三番目はタマのものだ!とぉう!」

「湯舟に飛び込んじゃダメだよタマっち先輩~」

ざっぱーんと湯に飛び込む球子。

「タマちゃんは相変わらずだな~」

「騒がしいわね・・・・」

さらに友奈や千景もやってくる。

 

 

勇者としてのお役目を果たしていく、辰巳、若葉、友奈、千景、球子、杏の六人に、巫女として一緒に暮らすひなたたちは、大社から休養として、この旅館で過ごす事を許されたのだ。

 

 

 

 

 

ふと、若葉はひなたが男湯・・・辰巳のいる方向を見ている事に気付いた。

「・・・ひなた?」

「ん、なんですか若葉ちゃん?」

「どうした?さっきから辰巳の方ばっかり見ているが・・・」

「いえ、特に何もありませんよ?」

「そうか・・・・」

 

最近、ひなたの様子がおかしい。

 

辰巳の事を避けているように見えるのだ。

否、そういう訳ではないのだが、辰巳を見ては、すぐに辛そうな顔をして視線を逸らすのだ。

何があったのか知らないが、辰巳と何かあったのか。

それにしては辰巳は普段通りだ。

若葉は、そんな親友の様子に、心配せざるを得なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな辰巳であるが―――――思いっきり沈んでいた。

いや、気持ちがではない。湯に思いっきり沈んでいるのだ。

これは一種のトレーニングだ。

水の中でなら、重力という邪魔はなくなり、体の隅々まで意識を向けられるのだ。

それによって、体の内部の筋肉の動きや血流を感じる事が出来るのだ。

そうする事によって、自身の集中力を高める事が可能。剣の動きにもキレが増す。

しかし――――一瞬の雑念が入り、辰巳は湯から出た。

「はあ・・・・」

その理由は、最近のひなたの様子についてだ。

「声音がおかしいし、何かに怯えているようにも見えたな・・・・」

火野に羨ましがられるような所に来ている訳だが、そんな気分になれず、辰巳はひなたの事を案じていた。

まるで、自分に見える何かに怯えるかのように。

今まで、ひなたにその様な事をした覚えはない。

もしそうなら、すぐに謝っている筈だ。

だというのに、それには一切の心当たりがない。

 

唯一、自分と彼女との違い。

 

「神託・・・か・・・」

それで何を見たのかわからないが、おそらく、自分の身に何かあったのだろう。

何か、恐ろしいものが。

 

だとしても、辰巳は戦うのをやめない。

 

「ひなたにそんな風にさせてしまう何か・・・・」

一つの決意を込めて、辰巳は、夜空を睨みつける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

風呂から上がって。

若葉たちと合流した辰巳。

その後、あまりにも豪勢な食事を頂き、自分達の部屋に戻ってきた所で。

「温泉も入ったし、ご飯も食べたし・・・でも寝るにはまだ早いな。ゲームでもするか?」

ふと球子がこういった。

「ゲームか・・・・お前ら何を持ってきた?」

「私は将棋盤を持ってきました」

「おお、ヒナちゃん渋いね。私は王道のトランプ」

「ゲームなら、そこにあるわ」

千景が指さす先には据え置きの最新型ゲーム機がおかれていた。

「俺はすごろくを持ってきた。妹特製のな」

「へえ、火野ちゃんが作ったすごろくなんだ。どれどれ・・・・」

全員が、辰巳の広げたすごろくを見た。

「まだ中身は見てないんだが、なんでも王様ゲームと合体したような奴で、このカードを・・・・どうした?」

気付くと、一同がすごろくを覗き込んだまま固まっていた。

「・・・・・なにこれ?」

「あわわわ・・・」

「こんな恥ずかしいのできるかぁあぁあ!」

「流石に・・・これは・・・」

「なんてものを作ったんでしょう、あの子は・・・・」

「これは・・・・うむ・・・・」

全員が戸惑っている。

まだ盤面を見ていない辰巳には訳が分からない。

ふと、持っていたカードの束の一部を落としてしまい、それを拾おうとしたら、そこに書いてある事に硬直した。

 

 

曰く『一番の人に自分の性感帯を触らせなさい』

 

 

 

 

なんとも生々しい内容だった。

「――――んなの出来るかぁぁぁぁぁあああ!!!!」

辰巳の怒号が旅館に響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遊び疲れて、勇者一同が寝静まった頃。

「まさか若葉の弱点が耳だとは・・・・」

トイレで目が覚めてしまった辰巳が、部屋への帰りに廊下を歩いていると、ふと目の前に人影がある事に気が付いた。

その身長や体つきからして、辰巳はその人物の名前を呼んだ。

「どうしたひなた?」

「少し、寝付けなくて」

その人物はひなただった。

「そうか」

「・・・・・」

ふと、ひなたは辰巳の顔をまじまじと見るなり、すぐさま辛そうな顔になって顔を逸らした。

「・・・・どうした?」

「いえ、なんでもありません・・・」

「・・・・なあ、俺に出来る事なら、なんでもするが・・・・」

辰巳がそう言うと、いつもはここですぐに返答を返すひなたが、下を向いたまま、黙った。

「・・・・ひなた?」

「・・・・でしたら・・・・」

ひなたが何かを呟いたと思ったら、いきなり辰巳にぎゅっと抱き着いた。

「え!?ひなた!?」

「・・・・・・約束してください」

ひなたの体は、辰巳が見た事無いほどに震えていた。

「次の戦いは、必ず無事に帰ってきてください・・・・・!!」

嗚咽の混じったその声に、辰巳は一瞬目を見開くと、すぐに目を細めて、ひなたを抱きしめる。

「ああ、約束する」

泣いてるであろうひなたを、泣き止むまで抱きしめ続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、次の襲撃が始まった。

「多い・・・・」

辰巳が、丸亀城の屋根から敵集団の姿を捉えていた。

その数は、今までの数十倍だ。

目算しただけでも千以上。

「これは慎重に・・・・」

「待って下さい若葉さん!」

「ッ!?」

杏の声が聞こえそちらに視線を向ける。

そこでは、若葉が先に敵集団に突っ込んでいく姿が見えた。

「あの馬鹿・・・!」

すぐさま若葉に続いて敵集団に突っ込もうとしたが、そこで敵の動きがおかしい事に気付いた。

「あれは・・・!?」

バーテックスの集団が、突っ込んできた若葉を取り囲むように動いているのだ。

「まずいッ!」

敵の意図に気付く辰巳。

「皆、ここままじゃ若葉が危ないぞ!」

石垣に降りる辰巳。

「そうも言ってられないわ」

「何を言って・・・・」

「辰巳さん、あれを」

杏が指さす先。

そこで、集団の一部が、神樹に向かって侵攻していた。

「な、あいつら・・・・!?」

元々の数が異常であるために、その一部は、一部といっても本来なら勇者全員で取り掛からないといけない数だ。

「どうする。あのままじゃ・・・・」

「友奈、来いッ!」

「分かった!」

球子が何か言う前に辰巳と友奈が若葉たちの方へ行く。

「お前らはあの別動隊を頼む!俺たちは若葉の所に行く!」

「分かりました!気を付けて!」

「分かった。タマに任せタマえよ!」

敵に突っ込んでいく辰巳と友奈。

「後ろにいろ!」

「分かった!」

友奈が辰巳の後ろに回ったのを確認した辰巳は、両手で持った剣を前に突き出す。

「対天剣術『猪突(ちょとつ)』ッ!!」

砲弾の様な勢いでバーテックスの群れを中を突っ切っていく二人。

「ぐッ!?」

だが、勢いは長くは続かず、何十体目かで、剣が突き刺さり、威力を殺されてしまう。

しかし、すぐ後ろの友奈がその突き刺さったバーテックスを殴り殺し、前に出る。

「急ごう!たっくん!」

「ああ!」

そこからは、群れの中を半ば強引に突っ切っていく辰巳と友奈。

その視線の先。

若葉の刀を持つ右腕、主に右肘にバーテックスの一体が噛みつく。

「あ・・・ぐぅうぅううう!!」

焼けるような激痛が走っているのだろう。若葉の表情が苦悶に歪む。

「若葉!」

辰巳が叫ぶ。

だが、若葉の表情はすぐさま憤怒の表情へと豹変する。

「どれほどの痛みを、苦しみを、お前たちは罪なき人々に与え続けたぁぁぁあああ!!!」

絶叫、そして、刀を左手に持ち変え、振り回す。

だが、怒りに溺れた彼女は、自らの背後に迫る、敵の一体に気付かなかった。

「さ、せ、る、かぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああぁあああ!!!」

辰巳が、剣を槍投げよろしくぶん投げた。

その剣が、若葉の背後にいたバーテックスを刺し貫く。

「ッ!?」

そのまま一気に若葉の元へ走る。

バーテックスが、武器を無くした辰巳へと群がっていく。

だが、辰巳はその近付いてきたを殴り飛ばして強引に若葉の元へ向かう。

「舐めるなぁあぁあぁああああ!!!」

殴って殴って殴りまくって、無理矢理活路を開く。

「辰巳、友奈、なん―――」

「この馬鹿がッ!」

「あぐ!?」

困惑する若葉を殴り飛ばす辰巳。

「もう少し回りの事を考えて動け!この馬鹿ッ!」

「ッ・・・すまない・・・」

「ハア・・・・説教は後だ」

投げ飛ばした剣を回収する辰巳。

「若葉ちゃん!たっくん!」

友奈が叫ぶ。

いつの間にか、撤退不可な程に敵に周りを囲まれていた。

「友奈・・・・」

若葉は、友奈の姿を見る。

その姿は、群れの中を無理矢理にも突っ込んだ為か、ボロボロだった。

それは辰巳も同じ。

「・・・・死ぬなよ」

「お前が言うな」

「若葉ちゃんもね」

背中に合わせに敵を見据える三人。

敵が襲い掛かってくる。

それに対して、三人は迎撃を始める。

だが、流石に数が多いのか、体にどんどん疲労が溜まり、それによってダメージが蓄積されていく。

「くそ!数があまりにも・・・・」

悪態を吐きながらも敵を斬り倒していく辰巳。

ふと、敵の攻撃を避ける為に飛び上がった。

その時、辰巳は見た。

 

壁の方向から、六つの巨大な砲台のようなものが、砲口を赤く光らせ、まっすぐにこちらを狙っている事を。

 

そしてそれは―――――一つずつが勇者全員を狙っている事も。

 

猛烈に嫌な予感が走り、辰巳は叫ぶ。

「避けろみん―――――」

だが、遅かった。

砲弾は放たれ、それが、勇者全員を穿った。

『うわぁぁぁぁぁああああ!!』

悲鳴が、轟く。

全員が宙を舞い、血を巻き散らす。

全員、直撃こそしていないが、それでも、爆発によって吹き飛ばされていた。

その中で、ただ一人、動ける者がいた。

 

辰巳だ。

 

しかしその体は爆発の影響でボロボロになっている。

それでも、辰巳の体は動いた。

地面に落下する際、どうにか着地に成功する辰巳。

砲弾が放たれた瞬間、無理矢理、迎撃を図ったのだ。

結果、他の全員よりは比較的軽傷で済んだのだ。

「ぐ・・・・皆!」

同じように砲台に撃たれた味方を探す。

吹き飛ばされている間も、味方の落下地点は見えていた。

あの様子から見るに、直撃はしていない上に誰も腕が吹き飛ぶとかの重傷は負っていないが、それでも、あの砲撃は強力だった。

さらに、その落下地点に敵が群がっていく。

「ッ―――!!」

辰巳は、走り出す。

途中で襲い掛かってくるバーテックスを斬り殺し、仲間を探す。

「若葉ぁあぁ!!」

まず最初に若葉の元へ駆け寄る。

「若葉――――ッ!?」

そして、絶句した。

体中から血を流し、勇者装束がところどころ破れている。

死に至るほどの致命傷は受けてはいないが、それでも重傷である事には変わりはない。

それに歯を食いしばるも、辰巳は若葉を抱えて、他の仲間の元へ飛ぶ。

 

友奈、球子、杏、千景。他の四人も、若葉同様、重傷だった。

 

 

 

 

敵の集団から遠く離れた、神樹に近い場所で、五人を降ろす辰巳。

「動けるのは俺一人か・・・・」

砲撃をどうにか防げたのは辰巳だけ。

他の五人は、動けない程の重傷を負っている。

「た・・・・つ・・・・み・・・・さ・・・・・」

杏が、朦朧とする意識の中、彼の名を呼ぶ。

それに、辰巳は微笑み、杏の頭を撫でる。

「あ・・・・・」

「ここは、怖くても頑張り所だろ」

立ち上がり、辰巳は笑う。

右手で背中にある長剣を握る。

そして左手を上げ、一言。

 

 

 

「またな」

 

 

 

そして、辰巳は走り去っていく。

その後ろ姿に、杏は手を伸ばすも、その前に、意識が闇に沈んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まだ、大量にいる敵集団の正面に立つ辰巳。

そして、自らのもつ西洋長剣を、地面に突き立てる。

「よくもやってくれたな・・・・」

若葉、友奈、球子、杏、千景。

誰もがこの三年間の日常を共にした、大切な仲間たちであり、友達だ。

 

だからこそ、辰巳は怒っていた。

 

この怒りを、どこにぶつければいい?簡単だ。

 

 

 

その元凶へとぶつける。

 

 

 

「悪いな、火野」

火野への謝罪を口にして、辰巳は、空に向かって、熱い魂で叫ぶ。

 

 

それは天に逆らいし、幻想の魔獣。

空を制し、炎を選んだ、力の象徴の一体。

神々に牙を剥きし、邪悪なる竜。

討たれてもなお、その憎悪を抱き続ける、その竜の名は――――

 

 

「来やがれ、ファブニールッ!!!!!」

 

その瞬間、辰巳の持つ剣、滅竜剣バルムンクの柄の宝石が緑色に輝きだす。そして、それはとてつもなく強大な光の流れとなって、周囲に巻き散らされ、流れ出す。

それは、溢れんばかりの生命の奔流。

それが辰巳の周りに渦巻き、そして、辰巳の背後に突如として巨大な灰色の竜が出現する。

圧倒的衝撃波を巻き散らし、その竜は、徐々に辰巳にその頭を下ろしていく。

次の瞬間、竜は粒子となり、辰巳の体に纏われていく。

 

 

辰巳の切り札。

それは、幻想の邪竜『ファブニール』を鎧として纏う事。

北欧神話、またはゲルマン神話、ニーデンベルグの指環などに登場する、邪竜。

辰巳の持つ剣に存在するファブニールそのものを、鎧として体現するのが辰巳の切り札。

身体能力が大幅に強化され、友奈が使う()()()()()()()を凌ぐ膂力を得る事が出来る。

さらに、鎧を纏っている間は、例え傷を受けたとしても、その傷は竜の再生力によってすぐさま治る。

 

 

それはまさに、邪竜をその身に纏って、戦う力。

 

 

辰巳の勇者装束の上から、灰色の鎧が纏われていく。

さらに、辰巳の右手にある剣が一回り大きくなり、細身の長剣から大剣へと変貌させていた。

辰巳は鎧纏われた自分の姿を見る。

不格好なほどに、頑丈で頑強な鉛色の鎧。

頭部は竜を模したメイルで纏われ、視界が急激に澄んでいく。

そして感じる。自分の力を強制的に引き上げてくれている事を。

 

これなら、守れる。

 

だが。

「悪いな、ひなた」

剣を構える辰巳。

「約束、守れそうにない」

次の瞬間、辰巳の姿が消える。

そして、轟音が鳴り響き、大量のバーテックスが、一太刀の元に斬り殺されていた。

相手が人間なら、おそらく呆然としていただろう。

だが相手は恐怖を知らない化物ども。

先ほどの砲撃であっても、味方の犠牲を前提とした砲撃。

敵は、どうやらこちらの戦法では通用はしないらしい。

だが、それでも引くわけにはいかない。

「覚悟しろよ、化物ども」

辰巳は剣を振りかざす。

 

「ここから先は―――――通さないッ!!」

 

地面を蹴り、飛び上がる辰巳。

直線状にいるバーテックスたちを斬り捨てていく辰巳。

さらに四方八方からやってくるバーテックスを次々に斬り捨てていく。

剣を一薙ぎするだけで、数十という数が消し飛ぶ。

だが、それでも敵は襲い掛かってくる。

「―――ッ!?」

その中で、敵が引いていく。

「まずいッ!」

バーテックスが、融合し始めたのだ。

このままでは進化体が形成されてしまう。

「させるか――――」

空中で融合を始める敵に突撃しようと飛び上がった直後、辰巳が六つの爆発と共に吹き飛ばされる。

「ぐあぁああああぁああああ!!」

体を焼けるような激痛が襲う。

そして、地面に叩き付けられる。

「ぐ・・・あ・・・・」

精霊化のお陰で、大きなダメージには至っていない。

だが、それでも出血が激しい。

精霊化によって、防御力と耐久力も大幅に強化されているため、大体のダメージは軽減されたのだろう。

だが、それでもダメージが大きい事には変わりはない。

しかし、竜の再生力によって、傷は癒えていく。

「ぐ・・・う・・・・」

あの砲撃を放ったのはおそらく、壁の方向、というか壁の上にあった、あの砲台の所為だろう。

進化体を形成するのを見越して、あらかじめ用意していたのだろう。

「くそ・・・そういう仕組みか」

そして、直撃を受けてわかった、砲弾の中身。

 

 

あの砲台は、()()()()()()()()()()()()()()()()を使っているのだ。

だからこそ、あれほどの破壊力を発揮できた。

この間の矢を飛ばしてくる敵の放つものとは訳が違う。

あれは連射力と貫通力を重視したもの。対してあの砲台は威力と破壊力を求めた、『対城兵器』だ。

それを六つ同時に喰らって、無事で済むわけが無い。

 

だが、それでも生きている。動ける。

 

 

戦う事が出来る。

 

 

まだ痛む体を起こす辰巳。

「ぐ・・う・・・・」

そして、空を見上げる。

そこには、ほぼ全てのバーテックスが、それぞれの形へと進化した後だった。

融合したから数は減っているが、それでも、まだまだ数はいる。

もはや、絶望的な状況だろう。

 

 

しかし、それでも辰巳は諦めない。

 

 

まだこの四国には、沢山の人たちが生きている。

生きたいと願う人々がいる。

日常が生きている。

ただ当たり前の日常が、そこにある。

辰巳が守りたいものがそこにある。

 

 

だからまだ戦える。戦う事が出来る。

「まも・・・・るん・・・だぁッ!!」

飛び上がる辰巳。

進化体の一体を斬り捨て、次へ飛ぶ。

次の進化体に向かって袈裟懸けに剣を振り下ろす。しかしそれで斬れたのはほんの一部分。

すぐさま斬り返して追撃しようとしたが、突然、腹に何かが突き刺さるような激痛が走った。

背後から、進化体の一体が矢を無数に放って来たのだ。

それが辰巳の背中から雨のように襲い掛かる。

「ぐああぁぁあああ!!?」

激痛に悲鳴を上げる辰巳。

だが、それでも、目の前に敵を執念で斬り殺す。

「守るんだァァァァアアアッ!!!」

次の敵を斬り裂く。

「絶対にお前ら化物如きに壊させるものかぁぁぁああ!!」

血が撒き散らされる。

それは、全て辰巳の血。

だが、それでも辰巳は止まらない。どれほど傷付こうと、死に近付こうとも、辰巳は戦うのをやめない。

胸の中で燃える激情のままに剣を振るう辰巳。

時には吹き飛ばされる事もあった。撃ち抜かれることもあった。

サソリの様な敵に、右肩を穿たれる事もあった。

それでも辰巳は止まらない。止まる訳にはいかなかった。

「化物には分からねえだろうな!この力は!」

剣を振るい、敵を薙ぎ払い、斬り裂き、討ち捨て、断ち切る。

「ただ奪うだけのお前たちなんかに理解できる訳がねえ!守るべきものを持つ奴だけが持つ力だ!そんなものを持たない化物如きに、俺は負けないッ!!」

ただの全力で剣を振るい続ける辰巳。

突如として、壁の方向から砲弾が六つ飛んでくる。

辰巳は、その砲弾を全て斬り飛ばす。

「何遠くから見物してんだ――――」

地面に降り立つ辰巳。

大剣を両手で持ち、剣の正面に構える。

すると、突如として剣から眩い光が放たれる。

それは、暴力的に暴れ狂う、生命の奔流。

 

邪竜の持つ、圧倒的生命力。

 

「悠々と見てんじゃねえよ―――――――化物風情がッ!」

剣を振りかざす辰巳。

 

「我こそは、邪悪なる竜である―――」

 

それは、幻想の邪竜の放つ、咆哮(ブレス)

 

「今こそ、天に我が怒りを示し、天に居座る神を撃ち落とす――――」

 

邪竜の怒りが、解き放たれる。

 

「―――()えろ『怒り狂う邪竜の咆哮(ファブニール・ブレス)』ッ!!!」

 

直線状に放たれたその光の激流は、壁の上に構えられた固定砲台の右端を破壊する。

「おおおおおおぉぉぉぉおおおおぉぉおおおおおおおッ!!!」

絶叫する辰巳。そのまま左に向かって薙ぎ払う。

光の激流は左へと方向を変え、全ての砲台を、その周辺にいたバーテックス全てを消し飛ばす。

薙ぎ払った後、辰巳は、杖代わりとする様に剣を地面に突き立てた。

 

やはり消費が激しい。

 

だが、まだ戦える。

敵はまだ、星の数ほどいるのだから。

「ハア・・・ハア・・・・ハア・・・・」

項垂れ、地面に滴る血を見る。体中から、再生能力による赤い蒸気があがる。

「・・・・・」

(ああ、そうか・・・・これだったのか・・・・)

ひなたが、怯えていた事は、きっとこれだったのだろう。

「はは・・・・なるほどな・・・・流石に未来の事までは頭が回らなかったな」

笑う辰巳。

 

 

力には、何事においても代償というものが必要だ。

どれほど強力な力であっても、過ぎた力は自らの身を滅ぼし、破滅させる。

それは、辰巳の纏う竜の鎧であっても同じ。

鎧によって異常に強化された身体能力が、自らの体に多大なる負荷をかけ、破壊しているのだ。

強力な再生能力を持っているが、体は人間のまま。体そのものが強化されるのではなく、あくまで鎧が強制的に体を動かしているに過ぎない。だから、鎧の発揮する膂力に、いくら強靭に鍛えた辰巳の体であっても、耐えられないのだ。

だから、すでに辰巳の体の中はぐちゃぐちゃだ。

骨が折れ、内臓が弾け、筋肉が千切れ、血管が破裂し、靭帯が切れ、肺はずたぼろ。

ただ、何故か心臓だけが強靭に動き続けて、激しく体中に血を送り続けていく。

おそらく、これが自身の最終的生命線だろう。

だが、心臓をやられれば――――死は確実。

 

だが、それでも彼は諦めない。

 

大切な少女を守る為に。自分の帰りを待つ、少女の為に。

 

 

少年は、戦う。

 

 

「行くぞ、バァァァテッックスゥウゥゥゥゥウウゥゥウウウウッ!!!!」

進化体の何体かが矢を放ってくる。

その雨の中を突っ切っていく。

矢の雨を、『縄張』によって叩き落していく。

体中の再生したばかりの骨がバキバキと音を立てて折れていく。しかしその直後に竜の再生力によって再生していく。

飛び上がり、敵を斬り殺す。

斬る斬る斬る。

裂く裂く裂く。

断つ断つ断つ。

どれほど速い敵だろうとも、どれほど硬い敵だろうとも、どれほど強い敵だろうとも、どれほど高い敵だろうとも、辰巳は剣を振るのをやめない。

「『怒り狂う邪竜の咆哮(ファブニール・ブレス)』ッ!!!」

竜の咆哮を放つ。敵の数が一気に減っていく。

だが、それでも敵は文字通り星の数だけいる。

それだけでは、全てを喰い尽せない。

「ガァァァァアアァアァアアアアァアアアアッッ!!」

バーテックスの一体を掴み、地面に叩き付ける。

拳でその皮膚を貫く。

片手で剣を振るい、敵を断ち斬る。

ただただ敵を殺す。

全てを守る為に剣を振るう。

守りたい。

ここに生きる人々の日常を、生活を、想いを、今生きている命、これから生まれてくる命、人の未来、人の可能性、前に進む勇気を、その為の場所を。

 

 

 

邪竜は、守りたいと願った。

 

 

だから、邪竜は戦う。

ここに住まう人々の為に、ごく当たり前の日常を壊されてもなお生きる人々の為に、強く、善き者であり続けようとする者たちの為に。

 

邪竜は、戦う。

 

(頼む神樹・・・)

心の中で祈祷する。

また、剣が緑色の光を発する。

三度目の『怒り狂う邪竜の咆哮(ファブニール・ブレス)』だ。

(俺に、全てを守らせて欲しい。救わせて欲しい。その為に、まだ戦わせてくれ)

竜の生命力を解き放つ。

薙ぎ払う。星を喰らい尽くす。

だが、それでも星はその輝きを失わない。

まだ、喰い足りない。

それでも邪竜は飛び上がる。

(まだ持ってくれ)

剣を薙ぐ。

バーテックスの一体に、左足を噛まれる。すぐさま斬り捨て、次の敵に向かう。

(全てを守り通すために)

斬り落とす、斬り殺す。

辰巳は、ただ目の前の存在を斬る。

(仲間を、友達を、家族を守る為に)

足を矢に貫かれる。

腕を斬られる。

爆発を諸に受ける。

意識が何度も途切れる。

だが、それでも――――

「ごふッ!?」

突然の喀血。

体から感覚が失われていく。

さらに、視界が赤く染まり、鼻から血を流し、耳から血を噴き出す。

それは、外傷的ダメージを受けたにしては、異常な症状。

 

これは、毒。

 

いつの間にか、撃ち込まれていたのだろうか。敵も味な真似をしてくれる。

その毒が、知らぬ間に辰巳の体を蝕んでいたのだ。

体が前に倒れていく。

体に力が入らない。感覚が抜けていく。

心臓の鼓動も、いつの間にかどんどん小さくなっていった。

だんだんと、眠くなってきた。

いい加減疲れた。寝たい。

このまま倒れて、休みたい。

痛いのは嫌だ。苦しいのは嫌だ。辛いのは嫌だ。

誰かが死ぬのを見るのはもう嫌だ。

だったら、目を閉じれば、もう見なくて済む。

耳を塞げば、何も聞こえなくなる。

悲鳴も、卑しい声も、助けを求める声も。

自分を苦しめる声は、聞こえなくなる。

なら、それで良い。

 

もう、疲れた――――

 

 

 

そのまま、地面に倒れ込む―――――――

 

 

 

 

ガキィンッ!!!

 

 

 

 

――――事は無かった。

 

剣を、地面に突き立てたのだ。

 

もう、動かない筈の体が、動く。

痛みに悲鳴をあげる体が、動く。

重い傷に軋み上げる体が、動く。

動かす度に傷付く体が、動く。

毒で犯されている筈の体が、動く。

折れた骨によって皮膚を貫かれた体が、動く。

 

もう疲れた。痛い、辛い、苦しい。

だから戦うのをやめる。

そんな、全力で戦って、力尽きて、誰にも責められないような事を成し遂げた男の心には―――――

 

 

 

 

 

そんなやすっぽい諦めは微塵も無かった。

 

 

 

(それ・・でも・・・・・!!)

痛くても良い。辛くても良い。苦しくても良い。

どんな苦痛を負う事になっても、どんな苦難をその身に受けようとも、決して、負けたくない。

醜くても、卑しくても、どれほど汚らわしくても構わない。

自分に、戦う力がある限り、抗い続ける。

最悪の運命を捻じ曲げて見せる。

誰の為でもない、自分の為に。そして――――

(ひなたを・・・・守る・・・・為に・・・・!!!)

いつだって真っ先に思い浮かぶ、少女の為に。

 

 

(俺に、化物を討ち倒す力を――――ッ!!!)

 

 

例え、『(ASH)』になろうとも。

 

 

邪竜(たつみ)は剣を掲げる。

心臓がどれだけ弱ろうとも関係無い。

体がどれほど傷付いていようとも構わない。

視界が真っ暗でも構わない。

目が見えないのなら鼻で探す。

鼻が利かないのなら耳で探す。

耳が聞こえないのなら口で探す。

口で分からないなら、体で探す。

体で探せないなら、己の感で探す。

腕が使えないなら足で、足が使えないなら頭で、ありとあらゆる手段で敵を殺す。

剣がズタボロになって、折れたとしても、戦うのを絶対にやめない。

この世の全てから逃げたくない。負けたくない。

何があろうとも見つけ出して殲滅し尽くす。

ただ、己の全てを掛けて、目の前の敵を討ちたいだけ。

 

たった一人、愛しいと思った少女を守りたいだけ。

 

だから、竜はその顎を開け、空に向かってその叫びを放つ。

「思い知れ、化物ども。これが、俺の、俺たちの『気合』と『根性』と――――」

剣が、輝きだす。まるで、辰巳の想いを表しているかのように。

竜の生命力と、自身の血を撒き散らして、辰巳は剣を振り下ろす。

 

 

「『魂』だぁぁぁぁぁぁあああぁぁぁああああああぁああああぁぁぁぁああああああぁぁああああぁあぁああああああああああああああああッッッ!!!!!」

 

 

 

 

邪竜は、天に向かって咆えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハア・・・・ハア・・・」

まだ治りきっていない体に鞭を打ち、若葉たちは、血みどろの戦場を歩く。

樹海化はまだ解かれていないが、敵の姿は見えない。

「ハア・・・ハア・・・ハア・・・・辰巳・・・どこだ・・・?」

叫ぼうとしても、その為の体力が無い。

「辰巳さん・・・辰巳さん・・・・!」

「辰巳・・・・どこにいるんだ・・・・辰巳ぃ・・・・!」

重傷の杏に肩を貸しながら、辰巳を探す球子。

「足柄さん・・・・・どこにいるの・・・?」

大葉刈を杖代わりに、同じように辰巳を探す千景。

「たっくん・・・・たっくん・・・!・・・どこにいるの・・・!」

重い右足を引きずるように歩きながら、辰巳を探す友奈。

あまりにも血が飛び散りすぎていて、そこから辰巳がどこにいるのかが分からない。

半壊したり、影も残さない程に破壊された建物。

穿たれたり、クレーターの出来た地面。

爆ぜたかのように断ち切られた神樹の蔓。

そして、おびただしい程の、血。

だが、友奈は、見つけた。

半壊した建物。

その壁に、寄りかかるように座っている、辰巳の姿を。

「たっくん・・・・!」

その姿を捉えた友奈は、自分の体の事など忘れて急いで辰巳の元へ向かう。

「すごいよたっくん・・・・!」

友奈は、彼を誉める。

しかし剣を抱えるように座る彼は、反応を示さない。

「あの数の敵を・・・・一人で倒しちゃうな・・・・ん・・・・て・・・・・・」

友奈の言葉が、だんだんと小さくなっていく。

辰巳が、まるで答えてくれないのだ。

座ったまま、微塵も動かない。

友奈の歩く速さも、だんだんと遅くなり、そして、距離がたった三メートルのところで、立ち止まった。

「友奈、見つけたのか・・・!」

友奈の話し声を聞きつけ、やってくる若葉たち。

だが、友奈は反応しない。

「・・・・・友奈?」

「高嶋さん?」

反応しない友奈。

彼女は、ただ、辰巳の方を見ていた。

怪訝に思った球子と杏は、友奈の見る、辰巳の方を見た。

「「――――」」

そして、絶句した。

「あ・・・・ああ・・・・」

「嘘だろ・・・・おい・・・・・」

二人は、狼狽えた。

千景も見た。彼女も、口元に手を当てた。

「・・・・・ひどい・・・」

そして、若葉も見た。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・辰巳?」

そこにいたのは―――――見るも無残にボロボロになった辰巳の姿があった。

体中を血で染め、勇者装束は大部分が破れており、伸ばされた左足は太腿の部分の肉が骨が見えるほどに引き裂かれており、だらりとした左腕は今にも千切れそうな程に肉がなくなり、腹には穴が空いて、剣を抱えられるように置かれた右腕の肩には穴が空いて、皮膚は裂けていた。

頭からも血を流し、その顔面全てを赤く染めていた。

 

しかしその表情は―――――笑っていた。

 

まるでやり遂げたと言わんばかりの誇らしげな笑み。

「・・・・何・・・笑ってるの・・・・」

友奈は、震える声で呟いた。

「こん・・・・なの・・・・みとめない・・・よ・・・・?」

「そうだぞ・・・たつみぃ・・・・こんな所で・・・・くたばるような・・・タマじゃ・・・ないだろ・・・・?」

球子も、引きつった笑みで呟く。

「そう・・・・ですよ・・・・・・こんな・・・・・ところで・・・・ねむってる・・・・場合じゃ・・・ないですよ・・・・?」

杏も、引きつった顔で呟く。

「・・・・ッ」

千景は、見ていられず、目をそらした。

あまりにも、酷過ぎる。

「おい・・・・・辰巳・・・・返事をしてくれ・・・・なあ・・・・・辰巳・・・・」

若葉は、信じられないとでも言うように、辰巳に歩み寄る。

「嘘だと・・・いってくれ・・・・たのむから・・・・・・おねがいだから・・・・うそだって・・・いって・・・・」

辰巳のすぐ傍で、膝まづいた。

そして、辰巳の頭に、自分の額を当てた。

「おきてくれ・・・・・たつみ・・・・・」

若葉の目から、涙が零れる。

友奈が、耐えきれずに、泣き叫んだ。

球子も、とうとう嗚咽を漏らしながら泣き、杏も声を押し殺して泣いた。

「こんな・・・簡単に・・・・・・」

千景は、涙を流す事は無くても、ただ、辰巳の姿が恐ろしく、膝をついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

樹海化が解けた時、ひなたが聞いたのは、友奈の天を貫くような泣き声。

酷い恐怖と焦燥感に駆られたひなたは、すぐさま丸亀城の石垣に向かう。

そこで見たものは、天に向かって泣き叫ぶ友奈。

嗚咽を漏らして泣く杏を抱きしめ、自分も泣いている球子。

ただ絶望感のままに打ちひしがれて俯いている千景。

そして、血塗れの少年を抱えてすすり泣いている若葉。

その、血塗れの少年を見たひなたは、体中の血が、一気に抜けるような感覚を覚えた。

体が震える。

怖い。

事実を知るのが怖い。

だけど、それでも、ひなたは歩いた。

そこにいる、少年の姿を確認する為に。

「・・・・たつみ・・・・・さん・・・・?」

その時、若葉は弾かれるように顔を上げた。

「・・・・ひなた」

「―――――」

表情を失ったひなたの顔は、今の若葉にはとても恐ろしく見えた。

あの、お淑やかでどこか子どもっぽい、表情豊かな少女が、ただの一点、血塗れの少年、辰巳を見たまま、その表情を変えてなかった。

そして、若葉の向かい、辰巳のすぐ傍に座り、辰巳の血に濡れた頬に触れた。

 

冷たい。

 

ついこの間まで感じていた温もりが、感じられない。

とても、冷たい。

「・・・・・ちゃんと」

ふと、そこで、若葉は、ひなたの目からとめどない程大量の涙が溢れ出ている事に気付いた。

「ちゃんと・・・・・無事に帰ってくるって、言ったじゃないですか・・・・・・約束・・・・・したじゃないですか・・・・・・」

若葉は、何も言う事が出来なかった。

 

 

「――――――――うそつき」

 

 




次回『悔恨と独占欲』

それは、初めて抱いた感情
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