【完結】フーディーニの魔法   作:ようぐそうとほうとふ

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『リウェイン・シャフィックの魔女会』

ラジオ音声

 

「さて今週もこの時間がやってまいりました!今話題の魔女が喋るだけ、なのに話題沸騰の局にはとってもありがたーい番組『リウェイン・シャフィックの魔女会』!」

 

「お褒めの言葉をありがとう、スザンナ。私も最近本職の記者よりもラジオの仕事のほうが増えちゃってて、本当に参っちゃうわ!…というのは嘘で、お話している方が本当は好きなの。あ、これは予言者新聞には秘密よ。(SE:笑い声_basic)さて、そういうわけで今日のゲストは…」

 

(SE:ドラムロール)

 

「ドローレス・アンブリッジ!」

 

(SE:番組メインテーマ01)

 

「こんにちは、こんばんは。ここへ来るのはいつも楽しみですわ」

「ドローレスはもう常連と言ってもいいわね。今日はドローレス、私、そして日替りコメンテーター、変身現代のローレンス・ウッドお送りします」

「変身現代記者のローレンス・ウッドです。よろしくお願いします」

「ェヘン。いいかしら、リウェイン。今日の人選は独特ね。ちょうど三人とも違った立場ではありませんこと?」

「さすがドローレス。いいところに気が付きましたわね。そう…今日は魔法省の花形職員、学術雑誌の主力記者、そしてお茶の間代表ご意見番…言い訳させてくださいね?これ、台本にこうあるのよ!(SE:笑い声_high)」

「あら、あながち間違ってはないわ。リウェイン、貴方は最近とっても有名だもの」

「ありがとう、ドローレス。とにかくその違った立場の三人の魔女を集めた理由は一つ!」

 

(SE:ベル01)

 

「『例のあの人は本当に復活していないのか?』です。荒れそうな話題ね。どうですか、ローレンス。確か『変身現代』は復活については…」

「ええ。わたくしたちは名前を言ってはいけないあの人の復活について肯定的です」

「変身現代はよく読んでいますわ。おたくは断言はしないけれど、あの人や死喰い人から身を守る呪文のコラムを連載しているものね。そしてその記事は大人気だとか」

「ええ。あの記事の人気こそが、多くの人々が暗に『あの人が復活している』と危惧している証拠でもあると思います」

「確かに、私のところに届く手紙も…何というのかしらね?不安にかられているっていうか…ヒステリックなものが増えている気がするわ。魔法省側の意見も聞きたいわね」

「まず注意してほしいのは、私は確かに魔法省の役人だけど、今日来たのはリウェインの友達だからよ」

「あら、感動的だわ」

「フフ。つまり、私個人の意見だって事は忘れないでほしいの。さて…『あの人』についてね…これは本当に困った話題だわ」

「魔法省の見解は未だ『復活はダンブルドアの嘘』のままですよね。しかしどうも、最近打ち出している方針は違うように思えますが?」

「違う方針?ローレンス、例えば具体的にどういうもの?」

「これまでは闇の魔法使いについて過剰に話題を避けていたけれども、ここ最近実施が決まった『杖あらため』は実質的に大規模な魔女狩り法よね?…これはジョークではないですよ」

「さすがですわねウッド。貴方のおっしゃる通り今回成立した『魔法使い登録委員会設置法案』、通称『杖あらため法』は単なる戸籍調査ではなく、市民になりすましているであろう脱獄囚のあぶり出しも兼ねていますわ」

「私、記者の仕事が減ってからそのへん疎いのよ。良ければ説明してくれないかしら?」

「ええ喜んで。要するに、現在イギリスに住んでいる魔法使いすべてを召集し、その杖を登録します。登録されていない杖が使用された場合、直ちに闇祓いが出動し身柄を押さえます」

「まあ!そうまでする必要があるの?」

「ええ、ありますわ。というのも、昨年冬に脱走した囚人たちは全員が危険人物です。さらに、忌まわしきシリウス・ブラック。彼があの人の後継者として彼らを束ねているのではという推測もあります。我々はあの人であろうとなかろうと、危機に瀕しているのは間違いありません」

「…確かに、杖を登録することで身の安全は魔法省に保証されます。同時に市民は自由を差し出すことになりますが」

「あらウッド。それが健全な行政と市民の関係じゃないかしら?」

「ええ、勿論そうです。ですが…この法案の草案は一体誰が?」

「ウィゼンガモットの誰かだと思うけれど…」

「わたくしの危惧しているのは、登録データベースが悪用されるのではないかということです」

「あら!魔法省の中枢に囚人共が忍び込むとでも?」

「件の神秘部爆破事件はそうでしたでしょう?」

「あれは神秘部という特殊な部署が悪いわ。あそこだけは警備から人事、何から何まで独立しているのよ。今回の登録は魔法省内でも一番の魔法使いたちが管理します。私達も危険性は承知の上、市民の安全のために対策を施しておりますわ」

「ですが敵は我々と同等か、それよりも強い魔法使いなのです。わたくしにはどうも、心配に思えてなりません」

「議論もいい具合に白熱してきたわね。二人共、ちょっとお茶を飲みましょう。リスナーの皆さんは音楽でも聞いていて頂戴。今日の曲は、最近アメリカでヒットしている魔女ユニット『コウモリのクソ』…うん、どうやらロックのようね…から『割れ鍋に閉じ豚』」

 

(SE:インパクト)

(音楽:『割れ鍋に閉じ豚』(5.12秒)

 

 

 

「ローレンス、緊張してる?」

「ええ、少し」

「肩の力を抜いて。ここは議論の場じゃなくっておしゃべりの場なんだから」

「すみません。どうもお喋りというのに慣れてなくて…」

「個性が出て面白いのね。週刊魔女の記者はみんなお喋り好きだったけど…おたくは学術誌だからかしら?」

「ええ、おかたいんです」

「私も自分で友達としてきた…なんて言いながら熱くなってしまってごめんなさいね。ウッド」

「いえ、ミス・アンブリッジ。スポークス魔ン以外の人と話せる機会は貴重ですので…」

 

 

ー曲後奏ーキューランプ

 

「よし、あいうえおあおあえいうえおあお…後半もよろしく、二人共」

 

マイクON

(SE:番組メインテーマ01_piano)

 

 

 

「うぅ〜酷い歌…歌なのかしらこれは?コウモリのクソ、嫌でも覚えたわ。二度と聞かないためにね。さて…落ち着くための時間だったのにかえって疲れてしまったわね」

「平気よ。耳栓をしていましたから」

「あら、さすがローレンス。さて…さっきの騒音の前の話題を続けても?」

「構わなくってよ。どうせ台本にそうあるのだから」

「もう、ドローレス!楽屋ネタを使うくらいラジオ慣れしてしまったのね。まあいいわ。それで…そうそう。『あの人は本当に復活しているのか?』だったわね。さっきは固い話になってしまったから、ここでオカルトめいた意見も紹介しておきましょうか。なぜシリウス・ブラックが仲間を脱走させたか?…これこそまさに、あの人復活のための儀式である!という…」

「いやだわ、リウェイン!子どもじゃないんだから…」

「あら!これを話してくれた記者友達は大真面目だったわよ」

「ウッド女史の忌憚のない意見を聞きたいわね。ズバリ、死者蘇生は可能か?」

「不可能です。例のあの人が死んでいたなら、の話ですが。あの人がハリー・ポッターに討ち滅ぼされたときに死んでいなかったのなら話は別ですが」

「え?でも死なないなんてことは不可能でしょう」

「さあ。闇の魔術にはもしかしたら死を回避する術があるのかもしれません」

「ェヘン、ェヘン。…ちょっと、その発言は問題ではありませんこと?例のあの人が14年前に死んでないとなったら魔法省の見解が長らく間違っていたことになりますわ」

「正直なところ、わたくしは魔法省は近々見解を改めるだろうと思っています。近頃の政策といい、何らかの備えをしているように思えてなりません」

「そうなの、ドローレス。ちょっと陰謀めいているわ」

「陰謀というのは穿った見方よ。…確かに、去年の今頃とは事態が大きく変わっているわ。ウッド女史の言うとおり、近々我々の方で動きがあるでしょう」

「ローレンスの慧眼には驚かされるわ。…だとしたら、やっぱりダンブルドアは嘘をついていなかったと言うことかしら?」

「それはどうでしょう?…三大魔法学校対抗試合で起きた痛ましい事故とあの人の復活を結びつけるのと、死喰い人の大量脱獄と結びつけるほうがまだ自然だと思いませんこと?」

「あら、ここに来てまさかのオカルトが採用だわ。ローレンスはどう?あの人の復活には肯定的だけれども、復活の時期についてはどうかしら」

「ダンブルドアは偉大な魔法使いです。時期については、脱獄に結びつけたほうがもっともらしいし自然だとは思います。しかし…」

「やはりそうよね。去年とは本当に状況が違いすぎるわ。なんて言ったってあのグリンデルバルドまで脱獄したもの」

「ひょっとしてグリンデルバルドが復活した例のあの人のフリをしていたりして?」

「やだぁ。それこそオカルトだわ」

 

(SE:笑い声_long)

 

「グリンデルバルドはどこに行っちゃったのかしらね?」

「観光でもしてるのかしら」

「半世紀閉じこもってたものね。ダンブルドアはグリンデルバルドを投獄した張本人なわけだけど…どうなのかしら?捜査に協力しているのかしら。ローレンス、なにか知ってる?」

「ええ。協力要請を受けているようです。我々の情報筋によりますとノルウェー魔法省から数名こちらにやってきていると」

「やだ。じゃあもしかしてイギリスにグリンデルバルドが?」

「可能性はあります。しかしあの人は世界を股にかけていましたから…。世界中に使者が送られているとは思います。ですがどの魔法省も秘密主義ですから、詳しい情報は何も」

「ホント物騒ね。あなたの雑誌が売れるのもよく分かるわ」

「ありがとう、ミス・シャフィック」

「さて…暗い話はここまでにして、スポンサーのCMコーナーに移りましょうか。では皆様また1分半後に…」

 

ー小腹がすいたときにマグルの店に走るのってちょっと悔しくないですか?ピザだってやっぱり魔法使いのが一番!箒、暖炉、ヒッポグリフだって!お好みの配達方法でお届けします。フランツのピザ店は24時間注文を承っています。5分で届かなかったら料金はいりません!空に向かってこう唱えて!『ピザデマジデブー!』フランツのピザ店、ダイアゴン横丁店も近日オープン!ー

 

ーフローリシュ・アンド・ブロッツ書店より入荷本のお知らせです。ホグワーツ魔法魔術学校選定教科書は一通り入荷いたしました。生徒の皆さんはリストなしでも不足なくお買い求め頂けるでしょう。月刊誌クィブラー、月間紳士イズム、戦う魔法戦士(復刻版)も入荷いたしました。また、8/25には待望の新刊、リウェイン・シャフィック『ジャーナリズム』の販売を記念して12時より著者による握手会を開催いたします。大変な盛況が予想されるので午前8時より整理券を配布いたします。ー

 

 

「あのぉ」

 

 鈴のような声がラジオを遮った。

「あのぉ。ラジオちょっと止めていいですか?掃除したいんでー!」

 トンクスはため息をついてラジオを消した。不快な番組だが、敵の動きを知るためにできる事はしておきたかった。不死鳥の騎士団のメンバーだというのに、今はこんなくだらない仕事しかこなせない。

 看護師はトンクスの身の回りをあっという間に掃除する。杖を使わない分かなり几帳面に掃除をするものだから時間がかかる。

「杖は忘れちゃったの?」

 苛立ち紛れに声をかけると、看護師は頬を赤くして恥ずかしそうに言った。

「こういう細かいのはだめなんです。私、魔法が下手すぎて五年で卒業しちゃったので」

「えっ…ごめん」

 トンクスは看護師より顔を真っ赤にして俯いた。苛立ち紛れに八つ当たりした挙げ句、相手が気にしているであろうことをつっついてしまった。

「他意はなかったんだ」

「いえ、いいんです。私もムッとして怯むように言ったんですからあいこです!」

 看護師は朗らかに笑う。

「こうやって返して謝ってくれる人はみんないい人です」

「謝んないやつもいるんだ?」

「患者さんはピンキリですから」

「ふうん…。看護師ってふくろう試験の資格とかいらないの?」

「准看ですからね。医療じゃなくてこういう、患者さんの身の回りのお世話をするのなら資格はあまり関係ありません」

「そうだったんだ。知らなかった」

「トンクスさんは闇祓いでしたっけ。すごいな、尊敬します。早く元気になってもらってハリーを助けてもらわないと!」

「君、ハリーの知り合い?」

「友達の友達なんです」

「そうなんだ。わたしは友達なんだ。あなた、名前は?」

「ジェーンです。ジェーン・シンガー。ハリーの友達はネビルって言って…」

「ああロングボトム!知ってるよ。そうか、世界は狭いね」

「友達の友達の友達、もう実質友達ですね」

 シンガーは話しながらも掃除の手を緩めることなくすべてを磨きつくし、一礼した。

「それじゃあお大事に、トンクスさん」

「うん。ありがとう。治って落ち着いたらお茶を奢るよ」

「素敵!デートみたいですね。それでは」

 

 出ていくシンガーを見送り、トンクスは小さくため息をついた。やっぱり早く治して現場に復帰したい。呪文の後遺症は尾を引くばかりか、闇の魔術によりできた傷に対処できる癒者は限られていた。そのせいでずっと病院に閉じ込められている。

 自分以外にもムーディーやアーサーも大怪我をしたが、ムーディーはもうとっくに現職復帰している。アーサーも近々退院だというし焦る。

 

 控えめなノックの音がした。トンクスがぞんざいに返事をするとドアから思いもかけない人物が現れた。

「やあ、具合は?」

「な、なんで来たの」

 リーマス・ルーピンがいつにも増して悪い顔色で無理やり笑みを作っていた。まさかリーマスが来るとは思わなかった。トンクスは鏡で自分の顔を確かめたい気持ちをぐっと抑えた。

「お見舞いだよ、さっきアーサーにもあって来た」

「ふうん。そうなんだ。元気だった?」

「ああ。もうすっかり」

 平静を装うのも随分なれたものだ。いつの間にか彼のことを好きになった自分に気づいたときはなかなか苦労した。いつから好きだったかは覚えていないが、好きと気付いた瞬間のことはちゃんと覚えている。

「ほんとにお見舞い?なんかいつにもまして辛気臭いよ」

「ああ」

 ルーピンは杖を振った。

「盗聴は…されてないか」

「なに?物騒だね」

「トンクス、聞いてくれ」

 ルーピンは声を落とし、トンクスの耳の近くに口を寄せた。少女みたいに心臓が高鳴ってしまう。ほんとに馬鹿みたいだが、こんな緊迫した空気の中で舞い上がる自分がいるのがわかる。

 

「ダンブルドアが交渉を持ちかけられた。ハリーについてだ」

「え…」

「詳細は話せない。だが、万が一のために騎士団の数名がバックアップにはいる。私はそれに選ばれた」

「そう…」

「だから君に伝えたいことがあって…」

 トンクスはどんどん高鳴る心臓を引っ叩いてやりたかった。罪悪感と嫌悪感と、それを上回る喜び。なんで恋をすると馬鹿になるんだろうか!この文脈で愛を囁かれるなんてありえないのに。

「シリウスの事だ」

「シリウス?なんで?」

「彼は今回のメンバーに選ばれてない。万が一任務の途中で彼がそれを知った場合…」

「なんでシリウスが選ばれないの?ハリーの身内なんだよ」

「身内だからだ」

「ダンブルドアのやりたい事はわかるけど…わたしに何ができるの?」

「簡単だ、しばらく彼を慰めたり、話し相手になったりしてやってほしい。…いや、正直に話せば、監視してほしい」

「やだよ!そんなスパイみたいなこと」

「ハリーを無傷で奪還するにはこちらが完璧に冷静でなければならない。シリウスには無理だ。ただでさえ熱い男だし…それに今はかなり苛立っている」

「リーマス、あなた彼の友達でしょう?そんな不誠実なことを…」

「ああ、わかってるよ!でも僕は、ハリーを失うリスクをほんの少しでも減らしたい。全体のことを考えてしまうんだ。…嫌な大人になったよ」

 トンクスはそのセリフは卑怯だと思った。けど口に出せるわけがなかった。ルーピンはおそらく自覚的にそういう言葉を使っている。こういうときのルーピンは絶対に折れない。

「…約束はできないよ。わたし、感情的にはシリウス寄りだもん」

「それでも頼む。心に留めておいてくれ。敵は…我々が思っているよりも遥かに無機質だ」

「ねえ、ハリーをさらったのは一体誰なの?」

 ルーピンは答えなかった。

 

 

 

 

 

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