止んだ時雨は宵の内   作:春宵

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宵風の役割と兎のプライド 下

デュノア社からの連絡の内容は、IS学園にシャルが在籍している間はラファール・リブァイブ・カスタムⅡのメンテナンスやチューンを全て私に一任するという事だった。

その結論に至った理由としては私たちがコスモスの開発の際に技術提供したことによって完成した三世代武装のプロトタイプを搭載するにあたって、

その武装を整備することが今のシャルには専用の知識がないため不可能だからであるらしい。

それに加えて、件の武装は初期設定だけされた状態でラファールの背部に搭載されているので、詳細の設定はそちらで行ってもらいたいという旨の追伸も受けた。

仕方がないので昼休憩後の整備演習の時間に設定も行おうと思う。

 

昼休憩の終了寸前にノートパソコンと工具箱と脳波測定器を持って整備室に着いた。

そして授業が始まったのだが、一夏は来なかった。

「織斑はどうした?」

と織斑先生が聞いてくるので、私は

「途中でデュノア社からの連絡があり、途中で抜けたため分かりません。」

と返しておいた。

それに追加として横から鳳鈴音が、

「一夏は腹痛と下痢で保健室へ行っています。結構ひどいらしく昼からの授業には出られそうにないです。」

と言っていた。

「それならば仕方がない。誰か織斑の班を見てやってくれ」

と織斑先生が言うと、シャルが

「僕がやります。少しは役に立つというところを見せたいので。」

と言って立候補した。

「他に誰か機体を見てもよいという者は居るか?」

と織斑先生が訊いたが、立候補者が他に誰もいなかったのでシャルが二班掛け持つことになった。

 

ひと段落したのでシャルの機体の武装設定などに対することを提案してみたところ、

すんなりと承諾を受けられたので、こちらからやっていこうと思う。

 

「とりあえずはチューンの後でデータを打ち込んでおくから、終わったら試験運用をしてもらっていいかな」

 

「了解したよ。不満が有ったらその時に言えばいいんでしょ。」

 

「山風に整備の指示は任せて良い?」

 

「いい、けど・・あたし、自信ないよ?」

 

「大丈夫、知識量も充分だし、どうしてもダメならこちらが説明するからね」

 

「わかった。頑張ってみるね。お兄ちゃん」

 

という会話をした後、まずは専用機三機のチューンを始めた。

 

 

「三機とも関節駆動良好、推進器異常なし、歪み修正完了、武装メンテナンス完了っと。次は例の物のチューンかな。」

 

 

「まずはコネクタ接続をしてっと・・・接続完了。次に脳波データの送信はーっと...完了。後は・・・シャルー終わったら試験運用をよろしくねー」

 

そんなこんなで試験運用をしてもらったところ、やはりまだ慣れていないので動きがぎこちなかった。

こんなことではまともにデータが取れそうにないので、今週中にこの装備に慣れてもらって、

六日後の日曜日の早朝のアリーナとドックの貸し切りの時間に、シャルの動き方に合わせた細部の調整をしようと思う。

 

 

シャルの試験運用の傍らで教え終わった人同士で一夏が腹痛になった原因を探すことになった。

そこで食べたものの材料を羅列していくと原因は意外と早く見つかった。

セシリア・オルコットが作ったサンドイッチにはキュウリやトマトの他に日本蕎麦や蟹と鰻が入っており、

デザートに柿とスイカが有ったうえ、鳳鈴音は酢豚を出しており、

篠ノ之箒は天ぷらを弁当に入れていたために非常に食べ合わせが悪かったのが原因のようだ。

(上にあげられたものの中で天ぷらとスイカ、鰻以外には体を冷やす働きがあり、蟹と柿の組み合わせでは下痢になる恐れがあり、蕎麦と柿に至っては内蔵機能低下による腹痛も発生する。

それに追撃するようにスイカと鰻やてんぷらの組み合わせは胃液を薄め、消化不良を発生させることによって腹痛の波を大荒れにしてしまう。)

一夏のダウンの原因も分かったところでデータの細分化に集中しようと思う。

 

 

授業終了後、シャルと運用方法の再確認を行うことになった。

「この武装は確かセシリアさんのブルーティアーズと基本的な運用の仕方は変わらないんでしょ。」

 

「まあね。これはブルーティアーズのビットに距離の制限が加わった代わりにフレキシブルの簡易化と複雑な操作を行うことを可能にしただけだからね。」

 

そんな話をした後、不安要素はあるけれど頑張って来るねと言い残してシャルは移動していった。


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