止んだ時雨は宵の内   作:春宵

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プロローグ
宵は過ぎ 雨が止んだ日


悪夢は夢想する、自らが未だ彼と彼女で在った時を

 

 

 

昔の彼は呟いた「既に朽ちた僕の身に、どうか未来を紡ぐ時間を」

 

祈りは届かず絡繰りに堕とされた人だったナニカは何も見届けられずに共に立った者達の末路を知ることも出来ずに最後の時を迎えた。

 

 

昔の彼女は笑いながら言った「先に行ってて大丈夫、僕はきっと沈まないから」

 

昔に自分だけを残して逝ってしまった姉妹達の為に、

止まない冬の通り雨が今度は自身の命を燃やして尽くして

助けられなかった姉妹達に再び出会い、そして助けられた事に感謝しながら深い海へと沈んでいった。

 

 

私は夢想した、自分達の末路を

 

 

絡繰りの亡骸は自らの憎悪から生まれ、そして彼の代わりに全てを終わらせた者達の気まぐれによって保存され、

 

 

それからしばらくして通り雨の亡骸は憎悪によって別の何かに成りきる前に死を纏う者達に引き上げられた。

 

彼等は出会い、そして後に未来を変える決意をする

 

全てを終わらせた者は言ったそうだ。

 

「我らを生み出してくれたことへ感謝を込めてクローンとして生まれ変わらせよう」と

 

 

 

悪夢は夢想する、自分が無垢であった時を

 

 

目覚めて最初の一言は、なぜ生きているのだろうだったはずだ

 

そして何故か生きているのかに驚いていたはずだ

 

そして私は自身が前の私のクローンであると教わった。

その時に初めて出会った製作者から人の姿をした戦船を艦娘と呼ぶと説明されたはずだ。

その後の事は私にも分からない、貴方に協力すると言った気がする。

 

そして彼は通り雨に出会った。

絆を紡ぎ、彼女の妹を姉と慕い、そして姉妹を託される。

その後、血を吐き、治療され。

心臓の代用として友の艤装核を入れられたことで姿が変わり。

艦娘もどきとして戦っていたはずだ。

もどきは戦い、過去を失い。

最後に友の遺志を守ろうと手を伸ばし

そしてその手は拒絶され、私は何も出来なかった。

それから彼は亡者になった。

彼に残ったものは後悔と苦しみだった。

 

そして彼は憎しみに飲まれた。

彼女の守った姉妹達が愚者の手に掛かっていたことを知ったからだ。

 

時は巡って彼は悪夢へ変わる事になった。

最後に残った妹を守るため、姉妹を殺して自らの命も失くした時から

悪意に飲まれ、再び復讐に飲まれ、そして彼は罪を犯した。

 

その日から、悪夢は生まれ変わって私になった。

 

そして私は刻み込んだ。私の中に残った彼女が記憶を失くした時を。

いつかの様に笑顔でさよなら

新たな人生に幸が有ることを三人で祈った。

彼女の死は贖罪だったと信じて。

 

そして私は許容した、自分がここに在る事を

失われた者たちの残した物を背負う事で

私はそして決意した、失くした分だけ想おうと

家族が残したこの世界を

 

 

夢想し私はただ笑う、帰らぬ人は忘れられ、名前も顔も欠けていく

 

私が背負うは死者の咎、残った家族は二人だけ

 

私は壊れてただ運ぶ、家族の為にただ運ぶ

 

創った彼等に心配されて

悪夢は新たな使命を受ける

壊れた悪夢は何を思う


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