世界を超えるとそこは人気の無い港町の裏通りだった。
昔読んだ小説のような雪国を内心期待したのだが仕方が無い。
外の通りで連絡するとここで待っていれば迎えが来ると返答を受けた。
そのためここでしばらく待つことにした。
しばらく待つと黒い車がやって来た。
車の窓から見える操縦者にはどうにも見覚えがある。
迎えというのはこの車だろう、そう思いつつ見ていると予想通りドアが開いた。
「宵雨 迎えに来たぞ」
後部座席から聞き覚えのある男性の声がする、呼び方でクレイであるとわかった。
逃げる意味もないので運転手に一応確認を取ったうえで車に乗り込んだ。
「珍しいな、人の多いこんな場所まで来るなんて、気分は悪くなっていないようだが・・・。」
私はクレイにそう言った。
クレイの返答を要約するなら
任務なので仕方なしという事だった。
「しばらくおとなしくしとけ、マスコミにすっぱ抜かれると面倒だ」
クレイもそう言っているので、しばらく機体の構想を練っておこうと思う。
大きな建物に着いた、ここが私の所属する会社だろう。
玄関前にstella dittaと書いてあった。
一応クレイに聞いてみると、予想通りここが私の所属会社だと返答があった。
そのまま話を聞いていると、私は開発課へと配属予定の様だという事が分かった。
どうやらここでクレイとは一時的分かれる様だ。
代わりの案内を寄越すと言うのでロビーで少し待つことにした。
しばらく待つとアリアがやって来た。
案内は彼女が引き継ぐらしい。
内心知り合いが案内でホッとする一方で
上層部の二人がそろっている事に驚きつつも表面に出さないようにアリアについて行くことにした。
アリアについて行くと、機械がたくさん設置された区間に着いた。
ちらほらと見覚えのある機械がある、ここで機体や武装の開発をしているのだろう、
そう思いつつ見回しているとアリアから説明があった。
「分かっていると思うけどここのドッグで機体の改良や武装の作成をしているの。うちは技術的には最先端なのよ。」
その後、クレイやアリアにこの世界では敬語を使うようにと注意を受けつつも、
社長室や食堂を案内され、割り振られた部屋になぜかいる山風と共に今日は休む事になった。
次の日から、アリア特製サンドイッチとリンゴジュースを持って朝早くからドッグに入り浸って機体の開発を始めた。
構想を練った結果、この世界にはなくて私が得意としているような機体を作る事にした。
どうせならこの会社の名前であるステラ(星という意味)を使った名称にしようと思う。
だが、最初はコアを解析して、どの技術が使用可能かを調べておく。
「相棒、これを解析出来そうか?深海化も考慮に入れておきたい。」
そう相棒に声をかけ、ISコアを渡すと、
リョウカイ、カイセキチュウ・・・。ハソンリスクアリ。
セイノウテイカカイヒノタメリスクカイヒヲセンタク・・・。
カイセキカンリョウヨソウジカンハサンジカンデス。
という文字が近くのモニターに浮かんで来た。
時間が勿体無いので先に他のことをしておく。
「まずは初期案である狙撃機の為に・・・。」
(アングラー、三世代機のカタログデータの用意頼んだ。)
作成する機体のスペックが高すぎると目立ちすぎるので、
参考にするためのカタログデータを、いつの間に寄港していた(反応があった)マッドアングラーに姫級の指揮能力を使って頼んでおく。
双方の結果が出るまで武装の開発に注力する事にした。
事前に渡された資料に三世代機は専用の特殊兵器が必要だと記載があった気がするので、曲がるビームを打てるビームライフルを作成しようと思う。
「とりあえず、設計図を作ろう。そして意見を求めよう。
この会社の技術レベルはこの世界では最高クラスだけど、既存の技術から離れ過ぎたものは怪しまれる。新たな発見をすれば、内容によっては争いの種になる。かといって、セーブし過ぎれば戦い抜けなくなる。ギリギリを見定めなければならないか・・・。
なかなか難しいところだけど、ここが正念場だ、頑張らないと。」
相棒の表示した三時間後、相棒を訪ねてみると結果と改造案、深海棲艦化を行った時の被害範囲が表示されていた。
検査結果から見ていくと、どうやら高度な自己学習能力や自我を持つ人工知能をコアに詰め込み、外装である機体を覆うビームシールドを発生させられるようにしてあるらしい。
そしてリアルタイムで作成者にデータが送られているらしく、送信機能にすぐに気づいてデータを遮断したもののイレギュラーとして認知されただろうとのことだった。
次に深海棲艦化だが意志を持つ関係で強制的に行えば、激しい抵抗を受けるうえデータの破損、被害範囲の増大、さらには製作者にこちらの情報を流す可能性が有るらしい。
幸いにもコア自身と対話をして好感触を得られたとのことなので、早急に敵対はないと思う。
機体二つ目の案を煮詰めていたら、マッドアングラーから三世代機のカタログデータが送られてきた。
カタログデータをもとに、公開されている戦闘データの存在するものはマッドアングラーが手直しをしたうえで寄越したようで、一部の機体には公開されていないであろう情報が加えられていた。
ここから、構想上の機体を三世代準拠に改正していくのかと思うと頭が痛くなりそうだ。
しばらく機体データと見比べていて、興味深い事一つと面白くない事を二つ見つけた。
興味深い事としては、ビット適性が高いパイロットが集中することでビットからの射撃を曲げることができるという表記を見つけた。
ご丁寧に理論まで書いてあるため、改良すれば三世代武装の開発に大きな前進が見られるだろう。
そして面白くない事の一つ目は、この世界の技術はちぐはぐで技術面でどこまでやっていいのか判断に苦しむという事だ。
ビームを曲げる技術を持っていたり、空間を固めて砲台を作り空間を弾丸として撃つ装備が有ったりするのに、この世界ではビーム兵装がまだ開発され始めたばかりらしく、
うちの会社がビーム兵装においては独走状態らしい。
そして、面白くないことの二つ目は初期案であった狙撃機が、スペックの高さ的に没になりそうだという事だ。安全装置やリミッターを掛ければ、三世代機程度の性能に落ち着くだろうが、私が乗ると逆にそれらが邪魔になってしまうだろう。
初期案は凍結させておいて、二つ目の案を形にしようと思う。
「二つ目の案は、というかコンセプトは多戦況対応機だったかな?
高機動を用いて近接から中遠距離戦までをこなす機体。つまりスラスターを増やせば、しかしエネルギーの消費を増やしすぎてはいけないし・・・。
実弾装備を増やす・・・いやこの会社はビームに強いという事になってるからそれは出来ないか・・・。とりあえず保留にして気分転換にビームライフルを改良しよう。」
そんな風に悩んでいたが一週間後からある妙案が浮かんだ。
機体一つでは多様な戦況全てには対応できないため、ストライクガンダムのようなパックを用意して、拡張領域を拡張して詰め込めないかというものだ。
とりあえず、拡張領域の増加を狙ってみる事にした
しばらくして、気分転換に改良していた曲がるビームが打てるビームライフルが完成した。
自由に操作できることに重点を置くあまり火力が低くなってしまったが妥協するしか無いだろう。
ポータルが繋がらなくなった。
どうやら山風の部屋のポータルの存在がばれてしまったようだ。
いさめられ続けて諦めたという通信が入ったので、
情報漏洩を防ぐために自室ですら気が抜けない生活から逃れられそうだ。
これから自室で機体の名称の考案が出来そうだ。
その二日後、機体の名称が決まった。
星の海を直訳したステラマーレにしようと思う。
それなら星座にかかわる名称にしたほうが良いということで、パックの名前を一から見直すことになった。
題材の星座が決まった。
さそり座、ペルセウス座、大鷲座をモチーフにしようと思う。
細かい設定を煮詰める作業を先にしてから設計をするためにクレイやアリアにも意見を求めようと思う。
時間が合った時に意見の交換をした結果、
基本的にバランスが良い高火力機、強襲機、高機動機にすることになった。
幸いにも機体のデータは豊富なので短い期間で作る事ができそうだ。
「高機動機にする為に機体の重量を減らして・・・半重量力場で飛ばしているとはいえ滑空飛行の機会はあるだろうから、空気抵抗は減らして、パック接続用のコネクタを付けて・・・。
高速飛行する以上、対Gはある程度つけないと・・・。
そうだ、パック換装の都合上装備は沢山は積めないんだっけ・・・。
取り付けないと勝手はわからないし、簡単にしよう。
取り敢えずは前者の問題はパックの性能で補うとして・・・。
あぁそういえば装備の厳選もしないといけないんだった・・・。
あぁ・・・これは徹夜コースだなぁ。材料の調達もあるし。」
色々悩み抜いて、試行錯誤した結果、原型が出来た。
パックも大体は出来上がっているので、近日中に取り付けて正常に稼働、飛行出来るかを確かめることが出来そうだ。
しかしせっかく作った特殊兵器が搭載しにくくなってしまったので、
サブのような拡張領域に搭載して、必要に応じて取り出すことにする。
機体が完成した。
ヒルドルブのように非常に扱いにくい機体となったが、
私の専用機なので、心配は無さそうだ。
早速試験運用して私用にカスタムしていこうと思う。
相手はアリアが直々にアルーフを使ってしてくれるようだ。
機体の性能差があるうえ私は機体に慣れていない分、
善戦できるかすら怪しいがやれるだけやってみる事にする。
模擬戦の結果、瞬殺だった。
ビームライフルは弾くことができたものの大量のビットの波状攻撃になす術も無く、
アリアの不慣れな近距離戦に持ちこむ事すら出来ず、
エネルギー切れを起こしてしまった。
通常の状態で使用できる近距離兵装を急いで開発しようと思う。
近距離兵装の開発の試作型として
使われていないコールドブレードを応用して大型のハルバードを作った、
出力を上げすぎたため刃の近くが凍り付いてきているが
機体の動きを止めることに使えそうだ。
私自身の冷気と合わせれば妨害の幅も広がるため、そのまま搭載しようと思う。
因みに機動力こそステラマーレに劣るものの、
核搭載機なので火力では宵雨に軍配が上がります。
戦艦砲や機体のハッキング能力も搭載しているので、
宵雨単体でかつ核を使わなくとも、
ある程度のエースなら生身で倒せます。
(流石にアムロのガンダムなどは対策しないと倒せない)