止んだ時雨は宵の内   作:春宵

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宵の雨を追いかける嵐

機体がおおよそ完成したので、機体の予備パーツを作っていると、クレイに呼び出された。

作業が終わり次第来てほしいとの事なので、作業がひと段落したら向かう事にした。

「社長、何か御用ですか」

少し言い方に違和感が残るが、慣らして行くしか無さそうだ。

「内密にせねばならないことなので、社長室までついて来てくれ。」

 

クレイの社長モードは初めて見るが、別人のような気がするほどの変わりようだ、

などと思いつつも分かりましたと言っておとなしくついて行くと、

社長室にはアリアがすでに来ていた。

 

社長室の扉を閉め誰も来ないことを確認するとすぐに素に戻ってこう言った。

「俺らにとっては面倒だが、お前にとっては良いニュースかもな。

どうやらお前が任務に出かけたことで拗ねたブラコンがお前を追ってこっちへ来るそうだ。」

それだけ伝えるとしばらく忙しくなりそうだといって、アリアとともに退室していった。

言い方にいつもよりとげがあったうえ、面倒と言っているという事は、

山風の経歴の偽造や隠蔽、戸籍の用意を丸投げされたのだろう。

それを私に話すという事は、任務で行くであろうIS学園にもついてくると通知があったという事であり、

まず間違いなく山風用の機体が必要になるので先に考えておこうと思う。

 

まずは数日かけてデータベースから山風の戦闘データを洗い出すことで適性を調べて、

ISコアにデータを記録することにした。

データ的には元々艦娘なので、やはり射撃が得意のようだ。

しかし演習でのペイント弾使用ですら人に向けて撃つ事は無いので、

人が乗っているものを撃つことには抵抗が有るだろうし、殺してしまうことを恐れそうだ。

山風には酷だがオートで反撃するシステムをつけることを考慮しておこう。

その他で見ていくと、私が宵雨として一度沈んでからは、よく狙って打つ癖が付いてしまっているようだ。

日常的なところも少し見てみると、相棒に乗せての空の旅の時の記録が出てきた。

読んでみると、相棒の揺れは特にひどいのもあるだろうが

姿勢制御システムが搭載されているにもかかわらず、

気持ち悪くなったという記載があったので三半規管はそこまで強くなさそうだ。

そこから考えるに狙撃機が適任だが、山風はテストパイロットとして登録される可能性が高いので、

山風の機体は私の機体を実験機として得られた技術で作られた機体としておくべきだろう。

流石にそんな機体のデータは少ないので、時間がかかりそうなので、後回しにすることにした。

特殊兵装についてはマガノイクタチや粒子加速器を再現できればそれで事足りそうだ。

これらのデータは大将やフロンタルが持っているはずなので、協力を求めるべきだろう。

その時に狙撃銃のデータ詳細などをもらっておこうと思う。

 

劣化版の二点がクレイを通じて送られてきた。

どうやら機密保持の関係でデータは送れなかったらしい。

一度解体して機構が解れば修理できるようになるのでしばらく研究することにした。

 

 

研究が終わったころに山風の来る日が決まったと連絡があった。

二週間後の一月二十日らしい。

それまで母艦で狙撃の練習をしているらしい。

学校関係の引継ぎは無事に終わったようで安心した。

機体の完成を早める必要がありそうだ。

 

急ピッチで機体の作成を行うことにした。

時間が足りないので外装などは別の機体を流用して、

内部は星の海の構想時に構想だけで作らなかった機体を遅滞戦闘用に改良して、

姿勢制御プログラムを搭載し、マガノイクタチの機構を簡易にした盾喰らいと

ビーム収束装置を取り付けた機体という構想が浮かんだが、

扱いにくくなるため武装は最低限にして、AIの補助をつけようと思う。

作成の際にビームライフルは狙撃用だけでなく、ビームマシンガンも用意しておき、

攻撃を受けそうな場所の装甲を厚めにしておけば

安全性が増すので、機動性の面に注意しながら改良していけば良さそうだ。

徹夜すれば二日程度で作れそうなので、頑張ろうと思う。

 

機体の作成中に新たなアイデアが浮かんだ。

狙撃時の反動軽減用の変形があった機体があったらしいので、

武装のいくつかに固定用の小型パーツをつけられるようにしておいた。

反動や横やりによって照準がぶれると困るので、すこしでも軽減できれば良いのだが。

機体が陸専用になりつつある気がしてきた。

 

機体の名称は吹雪を表すトルメンタにすることにした。

山風にとっては初めての機体なので多めに予備パーツを作れるようにしておこう。

 

スペックを比べてみるとリミッター付きでは操作性以外は私の機体のほうが高くなったので、

操縦性を追求した機体と発表してもらえるようにクレイに頼んでおくとしようと思う。

これでこちらに少しでも多くの矛先が向くようになればいいが…。

一応山風に護身術を伝授しておくことにしようと思う。

 

山風がやってきた、

自室に戻ってきたら飛びついてしばらく離れなくなったが、

寂しい思いをさせてしまったこともあるので諦めることにした。

 

少し経って山風が表舞台に出ることになった。

想像通り山風はテストパイロットとして扱われるそうだ。

それと同時にステラマーレ、トルメンタの紹介と試乗の様子を見せ、

変形機能の紹介をするそうだ。

技術者として私が有名になると同時に、ステラ社も有名になったようで、

取材がある様になりしばらくは忙しくなりそうだが、

織斑一夏がISに乗るのはもう少し後なので、私の出番はもう少し後になるだろう。

それまでステラマーレは、操作の難しさから誰も乗りこなせなかった機体

という事になるので、盗まれないようにしておこうと思う。

山風に操縦を教えつつ、山風に勉強を教わればIS学園の学力に何とか追いつけそうだ。


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