郡谷公博:友達
高坂穂乃果:ヒロイン
幼馴染が学校を盛り立てる為にスクールアイドルを始めた。
最初は何を言っているのか分からなかったけれど、不平不満、練習のきつさ、
友人のトレーニングメニューがおかしい等々の不満を半ば聞き流しているうちに理解が追いついた。
「それ、本当の話なのか?」
「うん!」
そうだけど、それが何?
それぐらいの語調だった。
「何時頃からやってるんだよ」
「今年の初めごろからだよ」
もう一月経っていた。
今はもうGWで、休みにふらりと家にやってきて、家の婆ちゃんと小一時間位茶飲み話に花咲かせたかと思えば、横で黙々と飯食ってた俺に、思い出したかのようにふっと一言投げたのだ。
「何てグループなんだ?」
「……秘密!」
「いや、そこは教えてくれよ」
「えへへ。だってまだまだ始めたばっかりだから、ダンスとか全然で、見られたら恥ずかしいよー」
「分かった。じゃあいいよ。上手くなったと思ったら教えてくれ」
「いいよー」
そう言って楽しそうに、穂乃果は笑った。
教えてくれとはいったものの、今の時代、二つ三つ関連ワードさえ分かっていれば大抵の事は調べられる世の中だ。
好奇心には勝てず、部屋のパソコンのキーボードを叩いて検索する事にした。
選択語句は、音ノ木坂学院とスクールアイドル。
一番目に出てきたのは学院運営のホームページ。クリックして開けばmidiファイルのチープな音色の校歌と手打ちhtmlで作成したかのようなトップ。
きっと情報の授業で誰かが作成でもしたのを使ってそのままなのだろう。俺の学校のHPもそうだから。
恥ずかしいような、笑えるような、微妙な気持ちのまま子ページを順繰りに開く。
が、それらしきページは一つも無し。
なるほど本当に結成したばかりのグループなのだなと、一人頷く。
その後いろいろとワードを変えて再三検索を掛けてみるも、結局掘り当てる事は出来ず断念した。
「そんなものか」
二時間弱程、デスクに向かい続けて凝った体をほぐし、結成一月ならば誰の話題にも上がらないものなのかもしれないと諦めて寝た。
「スクールアイドルぅ?」
翌日、どうしても興味が尽きなかった俺は、友人である郡谷公博にスクールアイドルの詳細を聞くことにした。
「そう。どうも俺の知り合いが始めたらしいんだけど。あんまりよく分からないんだよね。金とかどうなってんの?」
下世話ではあるが、肖像権や金、性の話はアイドルとは切り離せないだろうと考える。
「ネットで調べりゃいいだろ」
「昨日は別の調べものしててな」
「ふぅん?」
なんだよと睨み付けると、何でもと小ばかにしたような笑みが返ってくる。
「ピンキリだな。事務所と契約して金貰ってるグループもあるし、部活動の延長線上みたいに金銭の授受は一切発生しない中で活動するグループもある」
「じゃあただのアイドルじゃねーか。何でスクール何て名目がついてるんだ」
「知らん知らん。ただ現スクールアイドルトップのA-RISEは営利目的では無いみたいだわ」
A-RISEという単語には聞き覚えがあった。主にネットニュースでの取扱いが多かったが、
地上波のニュースでも何度かスクールアイドルの代名詞として取り上げられていた。
「現つっても動画サイトのランキング一位ってだけだろ」
「まースクールアイドル自体が最近作られた言葉ってのもあるしなあ」
とにかく歴史が浅いから、今はどんな形でもスクールアイドルって名乗りを挙げれば、スクールアイドルなんだよと公博が続けた。
だったら、穂乃果たちが……いや、
「スクールアイドルが人気になるためには、どうしたらいいのかね」
「……さあ?」
その日一日、人気を上げる為にはという事について考えたが上手い案は浮かばなかった。
そこから三日を経ていよいよもって一人では限界だと判断して、俺は公博に相談を持ちかけた。
「まだ結成して日の浅いとあるスクールアイドルを人気者にしたい」
放課後、食堂で公博とだべりながら、話を持ちかけた。
「なんじゃそら」
「アイドルステーションってサイト知ってるか?」
「ああ。スクールアイドルの動画があるサイトな」
この三日間で俺が達成できた事と言えば、スクールアイドル周りの基礎知識をため込む事位だった。
通称アイステと呼ばれるこのコメント投稿機能付き動画サイトは、スクールアイドルが撮影したMVを投稿するための場所であり、ランキング機能とセットで順位付けを行うコンテンツでもあった。
人気の程は基本的に動画の再生数とコメント数、マイリスト数を変数にしてpt計算され測られる事となる。
勿論、口コミやアイステ以外の場所の人気も加味する為に、動画とは別に、投票機能というものも備えられているのだが、基本的に一端末からの投票は一日一票とされており、日に何度も回せる再生数等と比較すると、ランキングへの寄与度は高くないと言えた。
「そこで再生数をぶん回せば、それでランキングは上がる。上がれば沢山の目に留まる。だから回すにはどうすればいいのかってアイデアで詰まってるんだけど」
「ああ待て。司、ちょっと待て。まだよく分からん」
「どっから説明する?」
「最初から!なんで人気者にしたいのかってとこからだよ」
「それは、ちょっと面白そうかなって」
「そこは詳しく言いたくない訳ね、了解。喋りたいのも聞きたいのもあくまで方法についてだけ」
「……まあ、そうです」
公博は溜息を一つ吐いて喋り始める。
「まずはお前の考えを聞かせろよ」
「ああ。やっぱ再生数稼ぎの為に端末を複数用意してF5」
「あほか」
「分かってるよ。俺も考えて即却下したさ」
「次」
「ソフトを組む。再生数マイリスト投票でランダムに数字を上げる」
「却下却下。何?お前が思いついたのってそんな不正ばっかかよ」
「つってもなあ。それ以外じゃ確実性には欠けるし、何より認知とランキングの関係が卵が先か鶏が先かって感じで」
公博は大きく二つ目の溜息を吐いた。
「その確実ってのを捨てるとこからだな。人気、大げさに言えば流行をつくるって事だろ。大衆を動かすのに確実も何も無いって」
「んじゃ八割見込みって事でアイデアを出すのに協力してくれないか」
「50%50%だ。策を練ってトライしただけでもう十分。そういうもんだろ」
確率には不満だが、まあそういうものかという思いも確かにあった。
何より、他人の意見が欲しくてこちらから持ちかけた話題だ。提案や意見には素直に頷く。
「分かった。それで頼む」
「じゃあまずは線引きからだな。スクールアイドルの人気アップの為にはランキングアップが絶対。ランキングアップの為には投稿動画の再生数が回る事が絶対。これがお前のこれまでの説明だ」
「ああ」
「これを前提とするかどうかってとこから考えよう」
「うん」
本当にそれしか無いのかという所から方策が生まれてくる可能性がある。公博はそう言いたいわけだ。
「ランキングアップが絶対は前提にしてもいいと思う」
「うん。俺も言いながらそこは同じく思った」公博が同意をする。そのまま彼は発言を続けた。
「スクールアイドルが歴史が浅いながらもここまで大きなモノになったのは、インターネットっていう場所を持ってたからだ。そして仕掛けた側が分かり易く順位を決める絡繰りを用意したからでもある。分かり易いって事は単純って事だ。だからここに工夫の余地はあまり無いと思う」
「今の状態でランキングを介さず人気が上がるとしたら、それは地下アイドルや、別の動画サイトのアイドル、もしくは本当にバックに事務所を持つアイドルで。スクールアイドルとは違う存在だわな」
ただし、と公博は前置きし
「ランキング以外でも、自然に人気の出たアイドルがその後アイステに登録してランキングを駆け上がるって事も出来なくは無い訳だ」
「うん。ただそれはキチンと後ろにスポンサーがついてたり、長年活動を続けてきたっていうグループに限るだろう。結局認知される方法を時間や資金によって賄うという方法になる。
結成されたばかりのグループ。しかもその口振りだと本当に部活の延長線上である件のスクールアイドルには資金は無い?」
「ああ。もちろん時間もあまりかけたくない」
……らしい。廃校阻止が目的な訳で、来年の入学希望者の人数を稼ぐことが必要だと言う穂乃果の言から、遅くても今年の暮れ位までにはそれなりに認知されていなければならないという事になる。
「最低でも年末までだな」
「……それは相当だな」
公博が唸る。
「そうなると、目標の置き所をまず定めるとこからだな。年末までに100位以内に入る事位が限界だろう」
「出来れば30位、もっと言うと10位ぐらいが良いんだが」
「それはグループが本物かどうかだろ。露出の方法を考えた位でどうにかなる位置でもねーだろうが。あとは、動画編集とか曲をどれだけ良いものを用意できるかとかか」
「……だよなあ」
「お前作詞作曲動画編集出来るのか?」
「無理。公博は?」
「無理に決まってんだろ。結論、まあ100以内に入れば大成功。200以内でも大健闘。そういう話だ。それでお前が満足できないならこの話は終わりにした方が利口だな」
「いや、構わない」
「……結構マジなんだな」
呆れたような、感心したような、そんな複雑な声音で公博が言った。
俺自身も言われて始めて、自分が本気で取り組みたいと考えているのだという事を自覚した。
「話を戻すか。ランキングアップは前提。じゃあ再生数を回す事以外にはランキングアップの方法は本当に無いのか」
「マイリスト、コメント、投票。方法はあるけどいずれも制限がある」
「だな。とにかく決まったシステムでランキングアップが必要。最も効率的な方法は再生数の増加。ここも前提で決まりだ」
「その為の方法はどうするか、だな」
「要するに人気職なわけだから、まずは認知してもらう事が最重要だ。その為には大きく広告を打つ必要がある。
ネットでの告知。例えば、大きな掲示板で話題に上げるとかあとは、ブログを開設する。内容は、新規のスクールアイドルを応援するブログとか。そう銘打ちながらも人気を出したいグループのコンテンツを多めに投稿する」
「ステルスマーケティングってやつか。若干グレーっぽいな」
「興味があればいくらでも掘れるのがネットだが、無きゃ全く触れも出来ない気付けないのがネットでもある。より多くの人間に触れてもらうには間口を大きく取らなきゃダメだ。
その上で、知ってほしい情報を多く載せるしかないさ。それに何か売ってる訳じゃ無い。ステマでも無いだろ」
「別の動画サイトに転載するっていう方法もありか」
「ありだな。ただアイステが転載をよしとしているか規約の確認が必要になるぞ」
「特別禁止にはしてなかった」
数日前に見た規約ページを思い出しながら言う。
「ならそれもアリ。あとは、ネットの広告に出るようにする」
「広告?」
「あの小さい長方形の広告だよ。検索結果を記憶するphpかなんかに反応して、個人の嗜好に合わせて広告表示するやつだ」
「俺はあんまり見ないけど、まあアリか」
「間違ってクリックはよくある。リンク先を動画ページにしておけばそれだけで再生数プラス一だ」
「なるほど。いやでも金がかかるだろ。それじゃあダメだ」
「なら無し」
「ならっておい」
「いいんだよ。とにかく思い浮かんだものを片っ端から口に出してるんだから」
お前も考えろと急かされる。
「学校総出で知ってもらう?」
思いついたことをそのまま口にする。
「それアリだな」
「学校総出がか?」
「ああ。デカい事ばっかり考えて足元がおろそかだった。そもそもそういう小さなとこから考えて良かったんだ」
「そうかな。結局どこまでいってもインターネットの人気次第だから、学校での人気なんて小さなものだと思うけどなあ」
「でもそれがスクールアイドルの強みだ。小さな一人目のファンを得る事のハードルが低い。部活動として学校に認めて貰えれば、生徒職員全員がファンになってくれる。全員が無理でも半分は見込める。そして口コミからの認知が望める。一歩目はそこから始めるのが良いな」
「そこまでかあ?」
「これしか無いだろう。学校内にどれだけ受けるものを作れるか、受けて再生数が回って、学外の人間の目に触れる頃までに、内輪受けの空気をどれだけ薄められるか」
「まあ、学校内の人間なら、ファン止めましたーってすぐにはなりにくいかも……?」
「その学校に他にスクールアイドルが居た場合は人気が二分される恐れもあるがな。その辺はどうなんだよ」
「いや。ない。ほ、じゃなくてえーっと知り合いのグループが最初だって言ってたよ」
「じゃあオールオッケーだ。一歩目はそれ。兎に角学内全員ファン状態。それで再生数もある程度は稼げるだろ」
そしたら後は内容が良ければ、ネットの人気も得られる。と公博。
「内容は、まあ俺たちには無理だってさっき結論出たよな。司も俺も芸術は分かりませんだ」
「なら、どれだけ効率良く校内全員を取りこめるかどうかだな」
コンテンツの質を上げる方法が分からない以上、出来る事は効率や露出の仕方を思考する事に限られてくる。
いよいよやるべきことが見えてきた気がした俺に、公博は少しうんざりした様子で言う。
「そこまで考える必要あるのか……?それは同じ学校に通ってそこに流れる空気みたいなのを分かってるやつにしか分からないと思うが」
「兎に角案を出してみるんだろ?そうだな、校内に告知を打つって方向だ。掲示物を作成。部活を作った事を認知してもらう」
意趣返しのように笑うと、公博は苦笑しながらも応じてくれた。
「無難だわな。後は、やっぱ祭事の際のライブは欠かさない事。文化祭、体育祭、合唱祭、とかか」
「いいな。……いっそ定期ライブを行ってしまえばいいんじゃないか」
「アリ。だったら動画サイトにアップ→定期ライブの順がいいな」
「定期ライブ→動画サイトの方が、校内の生徒にとって特別感があって良いだろ?」
「あくまでも動画サイトでのランキングが第一だろうが。それに先に曲を知ってもらってた方がライブでは盛上がり易い。定期ライブなら、次もある訳だから、
たまたま見た生徒が、そのライブのノリを気に入って参加したいと思えば、予習する為に動画を見るだろ。そうすりゃ再生数もアップだ」
「なるほどね。そう考えると定期ライブはかなりありだな」
「その定期ライブの映像もアイステにアップすれば尚良しだろ。一定水準以上の撮影技術と編集力は必要だがな」
「それいいな。あとは……」
「待て」
公博が待ったをかける。
「そろそろまとめてもいいだろ。効果的な学内認知とは?って問いに対して、定期ライブや掲示物って意見が出て。それなりに有効だろうなって感想になった。それ以前の話についても、効率的な再生回数の増加方法は?って問いにネット内での告知やサイトへの誘導方法が検討された。共通する事は、ファンの目の前にコンテンツを置くことだ。それも常に新しいコンテンツを置き続ける事」
古いものだと当然飽きられてしまう。
喋りながら公博は纏めているようだった。
「常に新しいコンテンツを置く事を意識する。学校での人気はミクロでネットがマクロ。ファンとファンじゃない人間で告知方法のマトリクスをつくる」
「それぞれに適切な告知方法を考えるって事か」
「そんな感じ。校内/ファンには定期ライブ。校内/非ファンには祭事ライブ。ネット/ファンにはアイステ。ネット/非ファンには……」
公博は紙ナプキンに鉛筆で線を引きマトリクスを作成していく。
出来た四つの枠に喋りながら告知の方法を書きこんでいき、やがてその手がネット/非ファンの項目で止まる。
「ここだな。ネット/非ファンに対する告知方法がまだ考えられてない」
「でもこの項目は、大衆の最たるとこだろう。こここそ当たるまで方策を打ち尽くすしかない場所じゃないか」
「……」
公博は少し考えると。席を立ちあがる。
「考えてもさっぱりだな。この項目に向けて打つ告知はキリが無いと言うか。大がかりになりがちというか……ここは打ち止めか」
こんなもんでいいだろ?と公博がこちらを窺う。
「……」
そうかもしれないと思う。
途中から思考する事に夢中になっていたきらいがあるが、これらの案を出すという事が本来の目的だった。
ある程度まで案が出たのならば、実行に移すべきだし、そこで初めて分かってくるものもあるだろう。
考えなしでの行動はマイナスだが、机上の空論をこれ以上こねくり回したところでという感もある。
「そんなもんか」
残念なのは、これらの案は全て穂乃果たちがやっていく事であり、俺自身に出来る事は何一つとして無いという事だ。
詰まる所どこまでいっても穂乃果、ひいてはそのグループのメンバー自身が動くしかない問題で、外側に居る俺が何をしようと手が届くことは無いのだろう。
今更だが、自身の気持ちは音ノ木坂の廃校阻止や穂乃果の所属するグループのランクアップでは無く、穂乃果の力になりたいという所に置かれていたのだと気が付く。
「よし。結論も出たとこで帰るか」
紙ナプキンをゴミ箱に放りながら公博が言った。
俺は一つ頷き、公博の後に続いて食堂を出た。
同日の夜、穂乃果がまたうちに来た。
いつものようにほむらまんじゅうを土産に、まるで自分の家のように自然に上がり込み、茶の間で婆ちゃんとくつろいでいた。
俺が穂乃果に気付いたのは、夕食を取る為に二階の自室から降りてきた時だった。
その時には既にほむまんを三つ開け、体を倒しながら茶をすすり眠そうに眼をこすっていた。
台所から食器を取り、穂乃果の向かいに座り、夕食を食べ始める。
「司くん、こんばんは」
「ああ。こんばんは」
口にハエが止まりそうな鈍さで穂乃果が喋り出す。
「ずっと二階にいたの?」
「そろそろ中間だからな」
「そっかー。うちもそろそろだから司くんの所もだよね。やっぱり附属高校だとその辺も厳しいのかな」
「さあ。それは何とも。それより今日は何か用があったのか」
「ううん。何となくかなー」
「グループ名を教えてくれる気になった訳じゃないのか」
「んん。それは……うん」
そうなのかそうじゃないのか、穂乃果の返事ははっきりしない。
「穂乃果のグループは活動してるのか」
「うん。この間もライブやったよ」
「ライブ。学内でか」
「そう。ファーストライブ。ことりちゃんと海未ちゃんとやったんだ」
「へえ。園田がアイドルやるなんて意外だ」
例え穂乃果が誘ったとしても、俺の知っている彼女の性格からだと断りそうなものだが。
「そうかな?海未ちゃん可愛いし、大人っぽいし。十分アイドルでもイケると思うけど」
「そういう意味じゃない」
「そうなの?……ファーストライブ、楽しかったー」
まあどうでもいいやーと穂乃果はライブを思い出すように呟いた。
とりあえずは成功だったという事だろうか。なら良かったと思う。
「曲は誰が作ってるんだ?」
「真姫ちゃんが作ってくれるの。後輩の女の子だよ」
「その子もメンバーなのか」
「うん。最近一年生が三人入ってくれたんだー。花陽ちゃん、凛ちゃん、真姫ちゃん。三人とも凄い可愛いんだよー」
「振り付けは?」
「それは皆かな。衣装はことりちゃんが作ってくれるよー。海未ちゃんは作詞担当」
「へえ、順調だな」
南や園田にそんな特技があったとは知らなかった。
「うん。順調だよ、それに楽しいし。いつの間にかファーストライブの動画がネットに上がっててね、応援のコメントも付いてるんだよ?凄いよね」
「凄いな」
「うん!」
「でも何時の間にかってどういう事だ?」
「さあ。いつの間にか投稿されてて」
「アイステに?」
「うん。穂乃果たちが登録してたアカウントに何時の間にか投稿されてたんだ」
びっくりしたよーとあっけらかんと穂乃果は笑った。
アカウントの乗っ取りじゃないかと言えば、もうパスワードは変更したから大丈夫と返事が返ってくる。
「その動画の人気はどうなんだ」
「ばっちり。順調にコメントついてるよー。アイドルって凄いねえ、色んな人が一杯コメントしてくれるんだね」
「そっか。新曲はもう決まってるのか?」
「うん。って真姫ちゃんが言ってたよ」
下級生が三人グループに入っているという事は、既に部活化しており、校内の知名度もそれなりにある。
アイステには既にアカウントがあって、動画も投稿済み。コメント数もそこそこあるような口ぶりだ。加えて次の動画投稿の予定もある。
気になって思わず穂乃果を質問攻めにしてしまったが、放課後公博と喋った内容は既に実行されているようだった。
あの時間は無駄骨だったかと苦笑する。
「でもねー、やっぱり他のスクールアイドルの人たちも凄いなあって思うよ。穂乃果たちも頑張ってるんだけど、まだまだだねってことりちゃんといつも話してるんだ」
「そうなのか」
「そうなの。皆踊りとか歌とか凄い上手いんだー。でもでも、曲はみゅっ……じゃなくて穂乃果たちのグループの方が絶対良いと思う!」
「……そこまで頑なにグループ名を隠さなくても良くないか?」
「いーの。恥ずかしいんだもん。だから言わない」
「言ってくれれば再生数やマイリスト数に貢献できるんだけど?」
「……ぅ、いじわる」
「悪かった悪かった。ほら、きんぴらやるから」
「ホント!?ありがとー。おばあちゃんのきんぴらさん大好き―!」
穂乃果に残ったおかずを渡す。
「んぐんぐ。順調なのはいいんだけど、何か穂乃果たちに解散しろーって言う人が居るんだよねー」
「それは、動画のコメントでって事?」
「ううん。何か今日皆とハンバーガー食べてたらね、変な格好した女の人がいきなり辞めろーって。しかも穂乃果のポテト勝手に食べてったんだよー」
「大丈夫なのか?何かされたりとかしなかったか」
「だからポテト取られたのー!」
そっちはどうでもいい。
「それ以外でだよ」
「んん。それ以外は大丈夫。変な子だったなあって感じだけだよ」
「そうか。何かありそうならすぐ逃げろよ」
「うん。そうする」
そう言いながら穂乃果は笑った。
穂乃果が家に帰った後で、俺はアイステで音ノ木坂学院と検索して、無事µ'sの存在と動画に辿りつく事が出来た。
続き物だったけど断念
とりあえず書きたかったのは一話で書いた気がするのでこのまま短編で
たぶん主人公はいちファンとして応援したと思います