Fate/cross wind   作:ファルクラム

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第24話「ローマよ永遠なれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2人の剣が交錯した瞬間、

 

 全てが、終結した。

 

 手にした大剣を横なぎに振り切ったネロ。

 

 虹色の剣を突き込んだアルテラ。

 

 2人の少女は共に、背を向け合ったまま対峙する。

 

 その場にあるのは、圧倒的なまでの静寂。

 

 先程まで存在していた魔力の奔流も、そしてネロが作り出した黄金劇場も消え去っている。

 

 後には、互いの剣を構えた皇帝と大王、そして見守る暗殺者がいるのみだった。

 

 ややあって、

 

「グッ・・・・・・・・・・・・」

 

 呻き声と共に、

 

 ネロの手から、原初の火(アエストゥス・エストゥス)が零れ落ちた。

 

 苦痛に顔を歪め、その場に崩れ落ちるネロ。

 

 対して、

 

 アルテラは静かに剣の切っ先を下げると、ゆっくりと、膝を突いているネロへと振り返る。

 

「勝負あったな」

「・・・・・・・・・・・・うむ」

 

 アルテラの言葉に、ネロは躊躇うように答える。

 

 そして、

 

「余の・・・・・・・・・・・・勝ちだ」

 

 次の瞬間、

 

 アルテラは虹の剣を手放し、

 

 その場に仰向けに倒れ込んだ。

 

 あの時、

 

 アルテラの軍神の剣(フォトン・レイ)が威力を発揮する直前、

 

 一瞬早く、ネロの童女謳う華の帝政(ラウス・セント・クラウディウス)が決まったのだ。

 

 ローマを守らんとする者と、

 

 ローマを破壊せんとする者。

 

 両者の戦いは、ネロの勝利に終わった。

 

「あの時・・・・・・・・・・・・」

 

 地面に仰向けに寝たまま、アルテラは静かな口調で口を開いた。

 

「あの、劇場を見た時・・・・・・不覚にも思ってしまった」

 

 美しい、と。

 

 ただ、美しい、と。

 

 そして、同時にこうも思った。

 

 こんな美しい文明を、壊したくはない、と。

 

 だからだろう。

 

 激突の直前、アルテラの剣閃は僅かな、鈍りを見せた。

 

 その為に、ネロの剣が一瞬早く決まったのだ。

 

 それがなければあるいは、火力に勝るアルテラが競り勝っていたかもしれなかった。

 

「こんな事は初めてだった・・・・・・だから、迷った」

 

 ネロの守らんとする文明、すなわちローマを滅ぼすべきなのか否か。

 

 アルテラは破壊を司る存在。

 

 それ以外の事など知らないし、知る必要もない。その在り方は、今でも揺らいではいないつもりだ。

 

 しかし、見事な黄金の劇場。そしてそれに象徴されるネロ・クラウディウスと言う少女を前にした時、目の前にある文明を、確かに彼女は「壊したくない」と思ってしまった。

 

 彼女の敗因は、ただそれだけの事だった。

 

「なあ、アルテラよ。ただ壊すだけではつまらなくは無いか?」

 

 倒れたアルテラを見下ろしながら、ネロは誇らしげに胸を張って言い放った。

 

「この世には、そなたも、そして余ですら知らぬ素晴らしい文明が溢れているのだ。それをいちいち破壊してしまってはつまらぬし、だいいち、勿体ないであろうが」

「そう・・・・・・なのか」

 

 嘯くようなネロの言葉に、呟くアルテラ。

 

 確かに、思う。

 

 脳裏に浮かぶ、黄金の劇場。

 

 あんな光景が他にもあると言うのなら・・・・・・・・・・・・

 

 目をつぶるアルテラ。

 

 その体からは、金色の粒子が舞い上がり始める。

 

 消滅が始まっている。致命傷を受けた事で、アルテラは現界を保てなくなったのだ。

 

「いつか、見てみたい、ものだな」

「うむ。なぜかは知らんが、貴様とはいずれまた縁がある気がする。その時にでも、共に見て回ろうではないか」

 

 笑いかけるネロ。

 

 その言葉に、

 

 ほんの一瞬だが、

 

 アルテラが微笑みを返したような気がした。

 

 消滅するアルテラ。

 

 後には、立ち尽くすネロだけが残った。

 

 それはすなわち、

 

 連合ローマ、歴代皇帝、神祖、レフ、魔神柱、そしてアルテラ。

 

 このローマにおける、全ての抵抗勢力が潰えた事を意味している。

 

 紛う事無く、正統ローマ、およびカルデア特殊班の勝利だった。

 

「終わったな」

 

 そう言って笑顔を浮かべるネロ。

 

 緊張が解けた。

 

 次の瞬間、

 

 少女の背後から、刃が振り下ろされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ガキンッ

 

 間一髪。

 

 風を巻いて割って入った響が、手にした刀で、相手の刃を弾いた。

 

 漆黒の羽織を靡かせ、少年は襲撃者と対峙する。

 

「・・・・・・誰?」

 

 問いかける響。

 

 その視線からは、既に

 

 ネロに斬りかからんと振り下ろされた刃は、彼女を斬る事無く押し返される。

 

「ハハッ 今のを防ぎますか。完全に決まったと思ったんですけど・・・・・・思ったよりもやりますね」

 

 響に弾かれた少年は、そのまま大きく後退して着地する。

 

 顔を上げる。

 

 黒い軍服に軍用コートを羽織り、頭には制帽を被った少年。外見から察する年齢は、16~7歳と言ったところであろうか?

 

 もっとも、年齢に関しては、全くあてにはならないのだが。

 

 手には一振りの日本刀が握られている。恐らくこれが、ネロを斬ろうとした物の正体だろう。

 

 いずれにせよ、

 

 友好的な相手出ない事だけは確実だった。

 

「何奴かッ!?」

 

 とっさに、落ちていた原初の火(アエストゥス・エストゥス)を拾い構えるネロ。

 

 響もまた、少女の隣で刀を構え、謎の少年と対峙する。

 

 ここに来て、まさかの敵増援。

 

 その存在に、臍を噛みたくなる。

 

 既に響も、ネロも消耗している。どうあっても、これ以上戦える身ではない。

 

 だがそれでも、

 

 2人は相手を牽制するように剣を向ける。

 

 だが、

 

「いやいや、そう警戒しなくても、これ以上は何もしないですよ。さっきのだって、ちょっと試してみたかっただけだし」

 

 そう言ってへらへら笑いながら刀を収める。

 

 だが、それでも尚、響とネロは警戒を解かない。

 

 口調こそ丁寧だが、その内にある底知れない不気味さは隠しきれていない。

 

 相手が敵と分かっている以上、いつ、どうしかけてくるか分からない。であるならば、どんな状況でも即応できるようにしておかなくてはならなかった。

 

 だが、

 

 そんな2人の警戒を他所に、少年は肩を竦めながら口を開く。

 

「いや、それにしても驚きましたよ。あの状態で破壊の大王であるアッティラ・・・・・・ああ、アルテラでしたっけ? 彼女を倒すとはね。率直に言って感心した」

 

 その視線は、ネロを捉える。

 

「流石は皇帝、ネロ・クラウディウス。その実力は本物なようですね。正直、傷ついた今でも、君には勝てる気がしません」

「ならば話が早い。その首を置いて、とっとと消えるが良い」

 

 挑発的に言いながら、前に出るネロ。

 

 一瞬でも隙を見せれば斬る。

 

 その想いで、剣を持つ手に力を籠める。

 

 だが少年は、ネロの挑発に応じる事無く笑みを浮かべる。

 

「それも面白そうですど、今はやめておくことにします。どのみち、ここでの僕の役割は終わりましたしね」

 

 そう言って、指を鳴らす少年。

 

 同時に、

 

 少年の姿は、大気に溶けるように消えていく。

 

「それでは、皇帝ネロ。勝ち取ったあなたの未来がバラ色である事を心から願っていますよ。それに・・・・・・・・・・・・」

 

 少年は響の方へと視線を移す。

 

「小さき守護者の少年。君とは、いずれまた見える事になるだろう。その時まで、せいぜい頑張って人類史とやらを守っていてください」

「待て、お前はッ」

 

 刀を振り上げて斬りかかる響。

 

 完全に消え去る前に斬りつければ、あるいはダメージを与えられるかもしれない。

 

 だが、

 

 半瞬遅く、袈裟懸けに振り下ろした響の刀は、何も斬る事無く、虚しく空を切ったのみだった。

 

 完全に消え去った空間で、少年の声だけが陰々と響く。

 

《僕の名前は、取りあえずアヴェンジャー、とでも名乗っておきましょうか。真名については、もう少し仲良くなってからにしよう》

 

 舌打ちする響。

 

 その言葉を最後に、アヴェンジャーと名乗る少年の姿は完全に消えていった。

 

 だが、

 

 腹立たしいが、あの少年の言う通りだ

 

 奴等とは、いずれまたどこかで対峙する事になるだろう。それも、そう遠くない将来。

 

 自分たちが人理守護を目指すなら、対決は避けては通れないはずだった。

 

「どうやら、そなたらも何か、とてつもない物を抱えているようだな」

「ん、そんなとこ」

 

 ネロの言葉に頷きながら、響は刀を鞘に収める。

 

 あのアヴェンジャーと名乗る少年。

 

 彼が恐らくはカルデアを壊滅させたレフと同様、人理を滅ぼす側の存在であるなら、アヴェンジャー自身が言った通り、必ずまた戦う事になるだろ。

 

 それは予想ではなく、確信であった。

 

 結局、

 

 ローマを救い、レフを倒しても、状況は何一つとして好転しなかった訳だ。

 

 敵は相変わらず正体不明。人理消滅の危機はまだ去っていない。

 

 カルデア特殊班の戦いは、まだまだ終わりそうになかった。

 

 と、その時だった。

 

「ん?」

 

 突如、響の体からも、金色の粒子が零れ始めた。

 

 消滅現象だ。

 

 既に連合ローマを壊滅させ、レフ、アルテラを撃破。聖杯の回収も終わっている。

 

 全ての事象が元通りになり、人理定礎が復元されようとしている。

 

 それは同時に、このローマにおける響達の役目も終わった事を意味している。

 

 それに伴い、この世界における「異物」である響達もまた、カルデアへ帰還しようとしているのだ。

 

「ん、ネロ、お別れ」

「お別れ・・・・・・いや、そうかッ」

 

 響の短い言葉と共に、何かを察したようなネロは、弾かれたように顔を上げる。

 

 響達が消える。

 

 だとすれば、

 

 急がねばならなかった。

 

「すまぬ、響。この度の事は感謝する。立香達にもそう、伝えておいてくれ!!」

「あッ ネロ?」

 

 慌てて言い置くと、踵を返して駆けだすネロ。

 

 後には、首を傾げる響だけが残されるのだった。

 

 

 

 

 

 皆が消えていく。

 

 エリザベートも、

 

 スパルタクスも、

 

 呂布も、

 

 荊軻も、

 

 タマモキャットも、

 

 この戦いで、ネロを支え、共に戦ってくれた仲間達が、次々と消えていく。

 

 別れを惜しむ暇すらない。

 

 聖杯に呼ばれたサーヴァント達は役目を終え、次々と消えてく。

 

 そんな中、

 

 ネロは走っていた。

 

 もう、それほど時間は無い。

 

 その事は彼女にも判っている。

 

 判っているからこそ、足は前へと駆け続ける。

 

 足がもつれ、転びそうになるのをどうにか堪えて走る。

 

 伝えなければいけない。

 

 どうしても、彼女に。

 

 全てが終わってしまう前に。

 

 逸る気持ちを押さえずに駆けるネロ。

 

 やがて、

 

 少女の視線は、目的の人物を捉えた。

 

 やはり、と言うべきか、そこにはネロの予想通りの光景が広がっていた。

 

 だが、

 

 何とか間に合った。

 

「ブーディカ!!」

 

 ネロは万感の思いを込めて、自らの客将の名を呼んだ。

 

 呼び声に応え、振り返るブーディカ。

 

 その顔には、どこか微妙な苦笑が浮かべられていた。

 

「あーあ。来ちゃったのかい。できれば、このまま何も言わずに消えようと思っていたのにね」

 

 肩を竦めるブーディカ。

 

 彼女には、ネロが最後にどんな行動に出るか、予想が出来ていた。

 

 だからこそ、何も言わず、何も聞かずに消え去ろうと思っていたのだが。

 

 ネロが予想外に早く駆けつけてしまった為、逃げるに逃げられなくなってしまったのだ。

 

 既にブーディカの体からも、金色の粒子が立ち上り、消滅現象が始めている。

 

 とは言え、完全に消滅するまでには、まだしばらく掛かる様子だ。

 

 ネロは辛うじて、別れに間に合ったのだ。

 

 そんなブーディカの様子を見て、ネロも何かを察したように、神妙な顔で歩み寄った。

 

「やはり・・・・・・そうであったのだな、ブーディカ。そなたも、伯父上たちと同じく、消え去ってしまうのだな」

「・・・・・・気付いてたのかい」

 

 ブーディカはネロに、自分たちがサーヴァントと言う存在であり、本来の自分たちはとっくの昔に死んでいるのだ、と言う事を告げてはいなかった。

 

 だが、ネロは決して愚鈍な存在ではない。

 

 あらゆる事情を鑑み、ネロほど聡明な人間なら、サーヴァントの存在を察しても不思議は無かった。

 

「すまぬッ」

 

 消えゆくブーディカ。

 

 その彼女に、ネロは深々と頭を下げた。

 

「余は・・・・・・余はブーディカ、そなたにとんでもない事をしてしまった。そなたを辱め、あまつさえ、その命まで・・・・・・」

 

 既に述べた事だが、

 

 生前、ローマに対して反逆したブーディカ。

 

 そのブーディカを討伐し、死に追いやったのは他ならぬ、皇帝ネロ・クラウディウスが率いる軍勢であった。

 

 ネロはその事を恥じ、ブーディカに謝罪しているのだ。

 

 対して、ブーディカは嘆息すると口を開いた。

 

「いいよ、もう。どうせ今更だし。それに、わたしがやったことだって、お世辞にも褒められた物じゃなかったしさ」

「いや、しかしッ」

「それに」

 

 言い募ろうとするネロを制して、ブーディカは咎めるような口調で続けた。

 

「わたしが何も知らないとでも思っているのかい? そいつはいくら何でも見くびりすぎだよ」

「ブーディカ・・・・・・・・・・・・」

「あれが、あんたのせいじゃないって事くらい、わたしにだって判るさ」

 

 そもそも、ブーディカが反乱を起こすきっかけとなった、ブリタニアの王位継承問題。

 

 ブーディカの夫が死んだ後、ローマ側がブーディカの王位継承を認めず、それどころか搾取の上、母娘ともども辱めた事に端を発する事件。

 

 だが、実はこの事件はそもそも、私腹を肥やす事を目的としたブリタニア総督が、ネロに諮る事無く独断でブーディカ排除を推し進めた事が原因だった。

 

 その結果、怒り狂ったブーディカは反乱を起こし、ローマ全土を震撼させる一打決戦にまで至ったのだ。

 

 ネロが全ての事情を知ったのは、もはや取り返しがつかないくらい、戦火が拡大した後だったのだ。

 

「しかしッ それは結局、総督どもを野放しにしてしまった、皇帝である余の責任と言う事になる!! それなのに・・・・・・」

「そうだね。結局はその通りだ。だから・・・・・・」

 

 囁くように言うと、

 

 ブーディカは、

 

 そっと、

 

 ネロの体を抱きしめた。

 

「それも全部ひっくるめて『もう良い』って言ってるんだよ」

「ブーディカ・・・・・・・・・・・・」

 

 視界が、歪む。

 

 涙で、何も見えなくなる。

 

 ただ、自分を抱きしめてくれる、ブーディカのぬくもりが、どこまでも温かくネロを包み込んでいた。

 

「さあ、顔上げて。ああもうッ 泣くんじゃないよ、みっともないッ 折角勝ったのに、皇帝陛下がそんなんじゃ、兵士たちに示しがつかないだろ!!」

 

 そう言うと、ネロを放すブーディカ。

 

「笑って、ネロ。最後は、あんたの笑顔で見送っておくれよ」

「う、む・・・・・・うむッ」

 

 促されるまま、

 

 涙でグチャグチャになった顔で、無理やり笑うネロ。

 

 答えるように、笑顔を返すブーディカ。

 

 同時に、金色の粒子は、天に昇って消えていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 こうして、ローマにおける戦いは終わった。

 

 既に、戦いを終えた立香達、特殊班ははレイシフトでカルデアへ帰還し、今は自室で休んでいる。

 

 彼らは今回も、本当によくやってくれた。

 

 報告書を読み進めながら、ロマニ・アーキマンは険しい表情を作る。

 

 明るい報告を聞いていると言うのに、その表情は冴えなかった。

 

 聖杯は無事に回収。崩壊しかけた人理の修復にも成功した。

 

 それどころか、因縁のあるレフ・ライノールも撃破。オルガマリー所長をはじめ、多くのカルデア職員たちの仇も討つ事が出来た。

 

 そして、特殊班メンバー全員の無事な帰還。

 

 紛う事無き、大勝利であった。

 

 だが、

 

 いくつか、無視できない事態が発生したのもまた、事実である。

 

 未だに正体の判らない、天空の円環。

 

 レフが示唆した黒幕の正体。

 

 敵の目的と動機。

 

 響が遭遇したと言う、アヴェンジャーと名乗る少年。

 

 それに、

 

「ソロモン72柱・・・・・・魔神柱、か」

 

 指令室の中で1人、ロマニは呟きを漏らす。

 

 そのキーワードがもたらす、大いなる凶兆。

 

 この先、カルデアが進むべき未来を闇に閉ざすあのような不安が湧いてくる。

 

 だが、

 

「そんな筈が・・・・・・ない」

 

 ロマニは、絞り出すように呟く。

 

 そう。

 

 そんな事はあり得ないはずなのだ。

 

 敵の正体が、まさか・・・・・・・・・・・・

 

 と、

 

 そこで扉が開き、誰かが入ってくるのが見えた。

 

 その人物の姿を見て、ロマニは苦笑を漏らす。

 

「やあ、お帰り」

 

 立香達とは別便で戻ってきた相手に、ねぎらいの言葉を掛ける。

 

「今回も随分と、無茶したみたいだね。言っておくけど、君はまだ万全とは程遠いんだからね」

「仕方ないさ」

 

 ロマニの言葉に、相手はそう言って肩を竦める。

 

「みんなが必死になって戦っているのに、俺が休んでいる訳にはいかないだろ」

「まあ、君らしいと言えば君らしいけどね」

 

 そう言って、ロマニは苦笑を浮かべる。

 

 まあ、口で言って留まるような人物なら、そもそも負傷を押してレイシフトなんぞしないだろう。

 

 それだけの事をしてでも、彼には守りたい物があると言う事だった。

 

「君の傷もだいぶ癒えてきている。次くらいには、だいぶ戦えるようになっていると思うよ」

「そいつはありがたい。いつまでも援護射撃ばかりじゃ、あいつらに申し訳ないからな」

 

 そう言って、肩を竦める。

 

「敵はますます強くなってきている。はやいとこ、こっちの体勢も整えないと、取り返しのつかない事になるからな」

 

 そう言うと、ロマニに手を振りながら出て行く。

 

 その背中を見送ると、

 

 ロマニは1人、嘆息する。

 

「判っている・・・・・・判っているさ」

 

 見上げる先にあるモニター。

 

 そこに、

 

 不吉の輝く輝点。

 

「次の戦いは、もう、始まっているからね」

 

 

 

 

 

 

第24話「ローマよ永遠なれ」      終わり

 

 

 

 

 

永続狂気帝国セプテム      定礎復元

 




マルクス・ユニウス・ブルータス

【性別】女
【クラス】アサシン
【属性】秩序・悪
【隠し属性】人
【身長】151センチ
【体重】53キロ
【天敵】ネロ・クラウディウス、ガイウス・ユリウス・カエサル

【ステータス】
筋力:E 耐久:C 敏捷:A 魔力:D 幸運:D 宝具:C

【コマンド】:AAQQB

【保有スキル】
〇主に捧げし
自身のクイック性能アップ。

〇罪の意味
スター獲得。スター発生率アップ。

〇偽りの仮面
1ターンの間、自身の回避付与。及びクリティカル威力アップ


【クラス別スキル】
〇気配遮断:B
自身のスター発生率アップ

〇単独行動:B
自身のクリティカル威力アップ

【宝具】 
我が愛しき主君に死を(メア・ドミナス・モース)
《敵単体に対する強力な対「王」属性特攻攻撃》
 ブルータスが行ったカエサル暗殺劇のエピソードが昇華し、宝具化した物。


【備考】
 連合ローマに所属し、ネロを「偽物」と断じ、命をつけ狙うアサシンの女性。とある人物こそが本物の皇帝であると信じ、その人物に絶大な忠誠を誓っている。

 真名「マルクス・ユニウス・ブルータス」

 共和制ローマ末期における、政治家にして軍人。

 そして、

 大英雄カエサルに対し、愛憎共に最も関わりの深い人物。

 父親を早くに亡くしたブルータス。

 そのブルータスの前に、母の愛人として現れたのが、他ならぬユリウス・カエサルであった。

 カエサルはブルータスを大変気に入り、実の子供同然に可愛がったと伝えられている。

 その絆は、決して断ち切れるものではないと思われていた。

 紀元前49年に起こったローマ内戦において、ブルータスはカエサルと敵対するポンペイウスの側の将軍として参戦した。

 その際カエサルは「戦場でブルータスを見つけたら、決して傷付けてはならない」と、異例の布告を発した。

 その事もあって、ブルータスはカエサルに恭順。カエサルもまた、自身に降ったブルータスを厚遇したとされる。

 そのまま行けば、間違いなく順風満帆だったであろう、2人の人生。

 だが、そこに影が差すとは、本人たちですら考えていなかった。

 急速に台頭するカエサルを苦々しく思っていた元老院議員たち。

 当時、腐敗しきっていたローマ元老院にとって、自分たちの権益を脅かすカエサルは、目障りな存在でしかなかった。

 やがて、彼らの目は、カエサル第一の側近とも言うべき、ブルータスへと向けられる。

 元老院議員たちは、言葉巧みにブルータスを懐柔し、やがて運命の暗殺劇へと導いていく。

 そしてその日、議会に参加すべくやって来たカエサルを、暗殺者たちが一斉に襲い掛かる。

 とは言え、カエサルも軍人として長年慣らした大英雄。たとえ不意を衝かれたとはいえ、暗殺者如きに後れを取るはずが無い。

 そう、例えば、「身内の中の敵」でもいない限りは。

 戦闘中に背中から刺されたカエサル。

『ブルータス・・・・・・お前もか』

 それは余りにも有名な、カエサルの最後の言葉だった。

 やがて起こる、戦争。

 オクタヴィアヌス、アントニウス等英雄達に率いられたローマ軍に敗れたブルータスは、やがて最後を悟り、自害して果てたと言う。

 聖杯に掛ける願いは「カエサルを皇帝にする」事。





衛宮響・浅葱

【コマンド】:BBAQQ

【保有スキル】
〇疑似・魔力放出:D
《自身の攻撃力アップ、宝具威力アップ(1ターン) スター発生率大幅アップ(3ターン)》
 本来なら、潤沢な魔力量を誇る英霊のみが使用する魔力放出を、疑似的に再現したスキル。ただし、響の魔力量では攻撃に使うにしろ強化に使うにしろ、充分とは言えない為、特殊な使い方で弱点を補っている。
 

【宝具】
〇盟約の羽織・浅葱
 盟約の羽織の通常状態。スキル「疑似・魔力放出」が使用可能となる他、響はこれを応用した「鬼剣:蜂閃華」を使用可能となる。

【鬼剣】
〇蜂閃華
《敵単体に対し超強力な防御力無視攻撃&攻撃力をダウン(3ターン)》
 「疑似:魔力放出」を応用した響独自の剣技。超神速の抜刀術。





衛宮響・影月

【保有スキル】
〇?????

【宝具】
〇盟約の羽織・影月
?????

【鬼剣】
?????


>ブルータス
「王属性」持ちって意外に多いから、こんなもん実装されたら、対鯖戦闘では随分と使い勝手が良い感じになりそう。しかも天敵であるキャスターには王属性持ちは、相対的に少ないから猶更だと思う。

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