393に転生しました   作:ヨロシサン製薬

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最終話 卒業する393

「急にー歌うよー」

 

という感じで、今は完全聖遺物ネフシュタンの鎧の起動実験中だ。

本来は1年前に行う予定だった、物語の発端である。

風鳴司令としては、実験は懸念事項が全て片付いてからでも遅くないと考えていたそうだ。

しかし特異災害対策機動部の上層部では、異なる意見が主流となっていたらしい。

日本政府が所持する唯一の完全聖遺物となってしまったネフシュタンの鎧を、また外交で横やりを入れられないうちに早期に起動させたいという主張である。

 

元から実施予定だったこともあり、計画の土台は出来ていた。

実験場として準備が進められていたライブ会場も、機材の搬入を行えばすぐにでも利用可能だ。

そんな好条件と偉い人の意向が合わさって、僕達からしてみれば急な実験となった訳である。

 

原作での起動方法は、ライブでオーディエンスのフォニックゲインを利用する元気玉方式だった。

しかし現在の日本には適合者が4人もいるのだからということで、僕達だけで完全聖遺物の起動を試みていた。

 

ツヴァイウィングの2人が立っていた舞台で、僕達は先ほどから歌い続けている。

シンフォギア奏者として最も古株であり、現役の歌姫である翼さんを中心にユニゾンしてフォニックゲインを高めていくのだ。

その様子を風鳴司令やオペレーターコンビが地下の実験場からモニター越しに見守っていた。

 

「フォニックゲイン、起動ラインに達しません」

「翼を中心に、もっと歌に魂を込めるんだ!」

 

スピーカーを通して風鳴司令の指導が入る。

原作では響1人でデュランダルを起動させていたが、本当に規格外だと思う。

こんなの4人掛かりでも相当に厳しい。

そもそも戦闘中とかではないので、集中力を維持出来ないのだ。

先ほどの風鳴司令の喝で、むしろ気が散ってしまったくらいである。

 

翼さんは眉間に皺を寄せて集中している。

クリスはちょっと気恥ずかしそうに歌っている。

響は……あ、目が合った。

僕と同様に集中出来ていないらしく、彼女は苦笑してみせた。

 

それにしても、シンフォギアのコスチュームは少しエッチだと思う。

ボディースーツが体の輪郭をはっきりと浮かび上がらせているのだ。

しかも響の場合、黒い部分はともかくオレンジの所は完全にスケスケだ。

おかげで可愛いお臍も、胸の谷間も、お尻の割れ目だってバッチリ見えてしまっている。

でもそれはあくまで健康的なエッチさであり、こんな響も新鮮でアリだと思う。

 

「フォニックゲイン、急速に上昇を始めました。これは神獣鏡からです!」

「未来君、いいぞ! その調子だ!」

 

響もいいが、クリスも負けず劣らずに可愛い。

彼女の魅力をおっぱいに見出すのは素人だと思う。

たくさん愛を勉強した僕に言わせると、その恥じらいこそが最大の萌えポイントである。

 

赤を基調とした露出過多な衣装に身を包んだクリスをじっと見つめる。

するとこちらの視線に気づいた彼女は、少し顔を赤らめぷいっと目を逸らしてしまうのだ。

まさしく至高である。

 

「フォニックゲインが上昇を続けています。もう少しで起動ラインです!」

「皆、気合いを入れろ!」

 

そして可愛いより綺麗と評されることが圧倒的に多いだろう翼さんも、とても美しい。

凛々しい表情で歌う翼さんは、こんな姿にも関わらずエッチな雰囲気が微塵もない。

そのスラッとした肢体と端正な顔立ちは、むしろ裸身に近づくにつれて原初の美を感じさせる。

異性よりも同性にモテると聞いていたが、なるほど納得である。

同じアスリート体型な仲間として僕も憧れてしまう。

 

「フォニックゲイン下降! みんな、頑張って!」

「ここが踏ん張りどころだろうがっ!」

 

僕が気を散らしている間に、なんだか周囲がバタバタし出したようだ。

後で怒られないよう、僕もそろそろ集中しなければ。

頑張って歌っているが、どうやらフォニックゲインの低下が止まらないらしい。

その時、歌を中断して響が言った。

 

「みんな、手を繋ごう!」

 

響は両隣の僕と翼さんに手を伸ばす。

その手を取って、クリスの手も握りしめる。

みんなの体温を感じながら歌っていると、それがなんだか自分の温度のように感じられる。

 

「フォニックゲイン反転、急上昇しています!」

「いいぞ、その調子だ!」

 

お腹の底から熱が溢れ出しているみたいだ。

ギアからのフィードバックも増えているのか、体に負荷が圧し掛かってくる。

でもそれをみんなが支えてくれているようにも感じる。

そしてこの圧倒的な歌の爽快感。

 

ウェル博士は正しかった。

ああ、これは確かに愛だ。

 

「ネフシュタンの起動、確認しました!」

「よし、実験は成功だ。皆、ご苦労だった」

 

司令の言葉を聞いて、僕達はその場にへたり込んだ。

トランス状態が解除されて、疲労が一気に襲い掛かってくる。

でも気持ちの良い達成感があって、手を繋いだままの響と微笑み合った。

そんなまったりとした空気を切り裂くように、突然風鳴司令が声を上げた。

 

「ノイズだとぉッ!?」

 

 

 

 

 

 

疲労で立ち上がれない僕達を取り囲むように、大量のノイズが出現している。

原作と違い、オーディエンスがいないことが唯一の救いだ。

 

最初に立ち上がれたのは、適合係数の高い翼さんとクリスだった。

僕と響を守るようにしてクリスが弾薬をばら撒き、接近してきたノイズは翼さんが薙ぎ払う。

それでもノイズの数が多すぎてフォローしきれず、僕達は葡萄みたいなノイズの自爆に巻き込まれてしまった。

 

「いったたぁ……」

「響、無事?」

 

ただでさえ疲労とフィードバックで体が重いところに、爆発の衝撃である。

体のそこかしこが悲鳴を上げていて、どこが痛いかすらも分からない。

幸いシンフォギアを纏っている僕達は炭にならずに済んだけど、このままでは普通に殺されてしまいそうだ。

 

「うん。大丈夫だよ……じゃ、ないかもね、これ……」 

「葡萄みたいなのが一杯いるね」

 

僕達が弾き飛ばされた場所は、運悪く大量の葡萄型ノイズがいる死地であった。

さっきは1体の自爆でもキツかったのだ。

こんなにたくさんの葡萄みたいな爆弾にやられたら、僕達は肉片も残らないだろう。

 

本当は響だけでも安全地帯まで投げ飛ばしてあげたいが、疲労と痛みで腕が上がらない。

だから僕は、倒れている響に覆い被さった。

僕に出来ることは、自身の体で響の盾となることくらいだった。

 

「未来、ダメだよっ!」

「響、じっとしてて」

 

ノイズ爆弾の気配を背中越しに感じる。

いよいよ最後の時なのだろうか。

腕の中の響だけでも守りたいと願い、僕は覚悟を決めてぎゅっと目を瞑った。

 

「ずおりゃあああああ!!!」

 

なんか凄いのが来た。

命拾いをした僕が最初に思ったことは、そんな身も蓋もない感想だった。

僕の目の前には、ネフシュタンの鎧を身に着けたOTONAの姿があったのだ。

 

「でりゃああああああ!!!」

 

そもそも完全聖遺物は、男でも装着出来るものなのだろうか。

2期でウェル博士がソロモンの杖を使っていたから、起動した完全聖遺物なら問題ないのかな。

 

「どりゃああああああ!!!」

 

それにしても絵面が酷い。

露出が多い黄金鎧なので、別作品のアニメのパチモノのようだ。

 

「せりゃああああああ!!!」

 

愛とは真逆の感情で適合係数が下がったせいか、僕のシンフォギアがパージされてしまった。

響もいつの間にか私服姿に変わっていたが、もう僕達に命の危険はないだろう。

 

「うおりゃあああああ!!!」

 

というかもう、風鳴司令だけでいいんじゃないかな。

 

 

 

 

 

 

これは後日談になるが、相互協力を確認した直後のこの襲撃には流石の日本政府も怒り、アメリカへ厳重な抗議をしたそうだ。

それに対して「全ては櫻井了子の犯行であり、アメリカは彼女と既に手を切っているので関知しない」というのが正式な回答だったらしい。

 

その言い草にキレた風鳴司令は、ネフシュタンの鎧を身に纏ったまま単身アメリカへ乗り込み、FISを発剄で叩き潰して櫻井了子からソロモンの杖を強奪してきた。

アメリカの抗議に「全ては風鳴弦十郎の犯行であり、日本は彼と既に手を切っているので関知しない」と答えたそうだ。

 

時間軸的には原作の1期すら始まっていない。

ノイズは現れなくなっても、それ以外に問題は山積みである。

しかし例えどんな困難が待ち受けていても、きっと風鳴司令が発剄で解決してくれるはずだ。

2課が解散して装者を予備役になった僕達は、その雄姿を遠くから見守ろうと思う。

 

今日はリディアン音楽院中等部の卒業式である。

地球の平和はOTONAに任せて、これからは響と一緒に学校生活を楽しみたい。

 

「これからも響のために、がんばろう……」

 

高校生になったら、響とたくさん放課後デートしようと思う。




まとめ方が下手過ぎて最終話だと気づいてもらえない不具合を修正しました。
ご迷惑をお掛けして申し訳ありません。

この作品を読んで下さり、ありがとうございました。
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