他の世界の自身から何かを受け取ったのか、この世界のレフ・ライノールは他の自身より一つ多く手を打った。
それはカルデアのエネルギー源に、自身の仕掛けた爆弾が爆発した時に同時に起動する呪いであった。
解呪するには神代の魔術師クラスの腕前の者が居なければならない上に、発電システムを完全に停止しなければいけない仕組みだった。
その呪いによってカルデアはそもそもサーヴァントを召喚することも出来ず、所属するのはデミ・サーヴァントであるマシュ・キリエライトのみ。
判明したのは特異点Fからどうにか帰還した後、改めて各機関を調べた事で分かった。
故に、マシュは「己が最後の盾であり、また道を切り開く剣」となる事を決意した。全ては、あの時に手を繋いでくれた先輩の為に、元々は魔術も知らない一般人であった彼を、元の平和な世界で過ごしてもらうために。
例え自分がどうなろうとも。
マシュは人類最後のマスターとまなった彼と日中を共に過ごし、彼が眠りについてからシミュレーションルームで訓練を開始する。疲れ果て、フラフラになりながら自室へと帰る毎日。
レイシフト先では先達たるサーヴァント達に教えを乞い、技を、心を、そして武具その物を受け取った。
先輩の身を守る為に遠隔での宝具展開を身に付け、自らは渡された武具でもって敵を倒した。
しかし、その危うさを感じたサーヴァント達は、日常の安らぎも与えていた。ジャンヌと作ったサンドイッチを食べさせあったり、ブーディカから教わった、少し失敗もしたブリタニア料理を食べてもらったり、浜辺で遊んだりもした。
それらの思い出を胸に、マシュは無理を続けた。道中で手に入れた聖杯を、本来は使えない筈のマシュの強化に使い、少しずつ霊基にヒビが入り、それはいずれ表面化していった。
だが、それは彼女の夢に現れた白いローブの男性が『頑張る少女への些細な応援』だと魔術で隠してくれた。
進む毎に強くなる、常人ならば絶叫する程の激痛の頻度を増しながらも、心配させまいと笑顔で先輩と特異点を越えていく。
先輩の泣き顔を見たくないからと、そう語る彼女に、ロマンもダヴィンチも口を塞がざるをえなかった。支える事も出来ない自分に強い怒りを感じても。
越えていく、越えていく。
無理だと心が折れそうな時、先輩の手を握り勇気を貰う、温かい声をかけてもらい歩を進める、共に食卓を囲み、共に守れたことを喜びあい、不可能とも思われた偉業を成し遂げていく。
魔術で隠されていても、彼女の全身には深くヒビが走り続けていた。全ての元凶と相対した時には、絶え間無く激痛が走り続けていた。
それでも、彼女は先輩を守り抜き、最後の一人となって、元凶をその盾で倒した。
だが、彼女の身体は限界だった。魔術は消え、本来の姿が顕になる。その、見ただけでどうにもできないと誰にでも分かるヒビだらけの身体を、先輩は呆然と見る。
最後にと、彼女は優しく抱き締めて欲しいとねだった。
まるで幼な子の様に、誇らしげに、笑顔で。
もう時間が無いと悟り、そっと抱き締める。
「ありがとう。俺には勿体無い程に立派な、自慢の後輩だ」と、抱き締めた衝撃で砕け散っていく彼女を涙を流しながらも笑顔で見送る。
彼女は足元から散りながらも、悪戯っ子の笑みを浮かべて、彼の唇にそっと触れて消えた。
「あ、ああ、あああああああああ!!」
完全に消えた後、彼はカルデア管制室で泣き崩れる。
『やれやれ、これじゃぁハッピーエンドとはいかないからね。キャスパリーグ、僕達で二人に最高のプレゼントを贈るとしよう。』
二人の奇跡的な再会は、どうやら約束されたようだ。
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