ジャパリ・フラグメンツ   作:くにむらせいじ

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 残酷で悲劇的な話(直接的な描写は避けています)です。







〈 あげる、もらう 〉

 

 

 

 廃墟の町。土と水と空気は汚染され、動物も植物もない。二匹を除いては。

 

かばん   「もっと早く……戻ればよかったね」

 かばんの声は弱弱しかった。かばんはあおむけに倒れていた。かばんの右足、すねの骨が折れていた。

サーバル  「かばんちゃん、これ」

 かばんのそばに座っていたサーバルが、小さなかけらをかばんの口元へ持って行った。

かばん   「まだ残ってたんだ……ありがとう。遠慮なくいただくよ」

サーバル  「らしく、ないよ……なんで?」

かばん   「おなかすいちゃって、限界なんだ」

 かばんはかけらを食べた。

かばん   「ものすごく、おいしい」

サーバル  「……かばんちゃん、ずっと、食べてなかったの!?」

かばん   「…………」

サーバル  「わたし、たくさん食べちゃったよ!」

かばん   「たくさん……じゃ……なかったでしょ……がまん、してたでしょ……サーバルちゃんも、限界、だよね?」

サーバル  「…………どうして、どうしてこんなことに……」

かばん   「それ、ぼくのセリフ」

 かばんはかすかに笑ったが、すぐに顔をしかめた。

かばん   「サーバルちゃん、お願い…………すごく痛いんだ……。足だけじゃない、おなかも壊れちゃった……みたい……。もう、だめだね……。だから……らくにして、ほしいんだ」

サーバル  「……どうしてほしいの? ……わからないよ」

 サーバルの声が震えた。

かばん   「わかってるでしょ? ……爪で、ぼくの首を……」

サーバル  「できない!!」

かばん   「かみついても、いいよ……」

サーバル  「そんなことできないよ!!」

 

 間。

 

かばん   「サーバルちゃん……いっしょに帰ろう……さばんなに……。海まで行けば……誰かいるから……」

サーバル  「死んじゃったら、いっしょに帰れないよ!」

かばん   「帰れるよ」

かばん   「…………サーバルちゃん……ひどいこと言うけど……聞いて」

サーバル  「…………なんでも聞くよ?」

かばん   「サーバルちゃんと、ぼくが……ひとつになれば……いっしょに帰れるんだよ」

サーバル  「……なにを言ってるの?」

かばん   「サーバルちゃん……なにか食べないと……海まで、行けないから……」

かばん   「なに、か?」

 サーバルの声が震えた。

 

かばん   「ぼくを……」

 

サーバル  「やめて!!」

 

 サーバルは、頭を抱えて、手でけもの耳をたおしてふさいだが、4つの耳をふさぐことはできなかった。

 

 

かばん   「ぼくを、たべてください」

 

 

サーバル  「…………」

 

かばん   「食べ残し、ここに置いていっていいから、ね」

サーバル  「……ひどいよ……ほんとうに」

 サーバルは、ぽろぽろと涙をこぼした。そしてすすり泣きながら言った。

サーバル  「そんなの……そんなのわたしのほうが痛いよ!! ……ずっと……痛いまま……ぐす……生きていけって言うの?」

かばん   「……そうだよ……死んじゃだめだよ……。ぼくのいのちも……消えちゃうから」

サーバル  「かばんちゃん……いじわるだよ……。わがままだよ……」

かばん   「うん。ぼくのわがまま。ごめんね」

 サーバルは何も言えず、泣き続けた。

かばん   「…………じゃあ、どうするかは、サーバルちゃんが決めて」

 かばんは目を閉じた。

サーバル  「…………それ……もっといじわるだよ……」

 サーバルは、右手の人差し指から光る爪を出し、それを見つめた。

 

 サバンナで、サーバルは動物をつかまえては殺し、食べていた。当たり前のことだった。

 フレンズになったら、つかまえた獲物が、友達になった。当たり前のことだった。

 

 サーバルの涙が止まらない。

 

サーバル  「…………けっこう苦しむんだよ……これ……」

 

 サーバルは、人差し指の爪を、かばんの首にあてた。

 

サーバル  「かばんちゃん、だいすき、だよ……」

 

 

 




 
 あとがき

 読んでいただきありがとうございます。

 「短いもの・ネタ」の中にある、〈 こんなけものフレンズは嫌だ 〉 の「(1) 食べちゃう」、と「(2) シナリオが重い・説教くさい」です。
 〈 フェネックやめるのだ! 〉の「いのちを渡す」ということの別の形です。

 何度直しても気に入らないです(特にセリフが)。私の中からはこのくらいしか出て来ませんでした。
 この先の話も私の頭の中にあり、2パターンに分岐しています。それも書いたほうがいいのかもしれませんが、あんまりな内容なので書けませんでした。

  〈 フェネックやめるのだ! 〉 の時にも思ったのですが、これは書いていい物なのか?と思うんです。世の中にはもっと残酷な物語、あるいは実話がたくさんあるので、書いていいんでしょうけど、キャラをいじめて遊んでいるだけなんじゃないのか、とも思うんです。サーバルちゃんとかばんちゃんが好きな人が読んだら、怒るかもしれません。ごめんなさい。

 「こんなけものフレンズは嫌だ」と言っていたのに書いてしまいました。認めたくないけど、私はこういうのが好きなのかもしれません。



 [ 投稿日時 2018/03/29 01:49 ]
※ 一回削除して再投稿したため、最初の投稿日時はこれよりも前です。正確な日時は不明です。
 

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