METAL GEAR WORLD ーMonster Eaterー   作:ひいまるモツ

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モンハン要素ほとんど無いです

次回から増やせるといいな…


人生初の二次創作になるので、至らない点が多々あると思います。

お気付きの点があれば是非ご指摘いただきたいと思っておりますので、よろしければご意見などいただければ幸いです。


序章 天国の外側

 

 それは、1974年の事だった。

 

 もうじき11月も終わりを迎える頃、カリブ海は乾季へと入っており、人々は雨季の最期に訪れるハリケーンの脅威から解放された日々を過ごしていた。カリブは一年を通して温暖な気候ではあるが、雨季にはそれなりに肌寒い時もあるものだ。それがハリケーンと合わさればもう正しく災難の一言で、だからこそ年末とともにやってきた暖かな風にカリブの国々は陽気な雰囲気を漂わせていた。

 しかしそんな世間の裏で、この乾季の始まりを激動に揉まれた者たちもいた。それは、決して表の世界に明かされない裏の歴史。冷戦という虚構が生んだ、狂気の事件。

 

 後に『ピースウォーカー事件』と一部で呼称される出来事である。

 

 事の発端は、常備軍を持たぬ国、コスタリカで散見された武装集団であった。軍隊を持たぬ国家で跋扈する兵士の存在は、大きく薄暗い陰謀を感じさせるもの。だからこそ、その問題の解決に動く勢力が現れ、常に事件の中心にいた組織があった。

 

 名前を、Militaires Sans Frontières(ミリテール サン フロンティエール) ーーフランス語で『国境なき軍隊』を意味する組織だ。

 

 国家という枠組みにとらわれず、金で軍事力を提供する傭兵組織であるMSFは、コスタリカで平和を説くひとりの大学教授の依頼で国に起こる異変を調査することとなった。それが、今月(11月)の始めのことである。コスタリカへ運び込まれる核兵器、数多の巨大兵器群、全面核戦争へのカウントダウン。次々と判明する狂気のピースウォーカー計画は、あまりにも強大で恐ろしいものだった。きっとその計画は、世界すら滅ぼしかねないパンドラの箱。だがその箱を開けまいと、最前線に立ち続けた英雄と呼ぶべき存在がいた。それが、MSFの司令官であり、同組織の最高戦力であり、チェ・ゲバラの再来(20世紀で最も完璧な人間)とまで言われた男。

 

 スネーク(BIGBOSS)である。

 

 スネークは己の宿命に突き動かされ、コスタリカとニカラグアを駆け巡り、核抑止論という薄氷上に築かれた偽りの平和を守り抜くため戦った。最終的に彼はピースウォーカー計画に終止符を打ち、10年前(スネークイーター作戦)4年前(サンヒエロニモ)に続き、人生で三度目になる世界の延命を行った。

 

 それが、この1974年の11月に起こった世界の真実。事件の解決からは、まだ一週間も経っていない。

 

「だと言うのに、この海は穏やかなもんだな」

 

 海鳥の鳴き声を背景に、オレンジ色に染まるカリブ海を眺める男が呟いた。彼は鮮やかな金髪をオールバックにして、目にはティアドロップのサングラス。まるでロックンローラーのような印象を受けるが、オリーブドラブの戦闘服を普段着の如く着こなす兵士だった。

 

 彼は、先のピースウォーカー事件で活躍したMSFの副司令、カズヒラ・ミラーその人である。

 

 ミラーはMSFの拠点である洋上プラントの一角から、海鳥が優雅に空飛ぶカリブの夕焼けを堪能していた。傭兵組織であるMSFに休息の日はない。だが、あれほどの大事件の直後である。普段は鬼にも例えられるミラーだが、ここ数日ばかりは肩の力を抜いているように見えた。そんなミラーの何気ない一言に、言葉を返す者がいた。

 

「穏やかに見えるのは海面(表面上)だけだ。少し潜れば別の顔が出てくる」

 

 殺風景ながらも重みを含んだ台詞を吐いたのは、ミラーの隣にいる中年の男だ。ミラーはがっしりとした体格の良い男であったが、この男はより一層強靭な肉体を持っており、まるで兵器のように鍛え上げられていた。

 その身体をゴム系素材の黒いラバースーツで覆う彼は、豊かと言うよりは乱雑に伸ばされた髭を生やし、どこか都会的なミラーとは全く逆の、野生的と表現するに相応しい風貌だった。

 だが、何よりも目を引くのは男の右目を覆う眼帯だ。彼は隻眼であった。だからこそ残る左目は強い光を宿しており、圧倒されるほどの力強さを持っていた。

 男の外見は強烈な印象に包まれており、一目見たら忘れることはないだろう。そして、ともすればその生き様に魅せられて、二度と目を離すことができなくなる。そんなカリスマ性すら感じさせる彼こそが、このMSFの司令官。

 

「スネーク…」

 

 ミラーはため息交じりの返答で、呆れの意を表した。しかし、そのため息が全て吐き終わった後に、

 

「いや、わかっている。ただ、こんなもので心を落ち着かせるほどには参っているのさ」

 

「カズ、お前らしくもない」

 

 ミラーのため息は自分を笑うものへと変わっていく。スネークは自分の右腕と呼ぶべきこの男が疲弊している事を察しながらも、今行なっている作業を止めることはなかった。

 スネークは今、武器装備の点検の真っ最中であった。

 背負う装備は84mm無反動砲(カールグスタフ)XFIM-92A(スティンガー)で、やけに重武装である割にはそれぞれ対地目標用と対空目標用であるなど、節操のないチョイス。

 一見すれば素人のような装備の選択にも思えるが、間違ってもスネークがそんな愚を犯すはずがない。その武器装備の選択には、ミラーにはひとつの心当たりがあった。

 

「また怪物狩り(モンスターハンティング)か?」

 

 ミラーの質問に、スネークは短く唸るような声で肯定した。

 

 怪物狩り(モンスターハンティング)。その言葉は彼らの素性を知る者たちが聞けば、一種の暗号もしくは符牒のように聞こえただろう。しかし、この状況においてその言葉は、実際の字句以上の意味は持たなかった。つまり、彼らの言う狩りとは本物の怪物討伐なのである。

 

 任務の地は、Isla del Monstruo(イスラ デル モンストルオ)…スペイン語で怪物の島と呼ばれる孤島である。その場所をMSFが発見したのは、全くの偶然からだった。

 始まりは一匹の猫だ。

 時はピースウォーカー事件の真っ只中。任務中であったスネークは、コスタリカのとある砂浜にて未知との遭遇を果たしたのである。

 それは自らのことを『トレニャー』と()()()猫のような生き物との出会いであった。

 トレニャーは初対面のスネークに対し怪物狩り(モンスターハンティング)の話を持ちかけ、モンスター島伝説を僅かながらも仲間から聞いていたスネークは信ぴょう性のあるものだと判断した。何しろ喋る猫が実際に目の前にいたのだ。普通の人間ならばそれでもと信じることを放棄するかもしれないが、あいにくスネークは超常の敵を持つことに慣れすぎていた。

 それに伝説が本当であるならば、コスタリカ沖に本拠地を構えるMSFも無関係とは言えなくなる。伝説には空を飛ぶ怪物が謳われており、なれば上空からの急襲が考えられたためである。

 

 もちろん、この話を全く信じない者もいた。と言うより、実際にトレニャーとスネークの会話を目にしていた人間以外でこの突拍子も無い物語を信じたのは、オカルト好きでモンスター島伝説の情報源(ソース)でもあるチコくらいだった。

 MSF副司令のミラーもまた、信じない者たちのひとりであり、筆頭であった。つい、数日前までは。

 

 ミラーは当初、モンスター島への渡航と偵察には反対的だった。話そのものが眉唾であるし、なによりモンスター島周辺は電子機器を狂わせる特殊な磁気が発生しているため、航海や航空に向かない場所なのだ。

 MSFには確かに優秀なスタッフが揃っていて、機器の不調などものともしないクルーやパイロットが大勢いた。だが、物事には万が一というものがあり、その万が一を眉唾伝説を理由に引き起こすわけにはいかない。これがミラーの主張であった。

 

 しかし、後にモンスター島への上陸を推したのもまたミラーだ。曰く、「状況がきな臭くなり過ぎた」と。

 ピースウォーカー事件を解決する最中で、ミラー含むMSF隊員らは多くの困難にぶつかってきた。その中でも特に彼らの記憶に残ったのは、フィクションでしかお目にかかれないような巨大兵器との戦闘だろう。

 それらは最終的に全てがスネークの手で倒される事となったが、10年前にも(シャゴホッドでも)巨人殺し(ジャイアントバスター)経験(プレイ)していた彼と違い、他のMSFスタッフらには文字通り巨大な恐怖として見えただろう。

 もしそれが、MSFスタッフでも、ましてやソ連兵でもない、一般人が目撃していたら?

 きっとそれは、超常の出来事として扱われるはずだ。

 実際に、コスタリカの山奥でピースウォーカーを目撃したチコが、それを守り神(バシリスコ)として認識していたのは記憶に新しい。特殊な磁気故に人が近寄り難い環境である点も、その考えを補強した。コールドマンのような()()()()()()には、うってつけの場所ではないか、と。

 今回のモンスター島の件もピースウォーカー事件関連である可能性を見たミラーは、スネークにモンスター島の調査を要請した。

 

「コールドマンが遺した遺産の可能性がある。十分に警戒してくれ」

 ミッション開始時にスネークへと投げかけられた言葉の裏には、もし巨大兵器が発見された時、それを利用したい(ZEKEへの再利用)というミラーの思惑とMSFの事情が見えていた。

 

 果たして、その地で待ち受けていたものとは、クリサリスのような機械仕掛けの蝶などでは無い。正真正銘の飛竜(ワイバーン)だったのだ。はっきり言って、面食らった。おそらく相対したのがスネークでなければ、長年培った経験(プレイヤースキル)で自然に身体を突き動かす事などなく、カリブ海の藻屑と化していただろう。

 飛竜は伝説そのもので、一対の羽で悠々と空を飛び回り、口からは戦車砲も顔負けの火球を放った。生命力は驚愕の一言に尽きるほどの強かさで、生半可な銃弾など跳ね返しかねない硬質な鱗とそれでいながら機敏な動きを実現していた。加えて非常に獰猛で攻撃的。端的に言えば、強かった。

 

 しかしその飛竜も相手が悪かった。その時飛竜と戦っていたのは、20世紀で最も完璧な人間、スネークだったのだ。彼もまた化け物と呼ばれることの多い存在であり、だからこそスネークは飛竜に対し互角以上の戦いを繰り広げてみせた。

 偵察を目的としていたために決して重武装ではなく、潜入を目的とした対人武装であったにも関わらずだ。結果として彼は見事に竜殺し(ドラゴンスレイ)を成し遂げた。

 ビッグボスを彩る逸話に新たなページが刻まれた瞬間である。

 

 しかし怪物(モンスター)たちもまた生けるものであり、だからこそ複数個体が発見されるのも当然だった。MSFはこれまでに確認された個体を便宜上、『火竜』、『轟竜』などと呼称し、マザーベースに飛来する危険性のある個体の討伐を進めている。

 それはきっと、自然に反する人の業なのだろう。いかに怪物といえども彼らもまた生命に過ぎず、ただ生きているだけなのだから。それを己の都合で狩猟するなど、あってはならないのかも知れない。

 だが、スネーク達は行脚を止めることもできない。そこに立ち塞がる障壁があるならば、粉砕してでも進む覚悟はとうにできていた。

 

 その覚悟の塊が、ミラーの目の前で出撃準備を着々と済ませていた。全身の至る所に装備品をつけたスネークがそれを点検確認していく様は、手際の良さから洗練されていて、職人技のようにも見える。ここ数日間で怪物狩りに何度も繰り出しているスネークを見ながら、ミラーは、

 

「今日の対象は何だ?先日確認された、二体目の『核竜』か?」

 

「いや、『火竜』の方だ」

 

 スネークは手を進めながらも身体を揺らして、背負ったXFIM-97Aを見せつけた。この筒状の兵器は赤外線誘導弾を発射する携帯式防空ミサイルシステムだ。今回の狩猟ターゲットである『火竜』は口から火を噴く特性ゆえか、熱誘導が有効である。

 『火竜』は大きな翼で悠々と空を飛び回っている事も多いので、まだ米国では試作段階であろうコレを使うのが一番手っ取り早いのだ。

 スネークはMSFの優秀な研究班が作り上げた試作ミサイルに絶対的な信頼を寄せており、上機嫌な口調で、

 

()()には毒爪があるからな。なら、こっちも毒針(Stinger)を使わせてもらう」

 

 と、笑みを浮かべながら言ってのけた。そんな会話をしているうちに、スネークの準備は完全に終了したらしい。彼は葉巻を一本取り出して咥えると、しかし先ほどの点検でバックパックの奥底に追いやったガスライターの存在を思い出して舌打ちする。

 ミラーはまたしてもため息を吐くと、懐から自分のライターを取り出して火を灯した。

 

「なあ、スネーク。あんな事(ピースウォーカー事件)があった直後なんだ。少しくらい休んだらどうだ」

 

「俺はこの巣のボスだからな。雛鳥は親鳥の背中を見て育つもんだ。俺が模範を示す必要がある」

 

 ミラーから貰った火を吸い込み、葉巻特有の芳醇な香りを堪能しながらスネークは語った。口を開くたびに、濃厚な煙が漏れ出ている。

 

「悪いがあんたは鳥じゃない、蛇だ。蛇の真似をしようとして無茶した雛鳥がどうなるかなんて、俺は見たくないぞ」

 

「だったらお前が言い聞かせておけ。時には親父の説教より母親の子守唄の方が効く事もある」

 

「おい、俺はMSFの母親役か?」

 

「少なくとも財布を握ってるのはお前だろう。口うるさくもある。それに歌うのも好きだろう。まあ上手くはないが。ビッグママ(BIGBOSSの妻)とでも名乗ってみるか?」

 

「言ってくれるな。そんなに夫婦喧嘩がしたいのか」

 

 そんな軽口を叩きながらも、ミラーにはスネークを止める気などなかった。理由は単純なものがふたつ。

 

 まずひとつは、竜殺しという偉業を成し遂げられる英雄が、スネークくらいしか見つからなかったという点。人間としてはピークを過ぎたであろう39歳という年齢でありながら衰える様子を見せない彼の強靭さは、竜のそれに匹敵する。

 事実、スネークの強さは科学的に見ても説明できない要素が多くあった。ミラーはMSFの科学技術は世界の最先端であるという自信があり、当然医療関連においても優れているの一言では片付けられない境地にあると確信していた。傭兵稼業なんてやっているから、そんな医療班に世話になる者の数は多く、戦闘班でも最多の出撃率を誇るスネークもその中のひとりだ。

 だが、スネークの治療にあたった医療班スタッフたちは皆口を揃えて言うのだ。「ボスの回復力は異常だ」と。人間の自然治癒力、では説明できないほどの回復力をスネークは持っていた。

 聞けば、スネークは昔からそんな体質であったらしい。本人が一番よく知っているようで、数カ所骨折したとしても一週間の治療で再び戦場に立てるようになったと前に言っていた。本人は便利な身体程度にしか思っていないようだが、はっきり言って映画(スクリーン)の中に出てくるモンスタークラスだ。

 他にも逸話は様々だ。数発どころか数十発の銃弾で斃れないのは序の口、グレネードに巻き込まれたり、高所から落下したとしても死ぬことはない。耐久力の面だけでなく、筋力や反応速度、持久力なども科学では説明できない領域にあるそうだ。

 まるでコミックのヒーローのような存在だが、だからこそ周りは彼について行く事ができない。たった数日で竜殺しに適応した人間と肩を並べて無事でいられるのなら、そいつも十分にモンスターだ。

 

 そしてふたつめは、トレニャーという案内人と意思疎通(コミュニケーション)をとることができる人間もまた、スネークしかいないという点だ。

 もう何体もの竜を狩っているとはいえ、実際に狩猟を始めてからはまだ一週間も経っていない。モンスター島の地理的研究は、前述の磁気の影響も合わさって進みが鈍い。きっとMSFが世界最先端であるが故に、アナログな調査とは相性が悪いことも理由のひとつだ。

 だからモンスター島への渡航は、現時点でリスクが最も少ないとされるトレニャーの小舟が用いられていた。だからこそ、そんなトレニャーの謎言語をいつのまにか習得しているスネークでなければ、現状モンスター島へ行くことができない。

 スネークは「現地語の習得は諜報の基本だ」なんて抜かしているが、あれはどう考えても未知の言語だ。数日前からMSFの頭脳を集めて言語の解析にあたっているが、教師役が唯一できるスネークは多忙であるし、しばらくは結果を望むことはできないだろう。「発音が少なすぎる、どう理解しろって言うんだ!」という嘆きの声が聞こえてきているあたりからも、解明はまだまだ先になりそうだと予測できる。

 救いなのはトレニャー自身が協力的で、美味な食料や狩猟した怪物の皮などといった、MSF基準ではかなり安値の報酬で様々な要求に快く応えてくれることだろう。

 もしよければ一度マザーベースにも来てもらいたいとミラーは考えていたが、その交渉すらスネーク頼みである現状が壁となる。何度も言うように、スネークは休む暇などないほどに忙しいのだ。

 

「スネーク、くれぐれも気をつけてくれよ。もう何度目になるかは分からないが、それでもこれは竜狩りだ」

 

 だからそんなスネークに何かあっては困る。ビジネスパートナーとして。そしてひとりの戦友として。ミラーの言葉は彼の本心であった。

 対するスネークも、真剣な表情でミラーの言葉に頷いた。

 

「ああ。慣れてきた頃が一番危険だからな。いつも以上に慎重にやるとしよう」

 

「それと、トレニャーにも言っておいてくれ。今日のカリブは穏やかだが、操舵には細心の注意を払うように、と。あの小舟に波が当たるたび、見ているこっちがハラハラする」

 

「わかった。だが、見てくれは確かに小さいが、なんとかなるものだ。ゲバラ(エル・チェ)がキューバ上陸に使ったのも小舟(グランマ号)だった」

 

「確かにそうだが、いくらなんでも小舟の規模が違い過ぎやしないか?…それに、船で上陸したゲバラとカストロは政府軍の包囲攻撃を受けたんだぞ。例え話にしては縁起が悪い」

 

「まあそう言うな。実はあれはあれで性能が良かったりする。特に速度には目を見張るものがあった」

 

 スネークはそう言うが、ミラーの不安は拭えなかった。吹けば転覆してしまいそうな、プールで使うのがやっとな小舟に重武装の兵士が乗っかるのだ。当時(キューバ上陸)のグランマ号と同じかそれ以上に定員オーバーだろう。

 それに、速度性能に関してはただ単にトレニャーが猛スピードで漕いでいるだけにしか見えないのだが…。

 

「じゃあ行ってくるぞ。そう言えば今日の晩飯は何だったか」

 

「なんでも、パスとアマンダたち(女性スタッフ)がまたコスタリカ料理を振舞ってくれるらしい。今日はオージャ・デ・カルネ(肉と野菜の煮込みスープ)だそうだ」

 

「そいつは楽しみだ」

 

ウチ(MSF)の女性陣が料理するときは、なぜか皆んな帰りが早いからな。スネークも遅れないようにしてくれよ」

 

「肝に命じておこう。男性スタッフは大食漢ばかりだからな」

 

 どの口が言うのだと、ミラーはサングラスの奥で苦笑した。どう考えてもMSFで最も食を愛す健啖家はスネークであると言うのに。そんなミラーに見送られて、スネークはマザーベースを後にした。

 

 その後、コスタリカの砂浜でトレニャーと合流したスネークは夕暮れのモンスター島を目指す。到着した彼は、今回も事も無げに『火竜』を討伐した。回数を経るたび討伐タイムを縮めて行く彼は、夕暮れの出発でありながら、夕日にかなりの余裕を持たせた状態で帰路に着いたのだ。

 

 だが、赤く染まった海の帰り道。

 

 スネークと、彼を乗せる舟を操る一匹の猫。その目の前に、海底から天を貫かんとばかりの光線が放たれた。

 驚愕のあまり舟から落ちかける猫を側に、蛇は慌てて身を乗り出して水中を眺めた。そこには依然として打ち上げられる光線がはるか海の底から照射され続けている。

 光線を放つ竜は今までに『核竜』のみが確認されていたが。その光線はあまりにも太過ぎて、自らの体液を飛ばす『核竜』のそれとは明らかに別物だった。

 それに、この威力だ。撃たれた光線はどれほどの射程を持っているのか、その端が見えず、光線を中心に大波が荒れ狂っている。これは果たして、怪物(モンスター)が成せる技なのか。それとも、まだ見ぬ超兵器がやはりこの周辺に眠っていたのか。

 それも分からぬ間に、スネークは死そのものを想起させる悪寒に全身を貫かれた。

 

 ――ッ…まずい!

 

 咄嗟にスネークは重量のあるミサイルランチャーなどの装備品を投げ捨てて、トレニャー目掛けて全身で飛び込んだ。彼は猫を強く抱きかかえ、飛び込んだ勢いそのままに小舟から身を投げ出す。

 その瞬間だった。先ほどの光線もまだ消えていないのに、新たな光線がトレニャーの舟を木っ端微塵にかき消して天へと昇る。

 舟の主であるトレニャーは、己の相棒が消し飛んだ光景に悲しげな呻き声を上げた。だがそれも束の間、スネークと彼に抱きかかえられるトレニャーは、小舟を消し飛ばした光線の撒き散らす海水の余波に叩きつけられるように飲み込まれてしまう。

 

 その後も、何本もの光線が海面から天を貫いた。それは怒りの咆哮のようで、どこか生物的だった。

 …その光線の通った後には、一切の微生物すら残らなかったというのに。

 しかしやがて光線はひとつ、またひとつと本数を減らし、最後にはその全てが無くなって、天に昇るのは沈みかけの夕陽だけになる。

 

 水面には、残るものは何も無い。

 言葉を操る、奇妙な猫も。

 生ける伝説である、一匹の蛇も。

 

 ただただ静かな海だけが、死んだように佇んでいた。




次回更新は不明です

各種設定調べながら書いているので、遅くなるかも…
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