METAL GEAR WORLD ーMonster Eaterー 作:ひいまるモツ
2期団の親父さんのアレをそのままくださいよ…!
それまでランプ頼りだった室内から外に出て、男は片方しかない目を眩しそうに細めた。
外は澄み渡るような快晴で、わずかばかりの雲に遮られることなく太陽が照りつけている。太陽の位置は高く、おそらく昼時だろう。
「よし、行くとするか。そう遠くないし、歩きで行こう」
男の隣にいる陽気そうな青年が、目線だけは前方を向けて話しかける。
「迷ったりしないでね。なんなら私が先導しても良いわよ?」
青年の言葉に反応したのは、勝気な雰囲気漂う若い女性だ。彼女はきっと青年と付き合いが長いのだろう。からかうようにそう言って、自身も出発に備えて持ち物を確認している。
「流石の俺でもこんな近くで迷子にはならねえよ。それよりさっさと行こうぜ」
青年は少しばかり溜息を吐いて、しかし女性の言葉に不安になったか、懐からノートを取り出してそこに描かれた地図を確認し始めた。
そうして彼は目的地を指で示して、隣にいる隻眼の男へとノートを見せる。
「ここがアンタが見つかった場所だ。歩きでもすぐさ」
言われた男は頷いて、それを見た青年は更に追加で口を開く。
「武器もないんだから、俺から離れないようにしてくれよ。…えーと、そういや名前を聞いてなかった。アンタのことはなんて呼べば良い?」
青年が尋ねて、男は短く沈黙を挟んだ。何故ならば、男は名乗るべき名前など持ち合わせていなかったのだ。
しかし、あえて名乗るとするならば、
「……スネークだ」
もう10年もの付き合いになるかつてのコードネームが、やはり男にとって一番しっくりくるものだった。
1-3 怪物と狩人の世界
部屋から出たスネークはまず、それまで自分が収まっていた建物や周囲の建造物の外見に気を取られた。
何やら帆船を意識したような、――いや、実際に帆船として使用できる構造の建造物が所狭しと建ち並んでいたのだ。
中にはひっくり返されて屋根代わりにされているものや、半ばから折れた船体の断面をうまく利用しているものさえある。少し見上げれば、ふたつの岩山の間に挟まって折れかかっている船すらあり、もはや何でもありだった。
スネークが扉をくぐって出てきた部屋もまた、そういった船の内のひとつであり、彼が寝ていた部屋は船室であったのだ。
だからこそ窓がない部屋だったのかと、スネークは納得してひとり頷いた。
きっと、この新大陸調査団の拠点とやらは、航海でやってきた調査団の面々が自らの船を再利用して造り上げた施設なのだろう。
見た感じでは数隻の船は残しているようだが、それを考慮してもとてつもない覚悟である。
拠点は海に面しており、最初はスネークもここは船上であると錯覚したほどだが、ここまで陸地に乗り上げて改造しているとなれば再び船として使用することは厳しいだろう。
海を背に、文字通り背水の陣であるという訳だ。
それに規模も気になる。多少の期間で築けるほど、小規模なものではない。膨大な時間をかけて発展させた拠点なのだろう。
「スネーク、古代樹の森はこっちだ。来てくれ」
頭部以外を鎧に身を包んだ青年の言葉で、スネークは観察を止めることにした。この場所には再び戻ってくる事になるだろうから、観光は後に回しておけば良い。今は余計な事に気を取られている場合ではなく、案内役である青年の言葉が何よりも優先すべきことであった。
「あそこに門が見えるだろ?ほら、巨大な
青年が指差す先には、骨にも、牙にも見える巨大な物体が六本、地面から天へ向かって生えていた。
一見なにかの
「それで、お前は“ハンター”なのか」
スネークは自身の驚きはおくびにも出さず、代わりに質問を口にする。すると奇抜なモヒカンスタイルの青年は口角を上げて、
「そう、ハンターだ!ここにはつい最近来た5期団の推薦組として、やって来たってわけ」
そう言って笑顔を見せる青年の隣で、同じくスネークの方へと顔を向けながら勝気な女性も口を開いた。
「そして私はこのおっちょこちょいのパートナーである編纂者よ。彼、色々と足りないものだらけだけど、腕は確かだから安心して」
「編纂者?」
「ハンターひとりひとりと専属で組む情報統括者のことよ。新大陸での狩りは
そうやって話をしているうちに、スネーク達は先程話題にも上がった天然の門へと到達する。
これまでは木や網で組まれた人工の巨大な施設であったが、その門を境に明らかに自然が増えていた。地面は木板が途切れて土へと変わり、道の両脇には岩肌が露出している。奥には背の高い木々が何本も
「なあ、あんたもハンターなのか?」
門の間を抜けながら、青年がスネークへと問うた。
「いや、俺は
「そっか。なんか雰囲気が空から来たあいつに似てるからさー。てっきりハンターなんだとばかり」
「空から来たあいつ…?」
「俺らと同じ、5期団の推薦組のハンターのことだよ。ほら、さっきいた黄色い服の編纂者。そのパートナーのハンターで、アンタを最初に見つけたんだってさ。別に顔が似てるとかそういう訳じゃないんだけど、何というか…」
ハンターの青年は、顎に手を添えながら少し考える素振りを見せた。理論派というより感覚派に見える彼は、自分のイメージを表す言葉を探しているのだろう。そうしてハンターは口を開いて、
「状況を動かす存在っていうかさ。中心人物、というか。うーん、なんだろう。……変な言い方だけど、物語の主人公のような雰囲気がさ」
「よしてくれ、柄じゃない」
スネークは顔の前で手を振りながら少し笑い声を出す。苦笑いではあったが、それはこの
きっと、この陽気なハンターは
勝気な編纂者曰く、彼は確かな腕を持っているらしい。しかし、5期団の推薦組なるポジションに就けたのは、彼の持つ調和の力が評価されたこともあるのだろう。組織運営も行うスネークにとっても、彼のような才能は欲しい。
状況ゆえにピリついた心境ではあったが、このハンターは信頼ができると、心のどこかでそう感じていた。
「着いたわ。この先が古代樹の森よ」
編纂者に言われて、スネークは笑みを引っ込めて前方を見上げた。そこには太い木で組まれた第二の門があり、先ほどの天然の門とは違って外敵を防ぐための造りになっていた。
固く閉じられた門は無骨だが重厚な造りで、ここにいる人数では開けることすらできないだろう。
「こっちだ、スネーク」
ハンターに案内を受けて、スネークは人が通るために設けられた小さなスペースを潜り抜ける。すると、肌に触れる空気が先ほどとは全くの別物に感じられた。骨の髄から冷やされたような、張り詰めた悪寒が身を包む。
「ここから先は
ハンターに言われずとも、ここが人間の支配圏を離れた、動物達が闊歩する自然の領域であると知覚できる。
嗅ぎ慣れた臭いに、スネークは自分の身体が臨戦状態へと移行する感覚を認識した。森の踏破は以前にも何度かやっており、当時の経験を元に筋肉が環境に適した緊張を保つ。
しかし立派な森林である。見渡す限りの緑と澄み渡った水源が、豊かな生態系を育む見事な大森林だ。特に目を引くのは、スネークの進行方向から右前方に遠く見える巨大樹だ。あまりにも大きすぎるその大木は、片目を失ったスネークでなくともスケール感を掴めないだろう。一体どれだけの栄養と年月があればあそこまで成長するのだろうか。数多くの地を渡り歩いたスネークでもこれほどまでの樹木を見たことはなく、きっとこれが彼らの言う“古代樹”で、古代樹の森とはこの大木を中心に形成された森なのだろう。
門を通って少し歩くだけで、気まぐれのように出来ていた狭く細長い道が、開けた場所へと繋がった。直接は見えないが左方から波の打ち付ける音が聴こえており、きっとここがスネークの打ち上げられた浜辺で、今回の目的地だ。
だが、スネークの関心はそこにはなかった。
「あれは……」
スネークは呆然と口を開けて、前方を見つめた。そこにいたのは、太い四本の足を持つ生き物で、それだけならばありふれた動物に過ぎないのだが……。
「アプトノスね。もしかして、スネークさんは見るのは初めて?」
編纂者にアプトノスと呼ばれた動物は、どこからどう見ても恐竜の特徴を持つ生き物だった。最初は大型の哺乳類かと思ったが、アプトノスの全身は灰色の鱗という爬虫類的特長で覆われている。長い首と尻尾のシルエットは、白亜紀後期の北アメリカ大陸に生息していたとされる“パラサウロロフス”に似ているようにも見える。
そんな象ほどのサイズを持つ生き物が、スネークの見つめる先で群れを作って歩いていた。
「そういえば、アンタの住む大陸って、モンスターが少ないんだっけ?…アプトノスもいないのか?」
喋りかけてくるハンターは、スネークが目覚めた部屋にいた人間の一人である。スネークがある程度語った出自を彼も聞いており、しかしそれほどまでとは思っていなかったのだろう。信じられない、という感想が、ハンターの目から伝わってきた。
「…過去に似たような生物は存在していた。だが、何千万年も前に死滅している」
信じられない、と言う思いは、スネークもまた同じであった。確かに、ここは見知った世界などではなく、あのような存在が当たり前であることも有り得るだろう。
そもそも喋る猫やら火を噴く飛竜などは
だが、こうして生々しい生命の営み溢れる存在として目の当たりにすると、頭のどこかで拒否反応が出る。呑気に草をついばむアプトノスらが、どうにも現実だと思えないのだ。
それにもうひとつ、スネークの頭の中で警告を鳴らすものがあった。それは、アプトノスと呼ばれた恐竜の尾の構造である。尾の先端に、何本もの鋭く長い棘が生えているのだ。恐らく骨が変質したか露出しているのであろう尾の棘は、明らかに外敵を攻撃するための武器である。
アプトノスは人間など優に超える巨体であり、その体格から振り出される一撃は重い破壊力を持つだろうことが容易に想像できた。今の状況では、出会いたくない存在だと考えられる。
しかし、スネークの同伴者はそうは思わないらしい。陽気なハンターは決して大きくはないが明るい声で、
「でっかいけど、あいつらは温厚で臆病な性格なんだ。近づいても攻撃なんてしてこないし、こっちから手を出してもほとんどの場合は逃げるだけだな」
「今日のところは放っておいても良いと思うわ。ちょっかいを出さなければ無害だし」
勝気な編纂者も続いてそう言うので、スネークはひとまずその言葉を飲み込むことにした。理解は追いついていないが、考えるだけ無駄である。
「よし、ここを左に曲がるとエリア4の浜辺なんだけど…。やっぱりケストドンがいるな」
ハンターが先導してアプトノスまで近づいて、そこで左方を確認した。続いてスネークもそちらへと視線を向けるが、そこにいたのもやはり恐竜を彷彿とさせる生き物だった。
赤茶けた体色で、体格は先ほどのアプトノスほどは大きくない。それでも人間以上のサイズを持ち、発達した二本の後脚で歩行している様子が見えた。代わりに前足は退化しているのか、役に立つとは思えないほど小さく細い。そして特徴的な頭部。まるで装甲のような、堅牢そうな甲殻に頭頂部が覆われている。
それらの特徴もまた、過去の地球に存在していた恐竜に通じるものがある。確か、名前を“パキケファロサウルス”といった筈だ。先の“パラサウロロフス”のことも含め、MSFに身を寄せている小さな戦士から復元図を見せてもらった記憶がある。
「ケストドンは新大陸で発見された小型モンスターだ。草食だけど、性格はすこし攻撃的だな。ハンターが近づくだけで攻撃してくるんだ」
ハンターは忠告するが、しかし目的地はまさにそのケストドンがいる場所である。ケストドンたちが歩き、もしくは体を横たえて休んでいる場所こそが、岩場の中に気まぐれのように現れた浜辺だったのだ。
一体どうするべきかとスネークが頭を悩ませていると、その横でハンターは腰にぶら下げた
「ケストドンの生息状況はどうなってるんだっけ?」
「いたって普通。むしろ、最近はみんな大型ばかりで忙しかったから、増えてるくらいね」
「だったら狩猟してもダイジョブそうだな。スネーク、ちょっと待っててくれ」
ハンターは編纂者と少々やり取りをすると、勾配のきつい坂を勢いよく滑って海岸へと繰り出していった。あまりにも軽い身のこなしに、スネークが止める暇も無い。
「オスが二頭にメス四頭!」
待機しているふたりに聞こえるようそう叫んで、ハンターは剣を抜き放った。それと同時に跳躍し、今までの滑走の勢いをあわせて前方へと己の身体を射出。大きな声に気づいたケストドンたちがハンターの方へと顔を向けるが、もう遅い。ハンターは自らの身体が落下するのに合わせて左手に持った剣を振り下ろし、体重と筋力を十分に乗せた一撃をぶち込んだ。狙いは比較的柔らかそうなわき腹で、ハンターの振るった剣はあっさりとケストドンの身体を切り裂いてしまった。
「――!」
スネークはもう何度目になるかも分からぬ驚愕に左目を見開く。あの身体捌きは、明らかに常軌を逸したものだった。跳躍力も、その後に繰り出された斬撃も、生半可な筋力で為せる技ではない。少なくとも人類最高峰の身体能力を持つスネークでさえ、再現しろと言われたら首を横に振るだろう。
しかしハンターの身体能力に驚かされるのは、まだまだこれからだった。ハンターは空中からの奇襲を成功させた後、動きを止めることなく剣をふるって流れるような連撃を繋げて見せた。確かに腰の入ったよい斬撃ではあるが、それでもスネークの目はある程度の動きの無駄を発見していた。近接戦のプロフェッショナルであるからこそ見抜ける僅かな若さがそこにはあったのだ。だが、だからこそおかしい。たとえアレがスネークの思い描く完璧な身体捌きを実現したとしても、鱗に覆われた恐竜を容易く切り裂けるとは思えないのだ。鱗だけでなく、基本的に動物には硬い筋肉があり、さらに硬質な骨もある。いくら鋭い刃であろうとも、それを切り裂くためには相当の筋力と技術が必要だ。もしくは、それらを避けて攻撃するだろう。
スネークの目には、あの若いハンターの動きにはやや技術が欠けていると見えた。実際にはハンターの動きは洗練された実力者のもので、他のハンターも一流の動きとして太鼓判を押すほどのものであるのだが、人生の半分以上を戦いに費やしてきた伝説的英雄だからこそ気づける細かな問題点があった。だというのに、結果はどうだ。スネークの目の前で、六頭のケストドンが瞬く間に切り身に変えられていく。
つまりは彼の筋力が異常なのだろうか。スネークは隣にいる編纂者をちらりと見るが、彼女は特にこれといった表情を浮かべてはいない。ただ事務的にハンターが動く様を観察し、一頭また一頭と狩猟が達成されるたび、手元の本へと何かを書き込んでいるだけだった。
「スネークさん、どうかした?」
スネークの視線に気づいた編纂者が、顔を上げて疑問符を浮かべる。
「…いや、見事な動きだと思ってな。あいつはいつもあんな風に狩りを?」
「そうね。いろんな武器をそれなり以上に使えるから、いつもってわけではないけれど。でも、今みたいに片手剣はよく使ってるわ」
どうやらこれは何らおかしい光景ではないらしい。非常識人間を数多く見てきたスネークではあったが、それが常識的であるような対応をされてしまうと、流石にめまいがするような気分だ。
「よし、ひとまず終わったぜ。スネーク、アンタはオトモを探してくれ」
ハンターに言われて、スネークは海岸へと足を進めた。そこで待機しているハンターは、額に一滴の汗すら浮かんでいなかった。やはり彼は、人間離れした身体能力を有しているのだろうか。
……それとも、見た目に反してケストドンとやらがやけに柔らかな肉質をしているのか。
「じゃあ、
ハンターは片手剣を腰に納めると、その下に帯びていたのだろうか、あの総司令と呼ばれた初老の男も持っていた、やたらと大きなナイフを取り出した。それが突き立てられたのは、ハンターの足元にあるケストドンの死体だ。狩人らしく皮やら肉やらを剥ぎ取ってはポーチに収めていく。
スネークはそちらへ近づくと、ハンターが剥ぎ取りを終えた一頭に手を添える。軽く力をこめて死体を押してみるが、手に返ってくるのは重厚な感触だ。やはりその生き物は、見た目通りの堅牢さを持っている。
となれば、おかしいのはハンターの筋力か。
スネークは舌打ちとも唸り声ともつかない声を出して、ケストドンの死体から手を離した。非常に気になることではあったが、今はそれどころではない。本来の目的を達成するため、周囲を見渡しながら海岸を歩き出す。
しかし海岸は想像していたよりもずっと小さく、歩きながら見回るとほんの数十秒で確認する場所がほとんどなくなってしまう。周囲にはトレニャーの痕跡なども見当たらず、やはり彼の生存は絶望的だった。
スネークという漂着者の前例があるのだから、トレニャーも同じようにここに流されている可能性が高いと考えたのだが……。
「…スネーク」
海を見つめるスネークに、ハンターは静かに語りかけた。名前を呼ぶ以外で、なんと言ったら良いのか分からない様子だった。だがスネークもこれだけでは諦めきれない。彼はより周囲を見渡しやすくするため、海岸の脇にある岩場をよじ登った。しかしそれでもトレニャーは見当たらない。見えるのはケストドンの死体と、その脇でスネークを見上げるハンターと編纂者。それと、白波が立つ海に揉まれる、古代樹のものと思わしき木の枝だった。
不意にスネークの目の前を、赤いトサカ以外全身真っ黒な鳥が羽ばたきながら横切った。それはケストドンの死体へ降り立つと、死肉をついばみ始める。後から続いて何匹も何匹も、同じ鳥がやって来ていた。
生命の循環が感じられた。波の打ちつける音を聞きながら、スネークはただ呆然と立ち尽くす。他に打つ手が見つからなくて、しかしここを動くこともできなくて。
そうやってじっとしていると、己の身体が周囲の自然に合わせて
スネークが周囲の環境と完全に
ケストドンをついばんでいた黒い鳥たちが、満腹にでもなったのだろう、その場を離れて周囲に散らばって行く。地面よりも安全とされる高所を求めて飛び立った鳥たちは、海岸の岩の上や近くに生える木など、手近な場所で羽を休める。岩の上で立ち尽くすスネークの肩にも一匹、黒い鳥が止まっていた。スネークは完全に自然の鼓動と一体化して、人という異物として認識されていなかった。
その状態だからこそ、スネークの認識もまた、自然を基準としたものに変わっていた。自然と一体化するということは、自身の感覚もまた、自然と同化することであるのだ。肩に止まる鳥の存在を目と耳と肌で感じながらも、それを当たり前であると受け流すことのできる感覚。その感覚の中で、逆に異物として存在感を発揮していたものがハンターと編纂者である。スネークの視界には入っていないが、ふたりがどのような場所にいてどのような動きをしているのか、手に取るように分かった。
そして、異物はもうひとつ。
「―――」
スネークは感覚が示す方へと顔を向けた。その動作で自然との
そこにあったのは、一個の木箱であった。岩の陰に隠れて見えづらく、先ほども見逃していたが、スネークから10メートルも離れていない距離にあった。何の変哲も無い木箱で、目立った汚れが無いことからきっと短い距離を流されてきたのだろう。恐らく調査団の拠点から流されてきたものだ。同じ造りのものを、ここに来る途中で見かけた記憶が残っている。
スネークは岩場をすばやく降りて、木箱がある位置まで近づいた。浜辺にいる5期団のふたりから見えない位置なので彼らは焦ったが、お構いなしだった。
手が届く距離までやってきて、スネークは木箱をそっと持ち上げる。
中から出てきたのは、黄色いヘルメットと遮光ゴーグルを身に着けた、見覚えのある猫だった。
因みにスネークの『舌打ちとも唸り声ともつかない声』ってのは、大塚明夫さんの「(チッ)ん゛に゛ィ…(吐息)」ってやつです。あれめっちゃ好きです。