怖い、見ているモノ全てが私を呪いまくし立てる。
魚からトカゲ、虫に猿そして人。全てが全て私に語るのは「生まれてくるな」。
そうだね、私が生まれれば、貴方達は悲しみ苦しむよね。みんな自分が苦しむ事を嫌うから私を拒絶するんだ。
果ての見えない暗闇の底に、光が開いた。恐怖で心が落ち着かない、いや・・・
嫌だ
嫌だ!
嫌だ!!
私を生まないで!!!
「大丈夫か?」
「あ、れ?おとうさん…?」
オレンジ色の淡い光が私を出迎える、横に顔を動かすとお父さんが何時も通り、頭をボリボリしながら本を読んでいる。
「だいぶうなされてたぞ、全く風邪なんだから雪だからと、はしゃぐのはな関心しない。」
「そういえば…あはは。」
「あはは、じゃない!面倒見るこっちの身にもなってくれ!!」
額に手を当てて喚く、お父さん。怒る時に、読んでいた本に直ぐ様しおりを取り出して、挟むのだけは凄く速い。
あ、お粥が置いてある。湯気が立ってて美味しそう。
「とにかくマスクを戻せ。食べたいのは分かったから。俺に風邪が移る。」
「お父さん風邪引かないじゃん、大丈夫だよー。」
「じゃあこうしよう、お前のアホウイルスが俺に移るってことに。」
「ひ、ひどい!?実の可愛げな娘にアホとっケホッ!?」
「言わんこっちゃない、とにかく風邪のまま外に出るなよ?」
「ふぁ〜い…」
あー、ちょっと頭が重くなってきた。
冷めない内に食べて、大人しく寝ておこう…
「…おや、何処かへお出かけですか?あいろ先生。」
……寝かしつけたのか、大柄のサトリが階段を降りてくる。
如何にも疲れた表情をしているのは、お嬢さんに抵抗されたか否か…
「先生呼びは止めろと言ったろショウタ。そもそもお前さんが、こいしを止めていたら悪化しなかったんだぞ。」
「あ……失礼致しました。しかして、あいろ先生、私の名前は下のではなく、苗字でお呼びをと申しておりましたが…」
「分かった分かった、んじゃワカバヤシ。出かけるから、こいしがまた外に出ようとしたら全力阻止だぞ?」
「えぇ、えぇ…存じておりますとも……。無事なお帰りをお待ちしております…あいろ殿…」
…大柄のサトリ、あいろ先生は別居中の、みつめ様とさとり様に寄りを戻しに話し合いへと向かう……
さして数刻も経たぬ内に、上から念を唱えんが如く、お嬢さんの言葉が淡々と落ちてくる。
「……始まりましたか……。」
……階段を上がれば、その念は音を張り上げる。さも淡々と、けれど麗しさを孕んだその声は、強く強く私の耳を通りゆく…
「りーぐす…こるらてぃあ…あざぶはあおきからさんさんに、あんびあーはみおろしせいをみさだめる…」
お嬢さんは、お粥を食した後に寝静まっていたのだろう…然しお嬢さんはココロをハイジャックされたように淡々と、強く強く念を唱える…
「……これで拾八度目、ヤハリあなたは彼の地を夢見ておらっしゃる。……おちついて……思考を保ちなさい。けして自我を手放さぬよう…」
「きたるはろんこーすと…しんこくはやがてまくをおろし、きたるはゆろ…しかしてそれはこころをゆさぶるさだめ…」
「落ち着いて…おちついて…、あなたは正しい。思考を保ちなさい。けして自我を手放さぬよう、それがあなたを導く灯火となりますから……」
……おそらく、そう遠くはない。彼等が参る、物語が始まる、私も成すべき事を成さなければ…
「ぜうす……それは……はじまりをよび、おわりをつげるしんわなり……」
物語(せかい)は現実(ホンモノ)になる
中断した小説をリスタートさせる前に、前日譚を始めました。
東方projectの二次創作ですが、オリジナル&オマージュ要素が多めなので温かい瞳で見て下さいな。
次回は未定ですが、必ず出しますのでお待ちを・・・