東方銀呼録-白亜の幻想譚   作:星巫女

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ちっ、違う!僕は悪くない!

投稿遅れたの本当にごめんなさい


第十一話 「その赤髪、猛炎につき」

先刻までの対談は終わり他の住人よりも遅い眠りを貪った後、蒼月はベランダにてレミリアと紅茶を飲みつつ会話していた。

紅茶やコーヒーの旨さの違いはイマイチ分からないが、それでもここで出されているものがどれも一級品なのは無知の蒼月にも理解できた。

ちなみに膝の上にはフランがおり、同時に出されたクッキーをもぐもぐと美味しそうに頬張っている。

柔らかそうな頬が動いている様はどこか小動物のようで微笑ましい。

ただ嬉しいのは分かるが羽をぱたぱたと動かすのはやめて頂きたいぞ妹よ。ひんやりした羽の結晶が胸に当たるとくすぐったいのだ。

だが羽とは反対に仄かに温かいフランと密着していると若干眠くなってくる。あれだけ動いた後にほぼ夜通しで紫と話していたのだ。

いくら体は丈夫でもメンタル的にきつい。できればもうちょい寝たかったなぁ。後丸二日ぐらい。

 

「……え?もう出ていくの?」

 

「いや何時までも世話になり続けるわけにもいかんし…というか干物生活とか嫌だし」

 

かつての弟子の家でニート生活してる師匠とか本気で御免被る。

外界でも熱心に働いていたわけではないがそれでも魔力だけで腹を満たすような怠惰な生活を送っていたわけではない。

きちんと地域ボランティアには参加していたし給金の入るアルバイトは日々熟していた。

 

「あぁ、いや永久にここから離れる訳じゃないよ。ちょっとこの世界を見て回るだけ」

 

「……本当に?」

 

「マジのマジ。嘘つかない」

 

…やめてくれそんな冷え冷えとした視線をこちらに向けないでくれレミィ。

確かに久しぶりに会ったばかりで出ていくと言われたらそうなる気持ちも分かるが俺も行かなければならないのだ。

既に場所は紫から聞いている。

ここ紅魔館から結構な距離離れた僻地に存在する神社にあいつらと集まる予定になっているらしかった。

つーかここからでも人里?から離れているらしいのにそんな所に住んでるとか人来るのか…?

…それともその神社で過ごしている者が人間ではないのか。

想像すればするほど心配になってきたぞ。

 

「本当の本当?」

「本当に本当」

 

今はこれしか返しようがない。

だからこそこの安っぽい言葉を証明する為にも紫の言葉を確かめてくるべきなのだ。

 

「…分かったわよこういう時意外と頑固なのは分かってたことだし」

 

「いや頑固っていうかはむしろしょうがない部分が大きいんだけど」

 

放っておいたら世界が滅ぶとかそういうぶっ飛んだ事象が起きないことは絶対ないと断言できるが神社ぐらいならばじゃれ合いで破壊しかねない。

早急に奴等を迎えに行った方がいいだろう。

 

「許してくれるレミィに全力感謝しながら、行ってくるわ」

 

ふざけた出立の挨拶をしたところレミリアは満面の笑みを浮かべて

 

「二日経っても帰ってこなかったらガゼルの血、カップ百杯分吸うからね」

 

「ぜってぇ人間の耐えれる量じゃねぇぞそれ」

 

その量だったらカップじゃない計量器具使った方が早くね?

実際にやられたら笑えない冗談を口にするレミリアにそんな事を考えながら蒼月は館を後にするのだった。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

「はー…はー…はー」

「………あーーーもぉーーーー!」

 

拠点へ帰って来るや否や突然少女はもふもふの耳をぱたんと倒しながら喚き始めた。

この儀式普段の事と言えば普段の事だったのだが生憎今日は違った。

 

「何、牛の鳴き真似でも始めたの?傷口に声が響くからもうちょっと静かにしてほしいんだけど」

 

「鳴き真似なんかしてませんよ!ていうか傷口に声が響くって何ですかそれ!?」

 

「そういう声がっ、響くって言ってるんでしょうが!」

 

言葉の勢いのままもう一人その部屋に居た者が隣にいた白髪の頭をでこぴんでばちこーんと弾いた。

あいたぁっ!?と叫びながら頭を仰け反らせる白髪に若干の可愛げを感じながら彼女は自身の腕の包帯を巻き直し始めた。

 

「ていうかいつそんな怪我したんですか?私が見回り行くときに取材に行くーって言って出て行ったじゃないですか」

 

「その取材先で怪我したって言えば?」

 

「……文さんの聞き方が悪かったりしたんじゃないですか?」

 

「ねぇなんで今の話の向きから完全に私が悪い方向で考えられてるの?」

 

「普段の素行のせいでしょう」

 

「私これでもあなたの上司なんですけど!?」

 

本人が一番傷口に響きそうな声を出しながら文は語り始めた。

 

「大体取材許可取りに行っただけでぶっ飛ばされるんですよ?何なんですかあの巫女。

 もう鬼ですよ鬼。あれは鬼巫女だわ絶対」

 

「何一人でボケて完結してるんですか。というか今のままで次の締め切りまでにネタ間に合うんですか?」

 

ぶつくさと文句を言っていた文だったが現実を思い出したらしい。

 

「…一応ストックはあるから今回のは問題ないわ。でも最近事件がないから次のストックに余裕もないし」

 

「いいじゃないですか平和で」

 

「私達記者にとっては死活問題よ。うぐぐ、こうなればいっそのこと私が異変を…」

 

一瞬名案を思いついたかと思われたが

 

「また鬼巫女にぶちのめされますよ?」

 

「あんの鬼畜巫女がぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

またすぐ閉ざされた。

 

そもそも妖怪というのは退屈を非常に嫌う。

日常に刺激が無くなれば無くなるほど妖怪は存在意義を失くしていくのだ。

 

文の涙がそろそろ涙袋の許容量の限界を越えるかと思われた時窓際からばさりという音が聞こえた。

二人が同時に振り向いたときには既にそこに訪ねてきた主はおらず、代わりに一枚の黒い羽とそこに括りつけられた手紙があっただけであった。

 

「「……?」」

 

怪我で動きたくはなかったが受け取らない訳にもいかずのそりと動きながら便箋を開く。

 

「んーとこれは…あなた宛みたいよ?」

 

「え?私の方ですか?」

 

上司に便箋を受け取らせた本人が中身だけを受け取り目を通す。

そして目が文章を読み進める度に輝きを失っていく。

 

「ふーん……えー……ようするに紅葉地区の隊長であるに領域確認の命令と…」

 

口調では冷静を装っていても顔は仕事の前から疲れ果てていた。

どうやら相当に面倒なものを命令されたらしい。

 

「なんて?」

 

はーとため息を漏らし用紙を床に下ろしながら社畜少女はぽつりぽつりと説明を始めた。

 

「今日山の中で見回り中に見つけて連絡した侵入者が追跡を振り切ったらしいんですよ」

 

「……マジ?」

 

「マジのマジです」

 

少女———椛は容易く振り切ったと言い放ったがそれは尋常な事態ではない。

なにせ現在山に存在している追跡隊の白狼天狗はここ最近に狼という種族から昇華して天狗へと変わった種族。

丁度世代交代をしたばかり故、狼の頃からの狩猟本能は色濃く残っており、まず獲物を逃すことはないと言われていた布陣だ。

成績優秀者も多かったはず。

にも関わらず、地形も木の位置も全てを記憶している白狼天狗たちの追跡を完全に絶った。

 

場合によっては山全体に喚起を促さねばならないほどの手練れだ。

その場合というのは—————

 

「負傷者はいないの?」

 

当然ただ素早く走り抜けて逃げ切る事等できないだろう。

いくら速く動ける鴉天狗でさえも匂いだけは消せない。

むしろ素早く動けば動くほど匂いは濃く残る。

 

つまり、何らかの手段を用いて天狗達の足を止めたという事だ。

 

「いいえ。報告によれば追っていた分隊十人は全員一切の外傷はなく意識を失った状態で発見されたとのことです」

 

一体どういう事なのか。

外傷なく相手を気絶させる手段など想像もつかない。

妖怪の山の中では術を使った場合はすぐに気付くはず。

ならば妖術の類は使われなかったと断言していい。

 

「それで?その侵入者相手にあなたは何をしろって?」

 

死んだ魚の目のような目をしながら椛は視線を空中に彷徨わせていた

 

「能力を行使して幻想郷中をくまなく捜索せよ、と」

 

「…要するに山の外まで出て探してこいって事ね」

 

椛の能力は『千里先まで見通す程度の能力』。

…なのだがまだ完全に使いこなしているという訳ではなく、射程がここ妖怪の山の中程度までしかない。

山の外まで探そうと思ったら出歩かなければならないのだ。

 

「……ほんじゃぼちぼち行ってきます。どうせ探したら匂い覚えて帰って来るだけなので、文さん帰り遅かったら勝手に夕飯食べてってください」

 

「はいはい分かった。それじゃ、行ってらっしゃい」

 

かくして椛は護身用の剣と盾を持った上で部屋から出ていった。

自慢の耳をぴーんと立てずにふわふわと揺らしていたからそこまで緊張はしていないのだろう。

 

「白狼天狗達を一瞬で倒す実力者……」

 

既に文の視線は現代を越え、過去を覗き込んでいた。

 

「あいつ……最近どうしてるのかな」

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「…………いや僻地とか辺境の地ってレベルじゃねえぞここ。空飛べないとおちおち参拝にも来れんだろ」

 

紅魔館を出てからおよそ三時間。

既に正午は回っており体感で気温が高くなってくるのを感じる頃だ。

最初の時のように空を飛んで来てもよかったのだがここで仕事をしている巫女が何者か分からない以上刺激しない方がよいと考えとことこと歩いてきた。

 

死ぬほど疲れたけど。

いやおかしいだろ山に重なったあの階段の段数。

さぁ昇ろうと上の方見たら見えんかったぞ。

最初は数えていたが途中の方からは以下省略と心の中で呟きながら上がってきてたし。

多分体感数千段かそれ以上はあった。

 

「来る人の事考えてるのか…?いやむしろ近付けさせない為にこうしてるのか?」

 

ひょっとして人間が行くにはとても危ない場所だったりするのか。

そうだとすれば何故そこを再会場所に指定したのかを紫に問い詰めたくなるが。

 

と、階段を上りきって少し歩いた後に

 

「あぁ着いた。ここがそのなんとか神社か」

 

えらく時の流れを感じさせる本殿にちょこんと備え付けられた賽銭箱。

これまた少し色の薄くなっている赤色の鳥居。

本殿へ続く石畳の道の脇には、蒼月がぎりぎり抱え込めるかという太さの恐らく桜と思われる木が均等な間隔で植えられている。

山の上にある事から狭かったりするのかと思っていたがそんな事はなかった。

どこかここだけ隔絶された世界のような光景に逆に開放感すら覚える。

 

さらに見たところ綺麗に掃除されている。

多少手荒な所もあるが、それでも石畳に薄く残る引っ掻いたような跡から長年竹ぼうきかなにかで掃除をしている事が分かる。

やはり誰かいるらしい。

 

思いきって呼んでみるか。

現状あいつらの魔力を感じ取ることもできないしもしかしたらここにいる者ならば知っている事もあるかもしれない。

その考えが頭に過ったその時――

 

突如として蒼月の脳裏に意思を持つように揺らめく業火の映像が映し出された。

その火は規模のわりに何故か火の粉を出していなかった。

焚き火のように穏やかな炎ではなく、生けるもの全てを灰塵へ還さんとのたうつ焔。

それは形を変えに変え、一本の槍のような形状になった。刹那

 

急速に近付いてくるものが何か認識するよりも先に蒼月は上体を一気に右側へ倒した。

何か、銀色に煌めく物が視界の左側を通り過ぎ―止まった。

 

「っ――――」

 

空気が、焼けた。

そう錯覚する程の速度で何かが背後から突き出された。

うねる空気に触れた左頬がぴりぴりする。

たがそのまま驚愕したままではない。

 

当然左右どちらかに回避すると読んでいた当人は手首を返しながら踏み込みと同時に風のような速度で前方を薙ぐ。

風圧で周囲の砂利が一気に舞い上がった。

 

だが蒼月も動いている。

その剣技を既に読んでいたから。

 

得物が体に触れぬよう剣技と同じ方向の左側へ旋回させながら勢いを殺さず後退する。

羽織っているコートに刃が触れるかどうかというギリギリのラインで射程外へと脱出する事に成功。

そこで始めて蒼月は相手の姿を見た。

 

先程意識下に映し出された炎とほぼ変わらない赤色をした、無造作に放り出されたかのように切り揃えられていない前髪。

後髪は前髪とは違い、揃えられた長髪が紐で束ねられている。

 

その髪の下で爛々と赤く光るのは肉食動物めいた若干切れ長の目。

 

着ているのは外界では縁日でしか見ないような、だが外見に違和感を感じない、丈が膝まである緋色の和服。

一見動き辛そうだが機動性の確保の為か脇が見えないぐらいに肩の下部が切り取られている。

下半身は緋色よりも暗めの臙脂色をしたズボン。

和服の丈が長いおかげでズボンとの違和感はほとんど感じられない。

ただし履いているのは下駄や草履ではなくスニーカー。

 

だが着ている服よりも目を引くのは――今しがた振るわれた大太刀ともいうべき長刀。

刃渡りは三尺は軽く越えているだろう。

当然腰に差せる大きさではなく、普通の人間であれば両手で握っても扱えないであろう大きさだ。

光に対して凶暴に光る刃には独特の紋様が浮かんでいる。

だが、全身を見てもどこにも鞘は見られなかった。

 

妖刀―――見るもの全てに直感的にそう感じさせる迫力。

 

——富、地位や名声よりも剣を追い、剣を愛し、そして剣に愛された者。

常に紅の衣を纏い、千の山を駆け人の丈ほどある刃を振るった。

決して自身から危害を加える事はなく、ただただ誰かを守ろうと刀を握った。

ガゼルの唯一の友人、赤峰夕弥。

 

「物騒な挨拶だな。菓子折を持っていないのが気に障ったか?」

 

「どうせお前が選ぶ菓子なんぞきのこの里だろう。俺はたけのこの山派なんだ」

 

振り切った姿勢から刀をぶんと振りつつ自然体に戻った夕弥は答えた。

 

その動きに緊張は含まれておらず、まるで 学校の帰りに傘でチャンバラごっこを始め た子供のように顔は笑みを浮かべていた。

前に会ったのはいつか忘れたが、それでも その時より遥かに大きくなった妖力を目に て蒼月もまた好戦的に見える笑みを返す。

 

「その大きさの刀片手で振って戦える奴は お前ぐらいしか見たことねぇよ」

 

「っは、嬉しいけどそれ全く誉めてないよな。ガゼいや蒼月」

 

「いつまで呼び慣れないんだよお前、わざとか」

 

「そもそもあつきなんてダサい名前呼びづらいわ」

 

「全国のあつきさんに土下座してこいよお前」

 

どこの規模まで喧嘩売るつもりだこいつ。

 

「というかさっきのやつ当たってたら軽く頭部が無くなっていたが」

 

「だから前もって警告を送ったじゃないか。宣戦布告ともいうべきか?」

 

「さっと見て理解できん映像を警告とは呼ばん」

 

揺らめいている炎がこちらに突進してくる 映像を見ただけで突きが飛んでくると理解 できる奴がいるか。

無茶ぶりもいいところだ。

 

「安心しろ、こんなことするのはお前ぐらいだから」

 

「毛ほども嬉しくねぇぞその告白」

 

蒼月に同性愛の気はない。

未来永劫絶対に起きない。

 

「んでどうする?今から本格的に喧嘩する?」

 

こいつの事なら今ここで斬り合いでも始めそうだが。

 

「いややめだ。気分が乗らんしここにいる人にも迷惑だ」

 

「いきなり人の頭刺し貫こうとした奴の台詞とは思えんぞ」

 

突然通り魔紛いの行為をしてきた奴に常識を語られたら喧嘩しないのかと提案した俺が非常識みたいじゃないか。

 

「……?蒼月、お前眼の中……」

 

唐突に夕弥がぽつりと蒼月の顔を見ながら呟いた。

やはりレミィ達には隠せても元来の友人には隠していてもバレるか。

 

「一本濁ってるだろ。やっぱここまでくると混ざってくるんだな」

 

「体に異常はないのか?」

 

「今のところはな。ただもう、気づき始めてる」

 

「………その時はどうするんだ?」

 

 

「さぁな。どうなるかは俺にも予想がつかん。

その時でどうにかするしかないさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んー…にごってる……………?」

 

 

 

 

 

 

 




これでよ う や く 第一章終わりです。
最後意味不明は終わり方でごめんなさい。
腕が足りていない故にこのような描写になってしまいました……。

これからは3000~4000字程度での早期更新を目指したいと思います。
今まで遅れていた分はほんとうにごめんなさい
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