スクスタクエスト〜空と海と大地と呪われしYAZAWA〜   作:『シュウヤ』

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第10話

リーザス村に戻った一行は、夜も遅いしとひとまず宿屋に向かった。

「──おや? あれはポル君じゃない?」

愛の言う通り、宿屋の入り口の前にポルクが仁王立ちしていた。

「もう遅い時間なのに、律儀に待ってたのかな? 偉いねぇ〜」

「マリー姉ちゃんが心配だったのかもね」

「じゃあ、とりあえず無事だったって報告してあげないとね!」

三人が宿屋の前まで行くと、

「あ、帰ってきたか! 遅いから心配してたんだぞ!」

「一応心配してくれてたんだね」

「……で、マリー姉ちゃんは⁉︎」

穂乃果は、塔での出来事をかいつまんで説明する。鞠莉に燃やされそうになった事は、黙っておいた。

「ふんふん…………。そっか。塔でそんな事が……」

真剣に話を聞くポルク。もう疑っている様子は無さそうだった。

「まだちょっと心配だけど、マリー姉ちゃんが帰ってくるって言ったんならきっと大丈夫だな。──穂乃果、とにかくありがとな。おいらはお前の事、ちょっとだけそんけーしたぞ」

「おっ、ホントに? 嬉しいな!」

「ねえ愛さんは?」

「お前達二人もだ! ありがとな!」

「案外、根は素直なのかもね」

聞こえてるぞ、と曜を睨んだポルクは、

「──お前達が戻ってきたら、宿屋に泊めてもらえるようにお願いしてきたトコだ。マルクと二人でこづかいはたいたんだからな。しっかり感謝して泊まれよ」

「お、おごりとは羽振りがいいねぇ!」

「いや、今お小遣いはたいたって言ってたけど……」

ようやく扉の前からどいたポルクは、

「とにかく、今は塔に怪しいヤツがいないって分かって安心したぞ。……でもそのドルマゲスってヤツ、どこに行ったんだろうな?」

三人にもそれは分からない。ポルクのその質問には答えられなかった。

 

 

 

 

翌日。グッスリ寝た穂乃果が目を覚ますと、すでに二人は荷物の準備をしていた。

「あ、おはよう穂乃果ちゃん。鞠莉ちゃん、村に戻ってきたんだってさ」

「何か有意義な話が聞けるかもしれないから、今からお屋敷行こうって話してたんだよ」

「確かに! 行こう!」

穂乃果はベッドから飛び起きると、荷物を掴んで我先にと宿屋から飛び出していった。

それを目で追っていた二人は、

「……まあ、穂乃果ちゃんらしいかな?」

「確認するまでもなかったね〜」

顔を見合わせて苦笑い。

 

 

一足先に屋敷に到着した穂乃果は、急遽雇われてしまった不憫な衛兵に鞠莉はどこかと訊ねる。

「鞠莉お嬢様なら、二階で奥様とお話中ですよ。……あまり、火に油を注ぐような事はしないで下さいね?」

信用ないなぁ、と穂乃果は愚痴りながら、追いついた曜と愛と共に階段を登る。

「鞠莉ちゃんはいきなり魔法ぶっ放してくるようなおてんばだったし、アローザさんもかなり気が強そうだったよね……。大丈夫かなぁ?」

「ちゃんと“話し合い”になってるといいね〜」

「……愛ちゃん、何でちょっと楽しそうなの……」

曜が呆れたその時、

「──もう一度聞きます。鞠莉」

頭上から固い声が降ってきた。

「あなたには、兄であるサーベルトの死を悼む気持ちは無いのですか」

念の為コッソリ覗くと、アローザが厳しい表情で腕を組んでいた。その正面に、昨日見た金髪の女性が。背中を向けているため、表情は分からない。

「……またそれなの? 何度も言ってるじゃない。悲しいに決まってる。ただ家訓家訓って言うだけじゃどうにもならない事だってあるでしょう⁉︎」

「なんですって……?」

アローザは、鞠莉に詰め寄る。

「あなたは由緒正しきオハラ家の血を引く者よ! 古くからの家訓は絶対です! サーベルトだってそんな事は望んでいないはずよ! 今は静かに、先祖の教えに従って兄の死を悼みなさい!」

「先祖の教えだ家訓だって、それが一体何になるのよ!」

鞠莉はアローザの言葉を一蹴すると、グッと言葉に力を込める。

「……自分の信じた道を進めって、そう言われたのよ」

そして、アローザを強く睨む。

「死を悼むだけなのは、私の信じる道じゃない!」

「……………………」

その言葉を受けて、アローザは少し口を閉じた。それから、

「……分かったわ。それほど言うなら、好きなようにすればいいでしょう。……ただし」

今度は、アローザが鞠莉を睨む。

「私は今から、あなたをオハラ家の一族とは認めません。この家から、出ておいきなさい!」

「勿論そのつもりよ。こんな家、私の方から勘当デース!」

鞠莉は言い捨てると、自分の部屋の前に立つポルクとマルクの元へ向かった。

「……ポルク、マルク。あなた達の事、色々と利用しちゃってごめんね」

「……マリー姉ちゃん、本当にこの家やめちゃうの? せっかくのお屋敷なのに……」

「それについては、考えがあるのよ」

考え?

後ろで話を聞いていた穂乃果達も首を傾げたが、真意は誰にも分からない。

そして自室で準備をした鞠莉は、

「それじゃあ、今までお世話になりました! ごきげんよう!」

そのまま屋敷から出て行ってしまった。

『…………』

残された穂乃果達は、

「……えっ、何しに来たんだっけ……」

呆然と呟くしかない。有意義な話なんて当然無かったし、何より話を聞きたかった本人がいなくなってしまったのだ。自ら勘当を宣言するという、不思議な事態で。

「……とりあえず、出よっか」

「うん……そうだね」

「もしかしたら、まだ近くにいるかもしれないしねー」

屋敷で親子喧嘩を見ただけの三人は、再び村へととんぼ返り。

ひとまず、鞠莉の姿を探す。が、

「いないねー」

すでに村を出た後なのか、目立つ金髪の姿はなかった。代わりに、

「お、ポル君マル君発見」

巡回のつもりなのだろうか、村を駆け回るポルクとマルクを見つけた。

「ああ、お前達か。マリー姉ちゃんなら、港町ポルトリンクに行くって言って出て行ったぞ」

「ポルトリンク?」

「ポルトリンクに怪しいヤツの噂を聞いたから、それを突き止めるんだってさ。ポルトリンクへなら、塔の手前を右に曲がってずっとまっすぐ行けば着くぞ」

ポルクは、地面に簡単な地図を描いて教えてくれる。

「怪しいヤツって、もしかしてドルマゲスのことかな?」

「分からないけど、可能性はあるよね」

「他に情報も無いし、ひとまずはそのポルトリンクって港町に行ってみようか」

三人はポルクとマルクにお礼を言うと、リーザス村をあとにした。外で待っていたにこと凛に事情を説明し、目的地を告げる。

「ふーん……まあ、そうするしかないわよね。そこで何か、情報が手に入るといいんだけど」

「行ってみるにゃ!」

 

 

 

 

・穂乃果

LV13

どうのつるぎ

うろこのよろい

皮の盾

皮のぼうし

金のブレスレット

 

・曜

LV12

石のオノ

たびびとの服

うろこの盾

皮のぼうし

スライムピアス

 

・愛

LV12

ブロンズナイフ

皮のこしまき

うろこの盾

皮のぼうし

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