まえがき
空行が多いので、ページが縦に長いです。ごめんなさい。
かばんたち一行が旅立った後。 図書館。
ツチノコ、はかせ、助手が、机に向かっていた。机には、飛行機関係の本や、格納庫に残されていた整備マニュアルが積んであった。飛行機関係以外には、『デジタル一眼レフ入門』『デジカメ撮影テクニック 初級編』などの、写真の本があった。
L版にプリントされた写真 ※1 も、数10枚ほど積み重なっていて、何枚かは、机の上に散乱していた。写真には、飛行機の部位のアップが写っていた。
助 手 「読めないのです」
はかせ 「わけがわからないのです」
ツチノコ 「ちきしょう……難解すぎる……」
はかせ 「これは、高くつくですよ」
ツチノコ 「もうジャパリまん持ってないんだよ!」
はかせ 「いいかげん、あきらめたらどうなのです?」
ツチノコ 「飛行機ってのは、飛ぶためのものだ。飾っておくためのものではないんだよ!」
助 手 「ツチノコは、本の影響を受けているのです」
ツチノコ 「オレひとりじゃ、むりだよなあ……」
ツチノコは、机に突っ伏した。
はかせ 「ひとりじゃなくて、三人なのです」
ツチノコ 「……なんで、手伝ってくれるんだ?」
助 手 「さあ、なんででしょう?」
はかせ 「……どうしても、飛ばしたいのですね? ツチノコ」
ツチノコが、顔を上げた。
ツチノコ 「何度もそう言ってるだろが」
はかせ 「…………おおごとに、なるですよ」
図書館に、鳥のフレンズが集められた。
はかせ 「書類や、フレンズを運んでほしいのです」
アリツカゲラ 「連絡役、ということですね」
ショウジョウトキ「空を飛ぶ機械、というのが、よくわからないんですけど」※2
ト キ 「べつにわからなくてもいいじゃない」
ハシビロコウ 「みんなの役にたてるなら、よろこんで引き受けるよ」
湖のログハウス。
オグロプレーリードッグ(以下プレーリー)「すっごくおもしろそうであります!」
アメリカビーバー(以下ビーバー)「手伝いたいッスけど、そんな大役、オレっちには……もしも、失敗したら、って思うと、すっごく不安ッスよぅ……」
ツチノコ 「おまえらだから、頼むんだ」
プレーリー 「ビーバーどのは、自分が思っている以上に、すごいであります! 優秀な
ビーバー 「プレーリーさん……。プレーリーさんこそ、すっごく、すごくすてきッスよ……。オレっち、そんなプレーリーさんのことが……」
見つめ合うプレーリーとビーバー。ふたりの顔が近づき……目を閉じて……。
ツチノコ 「オイ!! オレの前でやるな!!」
ビーバー 「はっ! やらない! やらないッスよ!」
ビーバーは、顔を赤くして、答えた。
プレーリー 「やらないでありますか……」
プレーリーは、がっかりした様子だった。
ビーバー 「プレーリーさん! えっと、いえ、やります! やらせてほしいッス!」
ツチノコ 「むりやり言わせた感があるなぁ……」
プレーリー 「ビーバーどのは、ダムのことが心配なのでありますな」
ビーバー 「正直、ちょっと不安ッスね……」
ツチノコ 「通うなら、連絡役がいるから、問題ないだろ」
ロッジ。
タイリクオオカミ(以下オオカミ)「いいね! おもしろそうだよ」
アミメキリン「そんなことやってたら、新作が描けないわ!」
ツチノコ 「ほかに適任者はいない。絵を描くセンスが、活かせるだろ?」
オオカミ 「漫画と図面は別物だよ。勉強が必要だね」※3
ツチノコ 「時間にはこだわらん。締め切りもない」
オオカミ 「君たちとの兼ね合いがあるから、あんまりゆっくりもしていられないね」
アミメキリン「新作が……」
平原。
ライオン 「こんなかたちの、さがしてほしいってさ」
ライオンが、ボルトの図面をフレンズたちに見せた。
ヘラジカ 「全員で探せば、千個は見つかるぞ!」
ハシビロコウ「そんなにいらない、と、思う」
ツチノコによって、海岸の飛行場の格納庫で発見された、双発のプロペラ機。フレンズたちは、試行錯誤しながら、それを修復していった。
飛行機は、大物部品の状態は良かったが、劣化した消耗部品や損傷した部品などがあり、修理と調整が必要だった。※4
図書館。
ハシビロコウ 「こんなのしかなかったけど、どうですか?」
ハシビロコウが、はかせに、数本のボルトを見せた。
はかせ 「穴径を大きくすれば、使えるかもしれないのです」
格納庫。
パンサーカメレオン「刃物ときいたので、もってきたでござる!」
パンサーカメレオンは、手裏剣を見せた。
ツチノコ 「いまいち……」
ビーバー 「これ、いいはがねッスよ。加工は大変っスけど、使えるかも」※5
プレーリー 「グラインダーで削れるであります!」
ロッジ。
アリツカゲラ 「ランプの部品、使えないでしょうか?」
ツチノコ 「分解すれば、使えるものがあるかもしれんな」
ジャングル。
コツメカワウソ「川の底に落ちてたよー」
コツメカワウソが、細長い金属の部品を、トキに見せた。
ト キ 「よさそうね。ありがとう。もっていくわ」
格納庫。
ト キ 「これはカワウソにもらったのよ。川に落ちていたのを拾ったんだって」
ツチノコが、部品にノギスをあてた。
ツチノコ 「やった! ぴったりだあ!」
……………… 多くのフレンズに協力してもらって、交換部品(の代用品)や工具を探した。
サバンナ。
放置され、さびてボロボロになったバスがあった。それは、半分草に埋もれたようになっていた。プレーリーがアリツカゲラに、ビーバーがハシビロコウに抱き抱えられて、バスのそばへおり立った。
ハシビロコウ「どうかな?」
ビーバー 「ハシビロさん、いいもの見つけてくれたッスよ!」
プレーリー 「さっそく、分解するであります!」
アリツカゲラ「部品は、また、格納庫まで運ぶんですね」
格納庫。
飛行機の、パネルの中を覗き込む、ツチノコとビーバー。
ツチノコ 「パッキンが劣化してるな……」
ビーバー 「バスの部品、加工して使えないッスかね」
プレーリー 「似たような部品があったはずであります!」
プレーリーが、格納庫の隅の、部品の山を掘り返した。そこには、バスのランプ、タイヤの切れ端、ハンドル、サスペンション、歯車、エンジンまわりのベルト、金属の薄板、小箱に入った、たくさんのボルトやナット、等々があった。
プレーリーは、その中から、パッキンの付いたパイプを掘り出した。
……………… 放置されたバスや、ヒトの作った遺物の部品の流用が行われた。
格納庫。
ビーバー 「きれいな図面ッスね……」
オオカミ「ここの合わせ、高い精度が必要だけど、測定じゃわからないから現物合わせになるね」
プレーリー 「大きめに作って、削って調整できるであります」
……………… オオカミが、新規に作る部品の図面を引いた。
格納庫。
プレーリー 「出来たであります!」
ビーバー 「相変わらず速いッスね」
ツチノコ 「木工だけじゃなく、金属加工も早いのか……」
……………… プレーリーとビーバーによる、足りない部品の製作、修復作業が行われた。
格納庫。
セルスターターの音に続き、エンジンスタートの音が響いた。
ツチノコ 「やった! かかった!」
ツチノコが、小型のトーイングトラクター(牽引車)※6 に乗っていた。
…………… トーイングトラクターは、比較的状態が良く、簡単な整備で動かすことができた。
管制塔。
ビーバー 「アンテナが腐っちゃってて、ケーブルもだめみたいッス」※7
はかせ 「ここは、われわれの手には負えないのです」
ツチノコ 「飛行機の方は無事なんだがな……」
助 手 「無事かどうかわかりませんよ。両方とも信用できないのです」
管制塔の階段を、プレーリーが登ってきた。
プレーリー 「アンテナができたであります!」
プレーリーは、長い、棒状のアンテナを持ってきた。
滑走路。
滑走路の端へ、飛行機が移動していった。飛行機は、トーイングトラクターに引かれていた。
ビーバーが、飛行機の右側の窓から顔を出して ※8 、叫んだ。
ビーバー 「プレーリーさーん! 止まってくださーい!」
飛行機が止まった。トーイングトラクターを運転していたのは、プレーリーだった。
―― 機内 ――
機長席(左側)にツチノコが、副操縦席(右側)にはビーバーが座っていた。ふたりは、ヘッドセットを付けていた。
ツチノコ 「キョーシュータワー、ビーチエイトスリー…………おーい、きこえるかー」※9
―― 管制塔 ――
無線(ツチノコ)「……お…………える……」
無線から聞こえるツチノコの声は、ノイズがひどくて途切れ途切れになっていた。
助 手 「だめなのです」
はかせは、マイクに向かってしゃべった。
はかせ 「ビーチえいとすりー……きょうしゅうたわー、あー、あー……ちょいちょいなのでーす」※10
助 手 「ちょいなのでーす(棒読み)」
―― 機内 ――
無線 「……………………」
飛行機の無線からは、ノイズしか聞こえなかった。
ビーバー 「やっぱり、離れるとだめッスね……」
ツチノコ 「周波数変えてもダメかぁ……」
―― 管制塔 ――
はかせと助手が、管制塔の外を見ていた。滑走路の端に、飛行機とトーイングトラクターがとまっていて、トーイングトラクターに乗っているプレーリーが、両腕で×マークを作っていた。
はかせ 「新しいアンテナも、使い物にならないのです」
助手 「職員用のトランシーバーならありますが」※11
はかせ 「飛行中は届かないのです」
助手 「ラッキービーストを分解して……」※12
はかせ 「こわいこと言わないでほしいのです!」
……………… 飛行場の設備の復旧作業が行われた。
だが、こちらは整備マニュアルが見つからず、無線などの修理は、あきらめざるを得なかった。 ※13
図書館。
ツチノコ 「この解説書、誰が持ってきたんだ?」
はかせ 「それは、たぶん…………」
図書館の外から、ピコピコという音がかすかに聞こえた。
……………… ラッキービーストは、相変わらずしゃべらなかったが、陰で協力してくれた。
格納庫。
スナネコ 「足のとこ、ごちゃっとしてますね。おもしろい」
スナネコが、脚の格納部に手を突っ込んでいた。
ツチノコ 「やめろ! 余計なことするな!」
……………… スナネコに邪魔された。
ツチノコ 「ダメだ、オイルが漏れてる……」
ビーバー 「なんか、動きが固いッスね、あれだけ調整したのに」
はかせ 「エンジンまわりは、部品が入手できないのです。じょしゅ」
助 手 「状態はいいですから、既存の部品でなんとかできるですよ。はかせ」
ツチノコ 「カバーが閉まらんぞ、寸法間違ってないか?」
プレーリー 「また折れてしまったであります……」
アミメキリン「無理しちゃだめですよ」
オオカミ 「早く上げないと、あの子たちの作業が止まってしまうんだよ」
ツチノコ 「いてっ、切っちまった」
長い時間が流れた。一部の電子機器を除き、飛行機はほぼ修復された。
つづく
※1 写真のプリントは、温泉宿の写真プリント機が使用されました。温泉宿や、ロッジの管理用端末も使用されました。
※2 ショウジョウトキのしゃべり方は、登場時はですます調ですが、この頃にはくだけたしゃべり方に変わっているかもしれません。アニメ1期ではセリフが少ないので、よくわかりません。
※3 漫画と図面は、三次元のものを二次元の線で表現する、それを線や文字で説明する、という共通点があります。でもそれ以上の共通点はあまり無く、別物です。しかも図面を引くには工学的な知識も必要になるので、オオカミは、かなりの勉強が必要になりました。ちなみに、CADは、ソフトがなかったため、使えませんでした。
※4 交換や加工、新規作成が必要な部品は、この飛行機全体から見れば、それほど高い割合ではありませんでした。ただ、飛行機全体の部品点数は、気が遠くなるほど多く、交換の必要がある部品は、結構点数がありました。また、精密な部品が多く、高い信頼性が求められるので、部品を1点作製するだけでも、手間と時間がかかりました。それほど傷んでいない消耗部品も、耐用年数が過ぎていたものは交換しました。既存の部品が使えるかの確認や、部品交換後のテストにも時間がかかりました。
※5 手裏剣は、飛行機の部品ではなく、工具として使用しました。
※6 トーイングトラクターは、空港でよくコンテナを引いている、小さいやつです。
トラクターがなくても、力が強いフレンズなら、キングエアC90くらい動かせるのでは、とも思います。
※7 アンテナなどの、飛行場の設備は、潮風でかなり傷んでいました。
※8 コックピットわきの窓は多分開くはずです。顔を出せるかは微妙です。
※9 『タワー』ではなく、『グランド』とするべきな気もしますが、これは飛行時のためのテストなので、『タワー』としています。この時は、管制の区分や周波数などは気にせずに、とりあえず飛行機と地上の交信ができるようにしたい、という目的でテストを行いました。
飛行機側のコールサインの候補には『デザート』、『ヘンリー』、『ジュニア』というのがありました。機番(JA83JP)をコールサインにしようか、とも思いましたが、短くしたかったので、『ビーチ83』になりました。
※10 この、「ちょいちょいなのでーす」「ちょいなのでーす」は、『とっても賢いじゅるり“れしぴ”』(JAPARI CAFE2)の感じです。
※11 職員用のトランシーバーは、かなり離れていても通話できるものです。ただ、さすがに飛行機と地上との交信には使えません。飛行機が地上にいる時は、使えるかもしれません。
※12 ラッキーさんの通信機能は、かなり遠くの相手とも通信できるようなので、結構優秀かもしれません。ただ、やはり飛行機と地上との交信には使えません。また、ラッキーさん同士の通信は、直接ではなく、基地局経由のようにも思えます。なんにせよ、分解しちゃだめです。
※13 この飛行場には、必要最小限の飛行場灯火類があり、その一部は修理できました。電源は温泉から供給されています。レーダー(簡素なもの)は故障したままです。この飛行場は小規模であり、設備も簡素です。多分ILSもありません。
あとがき
航空機のレストアは非常に難しく、時間がかかります。素人では手に負えないものです。このおはなしでは、比較的状態が良かったことと、フレンズたちがものすごくがんばったことにしていますが、実際にはほぼ不可能だと思います。それに、このおはなしでは無視していますが、法律(機体の登録など)や、管制などの問題もクリアしなければなりません。
アニメ1期の設定で、航空管制がどこまで機能しているのかも不明です。それに、この飛行機は、ATCトランスポンダが機能しているのかすら不明です。航空管制が機能している場所を飛んだら、正体不明の飛行機になってしまうかもしれません。
このあたりは、筆者の知識不足であり、深く考えて書いていません。けものフレンズはファンタジーだから、ということで許してください。