〜バレンタインとの邂逅〜
お昼、いつものように購買にご飯を買いに行くと、見慣れた先客が談笑している。
「つまり、バレンタインというのは愛をチョコで表現する日だと。」
「その通りにゃ〜」
全然談笑じゃなかった!つい本能のままに隠れているけと盗み聞きははしたないかも…などと思っている間にも会話は進んでいく…
「材料は揃ってますにゃ〜指揮官にあげたらどうにゃ?」
「買いませんよ明石様、チョコの材料程度でしたら一通り揃っています。それに、ヴァンパイア様の邪魔になってしまいますから。」
なんでも出来るなこのメイド!?というかこの言い方、もしかして…
「好きなくせして面倒なメイドにゃ(ボソッ)」
ベルファストの顔が見たことないくらいに引き攣る、というか明石に襲い掛かりそうな勢い…
「あら、それを言うなら明石様こそ、ご主人様のこと、お好きでしょう?」
え?何これ私にはライバルしか居ないの?
「ほら否定しないにゃ!それと、明石が好きなのは指揮官の財布にゃ!」
「その割には顔が赤くなってますわよ?指輪を渡されるのでも想像してみたらどうなんですか!」「に"ゃ"あ"あ"あ"!」
真っ赤になった明石は売店の奥に引きこもってしまった。
「はぁー…ついやりすぎてしまいましたね…しかし明後日ですか…陛下や姉さんに作りましょうか?それともロイヤルの皆様を誘うのも…」
そう言ってベルファストも去って行った…
〜協力者探し〜
明石が引きこもってしまったので、手ぶらで指揮官の元に戻る。
「ん?昼食買えなかったのか?」
手ぶらな私を見て、心配そうに指揮官は声をかける。
「ええ、というわけで、汝の昼食、分けてもらえないかしら?」
「ふふっ、いつでも分けてあげるというか、ヴァンパイアの分も作るのに。」
そう言ってくれるが、忙しい夫に昼食を作らせる嫁など恥ずかしくてやってられない。
「貰うのは今日だけよ、いつか汝の分も作れるようになりたいな〜」
「俺が教えてもいいけど、ベルとかに教わるのが一番近道だろうな。」
ベルファストの名前が出てついびくっとしてしまう、誤魔化すように分けて貰ったご飯をかき込む。
「美味しかったわ、ありがとうダーリン♪」「ちょ、ダーリンは心臓に悪いからやめろ、って、何処か行くの?」
「ええ、少し勉強に!」
バレンタインについて聞き込みや用意をしよう。ライバルも沢山いるみたいだし…指揮官は押しに弱いから心配なのよね…
「夜までには戻って来なよー!」
明石が知ってたということは、重桜艦が知ってるだろう。そう思って重桜寮舎に入る。と、
「あら?羽虫が居ますねぇ、赤城、羽虫は嫌いなのですが…」
「やめておけ姉さん、これをバラしたら、姉さんもただでは済まないぞ。」
いきなりやばいのに会っちゃった…
「そうね、指揮官様に嫌がられるのは避けないと、命拾いしたわねヴァンパイア。」
「姉さんはお前に嫉妬している、あまり近づかない方がいいぞ。」
「だ・れ・が・羽虫に嫉妬してるですって?」
急いで寮舎を出る。
他に詳しそうな人居たかしら…
「ヴァンパイア、何を悩んだ顔をしてるの?」
エレバスがベンチから声をかけてくれる。
「汝、バレンタインって知ってるかしら?」
「重桜の子たちがはしゃいでたやつかしら?赤城や山城がチョコを作っていたわね。」
「それよ!汝の知ってる情報か、詳しい人を教えてくれないかしら?」
思わぬところで良い協力者を得られたかもしれない。
「私は何も知らないわ、詳しい人なら、ロングアイランドとかに聞いてみたらどうかしら?」
ロングアイランド?ユニオンにもバレンタインがあるのだろうか?
「ロングアイランドはあらゆるイベントを知り尽くしているそうよ。」
なるほどゲームか…
〜三人の友達〜
エレバス、指揮官に気に入られてるし何言ってるかよく分からないからあんまり良い印象を持ってなかったけど、話してみるといい人だったな〜
などと考えていると、ゲーム寮舎(ロングアイランド命名)についていた。
ドアを開けると楽しそうな騒音に満ちている。
「また負けた、です。」
「むむっ、装備を新調しなくてはな…」
「へっへーん、幽霊さんはいつでも挑戦を待ってるよ〜」
どうやらロングアイランドに綾波と夕張が負かされたようだ。
「ん、誰か居る、です」「えっ?どこどこ〜?」「ヴァンパイア、かな?入って来なよ。」
言われた通りに入ってくると、ロングアイランドが騒ぎ出す。
「おお〜珍しいねヴァンパイアちゃん、どうしたの?ゲームの素晴らしさを理解した?」
「いいえ、聞きたいことがあって来たの。」
「聞きたいこと?」
「ええ、バレンタインについて、教えてくれないかしら?」
綾波はキョトンとした顔をして、他の二人はニヤニヤしている。
「バレンタインって、なんです?」
「あー良くあるイベントだね〜」
「なるほど、そういうことなら力になれそうだな。」
綾波は知らないみたいだけど、重桜の祭りってわけでもないのかしら?
「バレンタインって言うのは〜好きな人や日頃お世話になってる人にね〜愛や感謝を込めたチョコを渡す日なんだよ〜」
「バレンタインデーは2月14日、つまり明後日だな。時間はあまり無い、指揮官に渡すのか?」
やっぱりわかるか、力になってくれそうな雰囲気で良かった…
「うん、でもチョコは作れないしそもそもどうやって渡すかもわからないし困っていて…汝たちなら力になってくれるってエレバスが言ってくれたの。」
「エレバスちゃんが!?なんでそう思ったんだろう〜」
「ふむ、ならばまずはチョコ作りだな。」
〜少女協定〜
「チョコ作りならやっぱりベルに教わるのが一番じゃないかな〜」
「ダメよ。」
つい反射的に否定してしまう。
「?ベルファストとは仲が悪いのか?」
「あ、違うの、ベルファストは指揮官のことが好きみたいだから…」
「「「はぁー」」」
三人揃ってため息つかれるほど変なこと言ったかしら私…?
「母港にいるみんな、指揮官のこと好き、です」
「でもみんなはヴァンパイアちゃんと指揮官の仲を邪魔したりしない、むしろ応援してるの〜」
「一部の変人、というか危ない人以外のみんなで協定を建てたのよ。」
「協定?」
一体なんのことだろう?
「「「自分の幸せより、今の指揮官の幸せを守ること。」」」
「みんな…」
みんなの気持ちや、それを押し込めてまで気遣ってくれているのに気づかなかった自分を恥じる。
「ありがとう、ベルファストに相談してみるわ!」
〜師匠爆誕!?〜
三人に別れを告げ、ロイヤル寮舎に足を運ぶ。すると、ベルファストがちょうど寮舎から出てきた。
「あら?珍しいですね、ヴァンパイア様がこちらの寮舎に来るのは。」
「ええ、少し用があってね、汝はまた陛下のお使いかしら?」
「いいえ、ヴァンパイア様を探そうと思っていたのです、ちょうど来てくれて助かりました。」
私を?なんでなのかはわからないがちょうど良い。
「私も汝に用があったのよ。」
「あら、奇遇ですね。」
「ええ、そうね。」
少し見つめあうと、突然ベルファストが笑いだす。
「ふふっ、用事はなんとなくわかっています、チョコ作りを習いに来たのでしょう?」
あれ?よくわかるな、ってもしかして…
「明石様との会話を聞いてなさったの、ヴァンパイア様でしょう?」
やっぱりバレてたのか…
「ええ、それでバレンタインについて聞いて回ってね、汝に助けて貰おうと思ったの。」
「ええ、私に出来ることなら協力しましょう。」
この際だ、全て頼んでしまおう!
「チョコ作り、いいえ、料理を教えて欲しいの!でも、まずはバレンタイン用にチョコ作りを教えて!」
結局ベルファストに習うことになるが仕方ない、他に思いつかないのだから。
「私もチョコ作りを教えようと思っていたのです、料理もご主人様がいつか教えを受けに来るだろうから良くしてやってくれと。」
じゃあ…
「料理は2年以上かかるでしょうが、チョコなら明日中に満足のいく物が作れるようにして見せましょう。」
自分も渡したいだろうに微笑んでそんなことを言ってくれる。
「ありがとうベルファスト。全力で学ぶわ!」
「やったねヴァンパイアちゃん!」
「ひゃっ!」
いきなり背中を叩かれて声をあげてしまう、この声は…
「何するのロングアイランド!というかなんでここに?」
「ふっふ〜普通に渡すんじゃつまらないからね〜…
〜作戦開始〜
作戦前夜、ベルとの猛特訓の末に完成したチョコを冷蔵庫にしまう。
「私たちに出来る準備はこれが限界です、後はヴァンパイア様の選択次第になります。」
ベルとロングアイランドだけじゃない、綾波や夕張に、エレバスとテラーも手伝ってくれたのだ、絶対に成功させる。
「十分手伝ってもらったわ、ありがとうベル、それにみんな。明日は楽しい日にするわ!」
「そうなるとこちらとしてもありがたい。」
「ヴァンパイアちゃん頑張ってね〜適当に尾行してるよ〜」
「それはやめてね?!」
とか言ってもみんな後ろで見てそうだけど…
「指揮官、そわそわしてる。」
「多分貴女がバレンタインにチョコをくれるのを期待してるわ、予定も空いているようだじ。」
「綾波も、応援してる、です。」
みんな最後まで励ましてくれる。
「ありがとう、とりあえず誘ってくるわ!」
そう言って執務室に走る、ちょうど指揮官は寝室に向かおうとしているところだ。
「汝〜!」
背中に向かって呼びかけると、不思議そうな顔を向けて聞いてきた。
「こんな時間にどうしたんだ?というか一日中何処居たんだ?」
「ちょっとね、それより汝、明日の予定は空いているかしら?」
「ん?午後からなら空いてるけど…」
「良かったわ、明日の午後からデートしましょうダーリン♪」
「え、ちょ、いきなりどうしたんだよ、今日何処居たんだって。」
「秘密よヒ・ミ・ツ、それで?明日はどうなの?可愛い妻の頼みを断らないわよね〜?」
「もちろん、喜んで行くよ、それで?集合場所は?」
良かった、これでみんなの頑張りは完璧に活かせる。
それに、エレバスとテラーが言ってた通り、何か落ち着きがないわね、ホントに期待してるのかしら?
「繁華街に行きたいの、午後5時に噴水の前でいいかしら?」
「わかった、仕事を全力で終わらして準備するよ。おやすみヴァンパイア。」
「ええ、無理はしないでね?おやすみダーリン。」
ダーリンと呼んだ瞬間ビクッとしたが、何も言わずに立ち去って行った。
私も明日は準備しなきゃいけないし早く寝ましょう。
〜デートスタート〜
最近買ってもらった衣装に着替え、噴水に向かう、いつも通り指揮官は先に居た。
「また汝より遅かったか〜、何分前に来てるの?」
「嫁を待たせるようじゃ夫失格だろ、とはいえ、5分前くらいだよ、ヴァンパイアも予定より随分早く来たじゃないか。」
時刻は午後4時20分、確かに早く来すぎたかな?
「まあその分は店でも見て回りましょう?ふふふ、楽しみにしてね?」
「昨日秘密にしてたことと関係あるのかな?楽しみにしてるよ。」
手を繋いで繁華街に向かう。
後ろに気配を感じるけど無視の方向で…
「繁華街に行きたいって言ってたけど、何かやりたいことでもあるの?」
とか言われても、ここで明かしたらつまらない。
「秘密よ〜今日は私に付いて来てくれればいいわ。」
適当に店を見て回る、たまにバレンタイン色の店が見えるが、それに入ったらサプライズが出来なくなりそうだからやめておく。
「このネックレスとか可愛いわね、どうかしら?似合うと思う?」
「ふふっ、ヴァンパイアにはなんでも似合うよ。んーでもイメージカラー的にはこっちかな。」
そう言って紅い宝石の付いたネックレスを渡してくる。着けてみると、確かにこっちの方が私に合ってる気がしてくる。
「いいね、買ってあげようか?」
「いいえ〜最近服を買ってもらったばっかりだし、他の子に買ってあげて〜」
そういうと怪訝そうな顔をする。
「他の子?仲良い子でも出来たの?ヴァンパイアが他の子になんて言ったことない気がするけど…」
ありゃ、やっちゃったかなこれは…
「エレバスとテラーと仲良くなったのよ、あの子達、私と少し似てるから。」
「似てるって髪と眼の色だけじゃない?まあヴァンパイアにも友達が出来たなら嬉しいよ、いつも1人だったからね。」
「悪かったわね。」
「あ、ごめん悪気は無かったんだ、許して。」
「ふふっ、気にしてないわよ〜」
ベルやロングアイランドの名前を出したら悟られそうだしやめといたけど、言っちゃったらどんな顔するのかしらね?
〜戦争本番〜
予約してもらった店でキャンドルディナーを終え、母校に帰る。
「食事は美味しかったけど、よくあんな変なオプションの付いた店を知ってたね、あれに行きたかったの?」
指揮官はキャンドルディナーを知らなかったらしい。
「うん、あれもやりたかったことの1つね、
本当にやりたかったことはこれから。」
「これから?もう帰ってるけど?」
後ろの気配は消えないが、もう噴水の前まで来たのだ、恥ずかしいとか言ってる場合ではない。
バックの中からチョコの入った包みを取り出す。
「これが汝の知りたがってたことよ、贈り物、受け取って貰えるかしら?」
「昨日はこれの用意を?ありがとう、開けても良いかな?」
「ええもちろん。」
中にはハート型のチョコと、日頃の感謝を伝える文面のカードを入れてある。
指揮官の顔が一気に喜びに満ちる。
「これって…やっぱりバレンタイン!ありがとうヴァンパイア!知ってるとは思ってなかったけどもらえたら嬉しいと思ってたの!」
やっぱり期待してたのね。
「ふふっ、どういたしまして、昨日はベルにチョコ作りを習ってたの、みんな出て来たら?」
そういうと後ろからドサドサと音がする。
「お前たち…」
指揮官はなにやら恥ずかしいのか驚いてるのかわからない顔をしている。
「痛てて、いつからヴァンパイアちゃん気づいてたの〜?」
「尾行を始めた時からヴァンパイア様は気づいてましたよ、というか押さないで下さいます!?」
「え、なに?俺たちずっと尾けられてたの?というかヴァンパイアは気づいてたのに言ってくれなかったの?」
「だってサプライズにしたかったし…」
「ご飯ならちゃんと食べたから心配しないで〜」
何処かずれてるよロングアイランド…
「というかヴァンパイア様、私たちを出す必要ありま「そうだよ〜キスでもするかな〜って応援してたのに〜」
ベルに被せてグイグイくるロングアイランド、呼んだの失敗だったかしらね?
「みんなに手伝ってもらったのにみんなに何も無いのは悪いと思ってね、みんな、隠し持ってるチョコ渡したら?」
「「「!」」」
今日は驚いた顔ばっかり見てるな…
「…良いのですか、ヴァンパイア様?」
「そんなのの為に手伝ったんじゃないよ〜」
「というか、他の子に悪いし、やめとくわ。」
そうか、確かにそれは考えてなかったな。
「…ヴァンパイア、貰ってあげても良いか?」
指揮官が言うと、みんなの顔が明るくなる。
「じゃなかったら呼ばないわよ〜、出来れば、ここに居なくてもチョコ作ってる子が居るでしょうから、それも貰ってあげて。」
「わかった。というわけなんだが、どうだ?」
三人とも私と似たような包みを取り出し、感謝を伝えて渡していく、でも私が望んでたのとは違うのよね…
「ありがとうみんな、今日はとっても楽しい日だった、もう遅いしすぐに帰ってちゃんと寝ろよ。」
そう言って指揮官は寝室のある寮舎に向かう。
私は…ちゃんと言っておこう。
「三人とも、私を気遣ってくれるのはありがたいし、今回はとっても助かった、でもね…私も指揮官も器は狭くないわ。」
そういうと、みんなして目を点にする、もっと直接言った方が良かったのかな?
「要するに…「「「ライバル上等、負けないわ」」」」
綺麗に声が重なる、その後も少し話しをして、みんなの寮舎に帰って行った。