予定通り後二話で終わらせます。その代わりに設定集の一部を後書きのオマケとして付け加えてます。
あとプリンツの使われない方の能力について、より良い名称が見つかったので一部変更してます。展開に支障はありません。
*ちょっとだけ天空闘技場編*
「ふむ? ゴン達の指導をするのに抵抗がある、と?」
「ええ」
「それは困ったな。彼らには、ちゃんとした指導者に基礎を教わって欲しい所なのだが」
「理由を聞いても良いだろうか? アポ無しで頼んだことは悪いと思っているが。それだけではないのだろう」
「あの子たちは、才能があり過ぎる。貴女も知っての通り、念は容易く悪用できる危険な技術です」
「ゴンたちの将来を恐れているのか。眠れる獅子を起こすべきか、否か」
「それなら仕方がないな。私が教えるか」
「え?」
「貴女は、それでいいのですか?」
「約束してしまったからな。私は約束を守る女だ。貴方が教えないなら、私が教えるしかなかろう」
「それとも、習得するのが念ではなければ良いのか?」
「それは」
「犯罪者にアニメだろうがスポーツだろうが、何を持たせようと結果は変わらんと思うのは私だけか?」
「弟子がどうなるのか、気にし過ぎるのも悪いと思うぞ。なるようにしかならんよ」
「誰もがそう、割り切れる訳ではありませんよ」
「わかりました。私が責任をもって教えましょう」
「ん。ありがとう。私も無茶を言ったものだな」
(まあ、ウィングさんの懸念も非常に最もであるのだが。何しろ、ゾルディック家随一の天才に“ゴンさん”だからな。本当に同情するよ)
VIPルームに戻ったルナール・プリンツ・クラピカの三人であるが。
そのまま会議続行とはいかなかった。
当然であるが、クラピカはルナールに対して怒っている。
「大事な話の途中で抜けるとは、何を考えているのだ?」
「申し訳ない」
未だルナールは連れ戻されたことで、少しだけ不服そうである。
とはいえ自分が悪いとは思っているらしく、正座で二人に向き合っている。
「大事なのは分かっているが、やりたくなかったのだ。二人程、私はこの計画を重視していないとはいえ。いささか軽率すぎたとも思っている。許して欲しいとは思わないが。誠意は見せるべきであった。本当に申し訳ない」
臆することなく、やる気の無さを再び公言する。
自らの行動を全然反省していないに等しい。
クラピカは怒りを通り越して眩暈を覚えた。
「本当に大丈夫なのか?」
ここまでやる気が無いのは清々しいぐらいだ。
非常に不安を覚えずに居られない。
実績を出してなければ、この場から叩き出している所だ。
プリンツについてはあまり心配していないとはいえ。
こんなやる気の無い人間を仲間にしておいて、大丈夫なのだろうか。
「うん? それは大丈夫だろう。私なんかが本気にならなくとも、幻影旅団は滅ぶさ」
ルナールは手をヒラヒラとさせ、気安く頷いた。
基本やる気の無い彼女ではあるが、蜘蛛の滅亡に関しては確信の色が見えていた。
「そもそも百年も経てば、大抵の人も組織も滅んでいるものだ」
「それは違うと思うのだが」
企業は設立から20年もすると1%も残らないと言われている。
国家も絶えず変わり替えするものであり、永遠と続く集団は無いのが常である。
とはいえ、これはそういう問題ではない。
「百年後に蜘蛛が滅んでも、私に意味はないだろう」
「結構大事なことだと思うのだが。まあ、クラピカの考えも尤もであるし。この辺りは私と二人との思考の違いかね」
集団が永遠でないことは、クラピカやプリンツにとって幻影旅団を放置する理由とならない。
クラピカにとっては、故郷を滅ぼした憎き犯罪者集団が現存していることに我慢がならない。
プリンツにとっては、犯罪者を自分が討つからこそ価値がある。
長い時間経過で自然消滅したところで、二人がハイそうですかと納得はしないだろう。
「ところで、プリンツ。二人でどこまで計画は進まったのだろうか」
「未だ、いくつかの案を考えている最中ですね。大した案はありませんよ」
ルナールに評価されている二人であるが、二人とも幻影旅団のことを詳しく知ったのは極最近のことなのだ。
幻影旅団をかねてから追っているクラピカも、ようやく尻尾を掴んだと言える段階である。
計画を確定させるには、もう少し時間が必要だった。
「結局、不意打ちは結局しないのか」
「確かに不意打ちが成功したのであれば、それでも良いのですけどねー」
勝てば官軍負ければ賊軍、勝てばよかろうなのだ。
それは間違いがない真理であるし、だからこそ人は卑劣に走る。
とはいえ、それを公言する奴は大抵が碌な目に合わないものである。
「とはいえ、不意打ちは欠点も大きいですから。何より正当性がありません。今回はそれを懸念しています」
自分が勝つと思い込むのは容易いが、その場合負けるとは思っていないであろう。
第一、卑怯に走って負けるのは非常に格好悪い。
そして勝ったとしても問題は山積みであるのだ。
取らぬ狸の皮算用とはいうが、後々のことも考えるのは望ましい。
「ルールは守れば何をやっても良いと考えるのは私に馴染み深いですが。これは後々の人間関係に問題が生じる欠点に悩まされるものです。この辺りはジャポン人であるハカセに馴染みがあると思いますが」
卑怯な手段で勝ったとしても、正当に評価されないのだ。
そして実力を伴わないで勝っても、後々困るのは自分なのだ。
であれば、正当に勝つことにはそれなりに意味がある。
「尤もである。だが、私の前でジャポンの人間を評価して欲しくはない」
「おっと、これは失礼」
ルナール本人は無表情だが、その耳が不愉快の色を強めた。
いたずら成功を喜んで、プリンツは肩をすくめた、
「そして、少人数での不意打ちが容易く成功する相手だとも思いません。この辺りはゾルディック家を使っても欠点が残りますからね」
因みにゾルディック家に依頼して暗殺する場合、そこに弱点が出来てしまう事も留意すべきだろう。
基本的に依頼主が殺されると、依頼が自動的にキャンセルされる契約なのだ。
普通の暗殺ではあまり問題にならないが、相手が幻影旅団であると話は別だ。
相手は紙防御とはいえ攻撃力があるため、こちらに突撃してくる可能性は非常に高い。
「相手を暗愚だと考えるのは愚策でしょう。“他人こそは自分を映す鏡であり、他人の評価は自分の評価である”とはハカセの言葉でしたね」
「まあ。である、か」
危険な犯罪者集団が今までのさぼってきたのだ。
そこには必ず理由がある。
相手を甘く見積もれる気は一切ないのだ。
「ここはやはり王道を往く、正面から弱点を突くべきかと」
「結局弱点は突くのな。正々堂々と言っていいのだろうか? クラピカ的にはどうなのだ」
でもまあ、ある程度の卑怯な搦め手は使うのである。
間違っても、馬鹿正直に正面から戦える相手ではない故に。
「私は、それで構わない。単純な強さにおいて私たちが勝てる相手ではない」
「少なくとも、私たち二人はそれで合意していますね」
「そうか? そこは良く分からんな。まあ、納得しているのであれば良いのだが」
一口に暗殺と言っても、色々あるということであろうか。
密かに狙って殺しさえすれば、例え合法であっても暗殺である。
殺人は、やり方によって正義となるのだ。
「そう言えば、ハカセ。貴女に幻影旅団の弱点については聞いていませんでしたね。正直な所、どう思われますか?」
ルナールはそこで首をかしげる。
「それを聞くのは良い。とはいえ意図がつかめないな。そのくらい二人は理解しているのではないか?」
弱点といっても、どこから話せばいいのか。
色々あるだろうが、どの点のことを聞きたいのかを知りたいのである。
「戦略の話なら、プリンツも上手だろう」
「戦略眼については貴女が上手でしょう。ストⅡでは私が勝ちますが、桃鉄では貴女に勝てませんよ」
「それは、そうだろうが。ここでゲームの話を持ってこられてもな」
「私には大差ないことですから」
ルナールも自身に戦略眼があるとは思っているが。
他人にどう思われようが、自身の“
自身が悪だとは思っても、戦略レベルで間違えたことはそう無いのだと自負している。
とはいえ、プリンツの出す戦略も悪くないはずだと思うのだが。
「あとは、貴女が蜘蛛寄りの思考をしているというのも大きいのですよね」
「ああ。成程。私の考えが概ね彼らの戦略と一致するのかもな」
餅は餅屋だ。
犯罪者には犯罪者の戦略がある。
警察がハッカーにハッキングを学ぶようなもの、ということであるか。
「幻影旅団をどう評すべき、か。そうだな」
同じ悪とするには、語弊があるかもしれないが。
こちらはチンケな子悪党だが、あちらは産まれながらの大悪党集団だろう。
とはいえ、蜘蛛については理解できる。
「連中は良くも悪くも、最強の半グレ集団であるな」
その言葉に、プリンツは首をかしげる。
一方でクラピカは、ゆっくり頷いだ。
「“半グレ”とは、また聞きなれない言葉ですね。誰かの造語ですか?」
「確か、マフィアに所属しない犯罪者集団の総称であったか? しかし、この場合だと意味合いが少し違ってくるはずだが」
「それは思ったが、他に適切な表現がな。“最強の盗賊団”と言っても在り来りで印象に欠けると思うよ」
現代における犯罪者集団といえば、ヤクザやテロリストが思い浮かぶだろうか。
とはいえ、社会にはそういった犯罪者集団ばかりでもない。
幻影旅団は彼らが自称するように、“盗賊”であるのだ。
彼らは尖兵でありながら、組織の核である。
「彼らに支援者となる人間が一切居ない故に、フットワークが非常に軽いのだ。勿論、集団としても小規模で少数精鋭である。面倒な人間関係に煩わされることが少なく、好きなように悪事を動く事が出来る。正に彼らにとって理想の組織形態であるな。―欠点もそこにある訳だが」
もし、彼らが政治家やマフィアの子飼いであれば話は変わってくる。
上の意向を無視できず、自身の思い通りに動く事は容易く出来まい。
とはいえ、子飼いであることはメリットが存在しているからそうであるのだ。
「最大の欠点は、攻められると非常に弱い所だ。数が少なく補給が非常に弱い故に、守りは絶望的に向いていない。メンバーも物資も現地調達が基本であるから、籠城もゲリラ戦も出来んのだ」
簡単に言ってしまえば、高機動高火力の紙装甲。
しかも自転車操業のオマケ付きである。
基本的に数と規模が足りていないので、どうしても安定には程遠いのだ。
「小規模の組織故に、戦略的な切り札も殆ど持っていないのがな。団長のクロロは備えているとはいえ。次点のヒソカやウヴォーギンも強力ではあるが、いかんせん安定性に欠ける。集団戦が出来るのも、後はノブナガぐらいだろうし」
幻影旅団は戦術的には間違いなく最強クラスであるのは間違いないが。
極端な例を挙げるならば、核兵器などの手段を複数持てる国家などに戦略的勝利は不可能だ。
旅団から考えられる戦略的手段は三つ。
“発“を盗み、組み合わせることで戦略手段を得る可能性のあるクロロ。
圧倒的な攻撃力と防御力を持つが、それでも搦め手を防ぎきれない可能性が残るウボォーギン。
全体的に人間最高レベルの強さを持つが、人間性には全く信用ができないヒソカ。
「これらは当然、相手側も分かっているだろうけどね。だが、改善できない弱点であるのも確かだよ。私の考察は、こんな所だな」
「ふむ。そうですか。クラピカはどう思います?」
ある程度参考にできる。
だからといって、すぐに納得するのではなく。
二人は内容を少しずつ吟味していく。
「本当に背後が居ないと言えるのか? 幻影旅団のメンバーの殆どは流星街の出身だと言っていただろう。流星街の住人に手を出せば報復があるとも聞いている」
孤立主義の盗賊団と言っても、完全に外部とのやり取りが無いわけではないだろう。
流星街出身となればなおさらだ。
そして世間において、流星街出身者はタブーに触れることに等しい。
流星街は来る者を拒まず、そして住人から奪うことを許容しない。
「ああ。そこは気にしなくても大丈夫だろう。そもそも、現状の彼らに報復する力が有ったとしても弱いだろうし、互いの関係と交流も悪いと見ていい。それ用の“発“をクロロに盗られているからな。幻影旅団が流星街を支援しても、流星街が幻影旅団を支援することは無かろうよ」
過去にも、流星街に危害を加えた物が暗殺される事件があったが。
それは流星街の長老の念能力、“
ルナールによると、クロロはこの能力を盗んでいるそうだ。
そのことで両集団の関係は恐らく良くはないだろう。
「それに、二人は報復など気にしないであろう?」
「んー。恐らく、そこが肝ですね」
二人は報復が怖くて復讐などしない。
とはいえ、この場合は別の問題があると見た。
「ふむ。何か考えが?」
「まずは、そこを断ち切らねば始まりません。私たちには関係の無い話ですが、一般のハンターにはそこが難点ですから」
「うん? 何が目的だ?」
何故、そこで他のハンターが出てくるのだろうか。
「一応言っておくと、流星街の人間は、基本話の通じる相手ではないぞ。いかんせん閉鎖的で保守的な組織だからな」
確実に、流星街と幻影旅団との関係を絶っておきたいと考えたのだろうか。
ルナールには分かるが、彼女はそれも難しいと見た。
彼女知る限り、外部からの災害に巻き込まれても責任の押し付け合いをしているような連中だ。
「そこは案外、どうにかなるかもしれませんね」
クラピカとルナールは、プリンツの方をじっと見つめた。
「ふむ。詳しく聞かせてもらえるか?」
そこからプリンツは、自分が考えていた計画の骨格を話し始めた。
彼女が一通り話した後、ルナールとクラピカの二人は口に手を当てて考え込んでいる。
「何と言うか。私には無理な作戦であるな。そもそも、それは
「私とハカセが分かり合えるのだから、蜘蛛とやらも案外話の通じる相手だと思うのですけど」
「どうだろうなあ?」
それなら他のハンターを巻き込む理由になるだろうが。
ルナールが思いついてもまず実行はできないし、しないだろう作戦と見た。
「これまでの情報を纏めると、恐らくそれが最善、か? とはいえ、クラピカはこの作戦でいいのか? これで納得いくのかな」
結局、ルナールは相談に乗るだけで実行には関わらないのだ。
勿論自分にも危険性はあるが、それでも直接動くつもりもない。
であるならば、大事なのはクラピカが納得することであるが。
「悪くはない作戦だ。私の思い描いていた物とは大分違うが。成功と失敗、どっちに転んだとしても私には望ましく思える。出来る事ならやってみたい」
「そう、か。そうなのか」
クラピカはそれまで、蜘蛛を討伐することを考えてきた。
しかし、この作戦の第一段階が成功すれば、蜘蛛との交渉が出来る。
交渉が上手くいけば相手に損害を与えられ、失敗すれば互いに殺し合うことになる。
蜘蛛を良く知らなったとしても、これはこれでありかもしれない。
「旅団は攻められれば脆いとはいえ、突破力はある。となると確かに、この辺りが落とし所であるか」
言うまでもないが幻影旅団の討伐は非常に難しく、プロハンターでも敬遠するほどである。
こちらとしても全面的な殺し合いは互いに望むところであるが、その場合損害は大きくなることは確実だ。
となると互いに譲歩ができれば嬉しい所である。
「これは、ヒソカにも連絡しておくべきだな。ヒソカを敵に回したくないし。ヒソカがこっちに就けば、クロロを殺ってくれるだろう」
「そこはお任せします」
となると、スパイと成りうるヒソカは是非とも利用したい。
彼は武に長けている上に、情報操作にも長けている。
敵になると恐ろしいが、味方だと条件付きとはいえ非常に頼もしい。
「いや、そこはプリンツかクラピカが交渉してくれると助かる。言いだしっぺの法則に異論はないが。口下手な私がするのか?」
「ああ。それもそうですね。では私の方から話しておきますね。連絡先を教えてください」
「では、いくつか有利になりそうな材料も渡しておくか?」
「お願いします」
ルナールはヒソカに好意的であるが、彼との会話が得意な訳ではない。
ここは交渉に向いている人間が交渉するのが良いだろう。
「はあ。上手くいけば旅団は半壊だろうな。そして下手をすれば全壊か。思えば、幻影旅団最大の弱点は奴ら自身というものも変な話であるが」
暴力団などは損害を受けても、補給次第で容易く立て直せる。
だが補給の弱い形態の集団は、一度損傷するとそのまま崩壊してしまう可能性が高いのだ。
これは主要メンバーがそのまま、戦力であることの弊害であろう。
「人の弱みに付け込んだ作戦、かあ。とはいえ現実は常に想像の斜め下行くものであるものだ」
ルナールはここで“とある予言”を思い出した。
この予言はとある予言念能力者によるもので、自身の気まぐれで手に入れたものだ。
“輝夜姫が鎖に繋がれて そこで三顧の礼を見る
月の眠りを祈り念じろ 貴女に二度目は訪れない
卯月の偽りを撥ねつけよ 難題はそこでの一度きり
狩人が北から来ることで 帝は富士より下るだろう“
「この作戦が、上手くいかないことを願うばかりであるな」
ルナールは小さく呟く。
予言の言いたいことは分かる。
となると、この件で自分が死ぬことは無いと見た。
そしてそこからどうするべきか、自分には未だ良く分からない。
「作戦が上手くいかないことを願うとは、何を言っているのだ?」
「私の本意ではない。そっちの方が面白いことになると思っただけだ」
「何だと?」
ルナールは自らの死というものを理解しているつもりだ。
そして最悪この件で死んでもいいとは思っている。
まあ、死なないとも思っているが。
死にたがりが自分から自殺することは無い故に。
「何も他人事ではなかろうよ。私の破滅願望とは趣が違うであろうとはいえ、具現化系である私には良く分かるぞ」
では、他の人間ならどうなのだろうか。
彼女は、特にクラピカに対して一種の臭いを嗅ぎ取っていた。
「クラピカも失敗することを望んでいるのではないのか? 相手が話の通じない下賤な獣であれば、手を下す事も楽だと思わんか?」
「それは。言ってはならんだろう」
クラピカは蜘蛛に故郷を滅ぼされた。
それ故に、復讐に身を投じることとなった。
ルナールはクラピカが“利他的で繊細である”と知っている。
そして、それは敵であろうと相手を理解してしまうのだ。
もし蜘蛛が理解の及ばない完璧なる異邦人であれば、それはクラピカにとって一種の救いであったことだろう。
**
それを最初に察知したのは情報担当である、シャルナーク・リュウセイだった。
彼は携帯アンテナで他人を操作するという、操作系で良く見られる“発”の使い手であるが。
それとは別に彼はプロハンターであり、幻影旅団で情報の収集を行っていた。
「団長。大変だ」
「どうした」
幻影旅団は一つの集団とはいえ、普段は少人数に分かれて行動している。
その時は、偶々シャルナークと団長であるクロロが共にしていた。
「ふむ」
クロロはシャルナークが纏めたパソコンの情報を見る。
急いで纏めたせいか、荒く情報が散らばっているが。
それでもビブリオマニアでもあるクロロには理解できる範囲だ。
「こりゃ、駄目だな」
「あ。やっぱりそう思う?」
何度か読み取った上で、素直に降参を示していた。
そこには以下の情報が簡潔に纏められている。
新人ハンター二人が蜘蛛討伐を掲げたこと。
その働きかけにより、ハンター協会が蜘蛛討伐を公言したこと。
何者かによりネットに蜘蛛の詳しい個人情報が流出されていること。
そして流星街の人間が蜘蛛と無関係を貫くことを表明したこと。
蜘蛛とその外部の関係が悪化していることなどが書かれていた。
「手の内を見透かされた上で、大きく先手を打たれてしまったな。恐らく、“個人情報を得る“能力の使い手がいる仕業だろう。となると、これまでに何かしらの接触があったはずだが。今一つ不自然だな」
幻影旅団は盗賊として大胆に行動しているが、極端に名を売っている訳でもない。
勿論、組織として情報に関しては慎重であるぐらいだ。
それが、ほぼ全員が丸裸レベルまで情報を暴かれている。
念能力で出来ないこともないだろうが、あまりに情報流出が大きすぎる。
「俺たちの中に裏切り者が居るってのは?」
「いないよ。オレたちの中には」
「ヒソカは? 元から裏切る気満々だし。アイツだけ不自然に、手の内が全く漏れてないじゃん」
ここでヒソカが挙げられる。
ヒソカは途中参加の旅団メンバーとはいえ、皆の嫌われ者である。
実力と実績はあるので一応受け入れられているが。
「その可能性も考えた。アイツが入った時期から考えると、そのどちらでもないのかもしれん」
「えっと。じゃあ、ヒソカも利用されているってこと?」
「多分な。どこまで利用されているかは知らんが」
何より、ここまで“発”の内容が詳しく知られているとなるのが説明できないのだ。
旅団内とはいえ、詳しく互いの能力を把握している訳ではない。
仲間とはいえ“発“を探るのはマナー違反であり、“発”を詳しく知るのは自分自身だけに他ならない。
可能性があるのは珍しい特質系のさらに珍しい分野であり、旅団内で言うなれば情報担当の一人であるパクノダの能力であろう。
「ヒソカは変化系だろう。仮に奴に化けたスパイの行動があったとしても、何かしらのリアクションがあるはずだ。無いとしたら。相手は厄介な相手だな」
可能性が高いのは操作系で変装して旅団に近づき、接触して特質系で情報を盗んでいると考えるべきか。
諜報に特化した人間か組織ならできそうであるが、大変貴重で手練れの犯行だ。
そもそも現状で既に手遅れの段階であり、今からの追跡は不可能であるし意味も無いだろう。
「ここまで殆どの“発”を知られているとなると。相手はヒソカについても完全に把握していると見ていい。となると、オレにぶつけてヒソカとの相討ちを狙っていると考えるのが自然だろう」
「ああ。成程」
ヒソカは掴みどころがない性格の一方で、その目的は非常に分かりやすい。
単に彼は強者であるクロロと戦いたいのだ。
本人はそのことを公言しているし、周りも分かっている上で受け入れてきたことでもある。
となると、丁度良い理由があれば容易く裏切るだろう。
「しかし意外だな。確かに、これを想定しない訳ではなかったが。ここまでとなると、いかんせん気味が悪いな」
クロロも蜘蛛の滅亡については良く考えたことがある。
何より自分たちが死ぬことを対策しないでそのまま滅亡してしまうのは、あまりに悲しいことだから。
奪ってばかりの盗賊人生であるが、残すべきものは確かにあるのだ。
この件に関しても、蜘蛛が残ることにはなるのだろう。
だが、納得いかないのも確かなのだ。
クロロはそれまで読んでいた手元の漫画を見つめる。
ありふれた少年雑誌の、人気冒険漫画である。
自分たちがここまで読まれているのは何故だろうか。
「これからはどうするの? オークション襲撃はする?」
「計画は続行だ。そのためにも旅団を一旦集める。そこからはオレが説明しよう」
クロロはマフィア主催のオークションを襲撃する予定を立てていた。
その襲撃は未だ一部の人間にしか伝えていないが、恐らくこれも読まれているのかもしれない。
この状況で楽観はあまりにも危うい。
だが幸いにも、あちらに殲滅する気はないと感じた。
相手から出さされた情報だけで判断しているので、詳しい調査は必要であるが。
この件に関しては明らかな突破口を相手側が用意していて、それがそのままこちらの正解であると見た。
「集合するのは危険じゃない? 一網打尽の可能性は?」
「それもあるかもしれないが。戦力の分散はしたくないな」
オークション襲撃は、単に盗賊としての心だ。
盗賊を中止して捕まればただの犯罪者に成り下がるが、盗賊中に死ねば盗賊のままである。
それは皆が納得することであろう。
彼らにも盗賊なりの信念がある。
「それに、どうせ守りに入るなら皆と一緒が良いだろう?」
「あー。それもそうだね」
ここで逃げるという選択肢はまだ無い。
蜘蛛の姿や身分を偽って潜伏するという手段はあるが、それも問題の先延ばしである。
そうして解決に持っていきたいとは思うが、それを相手はどう思うかだ。
既に逃げ道が、相手に舗装されているという場合も十分考えられる。
「引き続き、相手のことも調べてくれ」
「オレのハンター証が何時まで使えるかは分からないけど、出来る限りやってみる。だけど、相手が無名の新人ハンターとなると厳しいかもね」
「それでも良い。シャルなりに最善を尽くしてくれればいい」
相手の計画で厄介な所は、首謀者たる二人の首を取っても解決しないであろう点である。
所詮は新人ハンターなので、動き始めたハンター協会の動きを止めるには至らない。
協会に働きかけたのはこの二人であろうが、影響力はそこまで大きくないはずだ。
「ああ、後。最善はというけどさ。出来ることは全部しておきたいよね」
「何か案があるのか?」
まずは相手を見極め、そこから最善手を指していくつもりではあるが。
幻影旅団の危機にあたって、クロロは“蜘蛛を残す”という方向に考えている。
当然、団員の皆もそう思っていることだろう。
ここでは、何を最善とするだろうか。
「多分、相手の優先はオレとかだし。それなら自爆戦術もアリかなーってさ」
「最後は自爆特攻か。最悪だな、それ。準備しておいてくれ」
「うーん。同時並行はちょっとキツいけど、誰かと上手く分散できないかな。やってみる」
蜘蛛の足取りについて、この動きの良さは特筆に値するであろう。
団長は絶対だが無私であり、なおかつ旅団内の結束は非常に強い。
そして、彼らは必要であれば最悪の戦術を取ることに何のためらいもない。
蜘蛛は動き始めると、どこまでも早い。
「厳しいだろうが。最低限、オレの分の爆弾を率先して用意してくれ。恐らく、一番の囮役にはオレが行くことになるな」
蜘蛛討伐を公言しているので、頭であるクロロが狙われる可能性は非常に高い。
その場合、自身を犠牲にして活路を得るのも不思議ではない。
仲間を大事に思うからこそ、仲間のために犠牲になることに躊躇いは無い。
クロロの覚悟は常に決まっている。
「なるほど。まあ、そうなるよね」
「―うん? 何か問題があるのか?」
シャルナークの肯定に、クロロは僅かな違和感を感じ取る。
「いや、大したことじゃないけど」
「オレの命令は最優先。だが、オレを最優先に生かすことはない。オレも蜘蛛の一部。生かすべきは個人ではなく蜘蛛。そうだろう?」
クロロが言うことは最もだ。
だが間違いなく、クロロ以上の団長はいないし今後現れない。
それは皆が認める事であろう。
だからこそ、シャルナークはどうしても彼が惜しいとも思ってしまう。
勿論それは論理によって押し殺すことなのだが。
「大丈夫。分かっているよ」
この件に関して一つだけ、クロロが読み違えている事がある。
クロロは必要であれば容易く身内を切り捨てるが、自身もまた切り捨てる対象である。
頭を潰したとしても、蜘蛛は動き続ける。
ただし、彼が思っている以上に旅団は彼に依存している所もある。
何かを成すにあたって自らの死を考えないのは杜撰である。
だが、偉大な指導者の影響力は大きいのも確かであるのだ。
こうして、幻影旅団は公的に滅亡することになる。
その残党が、その後に活動していくことになるのだが。
彼らが新たな蜘蛛を生み出すのか、それとも団長の意思が潰えてしまうのか。
その結末は神のみぞ知ることである。
*以下、設定の一部*
色々真似しながら描いたイメージイラスト:
【挿絵表示】
名前:ルナール(アマテル・ヒュウガ)
身長:160cm
体重:49kg
スリーサイズ:B86/W57/H84
属性:中立・悪
好きな小説:屍鬼
好きな音楽:Baba Yetu
特技:電子機器いじり、黒登山
苦手な物:一般人
天敵:クロロ
能力:
解説:この作品の主人公。利己的な悪人で、恐らく周囲と読者に良く思われていない。
健康のために修験道を修めており、それを戦闘にも用いる。これは立ち回りに重きを置いている流派で、技自体は修験道でもなんでもない彼女のオリジナルが殆ど。
戦略的優位からのゴリ押しを得意とするが、戦術に関しては上手でない。また典型的な犯罪者タイプであるため、周囲に敵視されやすいのも難点。
回が進むにつれ畜生化が著しいが、元ネタがどれも基本そうなので。とはいえ当初に禄すっぽ設定を決めてない割に、キャラは大してブレてはないと思う。