美少女てんこー   作:倉木学人

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突然ですが描きたいことを概ね描けたので、これにて完結とさせてもらいます。
元から一発ネタだったのですし。

とはいえ、他の原作キャラとの絡みは描いてみたいとは思っているので。
そちらは番外編として、その内投稿しようと思います。


NO.4 変態vs.変態

 二次試験が無事に終了し、合格者はハンター協会の飛行船へと乗せられていた。

 極少数の不合格者(の生存者)は、フェリーに乗せられている。

 

 そんな中、ルナールは尻尾をゆらしながら他の参加者を眺めていた。

 視線の先には、新人潰しのトンパ。

 その視線に気づいたトンパは、嫌そうにしてその場を去って行った。

 ルナールはヒソカとつるんでいるので、同類と思われているのだろう。

 

 まあ、そこまで間違った認識ではない。

 ただルナールは変態かもしれないが、人殺しをするタイプの変態ではない。

 それだけは伝えたかった。

 

 元が男性なので乙女心なんて高尚なものは持っていないが、ヒソカと一緒にされることは少なからずショックなのである。

 

「キミってさ♦ ああいうのがタイプなの?」

「いや、そういう訳ではないが」

 

 傍でトランプタワーを作り、崩す遊びをしていたヒソカが尋ねた。

 ルナールはそれに心外だ、という顔をしている。

 自分の性癖が、若干歪んでいるとは自覚しているが。

 それでも、アレみたいな小悪党は好みでないとは思う。

 

「私は単に、強い人が好きだ」

 

 彼女が好むのはゴン・フリークスやヒソカのように強い人間。

 あるいは、パリストン・ヒルのような強かな人間である。

 

 ただし強いとはいっても、クロロやツェリードニヒ・ホイコーロみたいなのは好きではなかったり。

 そこら辺は彼女なりの美学というものがあるのだが、さて。

 ま、彼女も深く語る必要はないだろうとは思っている。

 

「そういう意味では、アレも多少強かな人間なのだろうなと、な。ちょっと見直しただけだよ」

「ふーん♣」

 

 ヒソカはそれをどうでもよさそうに流した。

 彼にとって玩具未満の人間など、どうでもいい話なのだろう。

 ルナールもそれを察しているので、話は続けなかった。

 

「よぉ」

 

 と、そんな中、二次試験の試験官であるダンディーが歩いてきた。

 ルナールは軽く会釈をし、ヒソカは我関せずである。

 

「ダンディーのお兄さん。非念能力者の試験とは、どんな内容だったのだ?」

 

 と、そんな中、ルナールが話をふった。

 どうやら話自体はしたかったようだ。

 

「ん? そう大きく変わりはしねえよ。ああ、最後の仕掛けがただの猛獣にはなっているがな」

 

 つまりトンパは、この世界の猛獣に値する敵と戦って、勝てるだけの戦闘力があるという訳である。

 この世界に念能力者を含めずとも超人は多いが、それでも無手に近い状態で熊クラスの獣と闘うなど冗談ではない。

 彼もまた、何かしらの武術を修めているのかもしれない。

 

「この世界の人は見かけに依らないものだな」

「13番のことか? ありゃあ確かに、ある意味で大物だな」

 

 彼は一次試験の際も、どさくさに紛れて最初のガラス玉をかすめ取っている。

 そもそも彼は10歳の頃からハンター試験を受け続け、それでありながら死んでないのである。

 その危機管理能力は特筆に値するだろう。

 一般人から見れば、彼もまた十分に超人の部類の人間なのである。

 

「小物界の大物といった所か?」

「筋は良いのによ。もったいねえこった」

 

 

 そうして飛行船は、ある片田舎に着いた。

 そこは寂れた遊園地だった。

 ポップな文字で“メルヘンランド”と書かれたそこは、かつて商業施設として繁栄していたのだろう。

 今はその面影を、豪華な設備の跡により微かに残すばかりである。

 看板は錆びつき、入場ゲートは壊れ、チラシのようなものが辺りに散らばっている。

 そのような場所ではあるが、人が多く配備され、厳重な警備がされているようであった。

 

「おーっす。未来のハンターたち!」

 

 そんな中、遊園地の入口に立つ男が一人。

 背はやや小柄だが、体格はガッシリとしている。

 赤を基調としたフルフェイスのヘルメットとライダースーツを着込んでいる。

 その声の大きさからして、服装越しにも熱量を感じるような男である。

 

「オイラはクライムハンターのイチゴウってんだー。よろしくな!」

 

 勿論、この男も数あるハンターの一人である。

 彼はハンター特権による犯罪者の取り締まり、そういった仕事を引き受けるクライムハンター。

 普段の彼はハンター同士でチームを組んでいる、というのは蛇足な情報であろうか。

 

「早速だが、三次試験の説明に入るぞー! 三次試験は“鬼ごっこ“だ!」

 

 そんな彼を察して、ルナールはなんとなく戦隊もののヒーローを思い浮かべた。

 五人組で協力して必殺技を放ったり合体ロボを作ったりしそうだなあ、なんて呑気なことを考えているのである。

 何とも夢のある話で、実際の所念能力ならそれが可能である。

 恐らく彼の仲間には、クールぶってるけど芯は熱いやつだとか、三枚目のお調子者だとかがいるのだろう。

 

「お前らを遊園地(ここ)に閉じ込める! そして24時間後に開ける! そこから1時間後までに脱出した奴が合格だ! 以上!」

 

 勿論、説明を聞くのも忘れないでいる。

 鬼ごっこと称してはあるが、捕まるなとは言っていない。

 これは、何かありそうだなとルナールは感じる。

 ある程度想像はつくし、問題はないだろうが。

 

「おいおいイチゴウ。もっと説明するべきじゃねえのか?」

「必要ないぞー! 試験はシンプルが一番だからな!」

 

 この場には、一次と二次試験の試験官たちも付いてきている。

 ダンディーはイチゴウを諌め、アンダインは我関せずといった様である。

 ハンター試験の裁量は、基本的に各試験官に委ねられている。

 試験内容は、事前にある程度決めているだろうから、他の試験官から情報が漏れることも有り得る。

 試験参加者はさらなる情報を求めて、試験官たちに期待の眼差しを送る。

 

「俺から補足しておくと、鬼どもの正体は殺人以上の罪を犯した死刑囚だ。捕まったら死ぬぜ。死ぬ気で逃げろよ?」

「おいおい。ネタバレは厳禁だぞー!」

 

 やはりか、と受験者の間がざわついた。

 名のあるハンターは犯罪者と契約を行い、己の手先として扱うこともある。

 勿論、何かあればハンターの責任にはなるのだが、この場はハンター試験である。

 犯罪者が受験者を拷問の末に殺したぐらいで、何か問題になるとは到底思えなかった。

 流石に脱走をされると困るので、この警備なのだろう。

 

「お前らは厳しすぎなんだよ。もっと人を大事にしろ」

「そういうお前は甘々だと思うぞー。これくらいできないとハンターは無理だ!」

 

 とはいえイチゴウのいう事も最もであり、ハンターならこの程度の障害など突破してもらわねば困るのだ。

 ハンターに求められるのは “強さ“であるのが風潮だ。

 そう言う意味では相手を倒せと言っていないだけ有情ですらある。

 “解体屋(バラし屋)”ジョネスレベルの犯罪者も鬼に含まれているのであろうが、それをどうにかできてこそハンターと言えよう。

 

「ま、そういうこった。試験そのものから逃げるんなら今の内だぜ?」

 

 とはいえここで引くような人間は、受験者に居なかった。

 犯罪者相手でも一歩も引かないその心構えは立派と言えよう。

 

 ただ結果的に、彼らの想定は甘かったとは言わざるを得ない。

 快楽殺人鬼が受験者の中にいて、“好きに殺しても良い状況”がどれほど致命的なのか。

 それをもっと早く、重く見るべきだったのであろう。

 

 とはいえ、これもハンター試験のあるべき姿であろうか。

 引き際を見極められない奴は死ぬ。

 ただ、それだけのことであろう。

 

**

 

 三次試験開始から数時間が経過し、ルナールは一種の違和感というものを感じていた。

 元々頭は良くないと、はっきり自覚している彼女である。

 それでも自らの念能力である、美少女転換(プリンセス・テンコウ)で頭脳強化はしている。

 同様に役立つと思い、ポイントを割り振って“直感”というものも体得している。

 冷静な頭とその直感により、何かしら自分にとって良くないことが起きていると確信していた。

 

(妙だな。出会う人が少なすぎる)

 

 彼女は鬼ごっこのセオリーは知らないが。

 リスク的には他人とつるみ、他人を囮にして鬼を撒いたりするのが基本戦術であろう。

 にも関わらず、驚くほど人と出会わないのである。

 それも、時間が経つほどである。

 あるいは気配を殺して物陰に隠れるなども良い手であろうが。

 それなら、念使いであるルナールなら居場所が分かるはずであった。

 今もオーラを広げて相手を察知できる念の応用技、“円”を用いているにも関わらず、である。

 

 ただ、この状況でも確実に言える事がある。

 試験はルナールにとって全く脅威になっていない、ということである。

 

 基本的に、念使いとそうでないものの差は激しい。

 例えゾルディック家の天才児と言えど、念を使えなければ念使いに勝つのは非常に厳しいものがある。

 つまり、いくら凶悪な犯罪者と言えど、念能力者であるルナールには相手にならない。

 同じ念能力者であったり、進んだ科学技術による搦め手であれば別だろうが。

 殺意の高いハンター試験と言えど、そこまでする理由は無いと思われる。

 念能力者の犯罪者なんぞ、ハンターといえど手に余るであろうし。

 星持ちのハンターなら管理できるだろうが、試験官がそうであるとはルナールにはそう思えない。

 

 となると、何かしらの念能力者が脅威と言えよう。

 

 この状況の原因候補としては、モブ参加者の中にいる念能力者の仕業。

 名のある者としては、“蛇使い“バーボンやポンズがそれにあたる。

 彼らは何かしらのきっかけで念を知り、目覚めたものであろう。

 とはいえ念能力者としてはかなり未熟であり、正直なところ腕前もハンター資格に適うほどのものでもない。

 そんな彼らが危険を冒してまで、事を起こす理由はあるだろうか?

 

 念能力者といえば、試験官もそうである。

 彼らがルナールを狙い撃ちにすれば、流石に苦戦は免れないと思う。

 ただ、そうする理由が分からない。

 ルナールは真っ当なハンターになりたいと公言し、その願いも手段も潔癖なはずである。

 試験官の逆鱗に触れた、という事はないはず。

 

(結局、こんなことをする奴なんて、一人しかいないのだがな)

 

 それは最初から分かっていたことである。

 脅威となる念能力者であり、試験官のように人を選別し、なおかつ自分に危害を加えるような人物。

 そんなのそうそういる訳ないので、この場に一人しかいない。

 下らない理由により、今までずっと無視してきたことである。

 

 自分の40メートル程の円に入ってきた、纏わりつくような気色悪いオーラの持ち主。

 直感が今すぐ逃げろと囁いている、そんな危険人物。

 

「や♥」

「ヒソカ?」

 

 ヒソカ・モロウ。

 彼は戦闘狂にして殺人狂。

 ルナールとしても正直、できれば試験に居て欲しくなかった人物である。

 

「何をやってる?」

「んー? 試験官ごっこ♠」

「さようで」

 

 分かりやすいぐらいに、血の匂いがする。

 そう言って、何人殺したんだコイツ。

 ルナールは嫌悪感を隠せない。

 人死はこの世界で良くあることだが、それでも嫌なものは嫌である。

 

「ほどほどにな」

 

 ルナールはしっしと手を振り、うっとおしがる。

 彼女はヒソカに対して好意的ではあるが、それは彼が強いからである。

 とはいえ、彼女にとって戦いは本意ではない。

 進んで殺人狂と戦いたいとは思わないのだ。

 

「どうした?」

「ねぇ♣ ボク、あれから我慢してたのだけど」

 

 ヒソカは立ち去ろうとしない。

 まあ、相手は拒絶したぐらいで去るような人間でないので当然だが。

 

「一旦殺し始めたら、止めきれなくなってね♦」

「ああ。なるほど」

 

 若干、諦めたようにルナールはため息をつく。

 何とも彼らしい理由である。

 好意は嬉しいが、正直歪んだ愛をこっちにぶつけてこないで欲しかった。

 

「今すぐにでも殺ろうよ♥」

 

 ルナールに吐き気を催すような殺意をぶつけてくる。

 常人なら、恐怖で発狂しそうなほど濃密だ。

 

「ああ。分かった」

 

 戦闘は本領ではないとはいえ、ルナールの身体は戦士のそれである。

 戦いに興奮を覚えないでもない。

 

「だが、互いに寸止めにしよう」

「気が向いたらね♠」

 

 それでも、ルナールは殺し合いなんぞ趣味でないのだが。

 人を殺して興奮するような性質なんぞ持ちたいとも思わない。

 彼女が好むのはスポーツ的な戦いまでなのだ。

 

(さて。覚悟はしていたつもりだが。これは不味いな)

 

 改めて相手を観察する。

 ハッキリ言って、勝ち目なんぞ一つもない。

 毒などの搦め手でも準備しておくべきだったか、と今になって後悔している。

 

 ルナールは熟練の念能力者である。

 “彼“は産まれる前から念を知っており、産まれた後は友達も作らず念能力に没頭してきた。

 習得はほぼ独学であるが、途中から念能力者の集団に所属し、研磨は欠かさなかった。

 

 修験道者(ミスティック)

 宗教に根差し、山に籠って超自然的な能力の修行に励む人。

 心源流ではないが、彼らもまた瞑想により念に目覚めし者たちである。

 それが彼女の所属する集団であり、彼女の職業であった。

 

 そうした修行の一環で、彼女は心技体を鍛えてはいる。

 だがそれでも彼女は単なる念能力者であって、戦闘の専門家ではない。

 念能力の系統的に戦闘の適正が低く、能力は戦闘に向いておらず、それ以外の能力は作っていない。

 身体は能力で戦闘に傾けているとはいえ、何もかもが不足している。

 目の前の戦闘に人生を捧げる、本物の天才の前にはあまりにも無力であった。

 

「どうした? 来ないのか?」

「先手は譲るよ♣ どこからでもどうぞ♦」

 

 とはいえ、やるしかないのだ。

 このままだと殺される可能性は非常に高い。

 が、見逃してもらえる可能性もなくはない。

 己の可能性を証明し、“戦うにはまだ早い“と思わせること。

 それがこの場に残された、唯一の可能性である。

 

「では、その言葉に甘えるとしよう」

 

 普通に戦っても、勝ち目などあるはずがない。

 だからこそ、譲られた先手が重要になってくる。

 

 ―この一撃に、全てを賭ける。

 

「最初は、グー」

 

 それは、“発”と呼べるものではない。

 単純な話利き手に、オーラを集める技術である“硬”をしただけである。

 それは彼女の強さへの憧れが作り出した、とある必殺技の、その模倣。

 つまりの所、単なる願掛けである。

 

「ジャン! ケン!」

 

 ルナールは距離を一気に詰めてくる。

 それを見てヒソカは思案する。

 この一撃を避けるのは、そう難しくはない。

 ガードしても良いし、そこから伸縮自在の愛(バンジーガム)に繋げても面白い。

 さて、どこを狙ってくる?

 

 相手の気を探る。

 ルナールはすでに、振りかぶるモーションに入っている。

 しかし、利き手に集まっているオーラが消えていることに気づく。

 では、消えたオーラはどこに?

 そう思う間もなく、ヒソカのある部分に目がけて全力の回し蹴りが放たれた。

 

「とぉおおぅ!」

 

 ミシリ、という音がヒソカの股間に響く。

 一夫多妻去勢拳と名付けられたそれは、男性にその効果を発揮する。

 つまりの所、全身全霊を込めた、ただの金的である。

 熟練の念能力者渾身の一撃により、ヒソカの身体が大きく吹っ飛んだ。

 

(や、やってない?! まさか、“硬“でガードされた?! あの一瞬で見切られた?!)

 

 しかし、吹っ飛ばした本人の顔色は優れない。

 普通の一撃なら、ガードされても可笑しくはない。

 

 しかし、身体全体を守る“堅”なら分かるが、一点で守る“硬”はあり得ない。

 しかも股間を、である。

 ただでさえ、オーラの移動技術である“流”は難しいのだ。

 それを咄嗟に、普通は鍛えない部分である己の股間に集めるなど。

 どう考えても正気の沙汰ではない。

 

「気持ち良い一撃だったよ♥ 久しぶりにドキドキしちゃった♠」

 

 吹き飛ばされた先から、平然とやってくるヒソカ。

 何とも嬉しくないことに、股間に力が入っているのが見える。

 股間に一撃を入れられれば、普通は精神的に委縮するはずである。

 それなのに、コイツは全く堪えていない。

 その事実に、ルナールは何ともげんなりする。

 

「でも、まあ♣ 君だけ一撃、ってのはフェアじゃないよね?」

 

 その言葉を聞くと、ルナールはとっさに“堅“の構えをとる。

 来るか、と思いきや。

 ヒソカは大きく後ろへ距離を取った。

 思わず相手のオーラを見極める“凝”をしたくなったが、それをする暇もないと直感により否定。

 ヒソカが構えると、一瞬の間で大きく前に加速した。

 なんてことは無い、伸縮自在の愛(バンジーガム)を地面に貼りつけておいて、そこから縮ませてバネの原理で大きな力を得たのだ。

 

(狙いは、腹か! ッ!? このまま“堅”でガードするしかない!)

 

 本来なら、“硬”でガードしなければならないのだが。

 相手はこちらに後出しジャンケンができる技量なのだ。

 “硬”だと他に弱点が出来てしまう。

 故に、このまま受けきるしかない。

 

 ヒソカ渾身の一撃により、ルナールの身体が大きく吹っ飛び、そのまま建物に激突した。

 意識が失いそうになる中、かろうじて受け身を取ることが出来た。

 しかし、こちらの身体のダメージが大きい。

 身体はかろうじて動かせるが、今ので臓器と肋骨を痛めた。

 戦闘は続けられそうにもない。

 

(こ、ここまでか。クソみたいとはいえせっかくの二度目の人生なのだから、今度こそ大学で好きなことを学びたかったのに。む、無念だ)

 

 運が悪かったといえば、運が悪かったのだろう。

 ルナールはこの世界を多少“知っていた“。

 とはいえ、ハンター試験の安全な年までは覚えていなかったのだ。

 ハンター試験を受けないという選択肢もあったが、それはできなかった。

 能力によりかつての自分というものを破壊してしまった彼女は、ハンターにでもならないと自分を証明できなかったのだから。

 他に、選択肢が思いつかなかったのだ。

 未練はあるが、後悔はない。

 

「うん♦ やっぱり良いよ、キミは♥」

 

 そんな中、ヒソカはあふれ出る殺気を霧散させていた。

 ルナールもそれを感じ取る。

 どうやら今回は、見逃してもらえるようだった。

 

「次はボクを本気で殺しに来てよ♠ せっかくのステキな能力なんだし、キミならそれもできるだろう♣」

 

 ルナールの実力を認めてくれているのだろう。

 ゴンさんのように後先を考えなければ、彼女はヒソカに届き得る。

 それを期待しているのだろう。

 

「今は、勘弁してほしい所だが。気が向いたら、な」

 

 まあ、そんな期待でもルナールは嬉しかった。

 今はやりたいことが沢山ある。

 だが、それも上手くいかないかもしれない。

 この世界は現実であり、どうしようもない苦難が沢山あるのだ。

 

 ならば戦いに戦い抜き、その中で死ぬ。

 そんな生き方も、そう悪くはないかもしれない。

 そうルナールは感じた。

 

「それと♦」

 

 連絡先をルナールに渡し、ヒソカは背を向け立ち去ろうとする。

 ふと、その前に振り返って、ある事実を指摘した。

 

「キミは下着のセンスが無いね♥ ちゃんとカワイイのを穿いて来なよ♦」

 

 戦いの中で彼女の着流しは破れ、彼女はその下着をさらしていた。

 パンツが丸見えになっているかと思いきや、そこには短めであるが色気のない、絶壁のドロワーズがあった。

 

「何だよ。いいだろ、ドロワーズ」

 


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