ボーイズ&ルフトヴァッフェ~空の道化師~ 作:Ocean501
オーシャン501です。
この小説は惑星WarTunderっぽい世界で雪風ネタを突っ込みつつ
エースコンバットする話です。
こまけぇことはいいんだよ!精神で読むと精神的な疲れが和らぎます
それでは本編をどうぞ
≪くそっ!こちらヴェノム2!後ろにつかぐぁ?!≫
≪ヴェノム2が落とされたぞ!≫
≪ヴェノム12!上方ちゅう、畜生!≫
キャノピーの外に、エンジンから真っ赤な火炎を噴き上げながら急降下していくスピットファイアがちらりと映る。尾翼に描かれた紫色の毒蛇は7.92㎜弾によって引き裂かれ、いまこの隊を襲っている災厄を端的に表していた。
12機のスピットファイアMk.Ⅴで構成された
その時までは。
≪後ろについたぞ!≫
≪バカ、逃げろ!≫
≪ヴェノム3が落とされた!≫
その災厄は、本日3機目の敵機を落とそうとしたヴェノム1に真っ先に降り注いだ。スピットファイアに対し無謀な格闘戦を挑んできたBf109を宙返りで躱し、無防備な後ろについた隊長機の主翼がいきなりへし折れたのだ。炎に包まれ錐もみしながら落ちていく隊長機のキャノピーが弾け飛び、射出座席が作動する頃にはウィングマンとして隊長機の後方を遷移していたヴェノム4がキャノピーに命中弾を浴びて戦闘不能をしめすピンクのスモークを引きながら高度を下げていく。
一瞬のうちにヴェノム隊最強の2機を落とした敵影は、中隊が戦闘をしていた空域を下方へと駆け抜けていった。主翼から銃身が突き出していないことなどからE型よりも高性能なF型と思われる2機は降下によって得た加速を速度に変換しあっという間に上空へと戻っていく。上昇の駄賃とばかりに唖然としていたらしいヴェノム5がエンジンを撃ち抜かれ落とされた。
≪くそっ!被弾した!コントロール不能!メィディ!メィディ!≫
≪脱出しろヴェノム10!≫
≪ヴェノム11!チェックシックス!≫
≪畜生!≫
操縦系統を破壊されたのか、機体後部に無数の穴を穿たれたヴェノム10が真っ逆さまに下方へと消えていく。気が付けば11機も居た味方は僅かな時間で自分を含めて4機にまで撃ち減らされていた。操縦桿を引いて右旋回。真後ろを取られたヴェノム11を追う機体に2とペイントされたBf109 へと機首を向け、トリガーを押し込む。両翼に備えた
しかし、Bf109はスピットファイアの火箭をあざ笑うかのように身を翻し上空へと登っていく。ヴェノム11はその間に低空から突き上げたもう一機のBf109に20㎜薄殻榴弾を主翼に叩きつけられ、左翼を構成する部品をまき散らしながら落ちて行った。
≪落ちろ!落ちろ落ちろ落ちろぉぉぉぉぉ!≫
ヴェノム7が半ば錯乱したかのように先ほどヴェノム11の左翼を粉砕したBf109 へ機銃掃射をかけながら上昇していく。両翼から吐き出される曳光弾の火箭の中を、上昇していたBf109は機体をバレルロールのように捻ってやり過ごし、フラップを開いて急旋回、逆落としに再降下。薄い主翼が曳光弾の間を縫うように翻り、機首が一瞬瞬いたかと思うとヴェノム7の機首が爆発、粉砕されたプロペラスピナーの破片が宙を舞う。推力を失っても執念深く射撃を続け、慣性のままふらふらと力なく上昇していくヴェノム7に対し、用は済んだとばかりに機首を巡らして離脱する。そして、液冷エンジン機特有の鋭い機首がこちらを向いた。
ぞわり。と背筋を悪寒が走り抜け、操縦桿を倒して更にロール、逆落としに急降下する。敵前逃亡以外の何物でもないが、相手が悪いにもほどがある。
「なんで…」
知らず知らずのうちに怨嗟の声が漏れる。速度計の針が上昇し、高度計の針は狂ったように回る。スロットルは既にいっぱいにまで開かれ、ロールス・ロイス マーリン45が悲鳴ににた爆音とともに1470馬力を絞り出し、流線型の機体を眼下に見える海面へ向かって逃がそうとする。
しかし、それまでだった。足元に尋常ではない衝撃が加わり、機体が大きく上下に振動する。ハーネスが肩に食い込み、酸素マスクの下でくぐもった悲鳴が漏れる。同時に操縦桿から手がすっぽ抜けた。慌てて操縦桿を握りなおそうとした時、既に操縦桿が一人でに動き機体を水平飛行へと戻しつつある。キャノピーの外を見ると、自分の機体の両翼からピンク色のスモークが棚引いているのが見て取れた。そして第二次大戦の戦闘機には不釣り合いな最新式のHMD搭載型ヘルメットのバイザーには【Pilot death】の無機質な文字が踊っている。
自分が落とされたことを悟ると全身から力が抜け、硬いシートに沈み込んだ。鬱陶しく目の前で点滅する死亡宣告に嫌気がさしバイザーを跳ね上げる。途端にバイザーで防がれていた紫外線や過剰な可視光が目に直撃するが、少なくとも居心地の悪さは消える。頭上を見上げると、ちょうど最後の一機になったヴェノム8が自分を落としたBf109に主翼を撃ち抜かれ大量の黒煙を噴きながら落ちていく。あれは廃棄だな、と他人事のような考えが持ち上がった。後1機居たはずだが、彼は逃げ切ったのだろうか。
落ちていくヴェノム8の黒煙を主翼で切り裂き、2機編隊を組み直したBf109が頭上をフライパスしていく。その胴体と尾翼に記された部隊章を改めて確認し、ヴェノム隊の不幸を呪った。
「なんだって、
12機で1個中隊を作るのが空軍道では基本編制。その中でも珍しい2機編制の航空隊の隊長機こそ、黒森峰の
その時、沈黙していた無線が耳障りな音と共に音声を吐き出す。
≪こちら、………空域に……敵……の全滅を……帰還する≫
不意に聞こえて来たノイズ交じりの悪魔の声に顔を潜めた彼は、ほとんど叩きつける様にして無線の電源を落とした。
がつん、と側頭部に衝撃を感じ、瞼を開ける。如何やら、頬杖をついていた手が外れ窓に頭をぶつけたらしかった。固まった体をほぐしつつ腕時計を見ると、離陸してから3時間ほど経過している。雲の上を飛んでいたはずの機体は、今では低空を飛び眼下の太平洋が見えている。戦闘機のキャノピーであれば、見当たす限りの大海原と青空を一望できるが、輸送機の四角い窓ではそんな事は夢物語だった。硬い椅子には慣れているはずの身体が、節々の痛みという形で鬱憤を伝えてくる。何だって、民間の連絡便ではなく
機内を見渡すと、自分以外に搭乗している数人の少年たちは全員寝息を立てているようだった。彼らはお互いの自己紹介をこの機に乗る前に済ませていたようだが、残念ながら自分は誰とも話していない。原因は明らかだったが、それはそれで好都合だった。あの事を根掘り葉掘り聞かれるのは好きじゃない。
頬杖を突き直し、再び外へと視線を巡らせる。眼下には巨大な航空母艦が見え始めていた。
航空母艦と言っても、それはそう見えるだけで実態は全く違う。全長十数キロの超巨大海上学園都市、世間一般に言う学園艦。それも、今この機体が目指しているのは戦車道で目覚ましい躍進を遂げている黒森峰学園だった。そして、彼にとって複雑な思いを抱かせる学校でもある。
――まあ、これだけのマンモス学園なら顔を合わせることも無いか
速度を落とし、学園の校舎らしき白亜の建造物の上を通過していく。そんな時、後者の一角の窓に見覚えのあるこげ茶色の髪が見えた気がして軽く頭を振った。自分自身ではケジメを付けたはずなのだが、我ながら女々しくて死にたくなってくる。頬杖をつくのは辞め、腕を組んで空軍道の制服として支給された黒い官帽を目深にかぶって目を閉じる。帽子の正面に縫い付けられた黒森峰学園の鉄十字とラウンデルが、窓からの日光を微かに反射した。
窓際で二度寝を決め込もうとする青年、椎原博。彼を乗せた輸送機はゆっくりと旋回しながら学園艦の後方へと針路をとった。
高校2年目の春、クラス替えが行われた後のホームルームで、1年前から担任となっている男性教師の話に耳を傾けていた時、ふと耳に届いたエンジン音に顔を窓の方へと向けた。聞きなれたガソリンエンジンよりも幾分高音で、大気を切り裂き叩く音も混じっている。雲が所々に浮かぶ空を、灰色に塗装された特徴的な3発機が飛んでいた。Ju52、黒森峰にすむ人間ならほとんど日常的に目にする輸送機だ。彼女自身、この輸送機を見るのは今日2度目だった。何時もならすぐに興味を失う彼女だったが、何故かあの輸送機に目が釘付けになってしまう。何故だろうか、どうにもあの機体から目を離す気になれない。それどころか、何かが変わるような確信があった。ずっと押入れの中に閉まってあった物を開ける時のような、ある種の
「西住、如何した?」
「は?あ、いえ何でもありません」
「そうか」
この男性教師特有の抑揚のない声に現実に引き戻される。その生真面目すぎる性格は1年生の時によく覚えていたので、よそ見をしている自分が言葉を駆けられるのは当然だった。最も、生徒に深入りしないことを信条にしているのか、その反応は淡泊きわまりない物だったが。
「では、次の連絡だ。本日から空軍道の戦闘が始まる。空襲警報が鳴った場合は万一に備え手近なゲートから屋内もしくは艦内に避難するように」
眼だけ動かして見た窓の外には、それまで浮かんでいた輸送機の姿はきれいさっぱり消え去っていた。
大きく学園艦最後部の左舷側へ回り込んだJu52は速度を落としつつ、最上甲板のすぐ下の舷側にぽっかりと空いた横穴へと侵入していく。黒森峰空軍道で主に使用される3つの航空基地の内、航空基地としては最も規模が小さく使い勝手が悪いとされている基地。艦首側の
An-225でも余裕で離着陸できそうな巨大な横穴に進入し、コンクリート舗装の滑走路へと着陸。そのまま誘導路を通って滑走路から出る。一つ向こうの誘導路を滑走路へと向かってタキシングしていくBf109E-3の4機小隊とすれ違い、整備のために機首カバーが外されたFw190A5が駐機されたハンガーの前を通り過ぎ、幾つかのキューベルワーゲンが停車しているエリアでようやくそのエンジンを休ませた。
『えー、本日は黒森峰エアラインをご利用いただきまして誠にありがとうございます。忘れ物の無いようにとっとと降りやがれください新参者諸君』
何ともぞんざいな機内アナウンスを聞き流しながら、狭い客室を歩いて輸送機から地面へと足を下ろした。見上げるほど高い天井の筈なのに、どこか窮屈な印象を受ける、巨大な航空基地全体を照らしているLEDの光は思ったよりも弱弱しいが離着陸には必要十分だった。ちょうど滑走路を離陸していくBf109の4機編隊が発する爆音が、学園艦最後尾を貫くように設けられた広大な艦内航空基地に反響する。
「
不意にかけられた声に振り向くと、背の高い老人が目に入った。空軍道で指定されている教師用の軍服を一部の隙も無く着こなし、黒縁の眼鏡を駆けている。眼鏡の奥の眼光は鋭く、白髪をオールバックにし口ひげを蓄え、ロマンス・グレーと言う言葉が良く似合う人物だった。とは言え、本人は人好きのする笑みを浮かべているつもりなのだろうが、何故かその風貌からうさん臭さがぬぐい切れていない。そして、軍服の肩章はこの人物が空軍道中将、すなわちこの基地の総司令官だと言う事を示していた。
「はい。本日付で黒森峰学園に転校となりました」
「黒森峰空軍道、第3航空基地司令兼特務戦闘航空団司令の守屋だ。よろしく頼むよ」
サッと敬礼する椎原に、守屋は答礼ではなく軽く手を上げて答える。あくまでも武道である空軍道において、守屋の行動はあまり褒められた者ではないが、少なくとも風通しは良さそうな組織だという印象を受けた。
「ああ、此処ではそう畏まらなくてもいい。外でちゃんとやるなら敬礼も挨拶もテキトーでいいのさ。まあ、相応の戦果は必要だがね」
そう言って、守屋は芝居がかった素振りで両手を広げた、
「さて、
天井から突き出した管制室の壁には、ブーメランを咥えた百舌鳥のエンブレムが描かれていた。
まずは、第1話終了
空軍道では大会の他に勝利数、累計機体撃墜数、累計地上・海上目標撃破数などの学園、個人ランキングがあります。戦闘の大小を加味した勝利数が最も多い学園が年間総合優勝です。
なお、空軍道に参加できる機体は1945年8月15日までに初飛行した機体に限り、ある程度の改造は可能です(惑星WarTunderだからねシカタナイネ)
感想を頂ければ作者が狂気乱舞スライスターンするのでお気軽にどうぞ