ボーイズ&ルフトヴァッフェ~空の道化師~ 作:Ocean501
やっぱヘタな恋愛描写書くよりも
空戦書いてる方が楽しいですね。
なお、ちゃんと書けてるかは(ry
雲の上に出るとコクピットへと一気に日の光が差し込み、バイザーの輝度調整機能が働いて一瞬白くなったコンソール類は次の瞬間には元に戻っていた。黒森峰学園艦より北へ20㎞、高度18000ft。対気速度、エンジン回転数、油温、油圧正常。曇天の中を上昇してきたクラウン隊にとっては今日初めて浴びる日の光だった。
『タワーよりクラウン隊、指揮をスカイアイに引き継ぎます。グッドラック』
「クラウン・リーダーよりタワー。管制に感謝する」
ヴュルガーシャンツェの管制エリアより外れたため、クラウン隊は常に滞空している空中管制機の指揮下に入る。これから哨戒が終わってヴュルガーシャンツェ周辺20㎞の空域に入るまでは、スカイアイの指揮下で哨戒飛行を行う手はずになっていた。
『スカイアイよりクラウン隊、応答せよ』
「こちらクラウン・リーダー。今日もよろしく、目薬はさしてきたか?」
『入れ過ぎて下界は曇天だよ、クラウン1。哨戒空域に変更はない、そのままクラウン2と優雅な空の旅を楽しんでくれ』
『クラウン2よりスカイアイ、ラジオのサービスはないのか?』
『ネガティヴ。アカペラで歌うかウォークマンなら許可する。ああ、アカペラで歌うのなら先に行ってくれ、航空回線で垂れ流しにしてやるから』
ぞっとしない冗談に笑い声が上がる。スカイアイは空中管制機の中でもノリのいい方だが、偶にシャレにならない冗談を飛ばすことが玉に瑕だった。
「それは不味いな、うちの二番機が音痴だってことが知られちゃ敵わん」
『おい、ヘクサー。何時君に僕の歌声を聞かせた?』
「冗談だ、リヒター。クラウン・リーダーよりスカイアイ、針路に変更なし。空域に到着次第哨戒飛行を開始する」
『情報が入り次第、連絡する。グッドラック』
無線が切れて再びコクピットにエンジン音と風の音が満ちる。分厚い雲海は眼下に広がり、水平線まで伸びているので雪原の上を飛んでいるような錯覚をしてしまう。哨戒空域までは約100㎞、哨戒用の燃料を使い切るか、敵と遭遇して一戦交えるまで飛び続けて帰投する。休日のルーティンの一つだった。平日はもっぱら訓練飛行が主で、2部隊に別れて行う模擬空戦は週に1度。聖グロリアーナの空襲から2週間がたつが、黒森峰の爆撃機戦力の回復は遅々として進まず、働いているのはもっぱら
『リヒター、近くに来ているのって確か知波単だったか?』
「少佐はそう言っていたな。昨日哨戒に出たミンクスの連中もジークとやり合ったそうだ」
『ジークか、低空低速格闘戦に持ち込まれたら、Bf109では勝ち目がないな』
そう言って、リヒターはコクピットの中で肩を竦めているのだろう。
三菱零式艦上戦闘機、通称零戦。太平洋戦争の全期間において大日本帝国海軍が運用していた主力艦上戦闘機だ。見劣りするエンジン出力を、徹底的な軽量化が行われた身軽な機体から生み出される旋回能力の高さで補い、両翼に搭載した九九式20㎜航空機関砲の大火力で敵機へ致命傷を与える。熟練者が扱う零戦はターンファイターとして最高峰の戦力となり、大戦初期における帝国海軍の躍進を支えた。
しかし、帝国海軍の神話を形作った一翼が本機であるならば、没落を生み出した一翼もまた零戦によってもたらされたともいえる。小型高性能のエンジンを大量に生産できなかった日本の国状に合わせて設計された零戦は、軽量化によって破格の旋回能力を得たが、その反面防弾装備に関しては欧米や陸軍に劣っていた。優秀なパイロットが多数存在するうちは良かったが、被弾と撃墜に大差がない零戦の性質はパイロットの減少、それによる全体的な練度の低下を引き起こした。熟練者になる前に撃墜、戦死するパイロットが後を絶たず、後継機にも恵まれなかった零戦は、文字通り帝国海軍の光と影の両方の性質を持っていると言える。
「一撃離脱を徹底してやればいいだろう。なにも、相手の土俵で戦ってやることはない」
また防弾性の他にも、空母に離着艦しやすくするため大きな揚力を生み出す大面積の主翼はロール性能に悪影響を与え、軽い機体は急降下性能に大きなハンデを負わせ、エンジン出力の不足は最高速度が伸び悩む原因となった。ドッグファイトではBf109を圧倒できるが、一撃離脱に徹された場合打てる手が少なくなるのが泣き所だった。
『そりゃそうだ。尤も、キミならジーク相手に格闘戦仕掛けてもしれっと撃墜して帰ってきそうだけど』
「バカ言え。1機喰えても2機目に落とされる。109はフォッケウルフより華奢なんだ、20㎜喰らって主翼がぽっきり行くさ」
『20㎜と言えば、僕達何時までエーミールに乗ってればいいんだろうねぇ』
クラウン隊に配備されているBf109E-1は7.92㎜機銃4丁の旧式機と言っていい部類だった。今はエンジンやコクピット、タンクを破壊して撃墜判定を取っているが火力不足であることは否めない。20㎜機関砲が1門あれば、主翼を撃ち抜いて爆散させることも夢ではないのだが。
「今度少佐に頼んでみるか。部隊総計で20機以上も墜としてるんだ、E-3型をねだっても文句は言われんだろう」
『本音を言えばグスタフが欲しい所だ』
「精々フリッツだろうな」
雑談なのか愚痴なのかよくわからない会話を繰り広げ、哨戒空域をぐるぐる周っていた時、唐突にその時はやってきた。
『スカイアイよりクラウン隊!応答せよ!』
スカイアイの鋭い声が無線から響き渡る。代り映えしない景色にまどろみかけていた時だったが、その声で一瞬にして眠気が吹き飛ぶ。
「クラウン1よりスカイアイ、如何した?」
『隣の空域で戦闘が発生!ロメオ隊の8機が応戦しているが、分が悪い。増援に向かってくれ。方位0-8-0だ!』
「クラウン・リーダー了解。聞こえたな?リヒター」
『クラウン2、了解。遊覧飛行は終わり、仕事の時間だ』
スロットルを開いて機体を加速させる、操縦桿を操作して機首を指定された方位へと向ける。2機のBf109が機体をバンクさせ陽光を主翼に反射させ、空に2条のエッジを刻みながら一路味方部隊の救援へと向かう。
分厚い雲海を抜けると、すぐそこは戦闘空域と化していた。低空に誘い込まれたFw190の8機編隊が、ひらりひらりと宙を舞う12機の明灰色の戦闘機に追いかけまわされ、もがいていた。
『ロメオ5!上だ!回避しろ!』
『あぶっ!?』
『ロメオ5がやられた!くそぅ、2機目だ!』
《蔵王3番!敵機撃墜!》
《よくやった!》
《蔵王1番より全機!攻撃をかけ続けろ!離脱させるな!》
空を零戦の曳光弾が駆け抜け、時折腹に響く重低音と共に20㎜の必殺の火箭が切り裂く。また一機、主翼を20㎜の牙にもぎ取られたFw190が火球となって墜落していく。低空に誘い込まれ、数に任せた乱戦に持ち込まれてしまえば、いかにFw190と言えど苦戦は必至だった。
《富嶽1番より蔵王隊、方位270より新手2機!注意せよ!》
如何やら向こうにも管制機がいるらしい、奇襲効果が半減したと小さく舌打ちをしつつ。殆ど使い切った増槽を切り離し、スロットルを限界まで開いて急降下。幾つかの火弾痕が残るFw190を追いかけまわしていた零戦の1機へ7.92mm弾のシャワーを浴びせてやる。コクピット周辺を狙って放たれた7.92㎜弾は敵機がとっさにラダーを操作して機体を滑らせたため右翼へと殺到した。零戦の伸びやかな右翼に火花が散り、無数の被弾痕が穿たれた直後ポキリと擬音が聞こえそうなほどあっさりとへし折れ、錐もみしながら落ちていく。
『増援だ!助かった!』
『何処の部隊だ?ピエロのエンブレム?』
『クラウン隊だ!特務戦からの増援だ!』
『って2機だけかよ!ロメオ6よりクラウン・リーダー!他の僚機は迷子か!?』
機首を上げて急角度の上昇離脱。零戦のエンジン出力では絶対に追いかけられない機動だ。高度を十分に得て、速度が十分に下がったことを確認しフラップダウン操縦桿を引いて背面飛行、次の獲物を探しつつ無線に返答する。
「クラウン1よりロメオ6、あいにくだがクラウン隊は俺とリヒターだけだ」
『マジかよ!?』
『おっと、そんなにがっかりした様な声出すなよ。僕はともかく、うちの隊長は頼りになるぞっ、と』
送れて急降下攻撃を行ったリヒターが縦旋廻中の零戦の腹へ、たっぷり徹甲曳光弾を叩きつけて沈黙させる。これで戦力比は8対10、もう少し包囲網を突き崩してやればFw190の出力ならばいったん離脱できるだろう。
《蔵王7番が落とされた!?》
《クラウン隊?聞いたことの無い部隊だな?》
それはごもっとも。と心の中で混線してきた敵パイロットの呟きに同意する。こちらは結成してまだ半月の新人飛行隊だ。相手が油断してくれるなら、ありがたいことこの上ない。願わくば、撃墜されるその瞬間までその認識を持っていてほしい物だ。
フラップを格納して、再び低空へダイブ。細長い機首が大気を切り裂き、味方へと襲い掛かろうと接近するジークへ向けて薄暗い空を駆けおりていく。そんな時、急降下する自分を見つけたのか、低空で格闘戦をしていたジークの内の1機が機首を上げて全力射撃。7.7㎜弾と20㎜弾の奔流が愛機へと迫る。咄嗟に機体を小さくバレルロールさせて、火箭を回避。20㎜をFw190に打ち込もうとしたジークの鼻先へ機銃を叩き込む。
連続的に着弾した7.92㎜弾によって黒いエンジンカウルが吹き飛び、栄12型発動機が吹き飛び飛行能力を喪失する。操縦桿を引いて再度上昇、機首が上を向く直前高空に陣取っていたジークが襲い掛かってくる。
《取った!》
喜色満面と言った風に機銃と機関砲を斉射、ジークの鼻先と主翼でパパパッとマズルフラッシュが瞬く。ペダルを蹴飛ばし操縦桿も思い切り倒してロール。高速上昇中の急激な姿勢変更により体液が回転円の外側へと引っ張られブラックアウトしかける。Bf109の薄い主翼が翻り、曳光弾の波を背中側に見つつ回避、お返しとばかりに4丁の機銃を咆哮させる。数十発の徹甲曳光弾が正面からジークに降り注ぎ、発動機とパイロットの命運を断った。一瞬の攻防が過ぎ去り、無傷のBf109はそのまま上昇し、顔面を見事に砕かれた形の零戦はピンクのスモークを両翼から引きながらそのまま高度を下げていく。
《嘘だろ!?今度は2機やられたぞ!》
《全機に通達する!ピエロの機体に攻撃を集中しろ!》
『クラウン隊!援護に感謝する!勝てるぞ!』
『ロメオ・リーダーより各機!攻撃が止んだ機体から上昇しろ!高度さえとってしまえばこちらの者だ!』
それまでFw190を追いかけまわしていた零戦の機首が一斉にクラウン隊の方へと向く。自分とリヒター、それぞれに4機ずつ様々な方位から上昇し同時攻撃を仕掛ける腹積もりのようだった。こちらもスロットルを開いて機首を上げ、上昇体勢。薄暗い雲海へと突っ込み、視界がホワイトアウト。
零戦の上昇性能は単発戦闘機の中でも高い方だが、この高度差でBf109が上昇勝負で負けることはあり得ない。雲海から飛び出し更に上昇、直ぐ近くにクラウン2も続いている事を確認し背面飛行。頭上に広がる雲海に目を凝らし、当たりを付けて逆落としに急降下する。
《っ!》
「頭上注意だ!」
雲海から飛び出した瞬間のジークへ1連射を浴びせる。両方の主翼から真っ赤な火炎を噴き出した零戦を尻目に再上昇、高度優位を再確保。リヒターの方も1機を落としたらしい、これで残るジークはあと6機。ロメオ隊は6機でクラウン隊が2機。ロメオ隊は今頃迂回上昇中だが、雲海の上に出たクラウン隊がモグラたたきの要領で出鼻をくじき続ければ、知波単の飛行隊に勝ち目はない。この戦いの行く末は見えて来た。
『スカイアイより、ロメオ、クラウン隊!急速接近する航空機4機!新手だ!早いぞ!』
そんな慢心が招いた結果なのか、それとも、散々これまで敵機を屠ってきたツケなのか。実にありがたくない報告が耳に飛び込んで来る。
《随分、喰い散らかされてるな》
《クラウン隊って、そんな腕っこき黒森峰に居ましたっけ?》
《何時も、エースが出てくるのは唐突なのさ。さて、全機油断するなよ?》
背面飛行させていた機体をロールさせて上空に視線を走らせる。無線が混線するほどだ、近くにいるに違いない。
刹那。ぞわり、と背筋に悪寒が走りほとんど無意識にペダルを蹴っ飛ばして機体を横滑りさせ、間髪入れずに機体を横転させて回避機動。一瞬前まで自分の機体がいた空間を多数の機関砲弾が貫き、緑色の戦闘機の群れが轟音と共に急降下、すぐさま反転し急上昇。急な機動を行ったためその飛行隊を上昇追撃できないが、せめてもの反撃として、上昇する敵機の前方へ牽制射撃。しかし、こちらの予想よりも速度が早く、放たれた銃弾は敵部隊の後方を虚しく過ぎ去っていく。
クラウン隊に太陽の中から急降下攻撃を仕掛けた戦闘機は距離を取って水平飛行、こちらの様子をうかがう様に緩旋回。綺麗に整列した4機編隊の姿がはっきりと肉眼で確認できる。
直線的な主翼に描かれた知波単特有の真っ赤なラウンデル。主翼前縁は一部が黄色く塗られ、鼻先からコクピットまでのフロント上部は黒く塗られている。急降下によるエネルギー保持能力が高く一撃離脱を得意とするが、日本機にしては大柄な機体に関わらず旋回能力も高い。軽戦闘機である隼と重戦闘機である鍾馗のいいとこどりをした万能機。かつて、大東亜決戦機と呼ばれた帝国陸軍のレシプロ戦闘機の決定版。
「四式戦か」
『うわぁ、疾風か。ヘクサー、今日のスコア全部譲るから逃げていいか?』
「逃がしてくれるもんならな」
《悪いな、クラウン隊の諸君》
混線している無線を平気で使ってくるあたり、敵のパイロットは肝が据わっている。いや、単におしゃべり好きなだけか。しかし、そのパイロットが所属する飛行隊の腕は本物なのだろう。3機の疾風を率いる隊長機は、プロペラスピナーと尾翼が赤くペイントされていた。
《赤薙隊の面子にかけて、無傷で返すわけには行かなくてね》
赤薙隊、知波単のエース部隊の一つで疾風を運用する精鋭飛行隊。その長機のプロペラスピナーと尾翼は過去のエースパイロットにあやかり赤く塗られていた。故に、通称――
『よりによってアカハナ中隊か。こっちは旧式機の2機編隊だ、逃がしてくれてもいいんじゃないか?』
《その旧式機に6機も食われたんだ。全力で叩き潰しても構わんだろう?機体を捨てて降参するなら、こちらも楽でいいが。どうする?クラウン・リーダー?》
正直、状況は最悪と言っていい。数で負け、機体性能で負け、高度で負けている。技量についてはやってみないとわからないが、先ほどまでのように七面鳥打ちとはいかないだろう。
しかし―――
「降伏は趣味じゃないな。……かかってこい、相手になってやる」
諦めるのは、パイロットとしての矜持が許さなかった。相手も、こちらの戦闘継続の意思に満足したのか通信機からは快活な笑い声が聞こえて来た。
《ハハハハハっ!そう来なくてはな!その戦果がペテンかどうか確かめてやろう!》
4機の疾風が翼を翻し2機ずつに散開。絶望的な戦力差の空戦が開幕する。
ヒースクリフ様
四式戦のネタを提供していただき誠にありがとうございました。
という事で、読者様からのネタをそろそろ使おうシリーズ第2段
登場するのは四式戦闘機、疾風です。
WTでエーミール乗っている時に上から疾風が
降ってくるとか考えたくもありませんが(そもそもBR的にドウナノ…)
主人公組には苦労してもらいましょう(ニヤァ
てか、帝国陸海軍航空隊ではどんな感じに呼び合ってたんでしょうかね
今回はどこかの小説で見た「部隊名+〇番」として見ましたが
ご存知の方教えてください←(無知)
次は丸々1話ずっと空戦で殴り合う予定です
戦雷道履修者の皆さまは、ぜひカスタムバトルでBRが3以上
上の機体と殴り合いつつお待ちください
例 (;友∀軍)Bf109E-1×2 VS (敵ω軍)Spitfire Mk XVI×4
( 作Д者)ノシ ファイッ