ボーイズ&ルフトヴァッフェ~空の道化師~   作:Ocean501

13 / 37
ドーモ、オーシャン501です

13話にてようやく敵エースとダンスです
相手は大東亜決戦機と名高い四式戦闘機疾風

上手く書けてるか心配ですが…

未だ疾風に手が届いていないのでマニューバとか
機動性の匙加減、および作中の空戦はフィクションであり
実機の性能、戦果、戦歴とは全く関係ございません


本編をどうぞ






Mission13 高みは未だ遠く

 『スカイアイよりクラウン隊!四式戦はダイブも旋回も上、しかも相手はアカハナだ!真面にやり合うな!墜とされない事を優先し、隙を見て離脱しろ!ロメオ隊は』

 

 管制機の正論かつ無理難題を聞き流し、腹をくくる。事ここに至って尻尾を巻いて離脱は不可能だ、それをスカイアイも理解しているだろう。戦場の観測者と言う立場上、こんな事も起こりうる。誰もが匙を投げるような闘いでも、管制官としての使命を全うしようとする姿勢は心強い。

 此方へ向けて急降下するアカハナと僚機の2機、リヒターを伴って上昇しつつ迎え撃つ。トリガーに指をかけて斉射0.5秒。指を放し機体を捻る。2機のBf109と疾風はほぼ同じタイミングで発砲し、4機の中間地点で3種類の機関銃砲弾がすれ違いそれぞれの獲物へ向けて殺到する。しかし、ほぼ同じタイミングで機体をロールさせて回避。コクピットの上や横を互いの曳光弾が貫き、そのまま背面状態ですれ違う。機体の間に挟まれた空気が、爆弾が炸裂するかのような音を立てて弾け、それぞれの機体を取り巻く乱流がすれ違った相手を弄ぶ。

 クラウン隊はすぐさま機首を下へ向けて急降下、ダイブを遅らせた残りの2機の疾風による射撃を回避する。あのまま上昇していれば、今頃薄い主翼はバラバラになっていただろう。機体を引き起こし水平飛行。正面に再びアカハナともう1機。流石は疾風と言ったところか、旋回性能では完全に負けている。今度は射撃を行わずそのまますれ違う。そんなある種の闘牛の様なヘッドオンを数度繰り返したが、二つの部隊に被弾はない。

 

『埒が明かないな。散開して仕掛けてみるか?』

「頼むから、ケツとられる時は俺の前でしてくれ」

『そっくりそのまま返すよ、さて…ブレイク!』

 

 何度目かのヘッドオンで、そのまますれ違うのではなくそれぞれ別の方向へ急旋回。そこそこ速度が乗っていたので血液が足元へ集まっていく。敵部隊も編隊をといて4機全てが攻撃に参加しようと機動する。ヘクサーにはアカハナと3番機、リヒターには2番機と4番機がマークとして着く。

 不意を突いた急旋回でアカハナの後ろにつけはしたものの、エンジンパワーでは完全に負けているため一気に引き離される。代わりに高空からダイブしてきた3番機に機銃掃射を受け、右へ跳ね上がるように機体を蹴飛ばして回避。腹の下を火箭が貫いていく。

 

 《良い腕だ、エーミールに乗せとくにはもったいない》

「そりゃ、どう、もっ!」

 

 緩降下して足りない速度を補いつつアカハナを追跡。高度を速度へと変換し、対気速度がぐんぐん上がっていく。時おり後ろを振り返りながらラダーを調節して機体を軽く横滑りさせる。これで敵は自機の進路を見誤り間違った偏差射撃を行ってくれるだろう。そう思ったとたん、コクピットのすぐ横を20㎜の火箭が貫き肝を冷やす。早々当たらないとはいえ、数m横を20㎜の大口径砲弾が貫く光景は心臓に宜しくない。

 アカハナは左へ右へとダンスするように機体を振り回してこちらの接近を促すが、少し接近するとスロットルを開いて距離を開ける。オーバーシュートさせる気はない様だが、完全にこちらを誘っている。無理に接近し撃とうとしたら最後、後ろで虎視眈々とこちらを狙っている3番機の航空機関砲が唸り声をあげるだろう。

 

 《如何した?撃たないのか?》

「ケツに張り付いてる3番機を片付けたらな!っと!」

 

 右から左へ切り返そうとした時、予想進路上に後ろから20㎜弾の網がかけられる。単純にピッチアップで旋回するのではなくラダーとエルロンでバレルロールして火箭を上に見ながらやり過ごす。下手に速度を落とし過ぎても、後ろの機体に噛み砕かれる。

 

 《赤薙3番、焦るな。落ち着いて狙え》

 《は、はい!隊長!》

「戦闘中に教導とはずいぶん余裕じゃないか」

 《ハハハッ、知波単も後継の育成に力を入れないと史実の日本軍みたいになるからな》

 

 3機の戦闘機がシザーズを繰り返し、空に複雑な螺旋模様が描かれていく。少し高空では同じような光景がリヒターを中心として繰り広げられていた。

 ヘクサーとアカハナ、3番機は旋回を繰り返すうちに高度が落ち、雲海の表面が直ぐ下に来るまで降下していた。疾風の直線的な主翼が雲海を切り裂き、右へ左へ触れてBf109を翻弄しようとするが、ヘクサーもフラップやラダー、エルロンを最大限にまで利用して食らいつく。むしろ、3番機の方が前の2機に遅れつつあった。しかし、このままではじり貧に変わりがない。何か、きっかけがなければ動けない。

 そして、その切欠は唐突に現れた。コンマ1秒を争う空戦の最中、エース達の意識の外に追いやられていた航空隊、蔵王隊の1機の零戦が雲海から突如顔を出して右へ急旋回中のヘクサーのBf109へ襲い掛かった。雲海の中に上昇する零戦の影を視界の端でとらえていたヘクサーは操縦桿をさらに倒しフラップを展開、急制動でハーネスが肩に食い込み血液が体の前方に集まる。雲海からの奇襲をやり過ごし、直ぐ近くを零戦の明灰色の機体が上空へと駆け上がっていった。

 

 《うおぁ!?》

 

 不可解な機動をしたヘクサーのBf109の陰から駆け上がってきた零戦を、空中衝突寸前で回避する3番機。あの距離で回避できたのは疾風の性能もあるが、パイロットも新人と言うには並の腕ではない。しかし、凄腕同士の航空戦において、一瞬でも相手を見失う事はどういうことか、一瞬の後にその身をもって知るのだった。

 

 

 《くそっ!どこ行った!》

 《バカ!回避だ!》

「遅い!」

 

 急制動で高度をガクンと落としたBf109は雲海の中へ身を隠し、戦闘機の死角となる後方斜め下側から突き上げ機銃掃射。7.92㎜弾が疾風の主翼や機体下方でバチバチと弾け穴だらけにする。しかし、パイロットキルには至らず、燃料タンクへの発火もない。

 

 《やられた!》

 

 慌てて増速して上昇しようとする敵機の尾部へ向けて、さらに掃射する。流石の疾風も度重なる被弾に悲鳴を上げ、尾翼からエレベーター、左の主翼からエルロンが吹き飛び制御を失う。慌てて残ったエルロンで、機首上げ姿勢から水平飛行へ戻そうとしたパイロットだが、ダメージを受けていた操縦装置は言う事を聞いてくれずゆっくりと機体は緩慢なロールへと入っている。この機会を逃すヘクサーではない。スロットルを開いて止めを刺すために急速接近。

 

 《離脱しろ!赤薙3番!》

 

 しかし、逆落としに急降下してきたアカハナの機銃掃射を受ける水平方向への急旋回ではなく、無理やり機首を跳ね上げてヘッドオン。トリガーを引き絞りMG17を撃ち放ち、続けてロール。ガガガンッ、と機体が振動し数発の直撃弾を貰う。右翼に被弾2発、左翼に1発。幸いにも受けたのは12.7㎜でどれもカス当たり、戦闘能力に大きな損害なし。それは相手も同じようで特に傷ついた様子もなく後方で旋回している。これで、一対一。

 再びヘッドオン、こちらが高度優位だが速度差はあまりない。短い射撃の後回避機動を行う、双方ともに命中弾無し。そろそろ弾切れの心配もしなくてはならないが、ケチっていても当たらない。

 

 《隊長!3番機は?!》

 《向こうの隊長に落とされた!ヤロウ、良い腕してやがる》

 《援護します!》

 《いや!お前等はそっちの二番機を追え!こっちは俺がやる!》

 

 味方機の教導から解き放たれたアカハナの動きは見違える物だった。高速域での舵の効きが鈍くなる疾風の特性を完全に理解しているのか低中速域で動き回る。こちらも軽く小さいBf109をコンパクトに振り回して食らいつくが、射点につくことが出来ない。だからと言ってダイブして仕切り直すのは論外だ。機体性能がもろに出るダイブでは直ぐに追いつかれ20㎜のシャワーを浴びる羽目になる。無謀と解っていても、疾風の旋回戦に付き合うしかない。

 しかし、ここで疑問が頭をもたげる。なぜ、敵のパイロットはさっさとエンジンパワーに任せて離脱せず、Bf109との旋回戦に興じているのだろうか?今疾風にダイブされたらこの機体では追いつけず、速度に乗った疾風に手もなくひねられるだろう。

 再び2機の距離が開きヘッドオン、背中合わせにお互いの後方へすり抜ける。

 

 《ハハッ、楽しいな。こんなに楽しいのは久しぶりだ》

「こっちは必死なんだけどな」

 《そう言うな。こんな巴戦はそうそうないぞ。味気ない一撃離脱より此方の方がよほどいい》

「弄ばれる方にもなってみろよ」

 《確かに、ダイブは封じたが。それ以外は本気さ!》

 

 とたん、目の前に背中を晒そうとしていた疾風が真上に跳ね上がった。此方もフラップを開いてついていくがどんどん引き離される。そして一周廻った時、疾風の姿は前方から消え失せていた。悪寒に従って機体を思い切り捻る、左へ倒れ込んだ愛機の機体に数発の命中弾。強烈な衝撃で機体がふら付き、ボンと言う不吉な音と共にエンジンから白煙が噴き出しす。何とか立て直し、ペダルを踏み込んで機体を横滑りさせる操縦桿を倒す。マイナスG旋回で視界が赤く染まり、再び振動。操縦桿を引くが反応が重い、操縦装置ダメージを受けたか。

 ふら付く機体を水平飛行させる、正面のフロントガラスには噴き出したオイルがべっとりとへばりつき視認困難。被弾したエンジンの油圧が下がり、安全装置が働いて出力が急落する。後ろを振り返ると完全に射点へと着いたアカハナの姿があった。この機体の状態ではもはや逃げられない。

 万事休す、か…。リヒターは?

 何とか回避機動を取らせようとしながらリヒターの機体を探す。居た。2時方向、自分より下方、1000ft付近。彼もエンジンから白煙を吹き出し、そればかりか主翼に大穴が開いている。どう見ても戦闘はおろかよく飛んでいるなと言う感想しか出ない。

 もう一度後ろを見る。何とか回避機動らしき動作は取っているが、今までの戦いぶりからして、アカハナが仕留められない機動ではない。なのに、後ろからは一発の機銃弾すら飛んでこなかった。

 妙に思っていると。ふいに、疾風が増速して横に並ぶ。

 

「撃たないのか?アカハナ」

 《実はこの戦いは今日2戦目でね。ぶっちゃけ久しぶりの巴戦で調子に乗って撃ち過ぎた!弾切れだ!そしてなんと、お前の相方を追っかけてた奴らも弾切れと来た!部隊そろってこんなバカをやるのは久しぶりだ!》

 

 そう言って、アカハナのパイロットは呵々と笑った。疾風の搭載する12.7㎜機銃(ホ103)の装弾数数は350発、20㎜機関砲(ホ5)は150発だ。この空戦の前に一戦交えて来たというのであれば、弾切れと言うのも頷ける。情けないことに今回は相手の弾切れに救われた形だった。

 

 《いや、まさかエーミール相手の2機小隊に1機落とされるとは思わなかった。何だって黒森峰はお前らほどパイロットを旧式機に詰め込んでるんだ?》

「こちとら新参者でね。周ってくるのは旧式機ばかりだ。そんなことより、あの疾風落ちてたのか」

 《エレベーターとエルロンと操縦装置フッとばしといて良く言うぜ。今頃アイツは救難機に向かって泳いでるだろうよ。腕利きが相手で、アクシデントが会ったとはいえ、それを何とかしてこそのエース部隊だろうに。帰ったら滑走路シャトルラン10本だな》

 

 空軍道で使用される滑走路は平均して1000mから2000m。少なくとも10㎞のマラソンを遠泳の後に追加されるパイロットに心の中で黙とうをささげておく。スロットルを戻して巡航速力に、正直もっと下げたいところだが、下の零戦隊がまだ残ってる。

 

 《ああ、蔵王隊なら其方さんのフォッケにコテンパンにされて全滅したぞ》

「あ、そう。…なら、アンタも逃げた方がいいんじゃないのか?フォッケの上昇力は高いぞ」

 《お?気遣ってくれるのか?》

「弾切れとは言え、見逃された形だからな」

 《道化師のエンブレム、名前は?》

「ヘクサー。アンタは?アカハナ」

 《デュークだ》

「じゃあな、侯爵。今度は海水浴をさせてやる、アクアラングの用意を忘れるな」

 《それはこっちの台詞だ魔術師。せいぜい人魚の口説き方を考えておけ》

 

 

 横に並んだ疾風のコクピットに、ヘルメットのバイザーを上げてキッチリとした敬礼をこちらに送るデュークが見えた。此方も、バイザーを跳ね上げてラフに敬礼。疾風が増速し蒼空へと駆け上がっていく。リヒターの両隣を飛んでいた2機疾風も、こちらの前を悠々と上昇していく。まだ弾倉に弾は残っているが、それをぶっ放すほど落ちぶれてはいないつもりだった。

 

 

 《さらばだ!また空の上で会おう!》

 

 

 トライアングルを組んだ3機が旋回し、空の向こうへと消えていく。おっとり刀で駆け付けたロメオ隊が到着する頃には、すでに疾風の姿はなかった。

 

『まったく、ひどい目に遭った』

 

 時折ふら付きながら、リヒターのBf109が横に並ぶ。エンジンからは煙が薄く流れ、主翼や胴体に大穴が開いていた。どう見ても大破だ。

 

「随分こっ酷く遣られたな」

『君もね、エンジンカウルが半分吹っ飛んでるじゃないか』

「そうなのか?あいにくオイルで前が見えなくてな」

『着陸できるのかい?』

「何とかしてみるさ。緊急着陸なら滑走路も広く使えるだろう」

『スカイアイよりクラウン隊、知波単のエース相手によくやってくれた』

「1機しか落とせなかったうえにボロボロだけどな」

『お前達がアカハナを抑えていたおかげでロメオ隊はジークを始末することが出来たんだ、そう言うな』

『ロメオ2よりスカイアイ、この戦いは俺達の勝ちでいいんだよな?』

『黒森峰10機と知波単14機が戦い、此方は3機を失って11機を墜とした。勝利だよ』

 

「勝利、ねぇ」と無線に乗らないほどの小声でつぶやく。自分とリヒターのボロボロの機体を見ていると、どうにも勝った気がしない。初めて、敵の”名有り(ネームド)”と交戦したが、勝利の美酒と言うにはあまりに苦い味だった。

 

 

 

 

 

 高度22000ftを1機減った疾風の3機編隊が帰還のために飛んでいる。隊長機は、1つ2つの損傷が見受けられる程度で、損傷軽微と言っていい。しかし、それに続く僚機は複数の弾痕を穿たれ、控えめに見て中破と言ったところだった。

 

 《隊長、一つ聞いても良いですか?》

 《なんだ?》

 《本当に弾切れだったんですか?》

 《おいおい、疑うのか?》

 《あ、いえ。珍しいなと思いまして》

 《まあ、そう言う事もあるさ。だが、弾が切れてよかった》

 

 《は?》とあっけにとられる僚機の声を聴きながら、デュークは小さく笑う。あの時感じたビリビリとした殺気、旋回性能で劣るBf109でこの疾風に食らいつく腕。2年生でアカハナの隊長を任された自分を、此処まで楽しませたパイロットは他に居ない。もしも、奴の乗機がE型(エーミール)ではなくF型(フリッツ)G型(グスタフ)だったとしたら。

 

 ――――見逃されるのは…いや、それでも俺は勝つ!

 

 マスクの下には無意識に獰猛な笑みが浮かんだ。次の戦いは、願わくば同じ土俵で。

 再戦に思いをはせた侯爵率いる飛行隊は、一陣の疾風となって帰路を急ぐ。次の戦いのために、次の次の戦いのために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




エース戦は丸々一話使ってさらりと終わらせました
再序盤で2話3話とだらだら戦うのもアレですし
まあ、後10秒続いてたら主人公組は水泳確定でしたが

アカハナことデュークの強さが
上手く書けていれば良いのですが……

とりあえず、VSアカハナ戦はこれにて一旦終了
次出てくるときはどちらが遠泳する羽目になるのでしょうか(予定は未定)

さて、機体もぶっ壊れた事だし
次回かその次ぐらいに新機体だしましょうか
大体の予想がつく方がいらっしゃったらすみません
作者の趣味です(゚∀゚)アヒャ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。