ボーイズ&ルフトヴァッフェ~空の道化師~   作:Ocean501

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ドーモ、オーシャン501です

なにやらいきなりUAやお気に入りが増えているなぁと思っていたら
日刊ランキング41位…だと?( ゚Д゚)ポカーン 
このようなニッチ小説に目を通していただける方々全てに感謝を
誠にありがとうございますm(__)m


さて、今回は前書きも長ければ本編も長め
着陸するだけで丸々一話使い切る暴挙
メーデー+雪風+ネタ+(恋愛×0.0001)=Mission14
メーデー民が傷ついた機体の着陸を書き始めるとこうなります  
レバノン料理、もしくはヒゲクマ機長とケーキを半分こしてお楽しみください


This is a side story.

It is based on original work

and author's delusion.



Mission14 ハード・ランディング

 傾いた太陽が青かった空を赤く染めて西の海に落ちようとしている。太陽に近い海は橙と言うよりも黄金に近い色で、波の大きさと数で不規則に反射した太陽光を洋上の楽園の居住者に届けていた。

 巨大な学園艦、その最後部にある飛行場のこじんまりとした建屋の屋上を利用した展望台。その手すりに体を預けてボンヤリと空を見上げる一人の少女――西住まほは、小さく息を吐いた。戦車道の練習は既に終わっている。本来なら休日の練習はもっと遅い時間まで行っているのだが、車両の大規模なオーバーホールが重なったため手持無沙汰になってしまったのだった。

 東の空へ視線を向けると、西側に陣取る夕焼けの赤と地平線からジワリと滲みでた夜の紺がせめぎ合い、溶け合っている。まだ太陽が海に没していないため、その夜の勢力はまだまだ弱く小さい。しかし、直に紺色の軍勢はこの赤い空を覆いつくすのだろう。

 

 そういえば、あの時もこんな空だったか。

 

 西日の中、何処か悪戯っぽく笑った2人の幼馴染に妹と共に連れられて行った空軍道の基地。いつもは弟を制動する立場だった彼が、率先してスプレー缶片手に基地へ潜り込んでいった。苦笑しつつ兄に付き合う弟と、怯える妹、そして彼が何をやるのかまるで見当がつかなかった私。その10分後に…

 ゴウ、と強い風が吹き、スカートの裾がパタパタと音を立て、過去に思いをはせていた意識の焦点は現実へと引き戻される。大切な光景は目の前から消え去り、紺色が更に空を浸食した東の空が目に飛び込んで来る。過ぎ去った過去は戻らない、暖かな光(過去)冷たい夜(現実)に飲み込まれていくだけ。なぜか、空がそう自分に言い聞かせているような気がした。

 腕時計を確認、そろそろ戻ろうと手すりに預けていた重心を足へと移そうとした時、あの時のようにすべてが暗転する。

 風の音ぐらいしか響いていなかったヴュルガー・シャンツェ第1滑走路に、過去を重ね合わせて感傷に浸っていた彼女を現実へと叩き返す様な切羽詰まった警報音が響き始めた。思わず滑走路へと視線を走らせる。白と赤の滑走路灯が一斉に点灯し、西の空から最後の輝きを届ける太陽に負けじと輝きだす。ハンガー横のブンカ―から赤い回転灯の光が差し込んだかと思うと。大型トラックというよりも装甲兵員輸送車じみたずんぐりとした紅い自走消防車両が重苦しいディーゼルエンジンの音と共に次々とはい出し、突撃命令を待つ戦車のように一糸乱れぬ動きで整列した。その後ろに白く塗装された救護車両と思しきトラックが停車し、その時を待つ。

 次に、展望台の役目を兼ねている地上施設が小さく振動した。手すりから身を乗り出して下を見ると、数台のジープが建屋から吐き出され目と鼻の先に並ぶ。乗っているのは自分と同じ年ぐらいの生徒から教員まで様々だ。その中に、見知った顔を見つけ思わず声をかける。

 

「ハンソン先生!」

「ん?マホか!珍しい所で会ったな」

 

 右から2台目のジープに一人で乗っていた金髪の教師は、1年生の時に英語を担当していたため面識があった。気さくでわかりやすく、人望の厚い教師で多くの生徒から慕われている。そういえば、空軍道で飛行戦隊を預かっていると授業中にこぼしていたっけと頭の隅で今の今まで忘れていた情報が浮かぶ。

 

「何の騒ぎですか?」

「緊急着陸だ、ウチの戦隊機が2機やられてな、メーデーが発信された。随分ひどい状態だから、万一に備えて厳戒態勢だ」

 

 メーデー、確か重大で差し迫った危機に用いられる救難信号だったはずだ。数十年前に空軍道の無線と他の通信が完全に分離されてからは、空軍道でも普通に使用されるようになったといつかのニュースで見たことがあった。もっとも、メーデーを発信出来るのは戦闘空域から完全に離脱した後のみで、空戦においては傷ついた機から墜とされていくためそこまで頻度は多くないらしいが。

 

「何処の部隊ですか?」

 

 その問いを発した時、自分の声が震えていることに気が付く。ハンソン先生は「うちの戦隊機が2機やられた」と言っただけで、2機編隊の飛行隊とは言っていない。けれど、彼女の背筋に嫌な寒気が走り抜け、思わず手すりを握りしめる手に力が入る。

 

「クラウン隊だ。どうもこっ酷くヤられたようで、此処まで返ってきたのが奇跡だよ」

 

 先生の言葉を聞き終わらないうちに、ふら付こうとする膝に力を入れて平静を取り繕う。クラウン隊、彼の、博の部隊だ。2機と言う事は彼だけ無傷と言うのはあり得ない。背筋を走り抜けたはずの寒気が踵を返して胸に突き刺さり、悲鳴を上げるかのように心臓が跳ねる。

 鳴り響くサイレンの中、恐る恐る西に向けた目に飛び込んできたのは、太陽を背に2条の黒煙を引いて接近する2つの影。それに寄り添うような特異な形の飛行機と比べ、素人目が見てもふら付いているのが解る。

 

「あぁ…」

 

 思わず口から洩れた悲鳴なのか喘ぎなのかわからない音は、鳴り響くサイレンにかき消されていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『エクリプス5よりクラウン隊、もう少しだ。頑張れ』

 

 通信に返答しようとした瞬間、機体がふら付き一瞬ひやりとする。操縦索にダメージが及んでいるのか、舵の効きはエルロン、ラダー、エレベーターすべてが鈍い。状況はだんだんと悪化の一途をたどっている。

 

『クラウン2よりエクリプス5、悪いね付き合ってもらっちゃって』

『気にするなクラウン2、夜間洋上偵察任務よりもよっぽど有意義だ』

 

 クラウン隊の付近を寄り添うように飛び、逐一被弾した機体の状況を報告してくれているのは特異な形状の双発機だった。主翼を支えている胴体は2つ存在し、尾翼と連結されているため機体全体としては巨大なロの字型をしている。操縦席は主翼の中央部に乗り上がるような形で取り付けられ、その殆どがガラスで覆われており視認性は抜群だった。

 Fw189、かつて敵側から『空飛ぶ額縁』と呼ばれた多用途双発機。この機体を運用する第3爆撃航空団第3飛行戦隊第9飛行隊エクリプスは、地上攻撃の他にも洋上の獲物を探し求める偵察任務にも駆り出されていた。今回は出撃を待っていた5番機が、ロメオ隊の援護を受けられなくなったクラウン隊を掩護するために急遽爆弾を下ろしエスコートに着いたのだった。もっとも、このエスコートは敵からの護衛を狙った者ではなく万一墜落した際に、その場所を正しく記録するために送られたのが主な目的だった。

 

『エクリプス5よりクラウン1、また機体の外板が脱落した、デカいぞ。左後部』

 

 身を乗り出して後ろを振り返ると、西日を時折反射しながら後方へとすっ飛んで行く破片が視界に入る。後部胴体に大穴が開いている現状、外板が剥がれるのは仕方がないことだが精神的に良い光景ではない。

 

「クラウン1、確認した。着陸する頃にはスケルトンになっていなきゃいいが」

『おいおい、ハロウィンには半年ばかり早いぜ?クラウン1。それに、どっちかってーとスケルトンはこっちだろ?』

「それを自分で言うか?」

『なにせ、空飛ぶ額縁だからな。骸骨役にはうってつけだ』

 

 こんな雑談も今は有難い。ガタガタと震える機体を抑え込み、油断すれば息切れをし始めるエンジンと格闘しながら機体を飛ばしている中、業務報告ばかりでは気が滅入るというものだ。

 正面は相変わらずオイルで汚れて見えず、機体の両側をエンジンから噴き出した黒煙が棚引いている。その煙の量は先ほどと比べて明らかに多い。油圧もじわじわと下がり続けている。一つの希望としては、もう着陸誘導灯がつけられたヴュルガーシャンツェが見えているという事だ。もっとも、機体を滑らせてようやくキャノピーに着いた汚れの端に、光が顔を出す程度だが。

 

『ヴュルガー・タワーよりクラウン1。クラウン1は針路0-9-0、高度4000フィートまで降下。ストレートインで滑走路31Lへ着陸を許可します』

「クラウン1、了解。針路0-9-0、高度4000フィートまで降下しストレートインで滑走路31Lへ進入」

『ヴュルガー・タワーよりクラウン2。針路0-9-0、3000ftまで降下、ストレートインで滑走路32L へ着陸を許可します

『クラウン2、了解。針路0-9-0、3000ftまで降下。ストレートインで滑走路32Lへ進入』

 

 スロットルをさらに絞り機速を下げて降下率を調整する。後方5マイルを飛ぶリヒターも同じ様に高度を下げ、死角へと入っていった。

 

『ヘクサー、次に会うのは格納庫だ。間違っても医務室には行ってくれるなよ?』

「それはこっちの台詞だ方向音痴」

『否定しきれないとこが悲しいな。その時はリンゴ片手に見舞いに来てくれ』

「ふざけんな。何が悲しくて野郎の見舞いに行かなきゃならんのだ」

『ハッハッハ、違いない。じゃあなヘクサー、グッドラック』

「グッドラック、リヒター。地上で会おう」

 

 その通信を最後に機体の操作に集中する。速度が下がったおかげで機体の振動がだんだん大きくなってくる。燃料はまだあるが、着陸前に投棄しなくてはならない。フラップダウン、着陸位置。とたん、機体が右へと傾き始め、慌ててエルロンで抑えこむ。

 

『エクリプス5よりクラウン1、右のフラップが十分出ていない。恐らく戦闘位置で停止している』

「クラウン1、了解。エクリプス5、支援に感謝する」

 

 

 操縦装置に被弾してフラップが無傷なはずはないか、と内心の落胆を抑え込みフラップ位置を”戦闘”に変える。両方のフラップ位置が戦闘となったことで機体の傾きは収まったが、失速速度は着陸位置の時よりも高い。そしてさらに懸念すべき事項があった。

 

『ヴュルガー・タワーよりクラウン1。風向010、風速10m/s、上昇流5m/s。依然変わらず』

 

 現在、黒森峰学園艦は北上中だ。建物があるためある程度緩和されるが、ほとんど吹き曝しの第3基地の滑走路では場合によっては強い横風となる。着陸不可能というわけではないが、被弾した機体――ましてやBf109――で横風着陸などなりたくないのが本音だった。正直、周囲を壁に囲われた第2滑走路の方に着陸したいが、主翼に大穴の空いたリヒターの機体に第1滑走路は酷だ。最も第2滑走路の場合、学園艦の舷側にぶち当たって上昇流に変わった海風の影響をもろに受け、機体が浮き上がって天井に叩きつけられる可能性が付いて回るが。

 機首が風上の北を向こうと針路から傾き、オイル汚れの端から滑走路が見える。クラブ、と呼ばれる状態でヘクサーのBf109は機首を若干北に向けて斜めのまま降下を続ける。

 

【Caution:Pull Up】

【Caution:Stall】

 

 改良型対地接近警報装置(E-GPWS)とレーダーから情報を受け取ったフライトコンピュータが”このままだと失速して学園艦に激突するぞ”とヘルメットバイザに警告を出す。対地衝突警報の他に失速警報まで出ているのは、フラップが戦闘位置だからだろう。スティックシェイカーが作動し操縦桿がガタガタと危機感を煽るように振動し始める。

 機首を少し下げて降下率を上げ速度を確保しステックシェイカーを黙らせ、同時にコンソールについたハンドルを捻りギアダウン。機速が確保されたことで操縦桿は大人しくなり、ギアが降ろされたことでE-GPWSからの警報が止む。

 空軍道で使用される機体は、戦闘などに用いられる機器は当時のモノであるがそれ以外の場合に関してはステックシェイカーやE-GPWSなど最新型の旅客機と大差ない物が搭載されている。勿論、コクピットボイスレコーダー(CVR)フライトデータレコーダー(FDR)等のブラックボックス類も完備されていた。

 

「速度、チェック。降下率、チェック」

 

 視線をコンソールと外とを行ったり来たりさせながら慎重に高度を下げていく。機体が風下に流されない様、各種動翼を操作し傾いたまま滑走路へと侵入。

 強固とは言えないBf109の膠着装置でクラブ状態のまま接地するのは危険すぎる。接地した瞬間、車輪の向いている方向と機体の進む方向のギャップによって足が折れるか、明後日の方向に機体が走ってグラウンドループするだろう。かといって、機体を滑走路に対して並行に保つサイドスリップ着陸では片側の主翼が下がるため、片方の車輪から着陸することになり、此方も傷ついた機体の膠着装置が耐えられる保証はない。

 取れる手は一つ、膠着装置が接地する瞬間に機体を滑走路と平行に(デクラブ)する、デクラブ着陸しかない。我ながら、取れる手の少なさと困難さに笑うしかない。ヘルメットバイザ―の右下には小さく【Recommend:Bailout】の文字が躍っているが機体のコントロールがまだ効く以上、緊急脱出(ベイルアウト)はまだ早い。どちらにせよ、本当に危険ならフライトコンピュータがさっさと射出座席を作動させているだろう。

 

 ――諦めてもいいが、自分はまだ飛べる

 

 強制射出せず、まだこちらにコントロールを渡しているという事実は、フライトコンピュータがそう言っているように感じさせた。つまり、自分もそれなりにこの機体に愛着を持っていたらしいという事だろう。

 燃料バルブを開き余剰燃料を放出、機体が軽くなりふわりと浮かぶ。もうやりなおしの着陸復航(ゴー・アラウンド)は出来ない、主翼が吹っ飛ぼうが降着装置が折れようが、数分後には地上だ。

 いよいよ滑走路が近づいてくる。進入灯が赤く輝き、連鎖式閃光灯が最終進入を急かすように瞬いている。誘導路には赤い消防車両が並び突入の時を待ち、白い救護車両がその後ろに控えている。これなら着陸と脱出に失敗して派手に横転、炎上しても死ぬことは無いだろう。

 突如、機体が上昇流にあおられて真上に跳ね上がるが、それは想定済み。滑走路終端よりもかなり手前に接地するはずだった機体は、一瞬跳ねる様に上昇したことによって滑走路末端へと降りる進路へと乗る。エレベーターの効きが悪く、上昇流からの復帰が遅れるならば逆にそれを利用してやればいい。

 赤い進入灯が真下を過ぎ去り、滑走路へ。接地まで残り5m、4m、3m、2m、1m。ペダルを踏みこんでラダーを操作。機体をデクラブさせタッチダウン。

 

 瞬間。バキッ、と致命的な音がコクピットに響いた。

 

 着陸直前でデクラブに成功し、接地したBf109にその光景を見守る誰もが胸を撫で下ろそうとした瞬間。左側の膠着装置が折れ、支えを失った機体は左へとロールしてしまう。地面に設置した薄い左主翼は一瞬にして弾け飛び、火花が散って機体の進路が左に、管制塔の方へと向きを変えた。急な方向転換について行けなかった右の降着装置も破壊され、最後の支えも失った機体はドスンと地面に接地、胴体着陸の格好となり地面と接触したプロペラがぐにゃりと曲がった。

 右の主翼から戦闘位置のフラップが弾け飛び、機体下面から高音の火花を飛沫のように噴き上げて滑走していくBf109は滑走路から外れ、誘導路との間に設けられた草原を数十m抉ってようやく停止した。

 

 

 

 

『タワーよりクラウン1!ヘクサー!応答せよ!?』

「そんなに叫ばなくても聞こえてるよ」

『おいっ!応答しろ!此方タワー!』

 

 なんとか止まった機体の中でガンガンとがなり立てる管制塔に返答するが、効果はない。如何やら、着陸――と言っていいのか彼には自信が無かったが――の衝撃で通信機が故障したらしい。此処まで騙し騙し動かしてきたエンジンは完全に停止し、燃料供給ラインも自動閉鎖されており、最初にたどり着いた消火車両が真っ白な消火剤を機体に吹き付けたので、発火、爆発の心配は殆ど無かった。

 バイザーを跳ね上げ、酸素マスクを乱暴にとる。コクピット内は焦げ臭さと消火剤の匂いが混ざり合い中々カオスな事になっている。酸素マスクを取るんじゃなかったと後悔しながら、キャノピーオープンスイッチを入れるが反応がない。ならばと、古典的な方法で開けようと手すりに手を伸ばした時だった。バコンと音がしてロックが強制解除、消火剤塗れのキャノピーが後ろへスライドし苦笑した少佐の顔が現れる。

 

「ケガは無さそうだな?」

「ええ、まあ。五体満足だ」

「それにしても、あんな派手な着陸は久しぶりに見た。もう一度やるかい?」

 

「御免だね」と苦笑し、少佐が差し出した手を握って身を起こし、コクピットから脱出。教師相手に敬語が取れてしまった事に後から気づくが、少佐はむしろ「その口調の方がお前らしくて良いな」と嬉しそうに双眸を崩した。太陽は西へと沈もうとしており、滑走路はオレンジ色の光に包まれている。

 

「ナイスランディング、よく帰ってきてくれた。何か欲しい物は?」

「腹が減った。特大のハムバンとコーヒーが欲しいな」

「良いだろう、リヒターも纏めておごってやる」

 

 救護車両へと向かいながら、そんな会話を交わす。機体を回収するためか、8本のタコの足の様なアタッチメントのついた双輪油圧ショベルが機体の横に停車し、白く染まった機体にアームを伸ばした。

 

「廃機かな?あれは」

「恐らくな。まあ、准将殿からのおとがめは無いだろう。むしろ、新型に乗り換えるいい機会だ。破壊された機体のフライトコンピュータから、新しい機体へこれまでのデータを移す。乗り換えるというより、機体が生まれ変わる方が感覚的に近いだろう。お前の事だ、あのフライトコンピュータとの付き合いは長くなるぞ」

「そりゃいいな。ハードランディングで臍曲げられなければいいが」

 

 メディカルチェックを受けながら誘導路を走り特務戦のブンカ―へ向かう救護車両の中で、ポツリと少佐が思いついたように零す。メディカルチェックを行う坊主頭の医者は、何も言わずに黙々とカルテに彼の現状をかきこんでいく。最も、その項目は全て【異常なし】となっていたが。

 

「響ってのはどうだ?」

「響?」

「あの機体、いやフライトコンピュータのパーソナルネームだ。機体が破壊されるとコンピュータも破壊されるから名前を付けることは少ないが、損耗の少ないエースパイロットのコンピュータには大体ついている。”赤燕”ならシュヴァルベとかな」

「それは知ってる。前の学校でもあったからな。別に俺は音楽をやっているわけじゃない。何処から出て来たんだ?」

「吹雪型駆逐艦22番艦の名前だ。何度も損傷しつつ戦線に復帰し、終戦まで戦い抜いた幸運艦さ」

「雪風じゃないのか」

「性能差は在れど、ズタボロになって帰って来たからな。それに、雪風だと僚機が苦労しそうだ」

 

 少佐がそう言って笑い、つられてヘクサーも笑う。ブンカーの中に入ったのか救護車両が停車し、医療機器に殆ど塞がれた窓の外が人工的な光に照らされて俄かに明るくなった。

 

 

 地面から突き出したブンカ―へと救護車両が入っていくのを見て、ようやく体にまとわりついていた緊張がほどけ。思わず手すりのすぐ近くにあるベンチにへたり込んだ。主脚が折れて火花が散った時は心臓が止まるかと思ったが、特に何事もなく救護車両へ乗り込んだことから大きなケガはしていないのだろう。

 まだ、心臓が早鐘を打っている。これがあるから、彼が戦闘機に乗り続ける事に全面的に賛成できないし、戦闘機を好きになることもできないのだ。彼が空を飛ぶことに大きな喜びを感じている事はもちろん知っている。けれど、彼の事を想えば想うほど、空軍道への複雑な感情は大きくなっていく。ある意味、嫉妬に近いのかもしれない。

 何と女々しく、浅はかなのだろうか?そして

 

 彼が好きなのは、()()()()()のに。私は…

 

 どれほど、未練がましいのだろう。

 どんよりとした内心を表すかのように、東から現れた紺色のシミは空を覆おうとその指を伸ばし続けていた。

 

 

 

 

 

 大破したヘクサーのBf109はぞんざいにアームで持ち上げられ、トラックの荷台に乗せられて工廠へと運ばれる。その間フライトコンピュータは、トラックに積まれたコンピュータと接続され、自己診断プログラムによる解析が進む。

 誰も居なくなったコクピットに置き去りにされたヘルメット。そのバイザーにある文字列が少々のノイズと共に映し出される。

 

【nice landing Hexer】

 

 数度瞬いた文字列は、エラーと判断した自己診断プログラムによりかき消された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





よし、まずはブラックボックスを見つけて
海水につけた後、真水につけよう(提案)
一応日本だし兵庫県警の出番だ

単発機にステックシェイカー?
→メーデーネタがやりたかった作者の暴走です

Fw189を提案していただいたハイパー扇風機様
ありがとうございました
そして、こんな作者の趣味爆発な話で登場させてしまい
すいませんでしたorz

途中から少佐相手にため口なヘクサー君ですが
少佐はこっちの方が愉しそうです
まあ、使う時と場所は選びますが

まほさんは致命的な間違いにまだまだ気づいてません
がんばれがんばれ(吐き気を催す笑み)


機体がぶっ壊れたので次回は新機体獲得回です。

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ではでは  ノシ
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