ボーイズ&ルフトヴァッフェ~空の道化師~   作:Ocean501

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ドーモ、オーシャン501です

今回はアンツィオ戦という事で
世界一カッコいい豚のパロキャラを突っ込む安直な暴挙
まあ、ド旧式ですしそもそも架空機ですし飛行艇には乗らないんですけどね



Mission16 アンツィオの豚

 ゆったりとしたリズムのカンツォーネが流れる中を、制服に身を包んだ生徒たちが騒がしく行きかっている。どこか異国情緒あふれる石畳の舗装路には革靴が合間無く打ち付けられ、両側に連なる各種料理の出店の軒先に設けられたテーブルからは食欲を誘う香りと他愛もない世間話が漏れ出す。学校の校舎近くの露店街ではアンツィオ高校の昼下がりの時間がのんびりといつも通り流れ続けていた。

 そんな代り映えしない日常の風景、あるテーブルでは緑髪をドリルツインテールにした少女が鉄板焼きナポリタンをほおばりながら、正面で新聞を広げる人物に愚痴を飛ばす。

 

「だからさー、カルロ・ヴェローチェ(CV33)とセモヴェンテでどーやって勝てって言うんだよ!」

「……」

「とにかくカルロ・アルマート…じゃなかった!P40がなきゃ絶対に上には行けない!………聞いてんのか?!おい!」

「聞いてるさ」

 

 学生新聞をわきに退け、最近になって発売されたノンアルコールワインのボトルをラッパ飲みする男子生徒はめんどくさそうな目を正面の少女に向ける。中肉中背、何処か厭世的な雰囲気の有る青年だった。傍らにはレンズの丸いサングラスがぽつんと置かれている。

 

「学園側も君らが内職する事は認めてるんだろう?聞く話によるとそろそろ資金がたまってきたって話じゃないか」

「それでも、今年には間に合わん。せいぜい来年だ」

「いいじゃねぇか。今年のうちにマメ戦車でも勝てるような戦術でも構築しておけ」

 

 ゴキ、と首を鳴らし、テーブルに置いてあった丸いサングラスを眼鏡拭きで磨いていく。正面の少女はぶすくれた様子で、ただでさえ釣り目気味の目をさらに険しくさせた。

 

「空が予算取り過ぎなんだよ。5個飛行団運用できる金があるならちょっとはこっちへ回せ」

「何処も彼処も定数割れでカツカツだ、内実は3個飛行団が良い所だ。無い袖は振れん」

「毎度毎度爆撃機のコンバットボックスに正面突撃するのがダメなんだよ。もうちょっと飛行機を労われ、てか被弾するな」

「修理代が浮いたら浮いたで飛行機が増えるだけだぞ?」

 

「……一度空軍道作戦司令部に殴り込みかけてみるか」と危ない思考をし始めた友人に苦笑いするしかない。いくらノリと勢いに定評があるアンツィオ生でもそこまで短絡的では無いだろう、無いはずだ、無いと信じたい。

 ……いや、まあ。自分はともかく、立場が逆なら。うちの爆撃隊の連中ならとっくの昔に戦車道の本部とついでに空軍道作戦司令部を瓦礫に換えているだろう。戦車道側がガタガタなのが空軍道司令部にとって救いとは、性質が悪いのか悪運が強いと言うべきか…

 

「戦車が高すぎってのもあるがな。同情はする」

「それだ!なんで飛行機はそんなに安いんだよ!?CV33とP.108が同じ値段ってのは納得がいかないぞ!」

「戦車とは違って落ちたらそれまでだからなぁ。カーボン装甲も40㎜が防げれば十分、パイロットさえ30秒守れたら後はベイルアウト、毎日毎日ぶっ壊されては補充されるから馬鹿みたいに売れて量産効果も高い。大昔から生産されてるから生産ラインも合理化が突き詰められてポンポンできる。言っちゃ悪いがソッチと違って”使い捨て”だ。戦車並の値段になってみろ、サンダースとプラウダ以外空軍道は消滅するぞ?」

「それは、そうなんだが…」

 

 理解はできるが納得が出来ないという雰囲気を醸し出した少女が肩を落とす。彼の言う事は理解できる。確かに、戦車道に使われる戦車はたとえCV33が全速前進中に真横から12.8㎝戦車砲を叩き込まれ派手にクラッシュしても、平服の乗員が死傷しないような安全装置が多々詰め込まれている。それに比べれば、パイロットさえ守れれば良しで機体そのものを消耗品と規定している空軍道の機材の方が安くなるのは道理だった。

 何か反論を探している時、先ほどまで流れていたカンツォーネがピタリと止まり空襲警報を知らせるサイレンが鳴りだす。その警戒心を掻き立てる音が鳴り響くと、それまで通りを行きかっていた人の波が一斉に向きを変え近くの建物へと流れ込んでいく。露店も、食材等の品物を地面下のシェルターへと放り込み、制服のまま建物へと駆け出した。通りの向こうから、CV33から上半身を乗り出しメガホン片手に避難誘導を行う黒髪の少女の姿がちらりと見える。

 

「今度は何処だ?」

「学園艦の位置からして黒森峰かサンダースだな。ったく、他所でやりゃいいのに、何でアンツィオ(ここ)でやるかねぇ」

「折角の休暇がパーだな」

 

 にやり、と人の悪い笑みを浮かべる少女を一睨みしてからボトルに残ったワインを一気に煽った。空になったボトルをテーブルに置くのと同時に、向こうで走り回っていたCV33が急ブレーキと共に二人のテーブルのすぐ横に停車する。

 

「おお!姐さんにアニキ!デートっすか?」

「バッ…違う!何言ってんだお前は!」

「大丈夫っすよ。誰にも言わないんで」

「お前の誰にも言わないって言葉が履行されたことが一度でもあったか?!」

「んー…まあいいじゃないっすか!そんなことより、黒森峰とサンダースの部隊が接近してるので屋内へ退避してください。アニキはこのまま空港までお届けしますんで」

「ああ、よろしく頼む」

 

 手慣れた様子で、青年はCV33の小柄な車体に足を駆けて乗り込む。

 

「あ、おい!ちょっと待った」

「なんだ?安西」

 

「アンチョビだ!」と声を荒げて訂正し、指先をマメ戦車にデサントした青年へと突きつける。

 

「食事の用意はしておくが、間違ってもポルケッタになって食卓に落ちてくるなよ?そうなったら思いっきり蹴飛ばしてやるからな!」

「空飛ぶ豚も楽じゃねぇな。落ちたらただの豚扱いか」

「ばーか。墜とされるなってことだよ!幸運を(In bocca al lupo)!」

「しっかり捕まっててくださいよ!アニキ!」

 

 ガン、とアクセルを蹴飛ばされたCV33がフロントを若干浮かせながら急発進する。上を見上げるとエンジンを響かせて戦闘上昇を始めたMC202の6機編隊が蒼空を駆けあがって行く姿が刻まれていた。

 

 

 

 

 

 

 

『スカイアイより各機、状況が変わった』

 

 高度20000ft、隊列を組んで巡航する戦闘機の大編隊に、電子の目を持つ管制機から通信が入る。V字型の編隊を組んだ無数の戦闘機はサンドイエローの砂漠迷彩の機体もあれば、灰色と緑がまだらになった機体、機首を黄色く染めている機体など色とりどりと言って良い。辛うじて共通している部分と言えば、尾翼に描かれたアイアンクロスの工廠だけだった。

 第1戦術戦闘航空団から第3飛行戦隊、第2戦術戦闘航空団からは第1、第3飛行戦隊、そして特務戦闘航空団からは第1飛行戦隊第3飛行隊グール、第3飛行戦隊第9飛行隊クラウンが参加し、総勢108機の戦闘機が集結し、空中給油を受けつつ一路アンツィオ高校へと向かっていた。10機から12機の堂々とした編隊が多い中、異彩を放つ2機編隊のクラウン隊は最後尾を飛び、編隊を一望しているのだった。

 今まで配備されていたE型とは異なり翼端が丸く成形され、空力的に不利となっていた尾翼の支柱も散りはらわれており、よりシャープな印象を受ける。機体は青みがかったグレーの濃淡2色の迷彩になっており、調整ミスなのか濃淡のコントラストが小さくパッと見では単純なグレー一色にも見えた。唯一、鼻先は黒に近い緑で塗装されている。

 

『アンツィオ高校上空でサンダースとの空戦が始まった。爆撃機部隊も控えているらしい』

『鉢合わせかよ!?』

『グール2よりスカイアイ。作戦は如何する?まあ、アンツィオが空中退避して決戦を避ける懸念はなくなったが』

 

 今回、こちらは爆撃機を連れてきていない。聖グロリアーナ戦から立ち直っておらず、補充と整備中だ。無理をすれば小規模な攻撃隊は編制できるが、一歩間違えば戦力絵をすり潰すことになりかねないため、空軍道では基地攻撃に爆撃機を使用する場合万全の準備を整えるのが通例だった。ほとんど壊滅した状態からの復帰はもう少しかかるだろう。

 とはいえ、訓練飛行や哨戒飛行だけでは戦果も稼げないため近場に居るアンツィオに対して戦闘機による小規模な攻撃を敢行することを統合コンピュータが決定した。ある種の威力偵察に近いこの攻撃では、アンツィオの戦闘機戦力を削ることを主目的としている。もし、アンツィオが決戦を嫌ってひきこもる場合を考え、グール隊のBf109F-2をはじめとする戦闘機の一部は250㎏爆弾などによる爆装を施されていた。

 

『作戦は続行だ』

『グリューン・リーダーよりスカイアイ。攻撃目標はどうするんだ?』

『サンダースは爆撃機を連れてきている。サンダースの爆撃機は無視して、最初はサンダースの戦闘機を優先的に攻撃しろ。アンツィオの戦闘機はちょっかいをかけられない限り放っておいていい。爆撃機が爆弾を投弾した後は特に規制はない。アイアンクロスが付いてない機体は全部叩き落せ』

 

 まあ、そうなるだろうな。と真新しくなったコクピットの中で水筒を固定しつつ、ヘクサーは内心で頷く。此方の戦力が揃っていないから戦闘機だけの攻撃なのであって、爆撃機さえそろえば攻撃隊に配備している。アンツィオの滑走路が破壊されるのであれば、必ずしも自分たちの爆弾ではないといけない理由は無かった。滑走路の破壊は航空基地と飛行隊を麻痺させ、戦力を直接的に削る。航空隊の消耗が激しければ、その分空軍道を運用する側の息切れも早くなる。要は夏の決戦までに可能な限り敵戦力を削り、本番で勝ちを収めればよいのだ。勿論、黒森峰の爆撃機部隊の連中は良い顔をしないだろうが…

 

『ジルウェットやアプサラスの連中がむくれるな、ヘクサー』

「しょうがない。合同戦でお茶を濁してもらおう」

 

 彼らの納得いかないような顔を想像し、斜め後方を飛ぶリヒターと小さく笑う。遠くの方に見えて来たアンツィオ高校の学園艦からは無数の黒煙が棚引いている。如何やら、サンダースの爆撃機が防空網を突破して戦果を挙げ始めたらしい。最上甲板から延びる曳光弾が空を駆け抜け、対空砲が炸裂した赤黒い雲が空をマダラに染めていく。

 

『サンダースの戦力はこちらと同等かそれ以上だと考えられる。三つ巴の闘いだが落ち着いて攻撃し、周囲の警戒を怠るな。では全機、攻撃開始!』

『グリューン1。エンゲージ』

『エコーズ1。エンゲージ』

『グール1。エンゲージ』

 

 次々と交戦宣言をした飛行隊が大きな編隊を解き、翼を翻して黒く汚された戦場の空へと突入していく。ほんの少し前まで遠くのほうにぽつんと見えるだけだったアンツィオの学園艦はすぐそこにまで迫り、ローマ風の建物の屋上や、街路から、無数の対空砲火が打ち上げられその一部が接近する黒森峰航空部隊へと振り向けられる。それまで学園艦上空で乱舞していた航空機の群れからアンツィオとサンダースの戦闘機体が分離し、新参者たちを迎え撃つ為機動する。

 

「流れ弾に注意しろよ、リヒター。クラウン1、エンゲージ」

『さぁて、花火の中へ突っ込むか!クラウン2、エンゲージ』

 

 

 

 

 戦場の空は混沌としており、無数の曳光弾が空を切り裂き時折翼を貫いた。

 今まさに爆弾を投下しようと緩降下していたリパブリックP-47D(サンダーボルト)の巨大な銀色の主翼に20㎜砲弾が数発直撃し身震いしたかと思うとバキリとへし折れ、銀色の破片をキラキラとまき散らしながら錐もみしつつ落ちていく。バブルキャノピーが吹き飛び、パイロットが射出されて無人となった大型トラックの様に重厚な機体は、広場に置き去りにされていた複数の屋台に突っ込んで爆発炎上する。

 

「チッ、あの屋台のキアッキエレまだ食ってなかったのに」

 

 そういえばあの屋台は戦車道主催だったかと思い出す、サンダーボルトと一緒にアンチョビの雷も落ちそうだと顔が少し引きつった。

 

『おい!ポルコ!あの屋台まだ回って無かったんだぞ!?』

「喧しい、キアッキエレが食いたきゃ他を当たれ。フェラーリン、チェックシックス!回避だ!」

『うぉっとぉ!?』

 

 先ほど苦情を叩きつけて来た僚機がFw190の機銃掃射を何とか回避。こちらは針路を予測し増速して機首を上げる。0.3秒後、フェラーリンを攻撃したフォッケウルフが、目論み通りの位置を通過しようとした瞬間を見計らいトリガーを引いて全門斉射。機体が振動し機首からは12.7㎜、両翼からは20㎜の火箭が伸びて直撃したFw190のエンジンカウルが吹き飛び、主翼も吹き飛んで火だるまになる。

 

『ロッソ1が1機撃墜!』

『グッキル!ロッソ1!』

『さっすがポルコ・ロッソ!』

『飛ばない豚は只の豚ってなぁ!』

「だから、そのあだ名は辞めろって」

 

 無線機から飛び込んで来る調子のいい――調子の良すぎる――アンツィオ空軍道メンバーの歓声にゲンナリとする。こいつら、ポルコ・ロッソがイタリア語で最大の侮蔑を意味することを知っているのだろうか?知っていたところで、”何か響きがいいじゃん”と気にせず使いそうではあるが。

 アンチョビに指摘されるまで知らなかった自分も悪いが、仮にもアンツィオのエースパイロットの一人のあだ名が罵詈雑言の類と言うのは如何なのだろう?

 

『アドリアーノよりロッソ・リーダー!聞こえるか?』

「此方、ロッソ・リーダー。ピッツァの空中宅配ならお断りだ」

『今はパニーニの気分だな。そんなことよりD22空域へ向かって、黒森峰の奴らに20mmを配達してくれ!』

「D22?そっちに向かったのは2機編隊が一つだけだろうが?」

『その2機編隊にマンマユートが食い散らかされてるんだ!』

「アンのロクデナシども。フェラーリン、ついてこい!バラッカ、指揮を引き継げ!」

『曲がりなりにも古参だろうが!何やってんだアイツ等!ロッソ2、了解!』

『ロッソ3、了解!隊長、ロッソ2、グッドラック!』

 

 スロットルを全開にするとフィアット R.A.1050 RC.58 ティフォーネが咆哮し1475馬力を絞り出して流線型の機体を持ち上げていく。目指すD22空域は目と鼻の先、確かにマンマユートのモノらしきMC.202ECが赤黒い煙を引きながら舷側の遊歩道を掠めて海へと叩き落されていくのが見える。

 赤い盾の中に、横からの見た目を極端にデフォルメした豚のイラストが描きこまれたエンブレムへ陽光を反射させ、ロッソ隊の2機のMC.205Vが新たな獲物めがけて空を駆けあがる。針路の先にはD22空域を突破しその先のサンダース戦闘機へ殴り掛かろうとする、全体的に単調な灰色の塗装が施された2機のBf109Fが捉えられていた。

 

 

 

 

 

 




バナナ男様、航空機のネタ提供ありがとうございましたm(__)m

ロッソ隊のエンブレムは日テレに居そうな某緑色の豚っぽいナニカです
(´・ω・`)なんだろう?(すっとぼけ

それと、アンチョビを初めとする外野の皆さんは建物の中や
屋上にある透明対爆ドームの観覧席、コロッセオに陣取って
ジェラート片手に野次飛ばしながら空戦見物して
男子連中はアンツィオのエースパイロットがどれだけ墜とすか賭けています
伊独米3か国の航空機が乱れ飛ぶ航空戦
ある意味で現代の闘技場っぽくてとってもローマ

ローマである>YI


ではまた ノシ



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