ボーイズ&ルフトヴァッフェ~空の道化師~ 作:Ocean501
今回からは合同戦がスタート
なお、空軍道に出番はない模様
身もふたもないことを言いますと説明回です
ちょっとしか書いてませんが、戦車の描写はこれでいいのだろうか…
腹に響く大音響が響き、巨大な駐退機が直ぐ近くを後退して強烈な反動を吸収する。吸収しきれなかった衝撃は50トン以上ある巨体を揺さぶり、幅の広い履帯を通して大地へと帰っていく。一瞬視界を覆った硝煙は換気扇によって速やかに車外に排出され、いつも通りの視界が戻ってくる。
一方、56口径の砲身を爆圧によって押し出され駆け抜けた88㎜硬芯徹甲弾はまばゆいマズルフラッシュと共に大気中に踊り出し、2000mの空気の壁をいとも簡単に貫いて、稜線に後退しようとしていた鋼鉄の猛獣に突き刺さり爆煙が上がる。数瞬の後煙が張れると、正面車体下部装甲板へ直撃弾を受け小さくすすけた白旗を上げるKV-1の姿がペリスコープからかすかに見えた。
「敵KV撃破!」
「陣地転換、本部小隊はポイント549に移動。急げ」
砲手のどこか喜色を含んだ声が耳朶を打つ。いつもはハッチから上半身を出して指揮をするため、車内にこもっている今日はバカに大きく聞こえてしまう。とりあえず、正面の障害は排除したがどちらかと言えば劣勢であることに変わりはない。いや、確実に劣勢になりつつある。唸るようなガソリンエンジンの方向が俄かに大きくなり、生み出されたエネルギーをトランスミッションがその身を削りながら履帯へと伝える。ティーガーの巨体が震え倒木を踏みつぶし、巨大な車体の進路を変更してうっそうとした森の中を走り始める。それと同時に、本部小隊として隊長車を護衛する2両のⅣ号戦車も後に続く。
「23号車、撃破されました!24号車、履帯損傷により行動不能!」
「直せるか?」
「……ダメです!敵機が近くに居て外に出られません!」
「無理はするなと伝えろ。下手しなくても死ぬ」
「りょ、了解!」
怯えた様子の通信手の声がする。それは不機嫌そうに見えるだろう自分の所為なのか、それとも。
頭上を見上げると特殊カーボンによる内張が成された重厚なハッチが視界に入る。その上には自分たちの車両を覆う森林、そしてさらにその上を飛ぶのは戦車の天敵、黒死病だ。聞きなれたガソリンエンジンの他に、出来れば聞きたくない水冷エンジンの音がかすかに聞こえた気がし、背筋を悪寒が走りぬけた。恐らくこちらの場所は割れている、何とか射線を外さないと火だるまになる。
「全車停止!後退!」
「了解!」
操縦手がブレーキをいっぱいにまで踏み込むと、50トンの巨体がつんのめるように停車し一瞬遅れてのろのろと後退を始める。悪寒はどんどん強くなり、水冷エンジンの音は既にはっきりと聞こえるほど近くにいる。パシュ、とプロペラが大気を引き裂く耳障りな音の中に何かを噴射するような音が混じる。
「衝撃に備えろ!」
鋭い声が車内に響いた瞬間、文字通り目の前が爆ぜた。連続する着弾により黒煙と破片、土の欠片が派手に吹き上がり爆風と衝撃波が車体を撫でていく。爆発が大きい、恐らくはBRS-132の掃射だろう。爆発の本数から攻撃に参加したのは1から2機。ロケット弾の直撃を受けた樹木が傾き、隣の木の枝に引っかかって停止する。先ほどまでは森の一角だった場所は、空対地ロケットに蹂躙され廃墟と言う方が適切な環境になってしまった。その廃墟の上をIL-2の影が舐めるように横切っていく。
「ああ、もう!上の連中は何やってるんですかぁ!?」
堪忍袋の尾が切れたとでもいう風に、操縦手の少女が怒りや怯えがない交ぜになった声を上げる。その意見に関して、まほは同意したくなる気持ちをぐっと抑え込むことに多くの労力を割かねばならなかった。
航空機が発明されてからというもの、地上戦と航空機の支援活動は切っても切り離せない関係となった。第2次世界大戦の初戦で、ドイツが戦車と近接航空支援機を集中的に運用し電撃戦によって鮮やかな勝利を勝ち取ったことに端を発し、1944年のバグラチオン作戦でソヴィエト労農赤軍は、大規模機甲師団とそれを掩護する砲兵、シュトルモビクにより史上空前の大突破を果たした。第1次世界大戦からおよそ20年、偵察者だった航空機は、強固なトーチカや戦車を上空からいともたやすく刈り取り地上軍の進撃路を開く屠殺者へとその姿を変えていた。
戦車道と空軍道においてもその構図は変わらず。戦車道の練習試合で時折行われる合同戦では、空軍道の爆撃機部隊は敵校の戦車を上空から刈り取る役目を持ち、戦闘機は其れを護衛する役割を帯びていた。撃破されたスコアは爆撃機部隊に加算されるため、戦車道にとっては練習試合でも空軍道にとっては公式戦と大差がなかった。地上でも戦車道同士の戦闘は行われるが、多くの場合、制空権を握った側の空軍道部隊が敵地上部隊を袋叩きにすることで決着が付くのが特徴の一つだった。
そのため、戦車道に求められるのは味方空軍道が制空権を握るまで戦力を温存し生き残る事。これは、常に前進を良しとする西住流でも変わらない。制圧前進と無為無策無謀な突撃には確固たる差がある。
しかし、と再び移動を開始したティーガーの車内で額に浮いた汗をぬぐう。
此方は戦闘が始まった直後森に退避したが、プラウダの絨毯爆撃により退避した森が大きく3つに分けられてしまった。まさか合同戦に4発重爆を投入し、強引に部隊の分断を図るとは。やることが豪快と言うかおおざっぱと言うべきか。おかげで24両居た味方部隊はおおよそ3分割され、其々森の中を逃げ回っているのが現状だ。プラウダ戦車隊は、此処からおおよそ2㎞程離れた丘陵地帯の丘の陰に戦車を潜ませている。ギアチェンジでミスがあったのか砲塔だけでなく車体も丘の上に晒したマヌケを1両仕留められたが、形勢逆転とはいかない。
『くそっ!敵が多すぎる!キリがない!』
『グッキル!グッキル!』
『爆撃機が野放しじゃないか!俺が行く!援護を』
『馬鹿野郎!高度を下げれば被られるぞ!低空のソ連機と殴り合う気か!?』
『ヴィオレット5、落ち着け。隊長はあの西住だ、援軍に任せたほうがいい』
『ツュアーン3よりリーラ12!3時方向敵機!』
『な!?ゲバっ!?』
『リーラ12がやられた!』
試しに回線を切り替えさせてみるが、優勢とはいいがたく直に回線を元に戻す。
空軍道の状況は悪そうだがこちらの被害の方も大きい。本部小隊と同じ森に逃げ込んだ2個小隊、副隊長車小隊と共に逃げ込んだ2個小隊は未だ全車両健在だが、最も規模の小さい森に逃げ込んでしまった2個小隊は敵の集中攻撃を受け、すでに1個小隊が全滅。一方の小隊も22号車を残して全滅、黒森峰戦車道は片腕をもがれたに等しい。打開策を打とうにも森の周囲は遮蔽物の無い草原、外に出た瞬間、七面鳥打ちだ。
対空防御に不利な丘陵地に陣取るプラウダだったが、肝心要の黒森峰タンクキラー部隊は想定以上の敵機に蹴散らされてしまい残っていない。管制機の話では敵は味方の倍以上の戦闘機を従えていたらしく、低空の爆撃機隊はそれらに狩り尽されてしまった。ただ、一つ希望と呼べるものがあるとすれば、爆撃機隊と直掩機の死に物狂いの活躍により、プラウダの直掩機の大半、爆撃機部隊の2割と刺し違えた事。主力となる戦闘機隊を上空に釣り上げて、増援の戦闘機が残った爆撃機に簡単に接近できる土台を整えた事だろう。
そういえば、出撃部隊のリストに彼の部隊はなかったな。
戦車道の指揮官として頭をフル回転させている傍らで、ふと、そんな考えが首をもたげた。
着陸時に事故を起こしたときは心臓が抉れるかと思ったが、見舞いに行く前に到着した新しい飛行機に乗って哨戒飛行に出たとハルから聞いたときは、驚きよりもあきれが先に出て大きなため息を吐いてしまった。あの時さんざん心配した自分がばからしくなる。特務戦は病み上がりのパイロットにまでシフトを組むのかと問いただしたが、彼の場合”
しかし、どうして特務戦は情報を隠しているのだろうか?
最近、頭の中でくすぶる疑問が連鎖的に持ち上がる。黒森峰防空戦、聖グロリアーナ機動部隊襲撃、対知波単遭遇戦、アンツィオ制空戦。参加した戦闘ではことごとく大戦果を挙げているらしいと言うことは風の噂で流れてくるが、なぜか詳しい情報は入ってこない。公開されているランキングを見ても、”ヘクサー”や”クラウン隊”の名前はランキングの下のほうに形見狭そうに乗せられているだけだった。そのため、空軍道に詳しく噂好きな戦車道女子たちはクラウン隊にあまりいい印象を持っていない。曰く、自分たちの戦果を過大に報告している部隊、空飛ぶ詐欺師、ペテン師、ビッグマウス、と散々な言われようだった。
けれど、クラウン隊が嘘をついているようには思えない。もちろん証拠があるわけではないが、博という人間は子供のころからの付き合いだ。見栄を張って過大な戦果を報告するような人間じゃない。むしろ、わざと小さく報告して敵に己を過小評価させるぐらいの悪辣なことは鼻歌気分でやってのけるだろう。……想い人にする評価ではないな、これは。
「隊長、増援機です!」
「敵か?味方か?」
各車両に指令を伝達する回線と空軍同と連絡を取る回線が異なる合同戦のルールはこういう時もどかしい。しかも、しょっちゅう混線するので分ける意味あるのだろうか?と思えてしまう。
合同戦では敵味方の航空機が、戦力の許す限り投入され入り乱れるため増援部隊や撤退する部隊も珍しくない。通信手の声色から考えるに、少なくとも敵ではないだろう。頭上を黒死病に飛び回られている今、出来れば戦闘機の増援が欲しい所だが…
「その、味方です。戦闘機がたった2機だけですが」
合同戦では航空支援が打ち切られる場合には、最後の増援で12機そろった飛行隊ではなく小規模の部隊が送られて打ち止めとなることが多い。これ以上空軍道は戦力を避けないというある種の目印だった。たった2機の増援が意味する事を理解している車内の空気が重くなる。しかし、この車両と部隊を預かる彼女には一縷の希望があった。それを確かめるまで、諦める気にはなれない。
「何処の隊だ?」
「えーと、E39-EFS。らしいです、特務戦のクラウン隊かと」
どこか落胆したような雰囲気の通信手が答えると、「ゲッ、まじ?」という操縦手の声とともに車内の指揮が若干落ちる。この車両にいるメンツもクラウン隊の戦果に大なり小なり疑問を持っている人間が多いため、仕方ないことではあった。ただ一人を除いて、ではあるが。
「そうか。ありがとう」
「へ?」
聞いたことがないほど喜色を滲ませた隊長の声に誰もが彼女を振り向く。いつも通りの冷淡かつ不機嫌そうな隊長の姿はそこには無く、何処かホッとした様な笑みをこぼした同年代の少女が居るだけだった。
自分を信じられないような顔で見ている車内のメンバーに気づいたまほは、何時ものように自分の感情に蓋をし一つ咳払いをしてから不景気な空気を吹き飛ばすように命令を下す。
「全車に通達!敵航空戦力の漸減が確認でき次第、正面敵陣地へ向けて突入する!本部部隊とは突入中に合流し隊形を整える!突撃発起点まで前進!」
『副隊長車より隊長車。あの、まだシュトルモビクが』
「黒死病はそのうち消える。
むろん、彼女にもクラウン隊が本当に多大な成果を上げていることを裏付ける証拠は何もない。何もないが、1番機のパイロットに対する信頼は確実に存在しており、暗闇の中に小さな光が見えた気分だった。それとはまた別に、どんなかたちであっても自分の窮地に彼が駆けつけてくれたことに大きな喜びを感じているのを自覚する。
口調も顔も何時もの冷静な戦術指揮官のモノだったが、唯一口元だけは小さな笑みを浮かべ続けていた。
ハイパー扇風機様ネタ提供ありがとうございますm(__)m
森の中で孤軍奮闘まほさん
制空権の無い装甲部隊なんぞシュトルモビクのおやつです
低空のソ連機のハッスルぶりは異常てかUFO(偏見
まほさん逃げて超逃げて
くっそつまらない話を読んでいただきありがとうございますorz
次からはちゃんと話が動きますので許してお兄さん
なぜか戦場伝説になりかけているクラウン隊
ワーイッタイダレノシワザナンダー
なお、人の口に戸は立てられないのでじわじわ広がっている模様
おかげでクラウン隊は嘘つき扱いです(にっこり)
お姫様の窮地に駆け付けるのは白馬に乗った王子様ではなく
戦闘機を乗り回す道化師です
まあ、お姫様もティーガー乗り回してるんですけどね!
あ、絨毯爆撃したPe8の皆さんは先に帰りました
ではまたノシ