ボーイズ&ルフトヴァッフェ~空の道化師~ 作:Ocean501
進入社畜研修が始まったため
更新速度がFOX4してますが
読者の皆さま方はいかがお過ごしでしょうか?
今回と次回は拠点回の名を借りたフラグ建設回
今後の登場人物の思想や行動に
キャラ崩壊だ!と思われた方は申し訳ございませんorz
「よし、じゃあ勝負だ。ハートのフラッシュ」
「ちっ、ついてねぇ。8のスリーカード」
「役があるだけましじゃねーか、こっちはブタだ」
「私は、ワンペアでした」
「ううん、ジョーカーさえ来ればよかったんだが、2ペアだ」
ストップを宣言したリヒターがにんまりとした顔で手札をテーブルの上にさらす。右隣のハンスは渋い顔でクラブ以外のスートがそろった3枚の8とその他を放り出し、
「なんだい?隊長」
「悪いな、リヒター。フルハウスだ」
開示されたのは6のワンペアとJのワンペア、そしてジョーカー。「そんな予感はしてた」とリヒターが肩を落とす。役なしで最下位になったマイスターがため息を吐きつつ山札と手札を回収しシャッフル。彼らが座る窓の外にはすでに陸地が見え始めていた。先ほどまでは賑わっていた船内にとどまる人間は半数以下で、多くの生徒は甲板に上がって約1月ぶりの本土を眺めながら海風に当たっているだろう。
「にしても、なんで連絡船なんだ?接岸できないのか?」
「黒森峰学園艦は大きすぎて港に入るとものすごく邪魔になりますからね」
マイスターの素朴な疑問に、下級生である光が真っ先に答える。
「学園艦は艦というよりもコロニーに近いからね。SF小説でも、スペースコロニーが居住惑星に着陸するわけではないだろう?」
「人やモノの移動は船や飛行機がありますから、黒森峰学園ほどの巨大艦だとそれらの輸送費よりも接岸するほうが高コストになってしまうのです。学園艦が入港すると港内の物流に大きな影響を及ぼし、その分の補てんは学園艦持ちですから」
「そして何より、座礁の危険性がある。駿河湾や東京湾みたいに海底渓谷があるならまだしも、日本の大多数の港は学園艦の艦底より浅い。大洗みたいに海底面を掘削して無理やり学園艦が入港できるようにしたところもあるけど、費用対効果は最悪と言っていい。なにせ学園艦にしか意味がないし、海底環境に与える被害も甚大。一時期の大不漁の原因の一つともされているよ。まあ一応、学園艦にもよるけど黒森峰なら100か150m程度ならバラスト放出で喫水をあげてもアクティブスタビライザーをフル稼働させれば転覆はせず陸地に近づけるけれど、そのまま停泊とはいかない。適当なところでバラスト水を再注入して着底させないとだめだ、学園艦の大重量を支えられる水平な地盤にね。もっとも、そんな都合のいいものが日本にあればだけど」
「ハルも光もよく知ってるな。とりあえず、学園艦は港の外で停泊しとくのが面倒がなくていいってことか」
マイスターに褒められてうれしいのか「それで問題ないかと」と顔をほころばせる。フンスと擬音が聞こえてきそうな軽いどや顔。
「まあ、一つほかの理由も上げるなら空軍道の事もある」
「どういうことだよハンス」
「今回、珍しく特務戦に休暇が出されたがゴールデンウィーク中も空軍道の戦闘はあるんだ。学園艦が入港できるほどの港ならすぐ近くには市街地や工場地帯がある。その近くで空戦おっぱじめてみろ、学園艦ほど強度のない本土の家に航空機がボロボロ落っこちてくる。損害賠償で学園艦が撃沈されちまうぞ」
うげっ、とマイスターが苦い顔をする。確かに学園艦の住居はB-29の残骸が降ってきたところで大きく揺れるだけで崩れはしない。もともと航空機の落着は想定内であるため専用の基準があったからだ。その一方、空軍道の戦闘が行われない本土では特にそういった基準は存在しない。
「熊本市内から出るなって命令には何か裏がありそうだけどな」
「サンダースの母港は長崎だからねぇ、妥当な判断じゃない?」
クラウン隊の2人がマイスターから配られた手札を手に取りつつぼやく。黒森峰学園艦が停泊しているのは五島南方70㎞の海域で、サンダース大付属学園艦は五島北方40㎞を貫く学園艦用対馬海峡海底運河――学園艦航行用の人工海底峡谷――に留まってゴールデンウィークを過ごす予定だった。直線距離は110㎞、空軍道では手ごろな距離でありいつ戦闘が勃発してもおかしくない。
手札を開く。先ほどのフルハウスで運を使い切ったと思いきや流れはこっちにあるようだ。これなら早い段階で勝負に出られると、内心ほくそ笑んだ時だった。
「博、ちょっといいか?」
「……じゃあちょっと行ってくる」
ため息を吐きたいのを我慢しつつテーブルに手札を放ってまほの後に続く。ヘクサーが座っていたところにはスペードのカードが4枚そろった手札が寂しげに置かれていた。
「西住」
「なんだ?」
「帰っていいか?」
「諦めろ」
ぴしゃりと最後の抵抗を踏みつぶされる。取り付く島もないとはこのことだ。連絡船の発着場からバス停へと向かう道中、有名人の隣に並んで歩くヘクサーには好機の視線が突き刺さっている。しかし、彼が渋い顔をしているのはそんなことが原因ではなかった。
「なんだって君の家に行かなくちゃならないんだ」
「家族ぐるみで付き合いしていたのに、失踪同然で出て行ったんだ。帰ってきたのなら、顔を見せるぐらいしろ」
「顔を見せたとたん右ストレートが飛んできそうだ」
「それについては安心しろ」
「何か手はあるのか?」
「手当ぐらいはしてやる」
「殴られるの前提かよ」と天を仰いでため息をつく。彼女がこう言っているということは西住本家が自分に抱く心象は最悪なのだろう。もっとも、最悪以外にどんな評価がつけられるのか見当がつかないという自覚はあるが。
足取りが若干重いヘクサー、逆に少し軽やかなまほ。目当てのバス停が見えてきたころ、2人にとって見覚えのある1台の乗用車が二人の前で路肩に停車した。
「ともあれ博君が元気そうで何よりだ。空軍道でもエースパイロットなんだって?」
「数字の上ではそうですが、まだまだ未熟者ですよ」
「ハッハッハ、アンツィオのエースを叩き落しといておいてよく言うよ」
運転席で快活に笑うのは西住常夫。西住姉妹の父親で今の仕事は自動車整備工だったが、高校時代は空軍道で航空機の整備を手伝うこともあったという。そこで、ヘクサーの父親と出会い意気投合。もともと寡黙だった性格はアクの強いパイロット連中にもまれたおかげで若干なりを潜めた。
「ところでお父様。どうして、自動車なのですか?」
運転席の左後ろに陣取ったまほが問いかける。その声はどこか不満げなようにも思えたが、ヘクサーは気のせいだと片付けた。
「まほは二号戦車の方がよかったかい?」
「そこまでは、言いませんが」
「そっちのほうが博君とくっつけるからかな?」
「ち、違います!」
「そうですよ、第一俺と一緒に砲塔にすし詰めとか新手の拷問でしょうに」
ここまであからさまに狼狽える彼女を見るのは初めてかもしれないと助け舟を出すが、帰ってきたのは無言のジト目。解せぬ、と視線を前に向けるが唯一の友軍は肩を震わせて笑いをこらえているらしい。なるほど、そもそも友軍なんていなかったという事か。
「おっ、この場所覚えてるかい?二人とも」
「はい」
「何にも変わってないですね」
車窓に映ったのは郊外に位置する空軍道の飛行場だった。空軍道のカリキュラムを実施している近くの中学校の基地で、ちょうどFi167が滑走路を滑っていくのが見える。みなれたBf109よりも数段ゆったりとした速度で進んだ機体は、ふわりと木の葉が舞い上がるように浮き上がり、若干ふらつきつつ上昇を開始する。敷地の周囲はぼろぼろの金網フェンスだけと相変わらず警備はザル以下だった。あの時から何一つ変わってない。
「王冠が落書きされたメッサーシュミットはもういないようだな」
「勘弁してくれ」と肩をすくめる博の姿に、まほは小さく苦笑する。
子供の頃、自分と妹は戦闘機が嫌いだった。妹はただ単に轟音を伴って空を舞う戦闘機におびえており、自分は航空機の操縦を父親から叩き込まれた彼を空へと連れていく機械として嫌っていた。嫉妬、そう嫉妬というのが適当だろう。それと同時に、いつか彼をどこか遠い所へ連れて行ってしまうような気がしてどうにも好きになれなかった。どちらにせよ、飛行機に向ける感情ではないことは理解している。しかも、その感情は大なり小なり今の自分にもしっかり根付いているのでなおさら性質が悪い。
ある時、何時もは弟のブレーキ役になることが多かった博がスプレー缶片手に自分たちを基地へと誘った。「戦闘機って怖いものじゃないんだ」と私たちに言って。弟と一緒にフェンスの切れ目から基地に侵入し、近くに駐機していたBf109の尾翼に王冠の落書きを施したのだった。みほは彼のお世辞でも上手ではない絵に笑い、ある程度は戦闘機に対する怯えはなくなったようだった。私の場合は原因がそこにあるわけではないので意識が変わることはなかったが、やり遂げたといった顔で戻ってきた彼が「戦闘機だって羽を休める場所が必要だ」と笑っていたことは特によく覚えている。その戦闘機と場所が何を、いや誰を意味するのか、詳しく聞く勇気はなかったが。
「もう大昔の話だろうが。時効だ、時効。あの後母親にはこっぴどく叱られて、父親の操縦で強制アクロバットだ。死ぬかと思った」
「あいつのダンスは過激だからなぁ。帰ってくる頃には毎回毎回エンジンが悲鳴上げてたんだよ、ちょっとは直す方の身にもなってほしかった。それで何度も戦車の整備に遅れてしほに殴られたっけ」
「しほさんはお元気ですか?」
「大事ないよ、むしろ働きすぎぐらいさ」
3人を乗せた車は市街地から離れ、大きな屋敷の門の前で停車する。表札には西住という文字が掲げられ、その門の前には和服姿の女性が待っていた。和服姿の女性はニコリと微笑み、主人と客人を出迎える。
「旦那様、まほお嬢様、博坊ちゃん。おかえりなさいませ」
「ただいま戻りました、菊代さん」
和服姿の女性――菊代が後部座席のドアを開けてまほが外に出る。彼女は西住邸で家政婦として働いている女性で、博も面識があった。久しぶりに自分にかけられた言葉に思わず苦笑してしまう。
「坊ちゃんはやめて下さいよ、菊代さん」
「いえいえ、私にとっては博坊ちゃんは博坊ちゃんでございます」
ニコニコと笑みを浮かべるやわらかい雰囲気は何一つ変わっていない。特に高貴な生まれでもなければ、大企業の息子でもない、単に西住姉妹の幼馴染というだけの自分にも礼を尽くす姿勢は家政婦というよりもメイドと言ったほうがしっくり来る。右側は車道であるため左側から出ようと腰を浮かすが常夫から待ったがかかった。
「ああ、まほ。少し博君を借りていくよ」
「お父様?」
「何、久しぶりに男2人でドライブさ。博君、いいかい?」
「特に予定はないのでかまいませんよ」
常夫に促され後部座席から助手席へと移動する。
「じゃあ1時間ぐらいで戻るよ。その間にしほと話してきなさい」
「話す?」と首をかしげたまほに「心当たりはあるはずだ。じゃ、また」と片手をあげてアクセルを踏み込む。サイドミラーに映った娘の姿はすぐに小さくなっていった。
車の進路はさらに郊外へと向けて進み始める。ここまでくると、市内とは異なり車の数もまばらになりつつあった。車内にはエンジン音とひと昔前に流行った音楽以外は聞こえない、どちらも口をつぐんだまま15分ほど経過していた。
最初に口を開いたのはハンドルを握る常夫のほうだった。
「君が黒森峰に来たとまほから聞いたときは驚いたよ」
「黒森峰に転校するのは想定外でした。最初はサンダースかプラウダかと思っていた時に、学校側から黒森峰に飛ばされましてね。後で聞けば、
「なるほどね」
「
ちらりと視線を窓から常夫へと向ける。柔らかな笑みを浮かべ続けていた父親の顔から、すでに笑みは消え去っていた。こちらの視線が自分に向かっていることに気づいたのか、彼はふっと口元を緩める。
「勘が良いのは変わってないね。ま、正直言うとだ」
菊代に案内されてしほの書斎へと通されたまほは、厳しい顔をする母親に面食らっていた。
最初は、いつも通りと言えばいつも通りの仏頂面で学校での様子、特に戦車道の様子を聞いていた。前回の合同戦では追い込まれたが、最終的には逆転したという報告には珍しく「よく耐えたわね」と褒められることすらあった。しかし、まほの話が博を連れてきた件に差し掛かった時、彼女の雰囲気が一変する。
「お母さま?」
「そう、あの子をね…」
その顔はどこか苦々しい。その感情の矛先は博と、一部は自分に向いているような気がした。
「
フラグ建設回(恋愛フラグとは言ってない)
勘のいい訓練されたエースの皆さま方は気づいたと思われますが
主人公のモデルの一つはリボン付きの死神だったりなかったり
そして、うきうき気分でヘクサーを連れてきたまほさん
彼の帰還を本家がよく思っているはずもなく盛大に自爆ですショッギョムッジョ
下手な恋愛描写をだらだら続けても仕方ないので
あと1話か2話で切り上げます
ではでは ノシ