ボーイズ&ルフトヴァッフェ~空の道化師~   作:Ocean501

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ドーモ、オーシャン501です

今回は1話まるまる敵エースとの殴り合い
お好きなタイマン戦闘BGMを脳内再生しながらどうぞ






推奨OP「MAN WITH A MISSION higer」



Mission28 決闘

 

 《今は敵だろ?ペダソス》

 

 通信機から聞こえてくる彼の声は、記憶の中にあるものと殆ど変わらない。相変わらず不景気が服を着て飛んでいるような声色には彼自身も苦笑を隠し切れなかった。戦場を俯瞰するように大きく旋回しながら、こちらをうかがうように飛行する2機の戦闘機を見やる。旧世代の米軍ステルス機の様な灰白色のカラーリングの2機、史実に沿ったペイントが大多数の空軍道では”面白味”のない選択をする人間など、そう多くない。

 

 「そういうなよ、ヘクトル」

 《中学時代のTACネームを持ち出すな、ヘクサーだ》

 

 ペダソスの名前はサンダースへ進学した後も使い続けていたので気が付かなかった。そういえば、学校が変わると名前も変わる場合があるということをぼんやりと思い出し、即座に頭の片隅へと廃棄する。湧き上がってくるのは抑えきれないほどの闘志、そして歓喜。

 久しぶりの再会が空の上で敵同士だということに、普段は碌に意識しない神とやらに感謝の一つも捧げたくなってくる。

 

「そいつは失礼。んで、まさかとは思うが弾切れなんて無様な真似してねーだろーな」

 《そりゃこっちのセリフだ》

 

 無線機は単機で突出した自分をいさめるような僚機の言葉を吐き散らしている。ちょうどよく、3機ほどがすぐ自分を援護できるような位置につこうとしつつあることを知り、マスクの下で獰猛な笑みを浮かべた。その接近しつつある僚機に、ピエロのエンブレムの2番機を抑えるように指示を飛ばす。了解の返事が返ってくる頃には、自分を追跡していた3機のマスタングがヘクサーの僚機を攻撃できるようなポジションに付こうと旋回をはじめ、即座に敵の2番機も弾かれたようにヘクサーから離れていく。あの野郎の2番機なら並の腕じゃないと思っていたが、なかなかどうして、3機では少なすぎたかもしれない。

 

 「これで、邪魔者はいなくなったな」

 《ったく、お前の趣味に付き合わされるこっちの身にもなれよ》

 

 思わず呆れてしまうほどつれない態度。しかし、その口調の中の笑みまで隠しきれてはいない。表面上は冷徹なパイロットではあるが、これから始まる1対1(タイマン)に奮い立たないほどヘクサーは面白味のない人間ではない。とどのつまり、表面上は異なるもヘクサーとペダソス、この2人は似た者同士(空戦馬鹿)であることに変わりはなかった。

 お互いをにらみつけるように同じ円周上を旋回すること1周半。数秒2人の会話が途切れた瞬間、お互いの視界を遮るように2機の戦闘機が描いた円の中心を火だるまになったFw190が落ちていく。示し合わせたように緩い旋回を行っていた2機の翼が垂直に立ち、中心へ向けてピッチアップ。当然のようにヘッドオン。

 

 《ハッ、それじゃあ久しぶりに》

 「踊ろうじゃねぇか―――なぁ!」

 

 相対速度が1000㎞/hを優に超える中、対面した2機の機首と主翼が光に包まれる。

 

 

 

 

 

 

 

 トリガーを引き絞ったのもつかの間、操縦桿を倒して機体をロールさせる。真上を12.7㎜の真っ赤なシャワーが貫いていき、一瞬遅れて銀色の猛禽と背中合わせになりながらすれ違う。お互いぎりぎりまで回避を遅らせた結果、ほとんど接触しそうなほど接近したP-51Dの垂直尾翼が後方へとすっ飛んでいく。ピッチアップし縦旋回、頭上には同じように縦旋回に入ったP-51Dが見える、その銀色の機体に命中弾はない。あいさつ代わりの初撃はお互いに効果なし。

 背面以降に移ったところでループ軌道をやめて半ロール、インメルマンターン。再びヘッドオン。

 Bf109は機首に最大火力のMG151/20(20㎜機関砲)を搭載しているため、命中率と単発火力という面ではヘッドオンにおいて有利。しかし、バランスのいい12.7㎜を6丁搭載したマスタングは面制圧火力という点でBf109を圧倒している。手数で完全に負けている分、一撃必中を成さなければハチの巣になってしまう。

 今度は少し遠い間合いから7.92㎜を発砲、一瞬遅れて回避方向に20㎜機関砲を放ち、ロールをうって回避機動。ペダソスはこちらの攻撃を読んでいたらしく、本命の20㎜とは逆方向に機体を滑らせて見せかけの7.92㎜を紙一重で躱す。小さくバレルロールする格好になり、背面飛行に移ろうとする自分へ向けて12.7㎜の弾幕で構成された鞭をラダーとエレベーターを使いながら薙ぎ払う。

 操作を中断し操縦桿を思い切り前に倒す。ハーネスが肩に食い込み、高速のマイナスG旋回で視界が真っ赤に染まる直前、右90度バンクからのピッチアップ、今度は血流が足元へと集まっていき目まぐるしい重力加速度の変化に脳が悲鳴を上げる。垂背面飛行からマイナスG旋回し直上昇した愛機は、進行方向に対して右へと急旋回。俯角30度で機首をこちらに巡らそうとしたP-51Dの目の前を高速で通過していく。

 

 《相変わらずめちゃくちゃな機動をやるやつだ》

 

 呆れ半分、楽しさ半分と言った雰囲気の元相方の声がヘルメットに響くが、返答している余裕はあまりない。自分を追跡するように降下するP-51D、距離はおよそ900m。重量の関係で同高度での加速はこちらがわずかに勝るようだが、速度のノビはどうにも勝てない。ダイブして低空の乱戦に逃げ込むのはまだ早すぎる上に気に入らない。何方も高速旋回戦闘が得意と呼ばれる機種だが、P-51の方がその傾向は顕著だった。

 コンパクトな機体を最大限振り回すヘクサーのBf109に、ペダソスのP-51は難なく追跡していく。主翼を垂直に立てたBf109が急旋回を駆けようとした瞬間、P-51からの機銃掃射が進行方向上に網を張るが、単純にピッチアップするのではなくバレルロールの機動も組み合わせるように難なく回避。同時にオーバーシュートを狙われたP-51はハイ・ヨーヨーで後方上空に移るも、ダイブする前にヘクサーはインメルマンターンで後方へと進路を取っている。仕切りなおされたP-51は攻撃を中止しスプリットSで追撃。

 2機の航跡が複雑に絡み合いながら混戦状態になった黒森峰学園艦上空に幾何学模様を描いていった。

 

 《ちょっと見ねぇうちに、偉くご機嫌なダンスするようになったようじゃねぇか》

 「そっちこそ、ようやく狙って打つ事を覚えたようだな。まだまだ牽制射撃が多いように思えるが」

 《ぬかせ!》

 

 ペダルを蹴飛ばし機体が左へ横滑りした瞬間、キャノピーの右を無数の曳光弾が貫く。冷や汗をかく暇すら惜しみ、今度は逆のペダルを蹴飛ばしながら左斜め上へブレイク。左翼の翼端を銃撃がかすめ、本命の制圧射撃が尾翼をかすめ飛んでいく。間髪入れずにダイブし、無防備なP-51の腹側へと進路をねじりこむように機動するが、それよりも早くP-51も同じ方向にブレイク。高速域では高い運動性能を持つマスタングの能力をフルに生かしつつ、ヘクサーのBf109よりもさらに小さな旋回半径でクルリと機首を巡らせ、無防備な背面へと斉射。ヘクサーは操縦桿を引く手からかわずかに力を抜き、旋回半径をわざと大きくとることで偏差射撃から逃れると同時にフラップダウン、スロットルMin。

 急減速でハーネスが肩に食い込み痛みを感じる、それと同時に防弾ガラス越しにほんの鼻先の空間を無数の12.7㎜弾が駆け抜けていく。そして先ほどまでの攻防で焦れたペダソスが100mまで距離を詰めていた結果、ヘクサーの急減速に対応できずわずかにBf109の射線から逃れつつ前方上方を高速で通過。

 2機はそのまま別々の方向に離れて仕切りなおす形となる。

 

 《隊長が仕留め切れていない?》

 《なんて奴だ、ウィスキー1相手に互角に戦えているだと?》

 『ヘクサーが敵エースと交戦中!』

 『バッカス・ナイツまで出張ってきやがったのか!?』

 

 味方機の悲鳴のような悪態に、ちらりとペダソスの垂直尾翼に視線をやる。そこにはトランプのハートの部隊章、サンダース空軍道では有名なエース飛行戦隊にのみ許されたデザインだった。ウィスキー、ウォッカ、ラム、アップルジャックの4つの飛行中隊によって編成される第8戦闘航空団第8航空群。その部隊章からスートの騎士団とも、部隊名からバッカス・ナイツとも呼ばれるサンダースでも有数のエース部隊であった。勿論、その名前をヘクサーが知らぬはずもなく、操縦桿を握る手のひらにジワリと汗がにじむ。

 

 「2年でウィスキー1か、出世の早いことだな」

 《サンダースだからな、腕さえあれば上に行ける》

 

 再びヘッドオン、コンマ1秒ごとに急速に接近してくるペダソスだったがこちらがトリガーを握りこむ寸前に銀色の機体が上空へと跳ね上がる。主翼が陽光を受けて瞬き、とっさに機首を上げてはなった7.92㎜銃弾がP-51の尾翼をかする。

 即座に翼を立てて左急旋回するが、一足早く変則的な燕返しで反転を完了したペダソスのP-51DがBf109の背後へと滑り込んでいく。

 

 《そろそろ終わりにするか?》

 「ならトットと落とされてくれよ」

 《この状況でよくそんなことが言えるな》

 

 Bf109が右へ切り替えして急旋回し、一歩遅れてP-51も右へ旋回。今度は左へ切り替えそうとする空間へP-51Dがあらかじめ弾幕を張るが、それを見こしたBf109は縦方向の機動を織り交ぜて難なく乗り越え、同時に距離を稼いでP-51をオーバーシュートさせる。20㎜機関砲が閃くが、層流翼を翻し必滅の火箭から逃れた。2機の軌跡が交錯し、複雑な2重らせんの飛行機雲が空を伸びてゆき、曳光弾とともに目まぐるしく攻守が入れ替わる。

 再び後ろにつかれたヘクサーは、高度と方位が刻一刻と変わるローリングシザーズの中で虎視眈々と攻撃の機会をうかがいつつ、少しずつスロットルを緩めて速度を落としていく。度重なる緊急出力運転と戦闘によって、機体も体力も残弾も余裕がなくなり始めている。ちらりと時計を見るが、いつサンダースの戦略爆撃機が到達してもおかしくない。

 任務に従うならばペダソスを適当にあしらって爆撃機の攻撃に行くべきだが、機体性能的にも状況的にも不可能。今自分がサンダースに最大の打撃を与えられる手段はただ一つ、数年ぶりに再会し腕を上げた元相棒を叩き落す事。

 幸いにも、ペダソスは今のところ自分とのローリング・シザーズに付き合ってくれており、彼我の距離はじりじりと近づいてきている。

 

 「どうした?動きが鈍ってきてないか?」

 《どの口が言うんだ!前よりもブレイクのキレが鈍ってるぜ!》

 「何一つ鈍ってないさ」

 《なんだと?》

 

 後ろを振り返り彼我の距離を再び確認、P-51Dのバブルキャノピーの向こうに派手なペイントを施したヘルメットが一瞬見えて死角へと掻き消えていく。曳光弾の光が反対側のキャノピーを淡く照らし、翼のすぐ近くを赤熱した銃弾が通過していく。ここでもう一度逆に切り返すが、その動きは最初の頃より数段鈍い。

 

 《もらった!》

 

 ペダソスの勝利を確信したような声が届くか届かないかというタイミングでフラップDOWN、スロットルmin、ペダルを蹴飛ばし思い切り操縦桿を手前に引き寄せる。速度が急落したBf109がスナップロールを行った瞬間、背面状態の機体がガクんと落ち込み、攻撃を行うために加速したP-51Dの射線の下へ掻き消え、さらに機体の下方へと潜り込む。Bf109が背面状態から復帰する瞬間、機首の搭載されたMG151/20はオーバーシュートしたP-51Dの無防備な腹へと向けられていた。

 

 《チッ!》

 「落ちろ!」

 

 ガンと力任せに機体を操作したのか、銀色の機体が左へと跳ね上がる。しかし左右へ回避する以上、どちらか一方の翼は回避するのがワンテンポ遅れることは避けられず。性質の悪い道化師は最初からその逃れられない最悪のポイントを狙いすましていた。

 弾倉の残弾をすべて吐き出す勢いで機首の3門の銃砲が火を噴き、曳光弾の火箭がスローモーションのように伸びていく。白く発光する砲弾の軌跡が鞭のごとくしなり、ついには右旋回で火箭から逃れようとしたP-51Dの右翼の外側半分に着弾する。数度の爆発が黒煙と銀色の機体構成材をまき散らし、一瞬遅れてP-51Dの滑らかな右の層流翼が破断した。

 バランスを崩したペダソスのP-51Dがきりもみ回転をしながら高度を下げ、ヘクサーは即座に左へと翼を立てて旋回し距離を取ろうとする。

 翼は砕いた、あとは旋回降下して止めを刺すだけ、弾はまだある。1回ならば戦略爆撃機へ攻撃を…

 既に近くに迫っているサンダースの校章をつけた戦略爆撃機を探そうと切り立った空へ視線を走らせる。ヘクサー自身の焦りが作り出してしまった意識の間隙、それが、この戦闘で彼が犯した致命的かつ唯一の判断ミスだった。

 

 《まだまだぁ!》

 「なっ!?」

 

 無線に流れ込んできた聞こえるはずのない声に戦慄するのもつかの間、反射的に蹴飛ばしたペダルによって左90度バンクしたBf109の機首が下を向こうとした瞬間、機体が閃光と爆音とともに揺さぶられた。振動でにじむ視界の中で正面と右の風防の向こう側を無数の破片と赤熱した曳光弾が貫いていくのを辛うじて確認する。

 バランスを崩しきりもみ回転しようとする機体を無理やり立て直し、周囲を確認。風防の右を右半分のカバーが吹き飛んだがボンネットから漏れる白煙が流れ、優美なラインを形作っていた右主翼には無数の穴が穿たれてズタボロになっており、エルロンとスラットの一部が吹き飛び、残った部分も穴だらけだ。

 一つ舌打ちをして首を巡らせる、後方2000mほどで緩旋回を行って、こちらに機首を向けようとしている片翼を失ったP-51Dのズタズタになった主翼が、まだ決着はついていないとばかりにキラリと光を放つ。

 片や翼を半分もがれた機体、片やエンジンと翼をズタズタにされた機体。満身創痍と言える中で、2人のエースは相手の悪運の強さに感嘆しつつ、それでも勝つのは自分だと不敵な笑みを浮かべる。

 

 ――上等!

 

 何方ともなく呟き、つい十数分前までと同じように同心円状に旋回していた2機が下方でコルセアが爆散したのを機に再び機首を円の中心へと向けてヘッドオン。その速度は先ほどと比べるほどまでもなく落ちていたが、気迫は遜色ないどころかそれ以上。

 傷ついたエンジンが吠え、プロペラブレードが大気を切り裂き、主翼が軋む。照準器に移りこんだ戦闘機のシルエットが瞬きする暇もなく巨大化していく、墜ちようが墜とそうが、この一撃で全てが決まる。ヘルメットバイザの端には、搭載されたフライトコンピューターの飛行補助機能による表示が催促するかのように明滅している。

 

 ”SHOOT(撃て)

 

 傷ついた2機の鋼鉄の荒鷲を、赤熱した光の奔流が包み込む。

 

 

 

 

 




そろそろ黒森峰防空戦も大詰めですかね
次に叩くのは知波単か、そろそろ聖グロとも遊ぶか…
拠点回でまほさんや友人とのコミュを進めるのもいいかもしれませんね

さて、タイマン中の彼らは頭の片隅にぶん投げていますが
突っ込んでくるB-29をはじめとする無敵艦隊(ガチ)はどうしましょうか
ほおっておけば黒森峰の基地が更地になっちゃいますけどねぇ(暗黒微笑

??「行くぞ迎撃豚共、フライト時間だ」

では、また ノシ
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