ボーイズ&ルフトヴァッフェ~空の道化師~   作:Ocean501

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ドーモ、オーシャン501です

今回は動きのあまりない拠点回というか
いまいち影の薄いヒロインとのコミュ回?です
だらーっと読んでいただければ幸いです




推奨OP angela「Shangri-La」


Mission30 人機一体

「酷いものですな」

「サンダース戦略爆撃航空群の全力攻撃を受けたのだ、むしろこの程度の被害は僥倖と言える」

 

 ヴュルガー・コントロールの司令室中心に据え付けられた会議机上に、今回の黒森峰防空戦で受けた被害をまとめたホログラムが映し出されている。机に集った特務戦闘航空団を牛耳る将校(教師)達の反応は様々だった。少佐のように稼働可能部隊が半数を割り込む事態に眉を顰める者、栗林のように相手の攻撃の規模を考えればまだマシと考えるもの、そして。

 

「ま、どちらにせよ暫くは大きな行動を起こすことは難しいだろうネ」

 

 不景気な顔をしている人間が集う中、唯一楽し気な空気を醸し出しつつ紅茶に口をつける基地の主。なんであんたはそんなに楽しそうなんだという幾つかの視線が付きあさるが柳に風と受け流す。

 

「状況を整理しよう。アー、准将、よろしく」

「出撃待機中だった爆撃機、襲撃機はすべて地上撃破。再出撃可能なのは第1滑走路が復旧される1月半後です。出撃可能な部隊は防空戦に出撃していたメイヴ、カーミラ、グール、ズーク、ランヴァボン、ミンクス、クラウンですが、グール、ランヴァボン、ミンクスの損害がひどく、集成飛行隊を作成すれば別ですが戦力としてカウントはできません。メイヴ、カーミラ、ズークも損耗しており、定数を満たしているのはクラウン隊のみです」

 

 なるほど、と一つ頷きテーブルの上に投影されたリストを見やる。どう見ても戦闘に耐えられるはずもないズタズタの航空団、常識的な判断をするならば第1滑走路が修復されるまでの1月半程度はおとなしくして戦力の補充と再訓練を最優先にすべきだろう。

 しかし、初老の司令はそれを行うには少々早すぎると考えてもいた。

 

「攻勢作戦に参加できる機体は何機かね?」

「正気ですか?司令」

「正気な人間がこの部隊の司令を務められるとでも思っているのかネ?准将」

 

 ピクリ、と眉を動かして栗林の非難するような視線を受け止める。彼女の言いたいことは解る、戦闘能力の大半を失った部隊に回復の猶予を与えず出撃させることは論外と言っていい。強硬出撃の結果、まともな戦果は挙げられず、かすり傷程度だった部隊が致命傷を受けて帰ってくるのは珍しくない。

 

「少なくともメイヴ、カーミラのどちらかを基地防空に回すとすれば、ズーク隊、クラウン隊を合わせ16,7機が精いっぱいでしょう」

「爆撃機の迎撃にメイヴ、ズークは必要だろう、カーミラとクラウンを使う」

「そうなると、作戦に投入できる戦力は10機です」

 

 1個飛行隊の定数にも満たない数だ、戦闘機狩りならば問題ないだろうが攻勢作戦に使用できる戦力などでは決してない。そして、そもそもたった10機の戦力を一体どこへ送り込むつもりなのだろうかと、司令以外の出席者たちの頭の中に当然の疑問が持ち上がる。

 

「10機か、手ごろな数だネ」

「司令、いったい何をなさるおつもりで?」

「なぁに、ちょっと理想郷を観光してきてもらおうかと思ってネ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 コクピットの中からくしゃみをする音が聞こえ、鼻をすする音が続く。手元の雑誌に視線を落としていた彼女がコクピットの方へ視線を向けると、シートに背中を預けた幼馴染と目が合った。

 

「風邪か?」

「どこかで悪だくみに巻き込まれてるのかもな」

 

 肩をすくめると、再びキーボードを叩く小さな音が響き始める。ゴールデンウィークも終わりに近づく中、特務戦第3ハンガーは文字通り静まり返っていた。

 ジルウェット隊のスツーカ4機は滑走路破壊による地上撃破判定を受けて最低限の維持整備以外は触ることすら許されず、暇を持て余した部隊メンバー達が降ってわいた休暇を満喫することを選択したため寂しげにパレットの上に並んでいる。もう一つの同居部隊であるランヴァボン隊は、もともと6機あったBf110Gが2機になるほどの大損害――残った2機も穴だらけでぼろぼろ――を受けたうえ、補充と整備部品の供給が滞っておるため事実上の休業状態。

 唯一完全に稼働できるクラウン隊だけが、現在この第3ハンガーで作業を行っていた。

 

「ところで、こんなところで油を売っていていいのか?西住」

「大休止中だ。休み時間まで私が居たら、あまり意味がないだろうからな。それに今日は艦内演習場だ、歩いて2,3分で行ける」

 

 Bf109のボンネット上に座ったまほは手元の雑誌をさらに一枚めくる。週刊敵機撃墜(スプラッシュ・ワン)と言う空軍道の雑誌らしいが、普段こういったものにあまり目を通さない彼女にとっては新鮮だった。この雑誌は特に空軍道の戦闘機部隊の装備品やパイロットに焦点を当てているらしく、先日の黒森峰防空戦が特集として組まれていた。

 あの時、自分は熊本市内の実家から空に描かれた無数の飛行機雲の軌跡を追う事しかできなかったが、ここにきてようやくあの戦闘の詳しい経過や顛末を知ることが出来た。

 

「結局、黒森峰防空戦での勝者はどちらなんだ?」

「君はどう思う?」

 

「判断がつかないから聞いているんだ」と拗ねたように一つ鼻を鳴らす。

 撃墜された機体の数は黒森峰とサンダースではサンダースのほうが若干多く、キルレートもそれに準ずる。しかし、サンダースの資金力は補充整備能力を考えると、勝利と言うには疑問符が付く。戦闘目的に目を向けてみれば、サンダースは確かにヴュルガー・シャンツェを半壊せしめたが、それと引き換えに戦闘に投入した自慢の戦略爆撃航空群の9割、稼働状態の戦略爆撃機部隊の5割近くを失う大損害を被っており、黒森峰で最大の2基地に大型爆弾による手傷を与えることはかなわなかった。

 

「難しく考えすぎだ、引き分け、もとい痛み分けだよ。勝利者なんぞ存在しない、一番救われないパターンだ」

「空軍道は落とすか、落とされるか、もっとはっきりしたものだと思っていたが」

「ミクロな視点ならばその認識は間違ってないさ。個人個人での戦闘はまさしく空に残ったものが文句なしの勝者、翼を叩き割られて打ち上げ花火になったやつが敗者。全くもってその通り。しかし戦車道みたくフラッグ機が居るわけでもなく、全滅するまで戦うわけでもない。目標の達成度、損害比率、敵味方の補充能力とかを勘案して初めて勝者が決まる。そして、その結果はだいたい玉虫色になりがちだ。だから、正直なところ空軍道にとって勝利することはそこまで重要ではない」

「何?」

 

 博の言葉に、若干剣呑なまほの視線が突き刺さる。勝利を至上とする西住流の人間として、勝利を重要ではないと言い切る彼に条件反射的に不審な目を向けてしまう。とはいえ黒森峰戦車道の履修者であれば委縮してしまうような視線を受けても、コクピットの中でキーボードをたたき続けるパイロットは動じなかった。

 

「重要なのは最後まで負けないことだ。無理に勝とうとして戦力を消耗してしまえば、肝心な時に飛ばせるのは新参者のひよっこだけということになりかねない。要は決戦の最終日に指定された空域で飛んでいればいい、そこに必要なのは戦闘能力ではなく生存能力。最も多くの敵を潰した奴ではなく、最も多くのエースパイロットを屠った奴でもなく、生き残った奴が勝ちなんだよ」

 

「そんなものか」と納得したような、していないような微妙な表情を見せるまほに「そんなものだ」と軽く笑いかける。直後、ついと視線をそらされた事には納得がいかなかったが。

 

「黒森峰の道化師(ジョーカー)か、何はともあれ二つ名がついたことは喜ばしいな」

「おい、やめてくれ。てっつぁんの戯言を鵜呑みにするんじゃない、即座に忘れてその雑誌をごみ箱に突っ込め」

「そんなに恥ずかしがらなくてもいいじゃないか、ジョーカー」

 

 にやにやと普段では絶対にしないような表情でこちらを見てくる彼女にため息しか出てこない。手に持っている雑誌には見開きで黒森峰防空戦時におけるクラウン隊の戦果が乗せられており、中央にはフラップを卸して急旋回中の愛機とそれに追従するペダソスのP-51Dが映っている。高速ですれ違う2機を望遠レンズを利用して1枚の写真に収めた神業と言っていい一枚だが、文章のせいで台無しだ。

 

「13機単独撃墜、1機共同撃墜、撃破2機。しかも、撃破したのはバッカス・ナイツのトップエースだ。君一人で1個飛行中隊に相当するというのも嘘ではないだろう?」

「嘘が書いてないからなおさら性質が悪いんだよ。今までの情報統制はどこ行った」

「さすがに毎度毎度撃墜者があやふやなスコアが多すぎたんじゃないのか?対戦する相手方にも早期警戒機(審判役)はいるのだろう?」

「………今度から真っ先にAWACSを潰すか」

「ルール違反だ、馬鹿」

「じゃあAWACSの真上で別の機体を落として残骸をぶつけるか、これなら事故だ」

「…やるなよ?」

 

「出来ないよ」と笑う幼馴染だったが、恐ろしいことに実行したら成功させてしまいそうな気がしてしまう。それだけ彼の腕を信頼しているのか、それとも呆れているのか彼女自身にも判断がつかなかった。

 

「ところで、君は何をやっているんだ?」

「フライトコンピューターのシステムチェックと戦闘データ関連の収集状況の確認だ」

 

 ぱたんと雑誌を閉じたまほが前面風防に上体を預ける形でコクピットの中を覗き込む。その際に同年代の女子よりも確実に分厚い装甲が特殊防弾ガラスに押し付けられて形を変えるが、意識的に視線をずらしてスルーする。愛機ごと88㎜榴弾で木っ端みじんにされたくはない。あと防弾ガラスそこ代われ。

 閑話休題(煩悩退散)

 

「システムチェックはわかるが、戦闘データ関連の収集ってなんだ?」

「フライトコンピューターは何も飛行を補助するだけじゃない。コイツのおかげで俺たちみたいなガキでも十二分に戦闘機動が出来るほど航空機の操作は簡略化されたのは確かだが、初めからフライトアシストシステムが十全に動くというわけではない。まっさらな状態から学習させなければ使い物にならないんだよ」

「学習?プログラムをインストールしてアップデートすればいいんじゃないのか?」

 

 戦車道ではたまにシステムアップデートがあるが…と記憶の中から情報を引っ張り出すまほに、それとは少し桁が違うと苦笑する。

 

「戦車道のコンピュータは主に当たり判定のためのものだからそれでいいが、空軍道はそうはいかない。相手の機動に合わせて自分も機体をコントロールするが、その時の高度、速度、気温、湿度、風向、風速によって各動翼、補助翼をどう操作するかはその時にならないと決定出来ない。そして、そのパイロット独特の癖をコンピューターが学習しないまま戦闘を行うと、パイロットの判断は左急旋回だったとしてもコンピューターがパイロットがダイブを選択するだろうと間違って予測してしまえば、予想情報のキャンセル、再出力と隙が出来る」

「だから、コンピューターにパイロット独特の癖を学習させなければならない、か」

「空軍道の航空機にはすべて高性能なAIが搭載されている。戦闘中はパイロットの補助を行いながらデータを集積し、戦闘後に本部コンピューターに戦闘データを送りつつ過去の戦闘と照らし合わせパイロットの思考パターンを高精度にトレースできるように自己を組み替えていく。高度に最適化されたパイロットとフライトコンピューターはまさしく人機一体と言えるわけだ」

「そう……か」

 

 風防の上からコクピットの中を、寂しさの中にほんの少しの恐怖をにじませた表情で覗き込んでいる彼女に気づく。

 

「どうした?」

「いや、フライトコンピューターがその人物の思考を高精度にトレースしてしまえるということは、その人物の考えはすべてコンピューターにとってお見通しと言う事だろう?それじゃあ、まるで」

「まるで?」

「…何でもない、忘れてくれ。馬鹿な考えだ」

 

 ――まるでパイロットがコンピューターに支配されているようじゃないか。

 

 彼が妹と一緒になるのはいい、誰か別の女性と一緒になるというのもまだ耐えられる。しかし、コンピューターに考えをすべて把握され、支配されてしまうようになる未来など虫唾が走る。物言わぬ冷たい電子機器とプログラムコードの集合体に彼を()()()()など耐えられない。考えたくもない。

「変な奴だな」と苦笑する彼を見て、心の中に浮かんだ最悪最低の考えに蓋をして、恐ろしい考えに不安の触手が胸中でのたうち回るのも無視して精いっぱいの愛想笑いを浮かべる。

 あの時、実家の前で別れた時や昔のように頭でも撫でてもらえばこの言い知れない不安を拭い去れるのかも知れなかったが、そんな甘い期待はパイロット集合をかける放送によって文字通り断ち切られてしまった。

 

 

 

 

 

 翌日、完全に復旧した第2滑走路から再び大空に舞い上がったクラウン隊は何時ものように高度を上げることく緩やかに旋回しながら高度を下げていく。周りには先の防空戦で生き残った別の基地の戦闘機部隊が80機ほど続き、編隊を組みながら海面を目指す。

 彼らの進む先に待ち受けていたのは、数隻の護衛を伴った2隻の巨艦。

 

『こちら第1機動艦隊所属、ペーター・シュトラッサー。クラウン隊、着艦を許可する』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




イランところでアイデアロール成功しちゃったまほさん

??「君の様な勘のいいヒロインは嫌いだよ」

SAN値と言うよりも病み値が若干削れたような気がしないでもないですが
西住流だからダイジョーブダイジョーブ(白目

次からはお待ちかね?の皆さんもいる(居てくださいナシャス)かもしれませんが
洋上航空戦闘+対艦戦闘です。
まあ、黒森峰は攻撃機部隊が半壊してるので対艦攻撃は別の学校です
黒森峰学園助太刀致ス(下心マシマシ)

そろそろ大日本帝国海軍機にも光を当てませんと(建前
海面をねっとり舐めるように飛ぶ一式陸攻と九七艦攻書きたい(本音
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