ボーイズ&ルフトヴァッフェ~空の道化師~ 作:Ocean501
今回はブリーフィング回です。
敵が強すぎ?これでも弱体化しましたよ(Paradox感)
推奨OP angela「Shangri-La」
緩やかに降下したBf109が、その細い尾部をだだっ広い飛行甲板に擦らせたかと思うとつんのめるように前傾しそれまで維持していた運動エネルギーを一瞬で失った。甲板上に横に張られたアレスティングワイヤーからフックが外されると、扁平なスポッティングドーリーが主脚を掴んで、主翼を格納状態に移行させている機体を飛行甲板前方へと引っ張っていく。ドーリーにけん引された機体が安全柵よりも前方へと移動したことを確認し、再び衝突防止用ネットが甲板上へと立ち上がる。
その様子を、次の着艦を待つクラウン1は着艦準備に追われつつも視界の端にとらえていた。
『ペーター・シュトラッサーよりクラウン1。着艦を許可する』
「了解」と返信し機体を傾けてファイナルアプローチに入る。前方には白波を蹴立てて風上へと全力航行する33500tの鈍色の巨体。グラーフ・ツェッペリン級2番艦ペーター・シュトラッサー。
サンダースや知波単、泰南や聖グロリアーナには見劣りしてしまうが、空軍道に使用可能な空母を2隻保有している時点で空中給油機で遠征しなければならない他の高校からしてみれば垂涎の的だった。
スロットルを絞り対気速度を低下させつつ降下率を調整していく、フラップを着陸位置に、ギアDOWN。Bf109特有の頼りない主脚とともに、今回の作戦では欠かせないアレスティングフックも尾部から垂れ下がる。空軍道で使用可能な単発機は簡単な改造で着艦装備が取り付けられるようになっている。そのため本来ならば艦上機として運用出来ないBf109も空母へ着艦を行う必要最低限の装備を備えることが出来た。もっとも、翼面荷重など根本的な飛行特性は変わっていないのでコンピューターによるサポートがなければ事故が続出してしまうことは言うまでもない。
【Auto Landing System RDY】
「
機体の軸線を空母の進行方向へと合わせ、
【ALS Start/I have control】
「You have control」と誰にともなく呟きながら操縦桿を握る手を緩める。操縦翼面を流れる空気ではなくフライトコンピューターの判断によって、それまで自分が意のままに操っていた手綱がひとりでに動き出す。低速での着艦に適していないBf109を、吹きすさぶ海風や空母自体が引き起こす乱流をものともせずあらかじめ設定された経路を滑るように降下していく。ペーター・シュトラッサーも全速の35ktで航行しているが相対速度は失速ギリギリで進入したとしても100㎞/hを優に超える。
目減りした速度の中で降下率を維持するために液冷機特有の細くとがった機首が上を向き始め、それまで視界にとらえられていた飛行甲板は正面の風防から消え去る。いっぱいまで下ろされたフラップが湿気を含んで重たい海風を捕まえ、エルロンやエレベーターは機体を安定させるためにせわしなく働く。機体が飛行甲板の後端を飛び越えた瞬間、危うい綱渡りを続けていた機体の操縦桿が一気に引かれ機首がさらに上を向いたかと思うと強烈な衝撃とともに主脚と尾輪が甲板に叩きつけられる。
綺麗な三点着陸を決めたのもつかの間、3番目のアレスティングワイヤーに展開されたフックが引っ掛かり先ほど上から見下ろしていた機体と同じようにつんのめるようにして残った運動エネルギーを強引に奪い取る。ほんの数mで急停止した結果コクピットに座るヘクサーの肩に思い切りハーネスが食い込み、くぐもったうめき声がマスクから洩れる。
もともとは泰南にいたため空母の有用性は理解しているつもりだが、何度やってもこの”無理やり落っこちる感覚”には慣れないし、慣れようとも思わない。離陸も着陸も、もう少し余裕のある状況で行うのが彼の好みだった。ありていに言ってしまえば、彼は離着艦を前提とする空母による作戦行動が好きではなかったのだった。
痛みがジンジンと残る肩をさするパイロットを乗せたまま、スポッティングドーリーが道化師のエンブレムを身にまとった戦闘機を待機列へとけん引していく。その遥か後ろではクラウン隊の2番機が着艦を行おうと最終進入に入ったところだった。
「皆、よく集まってくれた」
ペーター・シュトラッサーの一角に設けられたブリーフィングルームにはこの空母に集った40人余りのパイロットが屯していた。ブリーフィングルームとはいえ、懐事情が決していいとは言えない黒森峰学園空軍道、それも水上部隊の艦内設備はお粗末と言ってよく、プロジェクターがつるされたそこそこの広さの部屋にパイプ椅子が並べられているだけだった。
部屋の照明が落とされ、年代物のプロジェクターから伸びた光の筋が正面の壁に周辺海域図が映し出され、横に立った男子生徒が口火を切る。その声に特務戦に所属するパイロットたちの多くが少し目を見開いた。
「あれ、スカイアイか。初めて見た」
ぽつりと隣に座っていたリヒターが言葉をこぼす。飛行中は基本的に管制機の指揮下に入って行動する関係上、彼の声は日に1度は耳にする。しかし、こうして実際に彼の姿を見るのは初めてだった。男子生徒としては長身に入る部類であり、細身のフレームの眼鏡と几帳面そうな外見も相まってやり手の銀行員のように見える。
「ペーター・シュトラッサー航空部隊の指揮を守屋司令の代理でとることになったスカイアイだ。管制機で乗り付けるわけにもいかんから、空母上からの指揮となるだろう。では、さっそく作戦説明に入る」
正面に投影された海図に青と黒の2色に分けられた4つの艦隊が映し出される。黒であらわされた艦隊には知波単、黒森峰の校章が、青で示された艦隊にはサンダースとBC自由の校章が表示されどこの陣営が集まったのか一瞬で判断できるようになっていた。
「今回は知波単との合同作戦だ、知波単からは第1航空戦隊の赤城、加賀。第2航空戦隊の蒼龍、飛龍が参加する。護衛艦として駆逐艦16隻、軽巡4隻が配置されている。参加する航空機数は戦闘機84機、攻撃機90機、爆撃機81機。合計で255機、我々も含めれば351機が投入機数となる」
「そりゃまた、豪勢なことだな」
後ろに座ったリーラ隊の一人が感嘆するような、呆れたような声を出す。知波単の一航戦、二航戦と言えば空軍道でも有数の精強さを誇る部隊であり、練度という観点であればサンダース以上と噂されることも多く、数々の伝説を作り上げてきた花形ともいえた。最近では戦車道の成績が芳しくないが、空軍道においては十分以上に強豪、古豪と言う評価を受けている。中核となる4隻の空母が全力出撃となるのは、円卓の事を考えればこれが決戦前の最後の出撃とみられる。
「質問、いいか?」
「バローン、発言を許可する」
薄暗い部屋の中で手が上がる。
「知波単の編成は理解した。が、我々の編成がなぜここまで偏っているかの説明が欲しい」
それはこの場所に集った誰もが考えていることだった。
黒森峰の空母2隻に収容された飛行隊にはある共通点があった。旗艦であるグラーフ・ツェッペリンに収容されたのは
この戦いはあくまでも空母航空戦であり、対空迎撃戦闘ではない。ヴュルガーシャンツェが壊滅したことにより特務戦闘航空団の攻撃機部隊は飛行禁止となっているが、アドラー・シャンツェの攻撃機、爆撃機はその多くが生き残っているはずだった。
もっともな問いを受けたスカイアイは「それはこの後説明する」と小さく苦笑し相対する敵の説明へと移った。味方艦隊の詳細を映し出していた画面が敵艦隊を映し出した瞬間、部屋のあちこちでうめき声が上がる。ヘクサーも思わず額に嫌な汗が浮かびそうになった。
「おい、皆そう嫌そうな顔をしないでくれ。……まあ気持ちはわからんでもないが」
ため息を吐きだしたスカイアイがレーザーポインタで画面を指し示す。手のひら大の機械から発射されたレーザーは画面に表示されているずんぐりとした空母へと着弾する。
「まずはBC自由学園だ。出撃した空母はベアルン、そしてサンダースからレンタルしたワスプの2隻、軽巡が2隻に駆逐艦が8隻と規模自体は
BC自由学園、もともとは2つの学校が統合した結果生じた学園であり、空軍道や戦車道で使用される兵器は大部分がフランス製兵器で構成されている。空軍道の規模は中程度で一部のパイロットは強豪クラスと呼ばれているが、全体的な成績でいえば決して良い成績とは言えない。とはいえ、スカイアイの言にもあったように空母ベアルンを保有し海上機動戦力を整備している数少ない学校の一つだった。艦載機の中で艦上攻撃機と爆撃機は空母専属であるが、戦闘機は陸上航空隊から派遣されて構成される特異な体系を持っていた。これは空母ベアルンがもともと機動部隊を持っていた自由高校の所属艦であり、陸上航空隊しか持たないBC学園と統合した際に、両校の協力の象徴としてあえて戦闘機部隊をBC学園から受け入れた経緯があった。
「さて、ここからが本題だがサンダースだ。正規空母4隻、軽巡8隻、駆逐艦24隻。稼働大型空母の3分の2を投入してこちらも本気の布陣と言えるだろう。予想される航空機数は360機前後、投入される航空機も後期型の高性能機がほとんどだろうな」
再びあちこちでうめき声が上がる。空軍道最強、ラスボス、レイドボスと言うイメージが定着しているサンダースの機動部隊に弱卒は皆無だ。大型空母6隻、軽空母2隻を保有し自前で海上航空戦の紅白試合が唯一行える化け物高校。配備される機体も大戦後期の高性能機が大多数を占め、艦載機パイロットと陸上機パイロットを完全に区別して訓練を行っており、黒森峰のように必要な時だけ空母を使用する学校の空軍道に比べ海上航空戦に一日の長がある。
そして、質もよければ量も一級品。一海戦に軽く300機オーバーの艦載機をたたきつけてくるのはサンダースくらいのものだ。
「獲物を探すのには苦労しなさそうだね」
「目を瞑って撃っても落とせそうだ」
小声で相棒と軽口をたたき合うが、道化師2人の顔には乾いた笑みが張り付いていた。単純計算で351対456、だいたい1.3倍の敵を相手にせねばならず、BC自由学園の機体を加味しても全体的な機体性能で劣り気味。黒森峰機動部隊に配置されたパイロットはエースぞろいだが、それはサンダースも同じだろう。どう甘く見積もっても
「戦闘はどちらかの陣営の艦隊が撤退するか、旗艦が沈むまで続く。勝敗を決定するのは主力艦、すなわち空母の撃沈数だ。空軍道では参加校数3校以上の自由合同戦で機動部隊を使用する場合、参加する空母の数は1校につき4隻以下、全体で同数でなければならないという規定がある。BC自由にワスプがいるのはその関係だろう、出来るだけ艦載機を稼ぎたいサンダースの横やりと考えるべきだ。戦闘機はBC自由所属だろうが、艦爆、艦攻は短期留学扱いのサンダース生徒だと思われる」
サンダースがよく使う手だ、空母の数が少ない学校に余剰空母と余剰艦攻、艦爆を運用させて全体戦力の増強を図り、戦力比を突き放す。搭載機数の多い米国製空母が1隻増えるだけで、空母の数は同数なのに艦載機の数に大きな開きが生ずる。そして、機動部隊同士の戦いで重要なのは空母の数ではなく運用される艦載機の数だ。空軍道の規定で空母の数に制限をかけているのは空母の撃沈数が勝敗に直接関わるからであり、両者の戦力を拮抗させる意図はけして大きくない。
「ただし、旗艦だけは3隻分としてカウントされるから注意しろ。つまり、先に旗艦を沈めた方が勝者となる。さて、諸君も気づいているようだが艦載機の数に100機以上の開きがある。正攻法で殴り合えばランチェスターの法則に従い擦りつぶされるのは此方だ」
「ならばどうする?」とバローン、言葉自体は問いかけであるがその口は不敵な笑みを作り、この先スカイアイの口から紡がれるシナリオを予想している様子だった。
「真面に戦わなければいい。そのための黒森峰であり、知波単学園だ。作戦の詳細を説明する前に、我々が目指すべき目標を周知しておこうと思う」
画面が切り替わると、先ほどまで映し出されていた敵の艦隊詳細図が1枚の写真に変わった。周囲に水柱が立ち上がり、艦尾から
「サンダース空軍道第11任務部隊旗艦、エセックス級航空母艦12番艦 SUS シャングリラ」
理想郷の名を持つ空母、それが今回の”敵”。
これがやりたかっただけだろシリーズ(推奨OP)
敵はサンダース空母×4+1とBC自由学園のベアルン
米国空母と言えばワスプだろJKというノリでフランスに突っ込まれた彼女
でも、甲板が広いおかげで離着艦はやりやすい模様
ベアルンが速度的な意味で完全にお荷物になってるのは内緒な!
Bf109が普通に離着艦してますがここは地球ではありません
惑星WarTunder的な摩訶不思議物理空間の星ですのであしからず
せ、戦車でスリップストリームする世界だから
これぐらいダイジョブダイジョブ(震え声
次からは航空決戦の序盤戦ですかね
前半は戦闘機、後半は攻撃機の視点になる予定
さあ、日本機はもちろんフランス機もちょろっと出すゾ
ではまた