ボーイズ&ルフトヴァッフェ~空の道化師~   作:Ocean501

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ドーモ、オーシャン501です

今回からは空母決戦を兼ねた
夏の知波単、サンダース海軍機祭り
軍艦もあるよ☆彡

タイトルであっ(察し)ってなる人は
よく訓練された軍オタ(偏見

そしてやらかしたネタパイロット第X弾
だって、あれのパイロットって言ったら
あの人しか出てこねぇっすよバカヤロウコノヤロウ


推奨OP angela「Shangri-La」



Mission32 午前10時22分

「君は今回の戦いをどう見る?」

 

 今まさに搭載した戦闘機の発艦作業が行われている空母ペーター・シュトラッサーの艦橋で、この艦の名目上の主からの唐突な質問に「は?」と彼らしくない間抜けな声が漏れる。冷静沈着と言う言葉が似合う、空の目(スカイアイ)の名を持つ少年の意外な一面を見ることになった白髪頭の教師は柔和な笑みを作る。

 

「なぁに、仕事がなくて暇な年寄りの戯言だ。世間話と思ってくれればいい。君から見て、黒森峰の、いや特務戦の意図はどこにあると思う?」

 

 黒森峰で数少ない空母の責任者としてこの場にいる大佐の階級章を身に着けた男、下川武志。担当は古文であり、解りやすいと生徒からの評判はそれなりに高い。黒森峰出身であり空軍道を履修していたが、その動機は戦闘機に乗るためでなく空母に乗るためだったという噂が存在する。

 基本的にAIで制御される空母の艦長職は、迫りくる航空機を相手に空母をマニュアル制御にして自ら舵を取らない限り多くの場合空軍道履修者の引率、監督が主な仕事であった。

 

「特務戦ですか」

 

 下川が黒森峰と言わずにあえて特務戦と呼んだことに違和感を覚える。そういえば、この戦いは知波単がサンダースに持ち掛け、サンダースが受諾したことで生じたある種の決闘と呼んでいい戦いだが、それを言い出したのは黒森峰の守屋中将といううわさ話レベルの不確定情報を耳にしたことがあった。あの時は出撃準備に忙しく内容を吟味する余裕はなかったが、今こうして考えてみると疑問の種が徐々に成長していく。

 セオリー通りに事を運ぶならば、大打撃を受けた航空戦力は出撃を差し控え防戦に移行して戦力の再編を図るのが最優先だ。しかし、今自分たちはこうして虎の子の空母2隻とともに黒森峰の精鋭パイロットを乗せてサンダースへ殴り込もうとしている。

 単純に考えるならば、仇討に目がくらんで後先考えず敵を土俵に引きずり出したといえなくもないが、あの司令がそんな刹那的な理由で部隊を動かす人間ではないことはよくわかっている。理由を考えようとするが、絶対的な情報が不足しているため考えが纏らない。

 

「サンダースの海上航空戦力を撃破、飛行を妨害し円卓での戦闘を有利に運ぶためでしょうか。特務戦の狙いは空母と言うよりも、それに搭載されている高い練度の艦載機部隊。この戦いで撃墜されて戦死判定を受けたパイロットは6月下旬まで飛行禁止です。円卓は7月末、例年通りならば6月末から戦力温存の為に対外試合は極端に少なくなりますから、この戦いで撃墜されたパイロットの多くは次の実戦が決戦の日になります。模擬戦と実践では得られる戦訓の量が桁違いですし、5月、6月あたりでの1月のブランクは致命傷になるのではないでしょうか」

「なるほど、いいセンをいってるな」

 

 満足そうに2,3頷くが、「ま、60点と言ったところか」と随分辛口な評価を下した。

 

「スカイアイ、君の言うことは正しいが重要なことを1つ忘れている。あの男(守屋)は君ほど優しくないぞ?…まあ、特務戦の親玉が何を考えているのかはそのうち嫌でもわかってくる。今の段階で一つ言えることがあるとすれば」

 

 言葉を切り、下川艦橋の防弾ガラス越しに眼下の飛行甲板から圧搾空気の圧力で弾き飛ばされるBf109を見やる。空に放り投げられた戦闘機が昇っていく先には先に発艦を終えた若干数の機体が編隊を組んで周回飛行を続けていた。

 

「暖かいコーヒーを入れる準備をしておこう。パイロットスーツに防寒・防水機能がついているとはいえ、海水浴にはまだまだ冷たい時期だ」

 

 手元のマグカップの黒い液体から、微かに湯気が立ち上っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おっ」

 

 コクピットの中で思わずそんな言葉をこぼす。視線の先、バンクによって傾けられた濃緑色の主翼の先には眼下を飛びすぎようとする1郡の艦載機の群れ。

 先頭を進む機体の主翼に描かれたエンブレムを彼は見逃さない。赤と青で構成された6角形、左右に一つずつ入れられたBとCのアルファベット。間違いなく今回の獲物の一つ、BC自由学園の攻撃隊だ。その数はおおよそ50機程度。対してこちらは加賀航空隊と飛龍航空隊、合わせて42機。

 普段の攻撃隊としての編成であったならば、眼下を通り過ぎる敵の攻撃機に襲い掛かる愚行なぞ選ばない。しかし、今回は事情が異なる。自分の周囲に翼を連ねるのはどれもが身軽な戦闘機であり、魚雷や爆弾を抱いた機体は存在しない。

 正直言って相手にならない。攻撃隊の爆撃機のSB2C、攻撃機のTBDは論外としてそれを護衛するのはH-75(P-36ホーク)とM.S.406。対してこちらの主力は零戦ではあるがその多くが後期型の52型、そして自分の愛機はその上を行く。

 

「斗蔵1番、敵機発見!ワレ突撃ス!」

 

 スロットルを開き機体をバンクさせて急降下、誉二一型発動機が雄たけびを上げ4枚羽のプロペラが濃緑色の機体に速度を上乗せしていく。敵機に向かって間髪入れずに急降下した自分に続き、我先にと味方航空機が急降下を始める。1機の戦闘機にけん引された40機あまりの海鷲が、ようやく自分たちに気づいたらしいBC自由学園攻撃隊へと綿雲の浮かぶ空を駆けおりていく。

 攻撃隊の戦闘を進んでいたM.S.406の一団が機首を上げて逆落としに突っ込んでくる知波単航空隊を迎撃しようとするが何もかもが遅すぎた。照準器にピッチアップを行って此方に機首を向けようとするM.S.406の角ばった機首が目いっぱい広がり、此方を見て硬直しているらしいパイロットの姿を風防越しに確認できるほど接近、そこで始めてトリガーを握りこんだ。

 腹に響く音とともに主翼が震え、両翼に2挺ずつ搭載された九九式二号二〇粍機銃が咆哮する。銃身から吐き出された20㎜破砕榴弾はM.S.406の機首部分に殺到し一瞬でイスパノ・スイザ12Y31液冷エンジンを文字通り粉砕した。金属部品をまき散らし首を落とされたM.S.406と主翼が触れ合うかと思うほどの距離ですれ違い、爆煙を切り裂いた機体が再び高みへと駆けのぼっていく。

 

「敵機撃墜!」

 

 格下とはいえ上場のスタートを切ることが出来た斗蔵1番が喜色を含んだ声を上げる。この機の無線機が故障していなければ、自分がこの海戦における初戦果を飾ったと見ていいだろう。操縦桿を傾け垂直上昇から背面飛行、頭上では零戦52型と22型がSB2C(ヘルダイバー)TBD(デバステーター)に襲い掛かり一方的に刈り取っていく。ふらふらと回避機動を取るSB2Cが至近距離からの20㎜弾を受けて爆散し、寄り集まって貧弱なコンバットボックスを形成しているTBDは、外側の機体から順番に削り取るように食われていく。この分では全滅も時間の問題だ。

 このまま観戦していても勝敗は変わらないだろうが、本命が待ち構えているのに前座で手こずってはいられない。そしてなにより、そんな作戦は性に合わなかった。

 

「俺も混ぜろバカヤロウ!」

《げっ、デストロイヤー!?》

 

 操縦桿を一気に引き付けて降下体制、機首がBC自由学園攻撃隊の処刑場となっている空域に向いたかと思うと新緑の塗装に尾部に黄色のストライプを入れた紫電二一型(紫電改)が、弾かれた矢のように味方の背後を取ろうと旋回していたH-75へと突入する。基本的に知波単の射撃距離はほかの学園よりも格段に近いが、その知波単の中でもさらに極端に敵機に接近して20㎜弾を叩き込む戦闘スタイルをとるものは限られていた。

 常に最前線に身を置き、立ちふさがる者は何であっても誰であっても粉砕して活路を開く。敵機は20㎜で叩き伏せ、実戦だろうが模擬戦だろうが容赦なく愛機を酷使し破壊する。

 故に付いたのが知波単の破壊者(デストロイヤー)

 彼に狙われたH-75は元は米軍機だとは思えないほど身軽に機体を翻して射線から逃れようとするが、その程度で壊し屋からは逃れられない。紫電改に搭載された自動空戦フラップが展開され、日本機としては大柄な部類に入る機体はその体に似合わぬ運動性でクルリと反転しH-75の後ろを取る。2000馬力級エンジンが紫電改を押し出し、H-75の小柄な期待が照準器からはみ出るほど接近する。

 

「てぇっ!」

《ガッ!?》

 

 小柄な軽戦闘機にとって20㎜機関銃4挺の暴力は過酷に過ぎた。1斉射でH-75の尾部が消し飛び、きりもみしながら落ちていくのをラフな敬礼で見送る。次なる獲物を探しつつ旋回上昇。愛機の進行方向上に飛び出したM.S.406がこちらに気づいたのか、慌ててマイナスG旋回をかけてダイブに移る。すでに戦闘の趨勢が決まりかけている以上、見逃してやる義理等どこにもなかった。

 ペダルを蹴飛ばしスナップロール、180度ロールの後にピッチアップ、スロットルを全開にしてパワーダイブ。紫電改にほぼ全てのスペックで劣っているM.S.406は必死に速度を得ようとするが、それをあざ笑うかのように深緑の海鷲が迫る。

 

雑魚(テメェら)にかまってる暇はねぇんだよ!落ちろバカヤロウ!」

 

 三度20㎜機関銃が火を噴き、主翼を叩き割られたM.S.406が急降下の負荷に耐えられず部品をまき散らして空中分解。脱落した破片にぶつけて機体を壊すような間抜けな真似を彼がするはずもなく、撃墜を確認した瞬間には操縦桿を引いて上昇コースを取っている。

 

『空戦止め、全機集合』

 

 気が付けば飛んでいるのは味方の機体ばかり、加賀航空隊隊長機の無線に従い翼を翻した友軍機が集まり最初の時のように編隊を組み始める。ざっと眺めただけだが、被弾した機体はあるものの撃墜された機体はなさそうだ。自分以外の斗蔵隊6機も全機健在。まだまだ戦えるどころか消化不良もいいところだ。

 

『旗艦より入電があった、サンダースの攻撃を受けているらしい』

『救援に行くのか?どうやってもこの攻撃には間に合わんぞ』

『飛龍航空隊は予定通りこのまま進出する。BCの直掩隊を料理しておかないと()()の道を作れないからな。赤城航空隊は艦隊の救援に向かう。急ぐぞ、ミッドウェーの再現なんぞ御免だからな』

 

 幾人かのパイロットが苦笑をかみ殺す。確かに、いまここでミッドウェーが再演されたなら知波単機動部隊が完全再建されるのは何時になるのかわかったものじゃない。飛龍の零戦隊はBC自由学園攻撃隊が進んできた方角へ針路をとり、赤城の紫電改と零戦は元来た航路を引き返す。空は青く、天は高い。ふと腕時計を見ると、時刻は午前10時20分を回ろうとしていた。

 

 

 

 

 

 3基搭載された六五口径九八式一〇糎高角砲(長10センチ砲)が砲身を振り回し、我先にと砲口から火炎の舌を伸ばして硝煙の吐息をつく。数㎞の空間を走り抜けた10㎝砲弾の時限信管が次々に作動すると迫りくるTBF(アヴェンジャー)の前面に黒煙の華を6つ開かせ、雷撃コースに乗るために高度を下げ続けている敵機の行く手を阻もうとする。九四式高射装置からはじき出された測距結果より修正を行いつつ、限界ギリギリの速度で連射を継続し、瑠璃色の雷撃機へ損傷を蓄積させていく。

 秋月の前後で輪形陣を形作る夕雲、巻雲も主砲の12.7㎝連装砲を咆哮させ、さらに内側で空母の傍を航行する阿賀野が15㎝連装砲を時折撃ち放つ。1個航空戦隊に付き軽巡洋艦2隻、駆逐艦8隻が護衛として割り当てられており、知波単では軽巡4隻と空母4隻を中心に駆逐艦が輪形陣を形作っていた。秋月型8隻、夕雲型8隻、阿賀野型4隻が4隻の空母をぐるりと取り囲み、低空から侵入しようとする復讐者に対し必死の抵抗を続けていた。

 そこに襲い掛かっているのはエンタープライズとヨークタウンの第1次攻撃隊48機、上空直掩として残っていた蒼龍航空隊21機は30機の雷撃機を処理する前に18機の戦闘機を相手にしなければならなかった。数では勝っているとはいえ、相手は地獄猫(F6Fヘルキャット)海賊(F4Uコルセア)。零戦52型ならまだしも22型では相手が悪く、知波単の練度をもってしても苦戦は必至だった。

 

『戦果1!F6F撃墜!我白山3番!』

『十勝6番ケツにつかれてるぞ!右へよけろ!』

《相手はジークだ!一撃離脱に専念しろ!間違っても格闘戦なんぞに付き合うなよ!》

『くそっ、硬ぇ!20㎜当てないとダメか!』

 

 F6Fの突撃を紙一重で躱し、離脱しようとする敵機へお返しとばかりに20㎜弾を撃ち込んで主翼を叩き割る零戦52型がいたかと思えば、3機ほどのコルセアに追い掛け回されて穴だらけになりつつある零戦22型が味方を求めてのたうち回る。運よく射線にとらえたF4Uへ発砲するが、命中弾が7,7㎜弾では頑丈な米軍機に手傷を負わせられない。

 サンダースの方も、あの手この手で有利な土俵(格闘戦)へ引きずり込もうとする零戦隊に苦戦してしまっていた。これが中高度以上であるならば分が悪くなれば得意のダイブで急降下性能に劣る零戦を突き放し仕切りなおすことが出来る。しかし、雷撃隊に襲い掛かる零戦に攻撃を仕掛けた結果、必然的に低高度に引きずり込まれてしまった。エンジンパワーで勝っている分、一撃離脱を封じられたわけではないが、やりにくいことこの上ない。この瞬間にも不用意に旋回しようとしたF4Uが、寒気すら覚えさせるほどの急旋回で回り込んだ22型によってパイロットを撃ち抜かれて撃墜判定をもらってしまっている。

 サンダース直掩隊の一瞬のスキを突き、1機の零戦がすり抜けて3機のアヴェンジャーへと突入していく。

 

《メッツ4、5、6!1機抜けたぞ!》

《野郎!来るなら来やがれ!》

 

 トライアングルを組み高度100m付近を飛行するアヴェンジャーは、周囲に高角砲弾の黒い華を引き連れながら空母目指して一直線に輪形陣へと進んでいく。上空から駆けおりてきた零戦にTBFの防御機銃の死角から攻撃する時間的猶予は存在せず、後ろ上方からの攻撃を行うしかない。AI制御の護衛艦は友軍機がまとわりついていようがお構いなしに発砲を続け、曳光弾の火箭が4機を包み込んでいく。

 アヴェンジャーの後部旋回機銃座が鎌首をもたげ、3挺のM2ブローニングが防御射撃を開始。知波単のパイロットはラダーを操作して機体を横滑りさせ、敵の偏差射撃を狂わせながら必中距離へと踏み込んでいく。突然、トライアングルの左側を飛行していたTBFの右主翼が木っ端みじんに吹き飛び、バランスを崩して海面に叩きつけられる。運悪く10㎝砲弾の直撃を受けてしまい翼を失った機体は水しぶきと部品をまき散らしながら海面をバウンドし波間に消えた。それとほぼ同時にM2ブローニングの火箭が零戦を絡めとり、左主翼に火弾痕が穿たれ構造材がめくれ上がりガクンと膝をつくように機体が沈み込む。

 

《始末したぞ!》

《よぉし!突っ込むぞ!舌噛むなよ相棒!》

《メッツ5!下だ!》

《ゑ?》

《なんぞ?》

『ダァレが進んで良いっつったぁ?!』

 

 メッツ6の機銃手の悲鳴じみた警告は最速であったが意味はなかった。左主翼に致命傷を受けて落ちたかに思われた零戦は、僅かな距離を急降下して速度を稼ぎ海面ギリギリで機首上げ。撃墜と思い込んだ結果意識をそらした雷撃機の腹へ、至近距離から生き残っていた右翼の20㎜機銃を抉りこんだ。TBFの白く寸胴な腹面で無数の破砕榴弾が炸裂し機体構造をズタズタに切り裂いていく。さらに1発がコクピット直下の燃料タンクを直撃し、復讐者の名を持つ雷撃機は業火に炙られ飛行能力を喪失する。そして、最後の意地を見せた零戦も当てずっぽうで放たれたメッツ5の後方下部機銃座にエンジンを穿たれて今度こそ撃墜判定を受け沈黙する。

 唯一残ったメッツ6は僚機のすべてを失いながらも前進を止めない。時折炸裂した高角砲弾の破片が機体を傷つけ、25㎜機関砲弾が胴体に穴を穿ち、構造材がめくれ上がる。機体の破片をバラまき、満身創痍になりながらも執念で飛び続ける。目の前に迫るのは知波単学園第1航空戦隊所属、正規空母”加賀”。

 

 

 

 

 

 

 

「左舷より雷撃機進入!」

「面舵一杯!左前進一杯!右後進一杯!」

 

 悲鳴のような報告とともにテレグラフが鳴り響き、雷撃の射線から逸らそうと3万トンの巨体が身じろぎし始める。何時もは何の気なしに行っている転舵と言う行為が、この状況ではひどく緩慢なように思えてしまう。飛行甲板の左舷側に搭載された対空火器が迫りくる雷撃機へ向けて次々と曳光弾を打ち込んでいくがなかなか有効弾が出ない。

 

「敵機魚雷投下!…敵機撃墜!撃墜です!」

 

 ついに力尽きたTBFが部品をまき散らしながら爆散し、見張り員の役割を割り当てられた生徒が思わず喜色を含んだ声を出すが、ひきつった顔は戻っていない。双眼鏡の向こうでは投下された魚雷の航跡がくっきりと浮かび加賀へと向かってくる光景が広がっている。巨大艦が傾き、徐々に羅針盤が回り始める。迫りくる魚雷は経験や資料で得た知識の5倍は早く、傾いでいく母艦の動きは床を蹴りつけたくなるほどに遅い。艦橋の空気が数十秒凍り付き、本人たちにとっては数時間にも感じられた時間は加賀の艦首ギリギリを魚雷が掠めて右舷側へ抜けたことでようやく過ぎ去る。

 

「か、回避成功…」

 

 右舷側を見張っていた生徒の報告でようやく艦橋の時間が動き出す。加賀艦長はざっと周囲を確認、見る限り今にも加賀に向けて魚雷を投下しようとする雷撃機はいないようだ。蒼龍の戦闘機隊は性能と数の差を技量で補い何とか防空戦を維持している、周囲に配置された護衛艦群は風雲が赤城に向かった魚雷に体当たりをして撃沈判定を受けた以外損害は無い。母艦航空隊の練習相手として幾度となく海面を這うような知波単艦攻隊の雷撃を掻い潜ってきたAIの操艦技術は伊達ではない。

 作戦には若干の遅延が見られるが、サンダースの艦爆隊がまだ姿を見せていないことを除けば予定通りの戦闘と言えた。1秒前までは。

 

「敵機頂上!ドーントレスです!」

「10時方向!敵航空隊第2派接近!数…100以上!」

 

 再び艦橋が凍り付く。上空を警戒するモニターに目をやると雲間から瑠璃色の機体が4機、顔を覗かせ、主翼を翻してこちらに狙いを定めている。10時方向に目を向けてみれば、空に浮かぶ白い雲を背景に無数の航空機がこちらをめがけて進撃していた。

 蒼龍の直掩隊は低空に展開した雷撃機と戦闘機に掛かり切りで手が出せず、そもそも100機以上の敵が相手では手も足も出ない。

 異変に気が付いた護衛艦が、差し迫った脅威に対空砲を振り上げて空母直上の雲へと狙いをつけようとする。それよりも早く、4機のドーントレスがダイブブレーキを開いて機首を下へ巡らせた。

 艦長の視界の端にモニターの隅に表示された時刻が映る。

 

 午前10時22分

 

 約6分の惨劇が太平洋戦争の流れを決定的に変え、帝国海軍の崩壊が始まった魔の時間。雲間から現れた急降下爆撃機(ドーントレス)を制止するものはもはや存在しない。Slow But Deadly(鈍重だが致命的)の渾名が示す通り、腹に抱いた1000lb(454㎏)爆弾は帝国海軍の多くの艦を漁礁へと変えた。縋るようにAIのコンソールへと目を向けた見張り員の目に飛び込んできたのは【耐衝撃姿勢】と赤く明滅する警告表示、それは歴戦のAIが回避不能と白旗を上げた瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『で、誰が進んで良いなんて言った?』

 

 聞きなれない声が艦橋に響き、直上で急降下体制を取っていた4機のドーントレスは瞬きをする間に戦闘能力を失った。

 1機は両翼を打ち砕かれバランスを崩し真っ逆さまに落ちていく、1機は大口径弾の直撃を受けたのか胴体が拉げるように瞑れて空中分解、1機は燃料タンクを撃ち抜かれたのか火だるまとなり、最後の1機はコクピットを撃ち抜かれてピンクのスモークを引きながら離脱していく。

 

『此方黒森峰空軍道所属、111st-TFS、インディゴ1。これより貴艦隊を援護する』

 

 先ほどとは別の声が艦橋に響き、続いて歓声が上がる。雲間から次々と姿を現したのは知波単では馴染みの薄い液冷機の群れ。尾翼に鉄十字(アイアンクロス)を描いた黒森峰学園空軍道の80機の荒鷲。戦場に躍り出た黒森峰航空隊は、迫りくる第2派へ向けて飛行機雲を引きながら猛然と加速する。

 ややあって、最初に加賀の艦橋に響いた聞きなれない声が第2ラウンドの口火を切った。

 

『クラウン1、エンゲージ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ミッドウェーの再現なんてなかったイイネ?

零戦と一緒に甲板に並ぶ紫電改、惑星WTでは日常です(白目
そして私の彼はバカヤロウ、ゲスト参戦なので次の登場は未定
てか、名前すら決まってませんwww

紫電改に追い掛け回されるフランス機カワイソス
フランス好きの皆さんすみませんm(__)m

次は今回出番がなかったヘクサー君とか黒森峰のメンツに
ドンパチしてもらいましょうかねぇ

では、また ノシ
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