ボーイズ&ルフトヴァッフェ~空の道化師~   作:Ocean501

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ドーモ、オーシャン501です

更新に間が空いてしまい申し訳ございません(焼き土下座
暑さで溶けていたり
土曜日が消滅したり
冒涜的な邪神合体したリゾート地で同人誌書いたり
別のサイト様でオリジナル小説に手を出したりしていました

それはともかくエースコンバット7の発売日も決まりましたし
今から来年が楽しみですね
いまさらセンチュリーシリーズのF-104とか最高かよ
夢のロック岩崎ごっこが捗る(瞳孔全開


Mission37 残党達の夜

「5番のネジが足りないぞ!箱ごと持ってこい!」

「そっとだ、そっと下ろせ」

「おい!ここに置いといたギアボックスどこ行った!?」

「MG17の銃身ってまだあったよな?」

「替えの操縦桿がない?よぉし、損傷機からかっぱらってこい!」

「99式2号銃の予備なんぞあるか!ここは黒森峰艦だぞ!?」

「おい!そのボルトじゃない!気圧差でキャノピーがぶっ飛ぶぞ!」

 

 黒森峰艦隊に所属する空母、ペーターシュトラッサーの格納庫は戦場から舞い戻った機体が収容された直後から最前線へと様変わりしていた。運用人数の少人数化や艦体そのものの再現度をある程度割り切ることで、元となった艦とは比べ物にならないほどの艦内容積を持っていた。浮いた空間をすべて格納庫の容積に回した空母の腹の中は広く、小型とはいえ基地内と同じようなパレット上で機体の整備が出来るほどだった。本来ならばドイツ生まれの戦闘機がずらりと並ぶ格納庫は、いまや傷ついた日独の軍用機がひしめき合っており、その周りを整備科の生徒や整備ドローンが部品を抱えて走り回っている。

 

「にしても、ヘクサーがここまでしてやられるとは思わなかった」

「相手はあの剣闘士だ、文句なしの快挙と言えると思うが?」

「僕からしたら、響がここまでぼろぼろになって帰ってくるのは異常事態だよ、十分ね」

 

 格納庫の端のほうに駐機された2機のBf109F-4のうち、隊長機を修繕していたハルが肩をすくめる。リヒターの機体を整備していた色黒の青年は片眉を上げて後ろの幼馴染へ肩越しに視線を向けた。彼はもともとはズーク隊の5番機、マイスターの整備長だったが、先の戦闘でマイスターが重傷判定を受けて暫く飛行禁止となってしまったため、黒森峰機動艦隊の応援として乗艦していた。ちなみに、当の本人は今頃降ってわいた休日を、後輩とともに甘酸っぱく過ごしているのだろうと彼は考えていたりする。

 

「黒森峰の鬼札(ジョーカー)か、噂には聞いていたがそこまでとはな」

「んん?信じていなかったのかい?」

「まさか。だが、実感が伴っていた訳じゃなかったが」

 

 今度こそ振り返り、格納庫のLEDに照らされた灰色の戦闘機を見やる。機体の数か所には弾痕が穿たれ、主翼の下につるされていたはずの15m㎜機関銃のガンポッドは無残に破壊されてしまい、今は取り外されている。とはいえ、ガンポッド装着位置周辺に突き刺さった細かな破片がその激戦の残り香を色濃く漂わせていた。

 

「フリッツはいい機体だ、速度性能と旋回性能のバランスが良く取り回しがしやすい。だが、ベアキャット相手に善戦どころか撃墜させてしまうほどの性能は持っていない。違うか?ハル」

「んー、まあその通りなんだけどね。片や基礎設計が戦前の機体を改造して仕上げた戦闘機、片や戦争によるフィードバックを存分に受けた戦闘機。比べるのが間違いってもんだろう」

「機体性能では完全に劣っている。響の戦闘データを見たが開戦時に特に優位に立っていたというわけではない、むしろ奇襲を受けた側だ。となると、ほかに勝てる要素と言えば」

「パイロットの腕しかないってわけだ」

 

 エンジン整備の為に開けていたアクセスハッチを閉じて一つ息を吐き、破壊された15m機関砲を収納したコンテナへと腰掛ける。コンテナの上に置いておいた缶コーヒーはすでにぬるくなってしまっていた。

 

「まあ、パイロット以外にも要因はあるかもだけど」

 

「どういうことだ?」と眉をひそめた親友にコンテナの上に転がしておいたPDAを手渡す。先ほどまでは響が取得した戦闘データ、戦闘詳報が表示されていた画面はすでに切り替わり、別のデータが羅列されていた。

 

「何?的中率88,66%だと?」

「パイロットの技量が高いとフライトコンピューターの未来予測精度は悪くなるのは空軍道では常識だ。平均的なパイロットはエースパイロットと呼ばれる連中に比べてとる行動が限られる。単純な旋回、増速、急降下。空戦というコンマ1秒以下の世界で、目の前にどれ程の手段が並び、どれを選べるのかはそのパイロット個人のセンスがものを言う。つまり敵機と自機のパラメーターによる選択肢の決定幅が狭いのさ」

「解っている。その点、エースパイロットはその選択肢がべらぼうに多い、場合によってはコンピューターが考え付かない選択しさえ実行に移し、そのたびにフライトコンピューターは再教育を迫られ、せっかく構築したアルゴリズムを見直す必要に迫られる。結果、エースパイロットのフライトコンピューターの未来行動予測の的中率は7割も行けばいい方だ。それが、9割近いなどありえん」

「しかし、現にデータは出ている。整備士(僕ら)エンジニア(僕ら)である限り、フライトコンピューター()のデータは絶対さ」

 

 納得がいかないという風に渋面を創った色黒の青年がPDAを操作し多角的にデータを検証する。調べれば調べるほど、ハルの言葉が裏付けされてしまい、響がヘクサーの行動をかなりの部分で正確に予測しているという結論に達してしまう。

 

「……なあ、ハル。君はどう思うね。もし仮に、仮にだが的中率が100%となったときには」

「そんなもの、君も想像がついているんじゃないのかい?的中率100%と言うことはつまり、パイロット(ヘクサー)フライトコンピュータ()は空戦上では同じものとなるだろう。極論、ヘクサーがブラックアウトしたとしても、響はクラウン1として振舞える。この機体を何方が操っているかなどは些細な問題になるのさ」

「いや、問題しかないだろう。それは」

「そうだね、そりゃそうだ。でもさ、見てみたいとは思わないかい?人工知能を搭載したフライトコンピューターが生まれてもうずいぶんと経つけど、いまだにパイロットの思考を完全にトレースしきったコンピューターはない。米軍でさえ90%前後だ。的中率100%。それは(パイロット)身体(フライトコンピュータ)が完全に一致した、人機一体の極致だ」

「………ぞっとしないね」

 

 どこか興奮気味に話す親友に、少し引いてしまう。基本的に優秀で気弱な人間ではあるが、未知の領域が目の前に現れるとどうにも抑えが効きづらくなってしまう。

 とは言うものの、ハルの言う人機一体の極致が一体どのようなものなのか、興味がそそられないと言えば嘘になる。その状態でオートマニューバモードを起動すれば、理論上は自分の考えた通りに空を舞うことが可能だ。それこそ、人類が追い求めた”自由に空を駆ける”と言う夢の一つの答えではないのだろうか。

 思考の隙間をつくように浮上した思いを頭の中で数度転がすが、そのような贅沢は予備部品の山を運んできた整備ドローンの呼び出し音によって中断させられてしまう。

 

「ま、さしあたってはとっととクラウン隊の整備を終わらせるとしようか」

「……そうだな。ええい、航空決戦をやらかすと決まって残業なのはどうにかならんものか」

「帰ったらパッとどこか食べに行くのはどうだい?」

「それもいいが、そろそろ顔を見せないと妹がへそを曲げるぞ?」

 

「ゲッ…」とカエルがつぶれたような情けない声が親友から洩れ、苦笑してしまう。去年から我が親愛なる妹と交際しているというのに、この親友はいまいち女心というものを理解しきれていないらしい。妹がどちらかと言えば焼きもち焼きな点もあるが、同じ学園艦だというのに2週間程顔も見せないというのは弁護のしようがなかった。

 

「連絡はまめに取り合っているんだけどなぁ。やっぱ駄目かぁ」

「毎日会えとは言わんが、それなりの頻度で顔を見せるぐらいはしてやるといい。ああ見えて、そういった方面の自己評価は低いからな。浮気を疑われれば大ごとだぞ」

 

「黒森峰が撃沈してもあり得ないよ、それ」とゲンナリした顔で肩を落とし、整備ドローンの運んできた部品に手を駆けるハル。色黒の青年――逸見はやれやれと首を振って次の整備項目へと取り掛かった。

 

 

 

 

 

 格納庫が修羅場となっているころ、デッキを抜けた先にある飛行甲板は閑散としていた。昼間の激戦が嘘のように、広大な飛行甲板にはスクランブル待機の4機のBf109が並んでいる以外に航空機は見当たらない。戦闘が始まってから、幸運にも1発の対空砲弾を放つことがなかった両舷の対空砲は彫像のように夜空を向いたまま月明かりに照らされた薄い影を甲板へと落としている。

 灯火管制が引かれた黒森峰艦隊だったが、満月の光によって照らし出され闇に紛れ込むことが出来ておらず、ペーターシュトラッサーのすぐ横を航行する巡洋艦の姿がはっきりと見て取れる。

 そんな風景を眺めながら思い起こしていたのは昼間の戦闘だった。

 自分の戦闘機動に問題はないはずだ。フリッツでベアキャットを、それもエースパイロットを落としたのだ。もし、自分があの場でしくじっていたとするならば、この艦の格納庫に響は存在せず自分は今頃黒森峰行きの飛行艇で惰眠を貪っていただろう。しかし…

 

 《勝ったぞ!》

 

 あの時の、剣闘士の最後の無線が頭蓋に響く。ノイズ交じりの、自分と同い年ぐらいであろう青年の声。勝負には勝ち、戦いで負けることがこんなにも胸にしこりを残すなど思ってもみなかった。

 どこかで慢心があったのかもしれない。戦いに次ぐ戦い、無数の敵機を叩き落し、エースと呼ばれるパイロットを幾人と叩き落し、ついには渾名までついた。高校2年生の空軍道履修者としては恵まれすぎと言えるだろう。自分の与り知らぬ場所で敵機が続けていた努力を、トリガー一つで無に変え、生き残った者が勝利者であるとされる空軍道ではあるが。最後まで生き残り、母艦に無事に戻ってこれたうえでここまでの敗北感を味わうのは珍しい。

 胸の奥に沸いた何とも言えない不快感を押し流す効果を期待して目を閉じ、周囲の音に耳をすます。うねりが艦体に当たって砕ける音、艦首が海を切り裂く音、腹に響く巨大空母を推進させるエンジンの音、そして背後にある艦内へ続くハッチが開き、誰かがこちらへ歩み寄ってくる音。

 

 

「眠れないのか?ヘクサー」

 

 とある高角砲を背もたれ代わりに夜空を見上げていたヘクサーに黒い影が差した。その顔には見覚えがあり、その声に聞覚えもあった。脳内の人物フォルダから一瞬でサーチされた情報に対し、舌打ちをしそうになるのを寸でのところでこらえる。

 

「なんでアンタがここにいるんだよ」

「えぇ~そう固いこと言わないでよヘクサーちゃん」

 

 いつも通りヘラヘラとした笑みを浮かべた加太は、断りもなく彼の隣にドカッと腰を下ろした。

 

「リヒターはどうしたんだ?」

「寝てるよ。俺と別れた後、ベアキャット3機に追い掛け回されたらしい。最後はインディゴの連中におっかぶせて離脱したようだが、流石に骨が折れたようだ」

「よくもまあ、それで被弾極小で帰ってきたもんだ。借り物のMG151/15ガンポッドぶっ壊したやつとは大違いだな」

「喧しい。それ以上の戦果は挙げたはずだ」

 

 痛いところを突かれて思わず目をそらす。剣闘士を撃墜できたから言い訳は立つものの、これで落とせていなかったら司令はともかく我らが准将閣下の有難いお言葉(説教)は確定だっただろう。

 

「で、何の用だ?煽りに来たのなら今すぐ部屋に戻って寝ろ、もしくはここから飛び込んで黒森峰まで遠泳だ」

「金槌のおっさんにそれは酷くない?」

 

 遠泳10㎞やってケロッとしてた半魚人が戯言をのたまうのを半目で睨む。本当に、この不良中年記者は何をしにここまで来たのだろうか?

 

「まあ、大したことじゃない。例の作戦、お前さんはどう思う?」

 

 彼の言う”作戦”とは、先ほどブリーフィングルームでスカイアイから通達されたものの事だろう。乾坤一擲と言えば聞こえはいいが、投機的と言い換えることもできる作戦。しかし、今の知波単と黒森峰が打てる手の中では最も勝算が高いのは事実だった。

 

「上手くやれば今の状況からでも挽回できるいい手だとは思う。知波単の戦力を過剰に擦りつぶす事に目をつぶれば」

「空母決戦なんてそんなものさ、陸上航空戦よりも多くの機材が失われる。知波単の戦力がゴリゴリ削れるのは確定しているが、ある意味一番危険なのはお前らかもだぞ?」

「危険じゃない戦闘なんてどこにもないだろう?流れ弾のラッキーヒットをもらえば、どんなエースパイロットだろうが落ちる。試行回数が多かろうが、少なかろうが致命の一撃を受けなければどうとでもなるさ。泰南で無理やりアクロバット飛行させてる最中、あんたがそういったのを忘れたのか?」

「ハハハ、そんなことも言ったっけなぁ」

 

 ごまかすように、それともそれすら芝居なのかわからないがポリポリと後頭部をかく。

 

「残存稼働機数は戦闘機68機、爆撃機11機、攻撃機4機。全部合わせて81機。大してサンダースはエセックス級とヨークタウン級が2隻、機体の数はざっくり見積もって3倍ってところか。四神の加護を請うてそれがうまくいったとしても、母艦が落ちれば意味はない」

「解ってる。明日の戦闘の要は恐らく黒森峰(俺たち)だ」

「それが解ってるんなら結構、じゃあせいぜい気張ってくれや」

 

「余裕があれば艦の近くで1機落としてくれ、そっちのほうが写真が撮りやすいからな」と無理難題を吹っ掛け、笑いながら艦内へと消えていった。

 一体何だったんだと首をひねりたくなりながら、意識を昼間の戦闘の反省へと持っていこうとするが、うまくいかなかった。

 確かに、敗北感は残っている。しかし、今ではそれはそこまで重要でもない様に想えてしまえた。そんな事よりも、重要なことが明日にはあると再認識したからかもしれない。

 過ぎてしまったことは変えられない、気分的な問題とは言え敗北してしまった事実は変えられない。ならば、いまだ不確定な(変えられる)未来をより良い方向に捻じ曲げる努力をしたほうが有意義に決まっている。

 結論は思ったよりも単純で、すぐ近くにあった。わずかな時間で意識を切り替えられたことに我ながら単純だと呆れたくなるが、これはこれで良しと言うことにしておこう。明日はおそらく、日が昇ってからケリがつくまで戦い通しだ。こんなところで黄昏ている場合ではない。

 そうと決まれば、今日はとっとと寝てしまおうと立ち上がる。周囲を見渡すと空母を取り囲む日独の護衛艦が陣形を組んで夜の海を疾走している。その数は昼間の黒森峰機動艦隊を取り囲んでいた時よりも倍増しているが、増えた分は漏れなく敗残兵だ。というよりも、この艦隊にいる艦の1隻からパイロットの1人に至るまで須らく昼間の戦闘で粉砕された黒森峰・知波単連合艦隊の残党だ。

 

「残党を守護する道化、か……。まあいい、突っ込んでくる奴は片っ端から叩き落してやるさ」

 

 後に残ったのは、空に浮かぶ月を照準にとらえた対空砲だけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ということで
次の戦闘で一応空母機動部隊の航空決戦編は終了です
あんまり引っ張ってもあれですし、作中時間でも夏が近いですし
そろそろ件の円卓航空戦の下準備でも始めましょうかねぇ

なお、更新はいつものように超不定期更新な模様
惑星WTで爆撃機解体したり、人類救ったり、
小説書いたりしながらお待ち頂けると幸いです

では、また ノシ
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