ボーイズ&ルフトヴァッフェ~空の道化師~ 作:Ocean501
今回でようやく出撃。
エスコン的な部隊間通信が再現できていればいいのですが…
普通の制服であったためロッカーで真新しい灰色のパイロットスーツに着替え、細い道を走り抜けて格納庫へと急ぐ。スピーカーからは戦況報告がひっきりなしに流れ、時折ヴュルガーコントロールからの指示が飛んでいる。
ハンガーへ入ると、
主翼を駆けあがって半ば飛び込むようにパイロットシートへ収まり機器をチェック。ヘルメットをかぶりバイザーを下げ酸素マスクを装着。ハルも反対側から身をノリだしてコクピット内の機器のチェックやコンソールの最終チェックを終える。無線のスイッチをON。
「ハル、聞こえるか?」
『感度良好!無線に異常なしだ。いきなりの実戦だが大丈夫かい?』
直ぐ近くに顔があるのに会話は通信機越し、彼は機外の通信プラグに差し込んだインカムを通して、自分はヘルメットの通信機で会話を行う。
「そっちこそ、いきなりの実戦で機体は大丈夫なのか?」
『言っただろ?何時でも飛べるようにしてあるってさ。弾薬は
「何とかしてみるさ、ありがとう」
警報が鳴った後、ガコンと少々大きな衝撃が走りパレットが中央通路から立ち上がったアームに固定される。それと同時にパレット端についていた黄色い回転等が輝き、周辺に注意を促した。もうすぐパレットが支柱から離れる。退避しないとこのまま滑走路まで輸送されることになってしまう。本音を言えばもう少しチェックを済ませたいハルだったが、こんなところでもたもたしている状況ではない事を正しく認識していた。
『僕はここまでだ、良いニュースを期待している。
機外のジャックから通信プラグを抜き取り翼から降りてパレットを固定していた支柱の足場へ。既に通信はつながらないため椎原改めヘクサーはラフに敬礼することで返答する。スライド式――安全のため横開き式ではない――のキャノピーが電動で閉まり、ロック。パレットが旋回し中央レールに乗せられリフトへ向かって進む。再び軽い振動の後、パレットの橋に取り付けられた青色回転灯が光り出して、エレベーターシャフトを上昇していく。通信機からコール音、地上管制からの呼び出しだ。
『
「こちらクラウン1」
『対爆ブンカ―に到着した後、誘導路A2より滑走路31Lに進入、離陸許可を待ってください』
「了解」
正面のエレベーターシャフトの壁が下へと過ぎ去り、対爆ブンカ―の口の中から滑走路が見える。主脚を保持していたスポッティングドーリーが自動で離れた事を確認し、エンジンスタート。格納庫内で整備中以外は加熱された油をエンジン内に循環させているため暖機運転は必要なく、機首に取り付けられたDB601Aが身震いしプロペラを回し始める。若干の時間をおいてスロットルを少し開き、機体を前進させ対爆ブンカ―から出る。ラダーを操作して機首を誘導路へ向けてタキシング、滑走路からは先に出て行ったランヴァボン6が轟音と共に離陸していく。自分の後に続く機体はない、どうやら滑走路31Lから離陸するのはこの機体が最後のようだ。
『スカイアイよりランヴァボン・リーダー。方位350、高度4000につけ、護衛はカスパー隊が追い払う』
『ランヴァボン・リーダー了解!各機聞いたな!?護衛は気にせず突っ込め!いいか?女王バチに睨まれたくなけりゃ格闘戦なんて考えるなよ!』
『カッツェ2!チェックシックス!』
『ふざけんな!なんでこんなところにグリスピがいやがるんだ!』
『無駄口叩いてないで逃げろ!右だ!スターボード!』
『ロト隊が来たぞ!こっちはもう大丈夫だ!』
『こちらプルート6!残弾ゼロ!俺が囮になるから尻についた奴を打て!』
『マートレット撃墜!やったぞ!』
『グッキル!グッキル!』
『メテオール・リーダーより各機!何度も言うがロケットの燃料は少ない、無駄遣いするなよ。突撃!』
『畜生!エンジン停止!墜落する!』
『どわぁっ?!』
『ブラウ3がランカスターにFOX4!何やってんだあのバカ!』
開きっ放しの通信回線からは味方部隊の通信が駄々洩れになっている。大規模な空戦のようで統制の取れている部隊もあれば個々の自由戦闘で乱戦になっている部隊もいるらしい。グリスピなどと言う
滑走路に到着し、各動翼の動きをチェック。
『タワーよりクラウン1、ランウェイ・クリア。離陸を許可する』
「了解した」
『これが初陣だったな、気負い過ぎてFOX4なんざしてくれるなよ?』
「その時は思いっきり笑ってくれ」
『はっは!そうさせてもらう。離陸した後はスカイアイの指揮下に入ってくれ』
フラップDOWN、スロットルをゆっくりと開き、ブレーキを解除。軽い機体に取り付けられたエンジンが咆哮し強烈なカウンタートルクを発生させる。エルロンとラダーでトルクを慎重に打ち消しつつ、3t程度の小柄な機体は滑走路を滑り、ぐんぐん加速していく。速度が乗ると後部が持ち上がり、今までフロントノーズによって隠されていた前方視界が開け、一瞬後にはふわりと宙に浮いて居る。ギアUP、フラップUP、スロットルを限界まで開くとDB601Aの騒音がコクピットに一段と大きく響き、3枚羽のプロペラで撹拌された突風が蒼空へと機体を運んで行く。
『タワーよりクラウン1、高度制限を解除する。グッドラック!』
首を巡らせると北西、つまり艦の左舷側前方で幾つもの黒煙と飛行機雲が絡み合っているのが確認できる。そして、学園艦のちょうど真上を一機のHe177が浮かんでいたが、どうにも様子がおかしい。その違和感の正体は、本来なら無いはずの巨大な円盤型のレーダーを背中に背負っている為だった。
『こちら空中管制機スカイアイ、クラウン1応答せよ』
彼こそ、空軍道で主に審判役として参加する空中管制機だった。審判役と言っても、相手側の空中管制機を妨害しないならば空中管制を行って味方機を誘導することは認められており、空軍道が兵器以外は最新と呼ばれる所以の一つだった。
「こちらクラウン1、どこを手伝えばいい?」
『南西から第2波の爆撃隊が接近している、7防空の増援が来るまで足止めしてくれ。っと、クラウン1、君は僚機を欠いているな?』
「ああ、急な転校だったからな」
『なら…ああ、リヒター、キミも迷子か。それならクラウン1についてくれ』
『了解』
第2基地から上がってきたらしいBf109Eが滑るように横に並ぶ。機体には何も描かれていない。如何やら、彼がスカイアイに”迷子”扱いされたリヒターらしい。
『君がクラウン1だね、じゃあ僕はクラウン2だ。どうにも方向音痴でね、君についていくよ、ヘクサー』
「スカイアイが言うには、俺たちは迷子らしいぞ、リヒター」
『そいつは困った。迷子らしく聖グロへ殴り込みでもかけるかい?』
『何を無駄話しているんだ。敵は方位200、高度3000で接近中、爆撃機の数は8、護衛は4機だ。無理やり落とさなくてかまわん、引っ掻き回せ』
「クラウン・リーダー、了解」
機首を巡らせて方位200を塞ぐような位置へ旋回上昇。雲の量はそれほど多くないが無視できる量でもない。コンソールをチェック、スクランブルの為全力運転で上昇しているが、コンソールのメーターを見る限り、DB601Aは設計通りの出力をたたき出している。油圧、混合気圧、回転数正常、
『ヘクサー、君の機体に20㎜は積んであるかい?』
「いや、7.92㎜が4丁だ。そっちは?」
『同じくE-1型だ、重爆相手にぶつける機体じゃないよ』
首を巡らせてリヒターの機体を確認する、塗装は若干異なるが各部の特徴は自分の乗っている機体と一致していた。搭載したMG17は発射速度が高く、分間に1100ないし1200発の7.92×57㎜モーゼル弾を吐き出す。戦闘機に掃射すれば瞬く間に機体全体をハチの巣に出来るだろうが、図体が大きい重爆撃機を相手取るには徹甲弾の他に20㎜クラスの榴弾が欲しい所だった。
「同感だが、何もB-29を落とせと言われているわけじゃない、やり様はある。別に、あれを全部落としても構わんのだろう?」
『死亡フラグじゃないのかい?それは』
バカな話を交わしつつ、高度は既に4000m。機体が軽いBf109の上昇能力は高く、あっという間に高度を上げていく。首を伸ばして周囲を確認、幾つか白い雲が浮かびまるで島の様だ。そんな白い群島の間を縫うように飛行する一団が雲の隙間からちらりと見えた。4機の小型機を梅雨払いに2つのダイヤモンド編隊を組んで、堂々と飛行する双発機の姿をヘクサーの目は見逃さなかった。
「見えた、1時方向、雲海の下。高度はおよそ3000、あれは…ウェリントンか。護衛機はハリケーン」
『ランカスターじゃなくてよかった』
広い主翼の先で雲を切り裂きながら現れたのは聖グロリアーナのエンブレムを描いた双発の爆撃機。ヴィッカース ウェリントンMk.Ic、ウェリントンの中でも旧式な部類で、防御機銃は7.7㎜機銃が連装の物が機首と機尾に1基ずつ、単装が両側に1つ。防弾装備は無きに等しいが、その竹籠のように編んだフレームに布を張り付けるという構造上、命中弾は素通りすることが多く”機体は”被弾に強い。しかし、半面搭乗員は死にやすい為パイロットキルの多い機種であった。速度も遅く、戦闘機にまとわりつかれれば貧弱な防御火器に頼るほかない、しかし、爆弾搭載量は2tと双発爆撃機としては十分以上の搭載能力を持っている。
第2次世界大戦中では初期のイギリス空軍爆撃機部隊の中核となり、アブロ ランカスターが登場した後も爆撃任務に就いた。しかし、機体の旧式化は否めず、大戦後期には損害の多さから爆撃任務から外される。しかし、その後は洋上哨戒機として活躍し、
完全に油断しているのか、ウェリントンの上空500mを先行して飛ぶ4機のハリケーンMk.1がこちらへ向かってくるような素振りはない。
《コヨーテ1よりトマホーク1。敵機は見えない》
《トマホーク1よりコヨーテ1、その眼が節穴じゃない事を祈るぜ》
空軍道特有の混線が極端に起こりやすい無線にマスクの下の顔をしかめる。これでは真面に打ち合わせも出来やしない。翼を軽く振って増速し、背の低い雲の裏に回る。クラウン2はこちらの指示を理解したようで黙ってついてきてくれた。小高い山のようになった雲の表面を上昇していく、Bf109の機体の下には”士”型の影とそれを取り巻く虹の輪が出現する。各々の位置関係を考えれば、この雲の山を登り切る頃に目の前を獲物が横切るはずだ。
雲を登り切り機体を傾けて下方を確認。予想通り、絶好の位置。目の前、1200m下方を横切ろうとするウェリントン8機の無防備な背中が小さく見える、先行する護衛機に気づかれる前にスロットル全開。ペダルを蹴飛ばしてラダーを操作、機首を下に向けて降下を始める。ここまで来れば無線封鎖も何もない。始まるのは墜とすか墜とされるかの空戦、相手は12機こっちは2機。数の上では不利だが、位置取りは完全にこちらが有利。この先信じられるのは自分の目と腕と直観だけ。
「招いても居ない客にはお帰り願おう。クラウン1、エンゲージ!」
『生き残るぞ、ヘクサー!クラウン2、エンゲージ!』
そして、伝説の幕が上がる。
出撃するとは言ったが戦闘するとは(Tiny Tim直撃
という事で、今回の空中管制機は空目さんです
なお、この日は誕生日ではなかった模様(´・ω・`)
主人公の相棒はシャムロ…もといリヒターさん
ドイツ語で判事と言う意味です
航続距離の短いグリスピが洋上侵攻してますが
まあ、タンカーに改造されたランカスターあたりから
給油♂されたんでしょうそうでしょう
グリスピに追っかけられたカッツェ2はイスパノさんとブローニングさんに
風通しを良くしてもらったそうです。やったね(目逸らし