ボーイズ&ルフトヴァッフェ~空の道化師~ 作:Ocean501
第6話にしてようやく主人公が初戦闘
物理的におかしくないか?とツッコミが入るかもしれませんがそこは其れ
惑星WarTunderとエスコン世界の法則が都合よく入り乱れた空なので
こまけぇことはいいんだよ!精神でお読みくださいorz
「招いても居ない客にはお帰り願おう。クラウン1、エンゲージ!」
『生き残るぞ、ヘクサー!クラウン2、エンゲージ!』
無線封鎖を解除、自らを奮い立たせるように交戦を宣言し空を駆けおりていく。気が付いたウェリントンの何機かが回転砲塔を作動させるがここは火器の死角であり、そもそも対応が遅すぎる。相対速度数百Km/hの世界では、1秒の油断、0.1秒の操作の遅れが致命傷に至る。ラダーと操縦桿で針路を微調整、目標は戦闘をのんびり飛んでいる隊長機らしき機体、そのコクピット。
自らを切り割こうとにじり寄る曳光弾の火箭を置き去りにし、目標めがけて突っ込んでいく。正面の照準器に入りきらないほど接近し、トリガーを握りこむ。機首上面と両翼に備えられた4丁の
『グッキル!クラウン1』
ヘルメットにスカイアイの喜色を含んだ声が響く。如何やら、狙い通りパイロットキルが決まったらしい。
《なぁっ!?て、敵か?!》
《トマホーク・リーダーがやられた!》
《こちらトマホーク5!1番エンジンをやられた!ああ、火が…》
ダイブによって変換した運動エネルギーを、もう一度高度に変換し再上昇、ラダーを軽く踏み込み進行方向をずらす。すぐ横を7.7㎜機銃の曳光弾が過ぎ去っていく。機速が十分に落ちたことと防御機銃の射程外へ出たことを確認し、フラップDOWN、急旋回。再攻撃をかける、流石に敵爆撃機の機銃座もこちらを認識しているため奇襲とはいかない。だからと言って攻撃を躊躇う理由にはならず、射線をずらしつつ突入を開始。
《来るぞ!撃て!撃て!撃てぇぇぇぇ!》
《トマホーク2より全機、編隊を密に!》
《護衛機は何やってる?!》
相変わらず混線し続けている無線からは敵パイロットの動揺が駄々洩れになっている。正面に見えたウェリントンの機首へ発砲、今度は上昇せずそのまま下方へと離脱する。パイロットに戦死判定を受けたトマホーク1は既に両翼からピンクのスモークを出して高度を下げ反転に入っている。
《トマホーク2がやられた!またコクピットだ!落ちるぞ!》
《トマホーク5!2番もやられた!畜生!》
『クラウン2、敵機の撃墜を確認!いいぞ、その調子だ!』
ダイブしている機体をスプリットSの要領で反転させ、さらなる運動エネルギーを得つつ上昇へと転じる。前方上空には両翼の発動機から煙を吹きつつ落ちていくウェリントンの姿。そして、さらに上方にはこちらへ向かって急降下を駆ける4機のハリケーン――後で確認したところシーハリケーンMk.1Bだった――。2機ずつの編隊に別れ、自分とリヒターを狙う積りらしい。ヘッドオン、体勢は不利。
《落ちろ!》
混線した無線から敵パイロットの怒りの声が響くと同時にハリケーンの両翼が瞬く。片翼に4丁ずつ、合計8丁の7.7㎜機銃で武装したハリケーンの弾幕は先ほど自分の機体が吐き出した数の2倍、2機合わせて4倍にもなる。しかし、ヘクサーはマスクの下で笑みを浮かべつつ操縦桿を思い切り引く。とたん、ヘクサーのBf109は弾かれるよう機首を上げて小さくバレルロール。頭上、手が届きそうなほど近い空間を曳光弾の火箭が貫き、コクピットを淡く照らす。270度ほど回転したところで機首を引いて射線をバレルロールで形作った管の中心付近へ、其処をちょうど駆け下りて行たハリケーンが照準器へと引き寄せられるように収まっていく。
発砲。十数発の7.92㎜曳光弾がハリケーンのロールス・ロイス マーリンエンジン Mk.Ⅱを破壊し、真っ黒な黒煙が機体を覆いつくす。
《がぁっ!?エンジンが!》
《隊長!?》
《冗談だろ!?》
そのまますれ違い上昇を続ける、恐らくだがあのハリケーンはもう使い物にならない。体勢を立て直し水平飛行、ウェリントンはまだすぐそばを飛んでいる。爆撃を諦めていないのか、その足は鈍い。リヒターのBf109もこちらの右翼側後方へピタリと付く、機体に被弾痕はない。
『ヘクサー、下から上がってくる。2機だ』
「ジョンブル魂の旺盛な奴だ」
『如何する?』
「悪戯に高度を失った機体がどうなるか教えてやろう。君は爆撃機をやってくれ」
『了解!』
増速し機首を上げる、後ろを振り返ると護衛対象と共に僚機を落とされた2機のハリケーンが死に物狂いで上昇してくる。完全に頭に血が上っているらしく爆撃機を落としに行ったリヒターは見えていないようだ。これ幸いと上昇を続ける、下方からエンジンパワーで無理やり垂直上昇してきたハリケーンと高空から余裕をもって垂直に上昇するBf109、限界は直ぐに訪れる。ラダーを蹴っ飛ばして翼端を軸に旋回、ハンマーヘッドターン。スロットルを開いてダイブ。すぐ目の前には速度を失って失速し無防備な背中を見せるハリケーン。
「じゃあな」
《うぁ、あああああああああああああああああああああ!》
容赦なく斉射、無数の7.92㎜弾がコクピットを、エンジンを、主翼を、補助翼を撃ち抜きついには主翼がバキリと折れて錐もみしながら落ちていく。数瞬の後にキャノピーが吹き飛び射出座席のロケットモーターが白い筋を描いた。
次の1機はまだ冷静だったのか形勢不利とみてダイブを駆けている。しかし、こちらの機首は真下を向いており、追撃態勢。失速寸前でマイナスG旋回をかけて機首を下へ向けようとしている間抜けでは間に合わない。ハリケーンのスマートな機体尾部が照準器一杯に広がる、相手は最期の抵抗とばかりに左へ無理やりロールを駆けるが、まだ速度の乗っていない機体に無理な機動をさせても答えてはくれない。
緩慢なロールをかけてて射線からズレようとする機体をこちらも同じ方向にロールして捕捉。真後ろから撃つ格好になるため被弾面積は狭いが、致命傷になる部分は多い。トリガーを引き絞り機銃掃射、バチバチと敵機の表面で無数の火花が散り機体後部や主翼に万遍なく風穴が穿たれる。右主翼のエルロンが弾け、ついでに昇降舵も操縦装置ごと粉砕。最早空飛ぶ棺桶となったハリケーンは両翼からピンクのスモークを焚いて落ちていく。
《ご、護衛機が全滅した!》
《何なんだこいつら!》
《トマホーク7!右だ!》
『隙あり!』
《燃料タンクに引火!消火急げ!うわっ?!》
リヒターの一撃で燃料タンクが炎上したウェリントンが巨大な火球を出現させ、バラバラになって落ちていく。それでも乗員ブロックからはキチンと人数分の射出座席が吐き出されていることを見るに、空軍道の安全性は高いのだろう。僅かな時間に爆撃機を半数失い、護衛機も全滅させられた爆撃機部隊は混乱の極みにあった。
《護衛機は!?護衛機はどこで何やってるんだ!?》
《そんなもんもう居ねぇよ!!》
《作戦は失敗だ!爆弾を放棄して撤退しよう!》
《やられっぱなしで帰れるか!ぶつけてでも爆撃してやる!》
《ぶつける前に花火になっちまうよ!》
先ほどまではそれなりに隊形を維持していたが、今は只4機が寄り添って飛んでいるだけのコンバットボックスとはとても言えない惨状になってしまっている。こんな状態の
吊り上げによって得られた高度を速度に変換しつつ増速、ウェリントンの機銃の死角となる腹側へ潜り込み、下から一気に突き上げる。射角外な事を悟りつつも、最後の抵抗とばかりに放たれる機銃の弾幕を頭上に見上げつつ、ラダーで若干機首を滑らせて発砲。両方のエンジンとその間の主翼に万遍なく風穴が穿たれ2機の発動機が黒煙を吹き出し、片方の発動機からは火の手が上がる。
《ああっ!トマホーク4が落ちる!》
《トマホーク4より各機!爆弾を捨てて退避しろ!繰り返す!爆弾を捨てて》
其処まで言った時、火の手が燃料タンクに回りトマホーク4の左翼が弾け飛ぶ。オレンジ色の破片が火を引きながら四散していく様は花火のように見え無くもない。トマホーク4の爆発による爆炎を隠れ蓑にして、リヒターは高空へと離脱する。
《全機退避だ!逃げろ!》
《爆弾倉開け!全弾投棄急げ!》
《げっ!?こっち来んな!》
不用意に上昇するリヒターに腹を見せてしまったウェリントンが、無防備な腹側から機銃掃射を受けてボロボロになっていくが、爆発も火災も起こらなかった。運よく、重要機器に被弾せず旋回を終えたウェリントンだったが、今度はヘクサーに襲われて機首に機銃掃射を受ける。上下からの時間差攻撃になすすべもなく、ボロボロになったウェリントンは両翼からスモークを焚いて高度を下げて行く。他の2機は爆弾を投棄して雲の中へバラバラに突入していく。追いかけるのは容易だが、攻撃能力を失った敵機に構う必要はない。
『スカイアイより、クラウン隊。よくやってくれた、期待以上だ!』
「そいつはどうも。まだ残弾はあるから、別の空域への援護が可能だ。リヒターはどうだ?」
『こっちも、後3分の1ってところだ。もう少しなら戦える』
『いや、聖グロリアーナの攻撃隊は撤退した。航空機の被害はあるが、基地自体に被害はない』
その通信を聞いてほっと胸をなでおろす。爆撃機を追いかけ回している好きに本丸を攻撃されれば元も子もない。
『しかし、悪いニュースもある。うちの攻撃隊も聖グロリアーナの防空隊に阻まれ満足な成果を上げられなかったようだ』
『初戦は痛み分けってことか』リヒターがポツリとこぼす。春先の攻防ではどこの学校も十分な機体があり、入念な準備の元攻め込むので大規模な航空戦が起きやすく戦果に比べて消耗も酷い。今回はその典型例だった。
『クラウン隊、ミルキー2から燃料を補給して帰還する攻撃隊のエスコートについてくれ。ミルキー2は方位320、高度3500、そこから20㎞の空域だ』
「クラウン1、了解」
『クラウン2、了解』
翼を翻してミルキー2の滞空するランデブーポイントへと向かう。先ほどまで曳光弾が飛び交っていた戦場が嘘のように、白い雲の周りには清涼な風が吹き渡っていた。
『こいつはひどいな』
ミルキー2から燃料を受け取り、スカイアイの指示した空域で滞空していたクラウン隊の目の前に飛び込んで来たのは、ボロボロになった攻撃隊の航空機達だった。被弾痕の無い機体は戦闘機に偏り、爆撃機は多くの機体が何らかの損傷を受けていた。エンジンから黒煙を噴いているのはまだいい方で、中には背面が隙間なくハチの巣になった機体や片方のエンジンが止まり、フェザリングしたプロペラが力なく回っている機体、ふらふらと蛇行しながらなんとか高度を保っている機体など死屍累々と言った有様だった。
リヒターが思わずつぶやくのも無理はない。
「随分手ひどくヤられたみたいだ。あのグライフなんて主翼に大穴が開いてる」
『イスパノか、ったくあんな主翼でよく戻ってきたよ』
眼下を通り過ぎて行ったHe177の右翼には巨大な穴がぽっかりと開いており、何時折れても可笑しくなさそうだった。
『まあ、春の戦いはこんなものさ』
無線に入ってきた聞き覚えの無い声に首をかしげると、直ぐに相手はコールサインを名乗った。
『おっと、俺はランヴァボン1だ。君らがクラウン隊だな?』
「クラウン1よりランヴァボン1、貴方の部隊は確か」
『おう、先に上がって8防空と共同戦線張ってた。にしても、たった2機で12機の攻撃隊を追っ払うなんてやるじゃねぇか。何機落とした?』
「あーっ、と…」
さて、何機落としただろう?空戦中は一々落とした機体を数えるのが煩わしく、帰ってから管制機に問い合わせるのが日常だった彼には即答できない質問だった。とは言え、今の彼には頼りになる相棒がいる。
『クラウン1が5機撃墜に協同撃墜1機だ。クラウン2が4機撃墜と協同撃墜1』
「よく覚えてるな、リヒター」
『これでも視野には自信があってね』
『初陣でエースとは見上げたものだが、そういうところは見習わないとな、クラウン1』
全く持ってその通りなので返しに困る。周りが見えなくなるという事ではないが、一々数えてられないのは何時か直すべきなのだろう。むしろ、自分のだけではなく僚機の撃墜数すらも数えているリヒターの方がおかしいのではないだろうか?
『まあ、この先同じハンガーを使うんだ、仲良くやろうや』
コクピットに影が差し込んだので見上げると、直ぐ上をBf110の巨躯が追い抜いていった。部隊章として描かれた、どうやら宇宙船らしいエンブレムがかすかに見える。
『スカイアイよりクラウン隊、よくやってくれた。任務を終了し帰投してくれ。管制はヴュルガー・タワーに引き継ぐ』
通信機から何処かホッとした様なスカイアイの声が聞こえてくる。了解の意を返し操縦桿を倒して緩く旋回。無数の黒煙を棚引かせた一団を後にし、ヴュルガー・シャンツェへと針路をとった。
「なんだ?君もついてくるのか?」
『まだ僕はクラウン2だ、そしてスカイアイからの司令は”クラウン隊”だった。どうせ原隊も解散されているからね、これから厄介になるよ、隊長』
黒森峰パイロット名鑑:01
椎原博(シノハラ ヒロシ):黒森峰学園2年A組(Mission06時)
TACネーム:ヘクサー(魔術師)
所属部隊:クラウン隊(1番機)/Bf109E-1
主人公。とある高校から黒森峰に転校した経歴を持つ。戦闘においては一撃離脱を好むが、格闘戦が苦手というわけではない。特に偏差射撃、未来予測能力が高く、無駄玉を極力排除し、敵機に致命傷を与える戦い方を多用する。本人曰く「ただの貧乏性」
西住姉妹とは幼馴染だった、小学校6年生時の航空事故に巻き込まれた直後、熊本を去る。
豆鉄砲でもパイロットキルやエンジン破壊なら関係ないよネ!(暴論
という事で、クラウン1ことヘクサーの初陣での戦果は単独で5機撃墜
しょっぱなからエースパイロットです
まあ、エスコンの初期ミッションではそれ以上落としてますしおすし(震え声)
これにて書き溜めの全投下が完了、個のとは出来次第逐次投稿となりますのでご容赦を…
感想を頂ければ作者が歓喜しますので、お気軽にどうぞ