竜と少年R15ver   作:神座(カムクラ)

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 前回の更新から……5ヶ月以上!?と、時の流れって早いですねぇ(汗)


第肆話 竜の守人

 

 

 かつて、人と竜は幾度となく戦争を起こし、そのたびに双方と大地は甚大な被害を受けた。そしてどの時代の戦争も、あるとき、嘘のように鎮まってしまう。

 

 そして今からおよそ2千年前、決して自ら人に姿を見せることがなかった「神」が人間の長を呼び、何故歴史上定期的に起きている戦争が突然終わるのか、その理由を見せつけた。

 

 人間の長はその時の反省を後世に残すべく、ハンターズギルドやそれに関わる者達が行き過ぎた行動をしないよう監視する組織を作った…

 

 

「……それが僕たち竜の守人。」

 

 

「それで…」

 

 

 ツェルに呼び出されたユタは、その守人の見習いにならないかと誘われたのだった。

 

 

「君の持っているその力はハンターには不向きだ。竜の感情を感じ取れる君の心に大きな負荷がかかるだろう。もちろん守人が竜を狩ることもなくはないけどそこは基本ハンター任せだし…全ての竜に通用する訳ではないとしても君の能力は重宝されるだろうし、考えてくれないかな。」

 

 

 ユタの力があれば保護したい竜をなだめたりするのにはとても役に立つだろう。けれども実際に竜を保護するという事例は少なく、守人の仕事の大部分は監視。守人になれば当然そういう仕事もやることになる訳で。

 

 

「でもそれ、密猟者の取り締まりとかもあるんですよね。」

 

 

 一緒に聞いていたユタの兄、トーマは弟が守人になることにやや否定気味だった。ツェルは彼の言いたいことを察して頷く。

 

 

「確かに現行犯で捕らえることもあるし、もちろんそれなりの危険もある。ただ戦闘が起きるような現場の仕事は元々ギルドナイトの仕事だから、守人は裏方中心なんだ。」

 

 

 自分みたいな例外も少なからずいるけれど、と言ってユタに丸めた羊皮紙を渡した。

 

 

「推薦状。それがあればすぐ手続きできるから、あとは自分で決めて。それじゃあ僕は仕事があるから。」

 

 

 ツェルは去り、ユタも羊皮紙をしまった。

 

 

「ユタ、村長からジャギィの群れを追い払ってくれって頼まれてるんだが、お前も来るか?」

 

 

 守人の話題を変えたい、という意図はユタにも伝わった。

 

 

「行く。でもレナのブラシしてからで良い?」

 

 

「分かった。」

 

 

 幼いナルガクルガのブラシはユタの日課。やや古いが上質な竹櫛を他の村人に譲ってもらって以来は毎日レナの柔らかな毛を梳いてやっている。

 

 

「かゆいところはないですかー?」

 

 

 ユタの膝の上に顎を乗せていたレナはご機嫌な声を上げる。

 

 

「ユタ、森へ行くのか。」

 

 

 舎の中でじっとしていた白いナルガクルガが唐突に声をかけた。

 

 

「そうだよ。カラも来る?きっと見ただけでジャギィ達逃げるだろうな。」

 

 

「いや……」

 

 

 レナが起き上がって、同行したいとユタに頬擦りして甘え、カラが否定の声を出すと不機嫌そうに唸った。

 

 

「ひとりで行くのか?」

 

 

「兄さんと一緒に行く。」

 

 

「そうか。」

 

 

 寝そべっていたナルガクルガは首を起こして遠くを見た。

 

 

「あまり遠くに行かない方が良い。気配がある。」

 

 

「わかった。気をつけるよ。」

 

 

 毛繕いを終えると兄と合流。この辺りの地域には不慣れということで、専属ハンターのリーエンも同行してくれることになった。

 

 

「おー、やるなぁ。」

 

 

 ユタがライトボウガン「ハンターライフル」でジャギィの足元に威嚇射撃をして追い払い、兄トーマは大剣で難なくジャギィ達を両断していった。その様子に感心しつつ、いつでも加勢できるようリーエンもハンマーを構えていた。

 

 

「いなくなってきたね、兄さん。」

 

 

「あぁ。ドスジャギィがいなくて良かった。はぐれたのか?」

 

 

「いや、数からして"長無し"の群れだったんだろう。おっ…」

 

 

 帰り道、リーエンが人差し指を口に当ててから河の向こう側を指差す。大きく鮮やかな桃色のヒレを携えたトカゲと狐を合わせたような竜が水の中をじっと見つめていた。

 

 

「タマミツネだ。ここはあいつの餌場で、時々来て豪快に魚を丸呑みしてるんだ。あいつは賢いぞ、ほら…」

 

 

 不意にタマミツネは目を逸らして近くにあった大きめの石を咥えると水面に突き出ている岩に向かって、首をしならせて思い切り石を叩きつけた。ガツッ、という音がユタ達のところまで響き、石は粉々に砕け、タマミツネは嬉しそうにヒレをピコピコ動かすと水面を啄むようにして魚を捕らえ丸呑みにした。

 

 

「あぁやって石を叩きつけるとその振動で近くにいる魚が気絶して浮いてくる。あいつはそれを学習したんだ。人間だと小魚を浮かせるのが精一杯だが…見ての通りの威力だから大型魚も浮いてくる。ここは流れがゆっくりだから浮いた魚も流されにくいし、格好の餌場ってことだな。」

 

 

 こういう光景は見ていて飽きない。しばらくの間タマミツネの食事を黙って観察し、まんぞくげに一声鳴いて去って行くとユタが口を開いた。

 

 

「はじめて見た…すごく綺麗な竜だ…」

 

 

「あいつは雄だろうがな。」

 

 

 リーエンの言葉にユタが驚いて顔を上げた。

 

 

「そうなんですか!?」

 

 

「大きくて綺麗なヒレは雄の証。雌はもっと小さくて地味らしい。雌はもっと山奥にいて、俺も見たことがないんだ。それとあんな狩り方をするのも珍しいみたいで、噂を聞いて観察しに来た研究者の護衛をやったこともある。」

 

 

「討伐依頼とかは出されないんですか?」

 

 

 トーマの質問に、リーエンは頷く。

 

 

「被害がないからな。あいつも河のこっち側には来ない。」 

 

 

 そして一行が村へ向かおうとしていると、大きな音がこだまする。

 

 

「あっち…2番エリアの方かな…?」

 

 

「あぁ…見に行った方が良さそうだな。」

 

 

 方向転換し、崖のエリアへ走って向かう。あったのはドスジャギイの死骸と、その犯人であろうドボルベルクだった。

 

 

「おおっとこいつはお前達には荷が重いな。悪いが村に戻って応援を……」

 

 

「跳んだ!」

 

 

「避けろ!」

 

 

 トーマの一言でリーエンは言葉を切ってそう叫ぶと一同は散り散りになってドボルベルクの落下地点から抜ける。リーエンとトーマは慣れているので問題はなかったが、ユタは緊急回避に失敗。受け身を取れず派手に転がってしまった。

 

 

「ユタッ!」

 

 

「いって……」

 

 

 転がった方向が崖の方だったことが一番の失敗だった。衝撃から復帰したドボルベルクは1番近いユタの方を向く。

 

 即座にリーエンがドボルベルクの気を逸らさせるためにハンマーで殴りかかるが巨大なコブ付き尻尾であしらわれ、ドボルベルクはユタの方に突進した。

 

 接触するまで1秒もない。ユタの頭が真っ白になる。後ろは崖。…でも切り立った絶壁、というわけでもない。ユタは反射的に飛び降りた。

 

 ドボルベルクは手前で止まり、ユタは被弾を免れたは良いものの、急勾配をなす術なく滑落していった。1番下が川だったのは不幸中の幸い、しばらく流されたあと、自力で泳いで川辺に上がった。

 

 

「どこだ…ここ……」

 

 

 最早見当もつかない。とにかく濡れた服を乾かさなければと着ていたものを全て脱いで、衣を纏めてどこか身を置ける場所はないかと川沿いを歩く。しかし洞穴のような所は見つからず、下流に行くとしだいに周囲は開けてくる。開けた川は先程のタマミツネのように大小様々な生き物が訪れるので避けたいところ。しかし川沿いにいた方が見つけられ易いと考えたユタはそれ以上進まず、腰を下ろして衣服を伸ばして置いた。

 

 

「火…起こさなきゃ…」

 

 

 ユタは近くの木の枝などを拾ったり折ったりして集め、また葉を重ねて皿のようにする。そして無事だったポーチの中から弾を取り出し、ハンターナイフでその弾を解体して火薬を葉の上に出した。

 

 湿気っていたので陽光で乾かしてから火薬と葉の上に木の枝を立てて両手でグリグリと回しながら擦った。

 

 すぐに火花が散り、そして燃えはじめたのでそれを用意していた枝の上に移して焚き火を起こした。

 

 

「……はぁ。」

 

 

 服を乾かしている間、ユタはただ座ってため息をついた。難しい依頼でもなく、すぐに村に戻る予定だったので道具はあまり持ってきていない。食料を探すため、火はそのままに周囲を探索することにしたのだった。

 

 

 

 一方ユクモ村ではトーマが事を知らせ、たまたま村に居合わせたハンターも含めた捜索隊が組まれ狩猟許可区域外に向かった。しかし日没が近づいても痕跡すら見つけられなかったので野宿し、次の朝、夜明けと共に再開することにした。

 

 

「これだけか……」

 

 

 黄昏時、集めた食材はキノコ数種類と少しの木苺。アオキノコや特産キノコの他になんとドスマツタケを見つけて少し気分が上がったが、状況は良くないままだ。キノコ達をみてまたため息をつくと、焼くためにナイフで二つに切り分け枝に刺した。

 

 

「釣り道具持ってくればよかったなぁ…」

 

 

 川を見ながらそう言って、思い出した。靴を脱ぎ、裾をまくって川に入る。途中で手頃な石を拾い、川の真ん中にあった岩に向かって思いっきり投げた。

 

 ………。

 

 特に何も起こらなかったので2回目。

 

 ………。

 

 やはり何も起こらなかったので首を傾げる。日が暮れかけているので川の中は見えないが、魚が隠れるにはうってつけの場所のはずだ。一旦川から出ると大きな重い石を両手で持ってきて、大きく振りかぶって叩きつける。するとようやく数匹の魚が浮き上がってきたので素早く両手に1匹ずつ掴んで川から上がった。

 

 

「あれこの魚、屋台で売ってなかったっけ。」

 

 

 口先から尻尾の付け根までに黄緑色のラインが入った中くらいの魚。焼き魚として売っているのを見たことが、というかつい最近食べた。

 

 血抜きして口から枝を刺してキノコと一緒に焼く。それなりに豪華な夕食に、ここが渓流で良かったとつくづく思うユタ。束の間の休息をとっていたが、一難さってまた一難とはこのことか、遠くで雷の音のようなものが聞こえはじめた。

 

 もしかしてあの嵐龍が助けに来てくれたのかとも思って空を見上げたが違う。下弦の月が浮かび趣のある夜空には所々雲があるものの、以前のような分厚い雲ではない。

 

 

「こっちに来ないといいな……」

 

 

 大きめの木の下で体育座りになりじっとする。あっという間に月は隠れ、暗い空に紫色の稲妻が走る。昼間とは違って夜の稲妻はとてもはっきり見え、ユタの不安を煽る。洞穴に入りたいところだが無闇にうろつくのは危険な上、この天気では先客がいる可能性があるので仕方ない。森の中にひとりぼっち、加えて雷。

 

 

「兄さん……」

 

 

 今頃はもう寝ているだろうか、いや薬の調合をしているかもしれない。そういえばレナは雷が苦手だと言っていた。幼い上に音に敏感な種族なのだから当然だ。きっと今も震えながら母親に抱かれているだろう。そういえば、幼い頃の自分も雷の日は母に抱かれていた気がする。

 

 

「もしこの辺りで道を見失った時、そして雨のない、不自然な雷が鳴っていたら、その稲妻の先へ行くと良いでしょう。」

 

 

 ふと、ユタはいつしか村長が言っていたことを思い出して空を見る。さっきまで雷が鳴るような天気ではなかった。それに鳴り始めてから結構な時間が経っているのに雨が降る気配はない。

 

 ゆっくりとユタは立ち上がった。見上げた空に走る稲妻は、その全てが同じ方向に走っていた。

 

 

「崖だ……これ以上は行けない…」

 

 

 岩の壁にぶつかってしまった。迂回するには深い森を通らなければならない。

 

 

「あれ……」

 

 

 稲妻が普通の稲妻になっている。今までのが偶然だとはとても思えないので、もしかしたら近くに洞穴があるのかもしれないと稲光を頼りに岩の壁に沿って歩く。バチ…と大雷光虫が鳴らしそうな音が背後からして振り返ると視界が真っ白になって赤い光が2つ浮かんだ。

 

 

「うあ゛っ!!」

 

 

 あまりにも驚いて尻餅をつく。心臓が早鐘を打ち、呼吸が詰まった。

 

 

「はぁ…はぁ…」

 

 

 浮かんでいた赤い光は瞳だった。その全身が白く発光していたので目が慣れず、赤い瞳が浮かんで見えたのだ。

 

 

「馬……?」

  

 

 まさしく白いそれだった。が、蒼い角が生えたそれを、ユタは見たことがあった。

 

 

「幻獣キリン…絵に描いてあった古龍……!」

 

 

 発光している真っ白なたてがみ、ほんのり青みがかった体に群青色の横縞模様。蹄のような足、龍の鱗のような体皮。どこからどう見ても、旅館にいくつも飾られている絵にあった異端の古龍、キリンだった。

 

 

「き、君が案内してくれるの…?」

 

 

 幻獣は静かにユタを見つめるだけで、反応はない。神々しい姿にユタも落ち着いてくる。

 

 

「雷は君が鳴らしてくれたの…?」

 

 

 なんの反応もなく、感情も読み取れない。何もいなかったはずの背後に前触れも気配もなく突然現れ、しかし本当に目の前に実体があるのかどうかもわからないようなその様は神々しいと同時に不気味でもあった。

 

 幻獣はユタに体の横を向け、脚を折りたたんで座った。

 

 

「…乗っていいの?」

 

 

 やはり反応は無く、ユタは恐る恐る手を伸ばしてその背に触れてみる。幻獣は微動だにしない。たてがみは柔らかく、背中は暖かかった。

 

 そっと跨って腰を下ろすと幻獣は立ち上がって軽く(いなな)く。ユタの手足が一瞬痺れ、意思とは関係なく力が入って幻獣の背にしがみついた。

 

 

「わっ…」

 

 

 体が浮く感覚。中々の高さがある岩壁を平地であるかのような軽い足取りで、たったの2歩で登ってしまうとそのまま森の中を駆けた。かなりのスピードだ。この幻獣と一緒に雷そのものにでもなってしまったかのようで、目をほとんど開けられないくらいの風に晒されたユタは幻獣のたてがみに顔を埋めて、その幻獣に首飾りのようなものが着けられていることに気がついた。たてがみに埋もれているので良く見えないが、確かに細かい金属の鎖のようなものが首にかかっていた。

 

 幻獣が少しずつスピードを落として、やがて止まる。すると手足の力が抜けて幻獣がまた座ったのでユタは背中から降りた。目の前の木々の間から明かりが見える。

 

 

「焚き火だ…!あれっ……」

 

 

 後ろを振り返ると幻獣は跡形もなく消えていた。けれど手を見ればほのかに光るたてがみが数本付いていたのでやはり現実だったのだ。そして焚き火を囲んでいたのは自分を探している者達だった。

 

 

「いやぁ良かった。みんな心配していたぞ。」

 

 

「ごめんな…閃光玉を投げるべきだった…いやそもそもあとが聞こえた時点で村に帰すべきだった。俺の判断ミスだ。」

 

 

 捜索隊に参加していたリーエンと守人のラーザが駆け寄り、他の人やアイルーも良かった、と口々に言った。

 

 

「雷鳴ってて良かったな。でなきゃ夜行性モンスターの腹の中かもしれなかったぞ。」

 

 

 幻獣の背にしがみついていたのがこたえたのか手足は鉛のように重くなっていて、テントの中に寝そべるとすぐに深い眠りに落ちた。

 

 翌朝、一同はユタが起きてくるのを待ってから村に向けて出発。昨夜数人が先に村へ戻って伝えていたのでトーマや村長が迎えた。

 

 

「兄さん!」

 

 

 兄弟はどちらからともなく抱き合った。村中の人がユタを迎えようとしていたが、余計なお節介だと察して静かに日常に戻っていった。

 

 

「怪我は…?」

 

 

「少し…大したことないよ。」

 

 

「そっか…」

 

 

「村長にお礼言ってくる。」

 

 

「そうだな。旅行に来ていたハンターとか全員に声をかけてくれたんだ。済んだらあの2匹に顔出してやれよ。特にレナのやつ、一晩中鳴いてたぞ。うるさくて眠れないのなんの。」

 

 

 2人は吹き出して離れ、トーマはナルガクルガ達にユタが帰ったことを伝えに、ユタは村長の元へ向かった。

 

 

「なるほど…」

 

 

「それと、タマミツネにも助けられました。」

 

 

「泡狐竜に?」

 

 

「魚を獲っているところを偶然見かけてたんです。真似して、獲れました。」

 

 

「あぁ、あの賢い子のことですか。村でも有名でしてね、わざわざ見に行く方もいらっしゃるの。私たちが最も賢いというわけではない…他にも竜から学べることはたくさんあるのですよ。あの子が意図して見せた訳でもないのに"助けられた"と言えるあなたはきっと将来立派な大人になれるでしょうね。」

 

 

 ユタは子供らしく素直に照れた。

 

 

「それと幻獣の件ですが、はい。あなた以外にも、時折迷われる方はおります。そしてその方の中には白い角の生えた馬に会った、とか龍に道案内された、とおっしゃる方がおります。…このあたりは、ギルド上層では聖域と呼ばれておりまして、」

 

 

「聖域?」

 

 

「はい。異端な生き物達が奇妙なほど調和している地なのです…あなたもなにか強いものをお持ちのようですし、きっとまた巡り逢えますよ。」

 

 

 村長と別れて農場に向かうと案の定、小さなナルガクルガに飛びつかれてそのまま倒れた。

 

 

「わぁレナ、ただいま……わかった、わかったから!」

 

 

 んんるるるぅんんるるるぅ、と鳴きながらこれでもかとユタに頬擦りして、彼が解放されるまで10分かかった。

 

 ちなみに、夜中ずっと鳴いていたのかと聞いたところ、夜はちゃんと寝ていたという返答が返ってきたので独り笑ったユタだった。

 

 そして

 

 

「兄さん、僕、守人になるよ。」

 

 

 騒動から2日後、そう宣言するとトーマは反対することなく頷いた。

 

 

「わかった。そうと決めたんたら応援するよ。ん!なら今日の夕飯は奮発するかぁ!ユタの門出祝いだ。」

 

 

「いやまだあの手紙出してないし…早くない?」

 

 

「いやいや、そう決めたんなら守人になったも同然だろ。だってお前、竜が考えてること分かるんだぜ?きっと引っ張りだこになるぞ。」

 

 

 仲良くじゃれ合いながら屋台通りに向かう兄弟。それを黒衣を着た竜人族の青年が遠目に見ていた。

 

 

「へぇ、あれがユタくん……思ったより平々凡々な子だねぇ。でもまぁ、ナルガクルガ連れてくる時点で普通とは言い難いかぁ……可哀想に、きっと当分は穏やかに暮らせないだろうねぇ……ま、また今度、直接話せる時を楽しみにしてるよ。ながーい付き合いになるんじゃないの?よろしくねぇ。」

 

 

 

                   つづく。

 




 
 
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