Fate/Grand Ordar The lost memory   作:カラクリヤシキ

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行き先を決める。そういった目的を得ることによって人はその過程で生を実感する。


二章 封鎖終局四海オケアノスー形の断片探し編ー
喪失者と剣豪の航海


海とは?

そういう質問があったら皆様は、どう答えますか?

青い、しょっぱい、辛い、冷たい、暖かい、綺麗、怖い…等々と、様々な感じ方があるだろう。

そして海は、天候にも影響しやすい。

嵐の日なんて波が荒れ狂い、下手をすれば船が壊れてしまう事だってざらにあり、それでなくとも強い波で人が持っていかれる事だってある。海を舐めてはいけない理由の一つだろう。

 

そんな海に一艇の船が波に乗ってゆらりと揺れながら前進している。

 

 

「黒猫殿って見たことないの?海」 

 

「ありますよ。しかし、何度か眺めたぐらいですね」

 

 

その船に乗っている者は、男と女の日本人二名。

男の名は、黒猫。

黒髪を肩まで伸ばし、顔を覆う笠を被った灰色の着物を着た人物。

日本人にしては高い身長と着物越しからでも分かる鍛えられた身体が特徴の偉丈夫だ。

 

 

「へぇ、そうなんだ。私も海は詳しくないからなー…」

 

どうしたものかと女は、海を見ながら先の事を思考する。

女の名は、武蔵。

薄桃色の長髪を刀の鍔に似た風車の髪飾りで結い、黒猫と同じ笠を被った特徴的な青と赤の着物を着て、腰には四本の大小の刀がそれぞれ二本ずつ差した剣客。

新免武蔵守藤原玄信という名を持ち、剣豪という名を持つに相応しい刀の使い手である。

 

その二人が乗っている木で造られた小型の船は、帆が風を捉えてながらゆらりと波に乗りながら前進していく。

 

 

「まさか飛んだ先が幽霊船の上とはね…」

 

「海の上に繋がっていなかっただけ御の字ですよ。それに足があるのは、良いことではありませんか」

 

「少しボロが目に映るのがたまに傷だけどね…黒猫殿って、前向きに物事を捉える人よね。素直に凄く感じるわ」

 

海を見ながら黒猫と共に行動している武蔵は、この船に乗る前の出来事を振り返る。

武蔵達の目的となっていた何処かの世界に繋がる渦を探すべく山を登り、動物の肉を確保しながら探索していた。

 

そして見事、噂にされていた渦を二人は見つける事が出来、その渦に飛び込んで…今に至る。

この一面の海景色の世界に来ておよそ半刻の時間が経つ頃だろう。

 

黒猫の言うように、海に直行よりはマシだと武蔵も頷きながら前進する先を見る。

 

 

「んー?お、おお!黒猫殿、島ですよ。島が見えますよ!!」

 

「なんと…本当ですね。確かに島が見えます」

 

武蔵とは違う方向を眺めていた黒猫に武蔵が少々興奮気味に伝える。

海に飛ばされてから半刻程の時間で島が見つかるとは思わなかったからだろう。

黒猫も武蔵と同様にその事に目を見開いて内心でも驚いている。

 

 

「この船がこのまま進めば調度、その島に当たりそうですが…」

 

「念の為に漕ぐ?船にそれらしい道具が二つあったわ」

 

「それは、良いですね。やりましょう」

 

武蔵が見つけたものは二つの櫂だった。

船を人力で動かす道具で、柄の末端部分に漕ぎやすいようにT字型の櫂杆(かいずく)が付いている木の棒だ。

 

 

「よし!それじゃあ黒猫殿、行くわよ!」

 

「わかりました。では…」

 

武蔵から手渡された櫂を手に持った黒猫が右側、武蔵が左側に着いて櫂杆を海に浸ける。

漕ぐ準備が出来たことをお互いが確認した直後、武蔵が合図を口にする。

 

 

「全速前進!」

 

互いの持つ櫂を強く握り、海を漕いでいく。

その漕ぐ力に応じで船の前進する速度が徐々に上がっていき、先程までの風と波だけを利用した力だけの非ではない推進力が船に加わっていった。

 

目当ての島に着くにはまだ距離がある。

風と波だけを使っての移動では少しの不安があっのだが、武蔵と黒猫の腕力のお陰でそれも杞憂になる。

このまま進めば、五分と経たずに着くだろう。

 

 

「さーって、この世界は何があるのやら!美味しいうどんがあればいいなー」

 

「それは、難しいかと…」

 

「はは、言ってみただけ!」

 

行き当たりばったり、そして少々のドタバタな状況だが、目的も定めた二人の旅が再び歩みを始める。

これが、黒猫と武蔵による航海の始まりであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

渦から無人の幽霊船に揺れながら島を見つけ、早々と駆けつけた私と玄信さんは、四半刻も経たずに島に辿り着くことが出来た。

玄信さんが早く島を見つけ、そこで櫂を使って更に船の速度を上げたことが正解だったのでしょう。

 

 

「――――島が見えたから強めに漕いできたんだけど…これからどうしましょうか?」 

 

船を砂浜に上げ終えて島に降りた私達は、目的地の島を見ながらどうするかを考える。

島は、遠目から見て大きい事は分かっているので、二人で固まって島全てを探索するのには骨が折れるでしょう。

 

 

「…とりあえず、この島で休めそうな場所を手分けして探してみましょうか?」

 

玄信さんに二手に別れることを提案する。

此処がどういった島なのかも分からない状況で分かれて探索するのには少なからず危険がありますが、玄信さんの実力は折り紙付き。

前の世界で十分に力を体感させて頂いたので、彼女ならば一人でも難なく行けるでしょう。

 

 

「そうね。なら私は、島の中に入ってみます」

 

「玄信さんが島の中ならば、私が島の周りですね。ある程度の探索が終えましたら私が玄信さんを感知して向かわせてもらいます」

 

「わかったわ。じゃあ黒猫殿、また後で!」

 

玄信さんが島に入り、木々の奥に姿が見えなくなるのを見て私も行動に移し、足場の砂をざくざくと踏み鳴らす。

 

「この島は、何があるのやら…」

 

渦から出た新たな場所、そして知らない風景に心を小さく踊らせながら探索を始めていった。

 

 

 

 

 

 

 

歩を進め、島をぐるりと一周するように歩き始めて半刻が経っただろうと、感覚で予測する。

島を右に、海を左に視界に映しながら砂浜を歩き続けてきましたが、あまりめぼしいものは見つからず。

 

おそらく島の反対側も目視できる頃合いだと思うのに…これだけ歩いても何も収穫無しだと、少し不安を感じさせてしまいますね。食料とか…

 

 

「……ん?」

 

そんな事を考えている時だった。

波風とは別に違う音が微かに聞こえた。

 

「これは…人の声?」

 

波の音で少し聞き辛かったが、人のような声が微かに聞こえてきた。それも、鼻歌のようだ。

場所からすると、私の目線の先にある大岩の後ろだろうか。

歩幅を変えずにその岩に向かって歩いていけば声も聞こえやすくなっていく。

 

「…」

 

念のために生命察知を行えば人の生命力、それに気づいたら自然とその声の聞こえる岩の後ろに回ってみると其処にはパシャン、パシャンと浜辺に打ち寄せる波を裸足で遊んでいる女性がいた。

日本では見たことのない、恐らく西洋の服装。黒い服の上に足の脹脛まで隠す赤の上着を肩まで着ずに、腕だけに通した格好をしている。

 

 

「あら?」

 

女性も私に気付いたのか、遊んでいた足を止めて此方を見る。

その際に、ふわりと小さな風が長い金色の髪を遊ぶ。

偶然居合わせた私が思うのもなんですが、その姿に対して海に合う御人だと思えた。

 

 

「まさか人がいるとは…」

 

「私もこんな所で只の人がいるなんて考えてもいませんでしたわ」

 

私は、当然。女性も私を見て僅かに目を見開いて驚いている。私と同様にこの島に人がいるとは思っていなかったのだろう。私も変な先入観を持たずに、島に到着した直後に生命察知を行うべきだったと今更ながら思ってしまった…今度から気をつけましょう。

 

 

「貴方は、なんでこんな島に?コンパスでも壊れて遭難でもしたのかしら?」

 

「こんぱす?…は、よく存じませんが、此処が何処なのか皆目見当もついていません」

 

「絶賛迷子なのね…それは災難。でも、こんな海じゃ迷ってしまうのも仕方ないことですわ」

 

女性は、何か思い当たる事でもあったらしく、一人で納得している。

私や玄信さんよりも先に島に居たのもありますし、私達よりも此処の事を詳しく知っているのでしょう。

しかし、こんな海ならば仕方ないというのは…

 

 

「もしかして貴女も迷ってこの島に?」

 

「んー、ちょっと違います。相棒と船長の所に行くところよ」

 

「船長に相棒…仲間がいるんですね」

 

「ええ、船長はともかく、とても頼りになる相棒ですわ。ところで貴方は?もしかして一人で海に?」

 

「いえ、一緒に旅をしている方が一人います」

 

どうやらこの人は、一人ではないようだ。

船長や相棒、少なくとも三人以上で行動しているのらしい。

 

「もう一人いるのね。私と同じ相棒かしら?」

 

「いえ、会って間もない人です。しかし、傍に居てくれるだけでも心強く感じる方です」

 

「あらあら、それはもう私達と似たような――――」

 

女性と話していると彼女の後ろで、遠くでも聞こえる声が私達の会話を中断させる。

 

「おーい、アンー!船長がもう行くって、此処には女神がいなかったらしいよー」

 

「はーい。すぐ戻りまーす」

 

私達の所を見ながら離れた場所で伝えたのは、右手に剣を持った女性だった。

遠目でも小さく見えるが、小柄な人なのだろう。そう見立てながらその人を見ながら生命察知を行う。

 

 

(……これは)

 

「では、相棒に呼ばれたので私も行きますわ」

 

何か探していたのだろう。目的のものが無かった事を聞いた彼女はパシャンと水音を鳴らして海から上がっていく。

 

「ええ、わかりました…ん?あの娘が貴女の相棒だったのですね」

 

「そうよ。あら、そうは見えなかったかしら?」

 

「いいえ、変な話ですが…腑に落ちました。良き仲間を御持ちです」

 

「あら、まさかこんなに真っ直ぐに褒められるなんて思いませんでした。ふふ、メアリーに良い土産話が出来ましたわ」

 

思っていたのと予想が外れたのだろう。そして、相棒の事を褒められたと感じたのか自分の事のように女性は笑う。

 

 

「では、お互いに良い航海を、また巡り合いましたら今度はメアリーを紹介するわ」

 

「めありー…相棒の人ですね。はい、会う機会がありましたら」

 

「ええ、その時があれば…ね。じゃあ」

 

海には十分気を付けて、そう言いながら女性は、この場を後にして呼びに来ている人の所に向かっていった。

 

「…」

 

本当ならこの島や、海の事を教えてほしかったが…無理に引き止めて御仲間を待たせるのはよくはないか…

 

呼んでいた相棒の方と共に歩き、遠ざかっていくの彼女に聞こうとした口を閉じる。

 

 

「人がいたのには未だに驚きを隠せませんが…先程の人といい、呼びに来た人の生命力…」

 

先程まで話していた女性が完全に視界から見えなくなった後、あの二人を察知した感触を思い出す。

女性の細身からは信じられない程の、通常の人よりも強い生命力だった。

 

口にはしないが、正に見た目で判断してはいけないとはこの事だろう。

以前のオルレアンで出会った敵やジャンヌさん達といい、渦に関わってからというものの、こうも頻繁に強い生命力を持った人達と出会う機会が多くなるとこれが普通のように感じてきてしまう。

 

 

「玄信さんがこの事を聞けば大いに喜ぶでしょうね…」

 

溜め息を一つ漏らしながら空を見上げる。

先の出会った人が理由でもありますが、今回の渦の移動先は思ったよりも大変な事になりそうだと、一つの予感を感じていた。

 

 

「…あれは」

 

そして、その予感が的中する事を後押しするようなものが目に映る。

 

「ずっと海と島しか見ていなかったから気付くのが遅れてしまいましたか…確か、あれはオルレアンでも見ましたね」

 

空に雲とは別の円を描くように大きな光の輪があった。

あれが何かは未だに分かりませんが、少なくともオルレアンと無関係ではないでしょうね。

同じものだと言われても不思議ではない…

 

 

「…うん、あの時と同じで考えても仕方ありませんね。玄信さんの所に行きますか」

 

そろそろ一刻を過ぎた頃だろうから丁度よく、あの光の輪と会った人の事をどう話すべきかを考えながら玄信さんの所に向けて歩いていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黒猫と武蔵が島の探索を行って早二時間が経つ。

 

太陽が傾いて夕方になる頃、ある程度の探索を終えた黒猫が生命察知で武蔵の居場所を突き止めて早足に合流していた。

 

 

「…なるほど、あの光の輪が前の場所にもあったんだ」

 

そして頃合いが良かったのだろう。黒猫殿が合流しようとしていた時には私も探索を終えて一区切りをつけ、船のある浜辺に向かっていた所を黒猫殿が見つけてくれた。

 

 

「それにしても強い人かぁ、会えなくて残念…」

 

「玄信さんなら、そう言うと思いましたよ。貴女なら一歩間違えずとも、いきなり斬り掛かってたかもしれなかったので今回の別行動は正解でした」

 

「…うーん、否定出来ないなぁ、はは…」

 

強いなら鯉口を切って誘っちゃう癖がある事を自覚しているからどうしようもない。

黒猫殿と会って暫く、探索して見つけた休憩には丁度良さそうな開けた場所に案内し、其処にある木を背にして二人で腰を落ち着かせてこの島の探索で得た情報を互いに話す。

 

 

「でも別れて探したのは、正解だったのは確かね。お陰で色々と知れたし、変なものと一戦交えたし」

 

「一戦、何か獣にでも襲われたのですか?」

 

「うん。見たことがないものだったけど、なんとかなったわ」

 

二手に別れて得た結果は、上々であった。

黒猫殿からは私達以外の人を確認、それも強い人達らしい事。そして、今も空にあるあの光の輪を他の場所で見たその二つ。

 

前に行っていた場所でも今回の出会った人達のような強い輩がいたようだし、何もないなんてことも無さそうね。多分だけど…

 

 

「ところで、そろそろ御聞きしたいのですが…その手に持っているものは?」

 

黒猫殿が私の手に指さして私の手に持つモノを聞いてくる。

 

「ああ、これ?さっき言ってた獣を退治してた所に転がっていたのよ」

 

私の持っているモノは、黒猫と別れてから狼顔をした連中を退治した所に転がっていた物だ。

あの時は、何でこんな所にあるんだと思いながら拾い上げてたな。

 

 

「転がっていたですか。ふむ…見たことがないものですね」

 

「んー、たしかぬいぐるみ…だったか。詳しくはよく分からないけど、人形みたいなものかな。これがあるってことは、人が居たんじゃないかと思ったから持ってきたのよ」

 

「そうだったのですね。これ、ぬいぐるみと言うのですね。変わった形をした……ん?ちょっと失礼します」

 

まじまじと私の手に持つぬいぐるみを見ていた黒猫殿が何かに気付いたのか、ぬいぐるみに顔を近づける。

 

 

「玄信さん、変なことを聞きますけど…ぬいぐるみって生きていたりしますか?」

 

「え?いや、それはないでしょう。動いてる所なんて見たこともないわ」

 

「ですよね…ですが、このぬいぐるみ?から生命力を感じるんですよ」

 

「生命って、え?これ生きてるの!?」

 

黒猫殿が持つ生命察知?という力はまだ一回其処らしか見ていないけども信じていいものだ。

その力を使ってぬいぐるみが生きてる事を看破したとしたら…私も気になってぬいぐるみを暫く見続ける。

 

…疑って見てるからか、心なしか、ぬいぐるみから変な汗が出ているように見える。

 

 

「うーん、見た目だけじゃ分からないわね…」

 

「呪いの類は感じませんが…そうですね。

 

 

 

 

 

 

念のため変な物が仕掛けられてないか皮でも剥いでみますか?」

 

「ちょっと待って!誤魔化してすみませんでした――――!!!へぶち!」

 

ゆっくりとぬいぐるみの腹に手で触れようとしたというか、黒猫殿の物騒な言動に慌てて私の手から離れて地面にべちゃっと顔面から着地する。

 

 

「いてて…こっっわ!!!マジでこの人剥がそうとしてきたよ!!俺だから分かるよ!」

 

「うわ、動いてる?!黒猫殿を疑ってた訳じゃないけど、本当に生きてたのね」

 

ぬいぐるみが顔に付いている土を手で取り払っているのを見て、本当に生きてると目の前でまじまじと見せられる。

なんか思ってたよりも黒猫殿の言葉が余程怖かったのだろう。ざざっと尻餅をつきながら後ろに器用に後退る。

 

 

「ああ、やはり生きていたのですね。大丈夫ですよー、悪さをしていなければ私でもそんな事はしませんよ」

 

「お、おう!そうか、なら俺は大丈夫だな。悪さなんて一切していない健全無垢なぬいぐる…」

 

「ダーリィーーン!何処にいるのぉー!!」

 

山彦が聞こえるくらいの大声がいきなり私達のいる所に響く。

突然な大声に私と黒猫殿は、辺りを見渡す。

 

 

「今度はなんですか?」

 

「女の人の声ね」

 

「や、やべぇ、もうこの島に来やがったのか!?速すぎだろ!!お、お二人さん、一生のお願い!俺、隠れるから誤魔化してくれ!」

 

「え?」

 

熊のぬいぐるみが有無を聞かずに私達の前にある大きな茂みに体をすっぽりと姿を隠す。

 

「ダーリーーン…あら?いない」

 

それほぼ同時に私達のいる所に空から白い光を輝きながら人が落ちてきた。

小さな震動を揺らして落ちてきたのは、弓を片手に持った白髪の女性だった…え?この人、何処から来たの?!見間違いじゃなければ空から来たわよね。しかも弓に乗っかって。

 

 

「んー?こっちにいるって感じがしたんだけどなぁ…あ!ねぇ、そこの人達、ダーリンを見掛けなかった!」

 

「だーりん?」

 

「夫よ!私の凛々しくて今は可愛いダーリンのこと!」

 

黒猫殿がダーリンという言葉がよく分かってなかったのを落ちてきた女性が説明する。私も聞いた事ない言葉だから助かるけど…夫?

黒猫殿が会ったのは、女性だから違うわね。私は、人なんて一人も見てないから知らない……

 

…いや、待てよ。まさか

 

 

「夫だけでは、よく分からないけど…その人の特徴は分かる?」

 

「特徴?んー、全部素敵なんだけど、今は小さい熊のぬいぐるみになっているわ。あと茶色い毛よ」

 

……あー、うん。予想通りだった。

女性の答えにやっぱりと内心で思っちゃったよ。多分、いや十中八九さっき茂みに隠れたあのぬいぐるみだ。

 

えぇ、これ答えるの?ぬいぐるみは隠してくれって言ってたけど…でも、この女の人が必死な態度で言うものだから悩んでしまう。

…でも、凄いギラギラした目で言うものだから正直に言ったら何か目の前で良くない事が起こりそうな気がする…どうするべきか。

 

 

 

「それなら見ましたよ」

 

そうこうと考えている内に黒猫殿が女性に教えていた。

躊躇いも何もないものだから、一瞬呆けてしまうが直ぐに元に戻る。

 

………え?正直に教えちゃうの!?

てっきり匿うんだろうと思ってた…あのクマのぬいぐるみも相当動揺したのか、物陰に隠れていた葉を一瞬動いたのが目の端で見えた。

 

 

「何処!教えて!!」

 

「あの熊でしたら、そちらに向かって飛ぶように行きましたよ」

 

あ、本当に教えちゃったよ。

黒猫殿が指先で熊のぬいぐるみが隠れた茂みに向かって指を指しながら女性に教えた。

 

女性が指さした方向にばっと振り替え、私達に背を向ける。

…何故だろう。後ろ姿なのに、どんな表情をしているのかが何となく分かる。これはもう…手遅れね。

 

 

「あっちね!確かに臭いが残ってるわ。教えてくれてありがとう!何かあったらお礼するわー!」

 

今すぐ行くわよ私のダーリン!

そう大声で言いながら女性は、弓に座って最初に飛んできた時と同じようにして、再び飛んで去っていった。

 

…あれ?

 

 

「え?あの人、飛んでいっちゃいましたよ。黒猫殿が茂みにいる事を教えてたのに…?」

 

「?いえ、私は、正確には教えてませんよ」

 

「教えてない?」

 

「私、昔から嘘をつくのが苦手でして…本当の事を言って誤魔化したのですよ」

 

本当の事……あ、思い返してみれば確かに茂みに居るなんて言ってなかったわ。

ただ指さして飛ぶように言ってただけだ…でも、それは

 

 

「あの人が飛ばなかったら終わりだったわね…なんとも分の悪い賭けをする」

 

「飛んで来たのを見てそれを思いついたんですよ…あの女性が早とちりをしてくれて良かったです。さぁ、あの女性はもう遠くに行ったので、もう出てきても大丈夫ですよ」

 

追ってきた女性が居ない事を聞いたぬいぐるみが茂みから顔だけを出して左右に見ながらゆっくりと出てくる。

ぬいぐるみは、今でも見つからなかったのが不思議だったのか、唖然とした顔をしていた。

 

 

「この世界に来て一番、肝が冷えた…ま、まぁ、助かったから万々歳だ」

 

「…この世界に来て?」

 

「あぁ、俺もあいつも此処に来て…って、お兄さん。なんで持ち上げるの?俺美味しくないからね?」

 

「食べたりしませんよ。ただ御聞きしたいことが出来ました」

 

ぬいぐるみの話を聞いて疑問を浮かべる。

それは、まるでこの世界とは別世界に来たような言い方だ。黒猫殿もその言葉に反応し、ぬいぐるみに近づいてぬいぐるみに手で持ち上げていく。

 

 

「聞きたいこと?アルテミスから助けてくれた恩もあるしな。で、何を聞きたいんだ?

あ、先に断っておくけどアルテミスが激怒する俺の個人的極秘なアレやコレは、口が裂けても言えないぜ!」

 

「誰も聞きたくないと思うなぁ」

 

「そんな事は聞きませんよ…ただ貴方が何方で、この世界の事で知っている事を教えていただきたいだけです」

 

「あ、なんだ。そんな事か、それならお安い話だな」

 

何故かは知らないが、得意気に話す熊のぬいぐるみ。黒猫殿の掌で踊っているように見えるし、ぬいぐるみだから威厳とかを感じられない。

 

「まずは俺の事からだな。

 

 

 

 

俺は、オリオン。こんな形だけど一応神様だぜ」

 

 

……

…な

 

 

「なんとーーーー!!!???」

 

 

 

そんな威厳を感じないぬいぐるみから驚きどころではない単語が出てきたソレに対して恥とかそんなのを感じる前に私は、大声を出していた。




とある海の上を走らせている船内にて―――


「今回もあの見目麗しい女神ちゃんに会えなかったでござる。悲しい。でもめげない。だって男の子だもん」

「鳥肌が立ちますから止めてくださる?」

「何時もの事だよ。そういえばアン、さっきの島で会った男って知り合い?随分と話てたけど」

「え?拙者初耳なんですけど?船長が汗水垂らしながら女神のムフフな事を想像している間にアン殿がまさか逢引!?」

「いいえ、知らない人ですわ。あと船長、素直に気持ち悪いわ」

「あ、やっぱり知らない人だったんだ。まぁ、私も見覚えが無かったし、私と組む前に知った男かとも思ったよ。
船長は、うん、出来れば大砲で海の藻屑になってほしいよ」

「二人からの冷たい目線が拙者の足の爪先から髪の毛に至る全てに突き刺さっていく…Mっ気も理解があるから我輩としては御褒美!!!」

「ダメだこの船長、多分僕達がやることなすこと全部腐った脳内で変換しちゃってるよ」

「何時もの事ですわ…はぁ」

海に揺られながら今日も海賊は、船の上で愉快?な話をしていた。



やぁ、こんばんは。
いよいよ次の特異点に突入する事が出来ました!
まだ第三特異点とまだまだ先が長いですが、ゆっくりと書いていきます。
今回も活動報告にて今回の話と次話の予定を書かせてもらいましたので、御時間がありましたらどうぞ御覧になって下さいませー!
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