ありふれた転生で世界救済   作:妄創

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 すいません。いつは、お昼頃の投稿なのに。

 今日は仕事が忙しく、執筆している時間がなくて間に合いませんでした。申し訳ないです。

 


比肩する二人

 

 

 

 時は戻り、オルクス大迷宮の奈落。

 

 ハジメが因縁の敵を倒し喰らってから、すぐにレンジとしたの階層へと降りていった。

 

 ハジメが射撃練習に明け暮れた三日間の間に、レンジは奈落の第一階層を調べ尽くしていた。

 

 しかし、下の階層へと繋がる道は発見できたものの、上層に戻る道は無かった。

 

 地脈神の力で上に繋がる道を無理矢理作ることも実行したのだが、どうやら何だかの魔法的ロジックで地形を大規模に変更出来ないようロックが掛かっていた。

 

 おそらく、この奈落全体に概念として付与された強力な魔法。一パーセント未満の神の力では、どうする事も出来ずにレンジは溜め息を吐き出すのだった。

 

 さて、奈落第二階層へと降り立ったハジメとレンジだったが、

 

 

 そこであった魔物は、第一階層よりも更に強力だった。しかし、ドンナーとフルミネの前ではただの肉塊でし無かった。

 

 だが、ハジメはそこで、英雄の一つの顔を知る事になる。

 

 それは、第二階層で初めてであった魔物、体長二メートル程の灰色トカゲを発見した時の事だ。そのトカゲは天井に張り付き、金色の瞳でハジメとレンジを睨んでいた。

 

 このトカゲ、目から放っ閃光で相手を石化させる能力があったのだが……

 

 

「……“その目で俺を見下ろすな”」

 

 レンジがそう呟いた。その時の声音は美しかった。趣味とバイトの関係上、様々な声優の声を耳にするハジメですら、断トツで美しいと思える美声。

 

 だが、心が、その魂が、その声を危険だと判断したのだ。

 

 事実それは正しかったのかも知れない。二人を見下ろしていた灰色のトカゲは、突如として異変が襲った。その黄金の目がいきなり弾けたのだ。

 

 ドンナーやフルミネが火を吹いた訳ではない。ごく自然に、ただそうであるかのように、自ら弾けた。

 

 そして、地面に叩きつけられた。そこへ、フルミネから弾丸が放たれた。

 

 ハジメは思わず、レンジの表情を見たのだが……。

 

 彼には似合わない、憤怒と殺意の念がそこにはありありと浮かんでいた。

 

 しかし、その表情はすぐに消えて、いつもの神秘的な顔立ちになっていた。

 

「さあ、ハジメどんどん進んでいこう」

 

 少し、ほんの少し、ハジメは彼の声を聞くのが恐ろしくなった。

 

 

 

 一方、当の本人であるレンジは、ちょっぴり後悔した。

 

 いくら、大嫌いな神と同じく黄金の眼で同じように見下ろされたっと言っても、芸術神(ハルモニア)の力を使う必要性はなかった。

 

 お陰で、ハジメが少し警戒気味だ。あんまりいい雰囲気ではない。

 

 しかし、道中現れた、羽を散弾銃のように飛ばすフクロウの、その羽根をハジメと連帯して撃ち落としていく間に、そんな悪い雰囲気も薄れていった。

 

 やはり、命を預けた仲だ。そんな些細な事は、戦闘の最中に消えてしまう。でなくては、この奈落を生き延びる事は、できない。

 

「いやー、ハジメも大分リロードが速くなったな」

「何千回リロードしたと思ってやがるバカヤロウ」

「……」

 

 スゥ、と顔を逸らすレンジ。いや、あれはハジメの為だ。仕返しとかじゃない。ただ純粋にハジメの為にやったのだ。

 

「そう、俺は悪くない」

「ほほぅ。なら、レンジもやってみるか?」

「丁重にお断り申し上げます」

 

 そんな会話をしながら、次の階層へ。

 

 次の階層は、何やら真っ黒な沼のようになっていて……、実は黒い液体はタール状になった可燃性鉱物で、武装と一部の技能を封印されてしまい、沼を泳ぐサメに大いに苦戦した。まぁ、その習性が間抜けなくらい単純だったので、後半は楽ではあった。

 

 しかし、その個体数が尋常ではなく、最終的にはレンジがブチ切れて『地脈神(グランドル)の巨脚』を使って、タール状になっていたフラン鉱石を無理矢理固めてしまった。

 

 やっぱり、レンジの事が少しだけ恐ろしく思うハジメ。

 

 その他の階層でも厄介な環境や、強力な魔物がうじゃうじゃと出てきたか、環境攻撃は外界術式や神の力で悉く捩じ伏せ、魔物達はドンナー・フルミネの餌食となり、二人に美味しく頂かれた(大体は不味かった)。

 

 虹色の毒カエル(神経毒)が、それなり~に美味しかった事に、二人はある意味悔しい思いをした。

 

 そして、何より、トレントモドキがヤバかった。あの魔物は最大の強敵だったと言える。

 

 お陰様で、攻略を忘れて殲滅してしまったくらいだ。その枝に実る果実欲しさに。

 

 さて、途中で目的を忘れて暴走したり、ハジメが暴走したり、レンジが暴走したりで……、ようやく辿り着いた五十階層。

 

「……この場所がオルクス大迷宮と同じ百層構造なら、何かしらあるな」

「はははっ、運命の出会いとかかハジメ?」

「そんなお気楽なイベントで済むなら、それでもいいさ」

 

 そう笑い話をする彼等は、五十階層にある異質な空間に来ていた。

 

 突き当りにあるやけに空けた空間。そこには高さ三メートルはある装飾の為された両開き扉があった。そして、扉の両脇には一つ目巨人の彫刻が半分壁に埋め込まれるような形で作られていた。

 

 奈落では、自然環境が変わる階層は多くあったが、このような人工物が現れたのは初めてだった。

 

 ようやく、現れた変化に期待と警戒心を宿すハジメ。その様子を横で見ていたレンジはついつい“大きくなったものだ”的な年配の保護者っぽい事を考えていた。いや、ある意味そうなのだが。

 

「さながらパンドラの箱だな。……さて、どんな希望が入っているんだろうな?」

「……まぁ、あんまり期待は出来なそうだな。今までの感じだと」

 

 その通りだと思い、ハジメは好戦的な顔付きで目をギラギラとさせる。

 

「あぁ、その通りだ。でも俺は、生き延びて故郷に帰る。日本に、家に……帰る。邪魔するものは敵。敵は……殺す!」

 

 それのハジメの誓いをレンジが聞いたのは、ここに来てが初めてだった。ハジメの“生きる”と“帰る”という強い意志の現れだ。

 

 ──殺す。……殺してやる。彼女を苦しめ奴を。彼女の敵を。俺の母の敵は、俺の敵。敵は殺す。邪魔するヤツも皆に敵だ! 絶対に殺してやる!!

 

 そのハジメの言葉を聞いて、ふと思い出したかつての自分の言葉。必殺の誓約の言葉だ。

 

 過去の自分と、ハジメの姿が重なった。かつて成りたかった、母が聞かせてくれた“理想の英雄”ではなく、道を外した“血生臭い英雄”に堕ちてしまった自分と。

 

 ──……何かを決意するのは、素晴らしいことだ。強い意志を宿すのは、生きる者の義務だ。……でも、だからと言って、俺のように道を外す必要はない。

 

 ああ、支えてやらなければ。かつての自分と同じ道筋を歩もうとする彼を。ハジメには、あんな人生を歩む必要はない。

 

「……ハジメ」

「ん? どうかしたのか?」

「ここは丁度いい区切りの場所だ。誓いを立てよう」

「誓い?」

「ああ。帰るまでの、“必殺と死守”の誓約」

「必殺と死守?」

「敵は必ず殺す、仲間は死んでも守るって誓いだ。俺がお前を、お前が俺を、死んでも守る。そして、敵は一切手を抜かずに、必ず殺す。お前の敵でも、俺の敵でも」

「ハッ! 良いじゃないか、気に入った!!」

 

 ハジメとレンジはお互いにドンナーとフルミネを抜き取る。お互いの腕を絡ませ、互いの相棒の撃鉄を額に当てる。

 

「「お前は俺が守る。死を恐れずに。お前の敵は、共通の敵。そして、敵は必ず殺す。──この意志に掛けて」」

 

 少しの沈黙の後、二人は腕を解く。しかし、唐突にハジメが苦笑いを浮かべる。

 

「……と言っても、俺の方が足を引っ張るだろうけどな」

「そりゃ、まぁ、な? お互い様さ。少しずつでも追い付いてこい」

「ああ、勿論そのつもりだ。あと、誓いを立てたんだ。ここが終わったら話してくれよ、例の件」

「──あぁ。全部、話すよ」

 

 穏やかな声で了承するレンジ。ハジメもそれに満足したのか、ニヤリと笑って返す。

 

「じゃあ行くぞ、相棒!」

「鬼が出るか蛇が出るか。顔、拝みに居ますかっ」

 

 そうして二人が一歩踏み出した時──

 

 オォォオオオオオオ!!

 

 扉の両側に彫られていた二体の一つ目巨人が周囲の壁をバラバラと砕きつつ動き出したのだ。壁と同化していた灰色の肌はいつの間か、暗緑色へと変色している。

 

 ドパァンッ!

 ドパァンッ!

 

 しかし、そこまでだった。二体のサイクロプスの頭が同時に爆ぜたのだ。

 

 右側をハジメが、左側をレンジが。無慈悲にもドンナー・フルミネが怒りの火を吹いた。カッコ良く決めたのに、出鼻を挫かれた事に対する怒りではないと思いたい。

 

 あまり余る威力で頭を吹き飛ばされた二体のサイクロプス。大量の脳髄が散乱しているが、今さらそんなものに反応するような二人ではない。

 

 一応、門番的な役割を持っていであろうし、ハジメとレンジは美味しく頂いた。

 

 食べ尽くしたサイクロプスから拳くらいの大きさの魔石を回収し、両開き扉の装飾しては不自然な窪みがあったので、捩じ込んでみた。

 

 普通に嵌まった。ガチャリ。そして、扉のロックが外れたようだり

 

 代表して、ハジメが扉をすこーしだけ開いてみた。顔を覗かせるには丁度いい幅である。

 

 そして──、

 

「……だれ?」

 

 レンジが扉を閉めた。

 運命の邂逅は先延ばしになったようだ。

 

「レ、レンジ?」

「ハジメ。あれはお前にはまだ早い。健全な少年のままで居てくれ」

「はぁ?」

 

 ハジメは確認出来なかったようだが、レンジには確認する事が出来た。部屋の中に居たのは……

 

「真っ裸の女の子だ」

 

 正しくは、下半身が鉱石のようなモノに埋まっていたが。

 

「お、おう、そうか」

「しかも、十二、三歳くらいだ」

「なるほど?」

「……手を……出すなよ?」

「俺を何だと思ってやがる」

 

 もの凄く真剣な顔でそんな冗談を言うレンジに、呆れ顔を浮かべるハジメ。

 

「それに、不自然だろ?」

「………確かにな」

「邪悪な気配は無かったが、こんな所に居る辺り、人間じゃあない」

「魔物か?」

「いや。ああいうタイプの敵は一柱で十分だ」

「???」

 

 何やら不機嫌そうな顔をするレンジに、事情を知らないハジメは首を傾げることしか出来なかった。

 

 中にいる人物を見たレンジだが、中に居たのは絶世の美少女であった。それは間違いない。

 

 しかし、その絶世の美しさが、レンジが最も嫌う神である恋愛神(ラヴァリア)を思い起こさせたのだ。

 

 もし仮に、もう一度ラヴァリアと殺し会う機会が与えられたのならば、次は奴の全てを獄炎(ヘルズフレイム)で灰にしてやる。

 

 そんな、最も憎い神を思わせる程に美しい少女に、レンジは警戒心を抱く。

 

「まあ良い。……例えお前がロリコンでも、誓いは違わない」

「誰がロリコンだ、このバカヤロウ」

 

 

 




 
 ユエちゃんは次回です。

 あと、レンジがユエの事を警戒しているのは、ハジメ君とユエちゃんの関係を崩したくなかったからです。
 まぁ、多少変わってくるとは思いますが。

 今日は21時くらいにも、もう一話投稿すると思います。もしかしら、多少時間が擦れかも知れませんが。

 それから、明日は仕事が休みなので……。
 今日の夜からガンバるゾイっ! なんつって。
 
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