ありふれた転生で世界救済   作:妄創

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 すいません遅れましたぁぁぁ!!

 ユエちゃん登場です。
 そして、序盤にハジメにレンジの長い説教がありましす。

 凄く長いので、台詞の鉤括弧ごとに改行を行いました。見易いかな?っと思いまして。

 読み飛ばしり、読み流して頂いても大丈夫です。
 


奈落の吸血姫

 

 

 

 ハジメとレンジが再び扉を開けて、ずこずこと中へ入っていく。

 

 すると、やはり、というか当然というか、要注意人物が話し掛けてくる。

 

「……お願い! ……助けて……」

「「嫌です」」

 

 二人ともドライだ。

 

 部屋を軽く見回してみるが、どうやらこの少女の封印以外は何も無さそうである。

 

「ど、どうして……何でもする……だから……」

「ん?今何でもするって言ったよねぇ?」

「やめろ、バカヤロウッ」

 

 少女の一言に、反射的に有名な台詞で反応するレンジに、反射的にツッコミをいれるハジメ。二人は仲の良い相棒なのだ。

 

「いや、でも言わなきゃダメだろ?」

「ダメじゃねぇーよ、ダメじゃ。むしろ、反応すんのがアウトだわっ!」

「でも……、何でもしてくれるってよ?ハジメさん的にはポイント高いんじゃない?」

「……あのさ、俺をロリコン扱いするの、やめねぇーか?マジで」

「……エッチ…」

「根源のお前は黙ってろ」

 

 やはり、手厳しいハジメさん。美少女の「……エッチ…」発言にもドライに返す。

 

「あのな、こんな奈落の底の更に底で、明らかに封印されているような奴を解放するわけないだろう? 絶対にヤバイって。見たところ、封印以外何もないみたいだし……脱出には役立ちそうにもない。という訳で……」

「次の奴に頼んでくれ、うちのロリコンは──腹ァ!!」

 

 ハジメはストレートをレンジの鳩尾に叩き込んだ。常人どころか、超人でも洒落にならない威力だが、生憎と彼は十二の神を殺して力を奪った大英雄──神人だ。

 

 胸骨が折れて肺に突き刺さり、ついでに幾つかの内蔵系統がヤられても死にはしない。滅茶苦茶痛いけど、『蘇生神(アライフラ)の心臓』のお陰ですぐに元通りだ。

 

 客観的にみれば全て正論なハジメの答えに、あっさり断られた少女はもう泣きそうな表情で必死に声を張り上げた。

 

「ちがう! ケホッ……私、悪くない!」

 

 悶え苦しむレンジの回復を待つハジメには、取り繕う島は無かった。

 

 だが、しかし。

 

「裏切られただけ!」

 

 もう話をする気は無かった。

 

 だが、彼女の叫びが、閉ざしてしまう前に少年の心を開かせた。

 

(何やってんだかな、俺)

 

 それがどんな戯れ言を言おうと、話をするつもりは毛頭無かった。奈落の底の底に厳重に封印されているのような奴だ。それ相応の理由が付いて回る筈である。レンジは邪悪な存在ではないっと確信していたようだが、同時に警戒するように注意を促してきた(ふざけていたが)。

 

 だが、“裏切られた”──その言葉にここまで心を揺さぶられようとは、誰が予想できただろうか。あの事件の事はもうどうでもいい筈なのに。この奈落という場所を生き抜く為には不要な怒りや憎しみは切り捨てた。

 

 それでも、心は揺さぶられた。やはり、無意識下では今も捨てきれていないというのか? あるいは、同じ境遇に同情してしまっただけか……。

 

 切り捨てたモノの残滓が心にこびりついている。ハジメは大いに葛藤する。

 

 これは駄目だ。切り捨てたのだ。“生きる”ために捨てなければならない。修羅にならなくては、ここでは生き延び──

 

 ぽんっ。

 

 優しい感触を肩で感じるハジメ。気が付けば、右肩をレンジに優しく撫でられていた。

 

「──良いんだよ、ハジメ。悩まなくて、良いんだ。今、君がやりたい事をやって。確かに、“生きる”事は重要だ。……でも、どうして生きる事が重要なのか、考えた事はあるかい?」

 

 いつも以上に美しい声で、そして美笑で問い掛けてくるレンジ。

 

「生きる事の、意味か?」

 

「そうだよ。“生きているからには、生き続けなくてはいけない”。これは、ただ生きていれば良いって意味じゃないんだ。ただ生きているのと、ただ死んでいるのは対して変わりがない。ただ消費と生産があるだけの違いしかない。──そんな寂しい生き方はしなくて、良いんだよ」

 

「寂しい生き方、なのか? ただ生きている事は、寂しい事なのか?」

 

「ああ、寂しい。もの凄くだ。消費と生産とは同率だ。どちらか一方が上回る事なんてない。そして命も有限だ。どんなに生き続けようが、それには限りがある。終わりは必ず来るものだからね。……でも、ただ消費と生産を繰り返す命を終えた時、何が残る?」

 

「……遺産、とか?」

 

「ははは、随分現金な答えだ。確かに、そうだね。遺産は残る。でも、君の意志は? その志しは? ……そう言った君個人の、本当に個人のモノは何も残らないんだよ。ただ消費と生産を繰り返す人生では。……それは凄く悲しいことだ。精一杯生きて、足掻いて、そして死んでも何も残らない。財産や土地、遺産は残るかも知れないけど……それは君の死の付属品。そして、他人が君の生と引き換えに得る血に濡れた銀貨なのさ」

 

「俺の死の付属品? 血に濡れた銀貨?」

 

「そう。君は忘れて去られる。君が生きていく間で思った事も、幸せに過ごした時間も、君が生き抜こうとした意志さえも。全てが、ただの消費と生産で終わる」

 

「……だ……やだっ。……そんなのは嫌だっ!」

 

「そうだろう? なら、誰かに意志を伝えなければならない。継いでもらわなければならない。──それを、自分が生きる事と、それを脅かす敵を殺す事しか出来なかった君には出来るかい? 答えは、“いいえ”だ。絶対に出来はしない。今の君では、出来はしない。生きる事と殺す事しか出来ていない君には、ね」

 

「どうすれば良い! どうすれば、俺は──」

 

「簡単な事だよ。生きる事と殺す事で、消費と生産をしているなら、助ければ良い」

 

「……助ける?」

 

「そうだよ。自分以外の誰かを助けてあげるんだ。守ってあげるんだ。君の手に入れた力で、これから手に入れる力でも 」

 

「俺の力で? 助ける? 守る?」

 

「そうだよ。その為の“必殺と死守”の誓約だ。──先ずは自分自身がその命を全うできるように、敵は必ず殺す。そして、自分自身の命が尽きようともその意志を生かし続けるために、仲間は死んでも守る。そういう誓いだ」

 

「……なら、レンジが居れば別に──」

 

「それは、違う。違うんだよ、相棒──いや、南雲ハジメ。俺とお前は対等じゃない。お前は、俺よりずっと弱い。──そんなお前の意志じゃ、俺の中には、俺の心には残らない! ただの何れは忘れてしまう記憶でかないんだ! だから、今のお前では何も残せない。寂しい生き方のまま、終わってしまう」

 

「じゃあ! どうすれば良い!? どうしたら良いんだよ!?」

 

「──対等な、誰かを助けろ。対等な人こそが、一番理解してくれる。上位の者でも、下位の者でもダメだ。もっとも、君を理解してくれる人を助けて、守ってあげるんだ。そして、意志を伝えろ、受け継がせろ」

 

 そこで、チラっと少女に目を合わせるレンジ。あまりにも美しく影がないような儚いがある美形と、目があった少女はほんのりと頬を紅く染める

 

 どうやら、自分に何かさせたいようだっと感付く少女だが“何を”とまでは分からない。だが、口を挟むような時ではないのは、流石に理解出来る。

 

「ハジメ、君は裏切られた。だから、これ以上誰かを信じる事は難しいだろう。しかし、信用無しには対等な関係とは、築けない。──でも、少しだけ話を聞いてあげても良いだろう? 同じ境遇の彼女からなら。話を聞いてから、君が決めるんだ。──君自身の意志で、助けるか、見捨てるか」

 

「……ああ、わかったよ」

 

 そこでレンジは少女にウィンクをして見せる。彼女はすぐにその意図に気が付き……

 

「……お願い…します……話を、聞いて下さい……」

「分かったよ。で、裏切られたと言ったな? だがそれは、お前が封印された理由はなっていない。普通、裏切るのなら、再帰出来ないよう殺してしまうのが妥当だならな。もし仮に、お前の話が本当だとして、裏切った奴はどうしてお前をここに封印したんだ?」

 

 “話を聞いて”“いいよ”という主旨の言葉のキャッチボールをした筈なのに、自分から質問しちゃうハジメさん。これが、のちに魔王と呼ばれる所以の一つかも知れない。

 

「私、先祖返りの吸血鬼……すごい力持ってる……だから国の皆のために頑張った。でも……ある日……家臣の皆……お前はもう必要ないって……おじ様……これからは自分が王だって……私……それでもよかった……でも、私、すごい力あるから危険だって……殺せないから……封印するって……それで、ここに……」

 

 ポツリポツリと自分の身に起きた事を話す吸血姫。

 

 その話を聞きながらハジメは呻いた。レンジも自分の境遇と少しばかり似ていて、渋い顔付きになってしまう。中々に波乱万丈というか、散々な人生である。

 

 だが、いくつかの気になるワードに、自分の気持ちに蓋をしながらハジメが尋ねる。

 

「お前、どっかの王国の王族だったのか?」

「……(コクコク)」

「殺せないって、なんでだ?」

「……勝手に治る。怪我してもすぐに治る。首落とされてもその内に治る」

 

 ハジメは、そういう奴なら俺と知ってるな、と隣にいるレンジにジト目を向ける。

 

 確かに、レンジも全く同じような回復能力を有しているが、流石に首は無理だ。いや、前世ならば可能だっただろうが今世は今のところ不可能だと思われる。確認していないので分からないし、確認したくもない。

 

「ほ~、それは凄いな。……もしかして、それが“すごい力”ってヤツ?」

「ち、ちがう!」

 

 不死身の力にあまり感心がないハジメの様子に、少女はこのままではマズい! と慌てて弁明する。

 

「魔力、直接操れる! ……陣もいらない!」

 

 それは、ハジメも出来る。肉体の半魔物化による恩恵の一つだ。身体強化や錬成などの魔力を使う技能に関しては、詠唱も魔法陣も必要としていない。

 

 だが、それでもハジメは魔法適正ゼロ。魔力を直接操る事は可能でも、魔法を実際に扱うには巨大な魔法陣が必要な事に変わりはなく、依然として碌に魔法が使えない。

 

 だが、この娘は高い魔法適正があるので、数多ある魔法を詠唱や陣無しに扱う、という反則的な力を秘めているだろう。タイムラグ無しの魔法連射、さらには不死身に近い回復能力。これはもはや、勇者のチートスペックすら凌駕しているだろう。

 

「……助けて……」

 

 でも、居るんだよなぁ。同じ感じで完全上位互換の奴が……、とハジメが思うのも仕方無い。

 

 何せ、こちらには神の力を秘めたる大英雄様がいらっしゃるのだから。元より、勇者スペックを鼻で笑うほどのチート、いやバグの化身が。

 

 その事には当の本人であるレンジも気付いており、冷や汗を流しながら苦笑をありありと浮かべている。

 

 しかし、ハジメの出した結論は意外にも……

 

「……悪い、レンジ。こいつの事……助ける事した」

 

 そう言って、彼女を捕らえている立方体に手を置いた。

 

 そして、もう何も迷わずに、錬成をはじめる。ハジメの深紅の魔力が放電するかのように、立方体に走る。

 

 だが、いつものようにすんなりと錬成が出来ない。イメージ通りに変形する筈の立方体は、まるでハジメの力に抵抗するかの如く、錬成を弾いた。

 

 しかし、全く錬成が通じない訳ではないようだ。緩やかに、少しずつにではあるが、少女を封印している立方体は形を変えはじめている。

 

「ぐっ、抵抗が強い! ……だが、今の俺から!」

 

 ハジメはどんどんと湯水の如く立方体へ魔力を注ぎ込む。そのあまりの魔力量に部屋全体が、ハジメの深紅の魔力に照らしだされていく。

 

「……さて、お前に決めさせた訳だし──俺も少し力を貸そう」

 

 レンジが錬成最中のハジメの手に、そっと自分の片手を重ねる。その時、ハジメは、神と触れ合った。

 

 地脈神(グランドル)の力と、ハジメの力が合わさる。

 

 次の瞬間、立方体は一瞬にしてドロッと流れ落ちた。少女に掛けられていた枷が今ようやく外された。

 

「……ありがとう」

 

 痩せ衰えた体で何とか自重を支えて彼女はお礼を述べる。

 

 途中からレンジの助けがあったものの、ハジメも短い間で魔力を大量に消耗したので、ゼハーゼハーと肩で呼吸をしている。

 

 レンジは……レンジは完全に保護者目線で二人に暖かな笑顔を作っていた。消耗した気配は一切ない。

 

「……名前、なに?」

 

 唐突に、彼女がハジメとレンジに問い掛けてくる。二人に向けるその顔が少し赤みを帯びているのは何故だろうか?

 

「ハジメだ。南雲ハジメ。こっちが、レンジ。蓮ヶ谷レンジ」

 

 優しげな表情を仄かに浮かべたレンジが、無言ながらも指をヒラヒラさせて挨拶する。彼女の顔の赤みがほんの少し増した気がする。

 

「お前の名前は?」

 

 彼女は「ハジメ、ハジメ。レンジ、レンジ」と、大切なものを、忘れてはいけないものを心に刻みこむように繰り返し呟いた。そして、問われていた自分の名前を口にしようと思った、ところで止まった。

 

 代わりに、何やら思い直したようにハジメとレンジにお願いをした。

 

「……名前、付けて」

「は? 付けるってなんだ。まさか忘れたとか?」

「──よし、相棒。任せるよ」

「おいコラ、何に逃げてんだレンジ」

 

 そればっかりは了承出来ないレンジ。

 

 彼女のために、良い名前は思い付きそうとない。何せ、彼女の容姿から連想されるのは大体が神様関連だ。

 

 大嫌いな奴に関連する名前なんて付けたくない。

 

「もう、前の名前はいらない。……二人の付けた名前がいい」

「……はぁ、そうは言ってもなぁ」

 

 だが、彼女の言わんことも分からないではないハジメ。おそらく、ハジメのように新しい自分へとなりたいのだろう。その一歩が新しい名前なのだろう。

 

 少女は期待に満ちた目をハジメ、とレンジに向けている。勘弁してくれっと思うレンジだが、ここで降りることも出来ないだろう。

 

 何とか、良い名前を捻り出そうと努力するも中々出てこない。何柱かの神(女神)が脳裏で、呼んだ? とひょっこり顔を出してくるのが、非常に鬱陶しい。

 

「“ユエ”なんてどうだ? ネーミングセンスないから気に入らないなら別のを考えるが……」

「ユエ? ……ユエ……ユエ……」

「ああ、ユエって言うのはな、俺の故郷で“月”を表すんだよ。最初、この部屋に入ったとき、お前の金色の髪とか紅い眼が夜に浮かぶ月みたいに見えたんでな……どうだ?」

 

 確りとした理由がある名前に、少女がパチパチと瞬きする。ついでに、レンジも。

 

 ハジメの野郎、難易度を上げてきただと……!?

 

 これには基本的に無表情な彼女も、どことなく嬉しそうな仄かな表情を浮かべる。

 

 そして、目をキラキラさせながらレンジの方を向くのだから困ったものだ。

 

「……わかったよ。じゃあ、俺からは家名を与えよう。“ルージュロリエ”だ」

 

 レンジは新たな家名を彼女に与えながら、未だ素っ裸だった彼女に、自分の上着を掛ける。

 

「……ルージュロリエ……ユエ・ルージュロリエ。……私は今日からユエ、ユエ・ルージュロリエ。二人ともありがとう」

 

 ちなみにだが、フランス語でそれぞれ、ルージュは赤をロリエは月桂樹を意味する。

 

「──上、か」

 

 あまりにも唐突だった。

 

 レンジはいきなり腰に据え付けたホルダーからフルミネを抜き取ると……、

 

 ドドドドドハァンっ!

 

 天井へと連続射撃を行う。これが凄い事に、まるで弓道の継ぎ矢の如く、すべての弾が前の弾を押し出すように同じ場所へ着弾していた。

 

 しかし、それだけではない。レンジの扱うフルミネの弾丸は、彼の手によって付与術式が付けられている。その効果は──

 

「──爆ぜろ」

 

 爆裂術式『炸裂の種(シード・バースト)』。小さな爆発を起こす程度の弱い魔術だが、同じ術式に相乗効果をもたらす。その相乗効果の力は、爆発力を二乗して上乗せるほどだ。

 

 つまりだ。そんな魔術が付与された弾丸を同じところへ五発も撃ち込めば……

 

 ドコォォォォン!!

 

 大爆発は不可避である。

 

 

 




 
 お疲れ様です。
 ひさびさに良い文字数いきました。

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