ありふれた転生で世界救済   作:妄創

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 またまた、テキトーに書いております。


ありふれた英雄

 

 

 

 のちの英雄が、捨てられた眷属である神人オラトリアと出会い、共に過ごしはじめて十年と少し。

 

 男児は少年へと成長し、今や十五歳くらい。今は、オラトリアに貰った“アルリム”という名を名乗っている。

 

 アルリムの成長速度、いや学習能力は恐ろしく、オラトリアが溜め込んだ数千年の知識を全て吸収している。親の顔を見てみたいものだが、彼は孤児。今は、オラトリアが母親だ。

 

 この少年を拾ってから、言語や文字を教えるのに苦労したが、一つ理解すると連鎖的に自分で理解していくので、それも初めだけ。

 言語や文字を教えた後は、オラトリアが今まで経験してきた出来事を毎日話して過ごした。

 

 いつも真っ直ぐに此方の目を見て話を聞いて、自分なりにいろんな事を考えてコロコロと表情を変える少年を見ていて、彼女は楽しかった。

 

 一つ不安いや、不満があるとすれば……我が儘を全く言わない事だろうか。

 

 アルリムを拾ってから十年ちょっと。アルリムは何一つ我が儘は言わなかったし、何かを嫌がり愚図るような事もなかった。

 

 ただ、与えられたものを嬉々としてこなして、どんどん自分の力へと変えていく。勉強も嫌がらないのでいろんな事を教えていたら、気が付いたら創世記に神々の使っていた魔法を教えていたくらいだ。

 

 何処か、おかしな子供ではあった筈なのが、そんな事より自分にいつまでも笑顔を向けて、自分に何かを求めて寄ってくるアルリムを見ていると、そんな事はどうでも良くなっていた。

 

 そして、気が付けば、十年以上の月日が流れ、今の時代で成人とされる歳である、十五歳にまでアルリムは成長していた。

 

 歴史の勉強や、自己流の術式の構築、肉体鍛練を積み重ねて少年へと成長した彼は、中々に魅力的な男性になったと思う。

 

 そう、思う、だけなのだ。アルリムがいくら魅力的になろうとも、そこに恋愛感情などはオラトリアには芽生えない。

 

 育ての親で子供して見ているから、という親心があるからではない。恋愛神ラヴァリアから、その感情を与えられていないからだ。

 

 同族といえる眷属種達に、同族愛を感じる事はある。だが、一個人として一個人を愛する事は出来ない。それを理解することはできるのだが、共感することはできない。

 

 故に、アルリムにも教えてあげる事ができない。オラトリアがアルリムに教えられる愛とは、慈愛でしかない。大切な一個人を作る、という事は教えられない。それが、悔しい。

 

「母さん、どうしたの? また、何か渋い顔してるよ?」

 

 どうやら、眉間に皺がよっていたらしい。いくつかの羊皮紙に必死に何かを書いていたアルリムに心配されてしまった。

 

『……あら、アルリム。ごめんなさいね、小皺が増えちゃうかしら?』

「歳取れないから、心配ないんじゃあ……」

『気分の問題です』

「ア、ハイ」

 

 まぁ、こんな穏やかな暮らしを子供と出来るのだからいいか。と一人で納得してしまうオラトリア。

 

 本当なら、もう成人の彼に世界を旅させていろんな所へ、自分自身の目で学びに生かせた方がアルリムの為なのだろう。

 

 そうなれば、恋人の一人二人連れて帰ってくるだろう。そしてたら、言ってやりたいのだ。「家の息子にちょっかい出してんじゃねえー、阿婆擦れども!」と。

 

『……そう言えば、アルリム』

「なんだい、母さん?」

『貴方の言っていた、“何でも燃やせる”魔法の術式はどうなったのかしら?』

「あぁ、コレね。今、丁度出来たところだよ」

 

 なにやら、羊皮紙に書き込んでいたのは、術式の理論と魔法陣らしい。精密かつ繊細な魔法陣と、それに対する大量の書き込みがされている。

 

 正直、この術式を使える者は、この世に一人しかいないだろう。知識が足りな過ぎる者には勿論使えないし、オラトリアにも使えない。

 

 ごく当たり前に、自然と、いや世界そのものと調和しているアルリムにしか使えない。この魔法の使うには、世界の理に触れる事が条件とされるのだ。

 

 まあ、世界の理を燃やす魔法など、一体誰が何のために使おうと思うのかは分からないが。

 

 いや、使ってもらいたい人物なら、一人居る。永久の時に、存在し続ける一人の少女なら。

 

「まぁ、魔力消費悪すぎるから、使えないけどね」

 

 ダメだこりゃ、と首を振るアルリム。いや、実用性がないだけで、扱うこと事態は可能だ。

 

 魔力を使いきって倒れる可能性は大だが。

 

『……これなら、私も…』

「何か言った?」

『な、何でもないわ』

 

 何処かそわそわしている母親に首を傾げるアルリム。

 

 まさか、子供に自分の存在を燃やして終わらせてくれ、などと言える筈もない。だが、もし仮に口に出せば、これまでの事を考えるに彼なら了承してくれるかも知れない。

 

 母親がそんな思いを抱いているとは知らず、アルリムは自分の組み立てた術式が改善できないものか、考えに耽るのだった。

 

 

 

 

 

 しかし、幸せな日々は唐突に終わりを告げる。

 

 ここ数年いや、実際は数百年前から水面下で起きていた神々の争いが、ついに本格的起こったのだ。

 

 と言っても、神同士の直接対決ではなく、眷属種同士の潰し合いだ。しかし、それは大きな戦争だった。

 

 普人族と魔人族の戦争だった。さらには、吸血鬼と獣人族も争いをはじめた。それどころか、世界中の全ての眷属種が相対する種族と水面下ながら衝突し合っていた。

 

 その影響は、アルリムとオラトリアにもあった。

 

 近郊諸国からの、徴兵命令がアルリムの下へ来たのだ。さらにも、オラトリアにも別の召集命令が来ていた。

 

 女性に送られてくるような物だ、どのような内容かは察するに難しくない。

 

 オラトリアはこの命令に、アルリムが素直に従うと思っていた。だが、実際は違った。

 

 初めて、出会って初めて、アルリムが激昂した。

 

「ふざけているのか! なんだ、この内容は!? 母さんを馬鹿にしているのかっ!」

 

 しかも、自分の為に。オラトリアは胸にグッと込み上げてくる熱いものを感じた。

 

 しかし、アルリムを落ち着かせなければ。初めて激怒するのだ、感情の昂りでとんでもない事をしてしまうかも知れない。近郊諸国の王族殺しとか。いや、本当にやりかねないし、出来てしまう実力もあるのだから困る。

 

『もう落ち着きなさい!』

「でも、母さんっ、これは……!」

『大丈夫よ、私の事は。少しの間、身を隠せば良いだけだもの』

「……ッ。でも……! ……いや……うん。大声出してごめんなさい」

 

 なんとか、自分自身に折り合いをつけたアルリムが、激昂した事に素直に謝る。

 

 本当に、素直な子だなぁ、そう思う。そして、どうてだろうか? ただただ、愛らしく思える。

 

 もう子供扱いされるのはもう嫌な歳だろうけど、オラトリアはアルリムの頭をどうしても撫でたくなってしまい、スゥと手を伸ばし──

 

 

 伸ばしたその時、それはやってきた。

 

 何故このタイミングだったのか、何故今日この日だったのか。誰にも分からない。いや、大した理由はないのだろう。

 

 本当に、ただの偶然だったのだろう。

 

「──いやはや、まさかまだ存在していたとは、な?我等の最初の眷属よ」

 

 その人物は美しい声音の持ち主で、輝かしい金髪を腰まで伸ばした長髪の男。着ている服がいくつもの極彩色をベチャベチャに塗りたくったような奇抜なもの、というユーモアのある人物である。

 

『……うそ、どうして……?』

 

 その人物の登場に、驚愕を隠しきれないオラトリア。

 

 一方、アルリムは全く見覚えのない人物だった為、はて? どちら様? と首を傾げている。

 

「……何だ?その会話の方法は?──ぁあ、汚ならしい声だったから、我が禁じたのだったなぁ」

 

 その言葉を聞いて、アルリムが牙を剥いて襲い掛かった。

 

 コイツ! コイツが、母さんの声を奪った!

 ──芸術神ハルモニア!!

 

 攻撃術式を即座に展開して襲い掛かるが、ハルモニアは全く動じた様子も無く……

 

「──コバエ如きが、“動き回るな”」

 

「ッ! なんだ!?」

 

 ガクンっと、アルリムの体から力が抜けて、その場に崩れ落ちて動かなくなった。どうにもこうにも、体を動かす事は出来ず、喋る事と首を動かすくらいが精一杯だ。

 

「“煩い”。羽音もたてるな」

 

 そして、喋る事すら出来なくなった。

 

『……何の、ご用があっていらっしゃったのですか? 神、ハルモニア様』

「そうだなぁ。強いていうならば、なにやら他の神々が地上で煩くなったので、我も少し覗いてみたのだ。そしたら、懐かしい我が作品を見付けたのでな。……まったく、改めて見ても不出来なモノだな、貴様は」

 

 ギシッ! とアルリムの体が力む。何? とそれにハルモニアが反応するが、それ以上は何も起こらず興味を失って、やがて視線をオラトリアに戻す。

 

「──さて、わざわざこうして降りてきたのだ。不出来なモノは壊しておくか……」

『……え?』

「“死ね”」

『ウッ!……──ァァアァアアアアッ!!』

 

 突然、オラトリアは全身を絶え間無い激痛に犯された。それだけではない、言い様のない恐怖が彼女の精神を蝕み、悪寒が全身を駆け巡った。

 

「貴様には、生死は存在しない。故に、我には殺す事は出来ぬ。代わりに、永遠に死の痛みと恐怖、そして冷たさを味わい、その魂を破壊されるがいい!」

 

 その時、ドンッ! とアルリムが腕を地面に突いた。神によって動きを封じられているのにも関わらず、無理矢理動かしたせいでブチブチと身体が中から崩壊していく。

 

 勿論、内部から身体が壊れ、激痛がアルリムを襲っている。しかし、そんな事はどうでもいい。自分の身体はどうなっても構わない。

 

 母さんを、母さんを助けなければっ!

 

 その意志だけで、彼は神の力に抗う。

 しかし、神とは無慈悲だ。腕を突くのが精一杯、身体を起こす事は出来そうにもない。

 

「ほほぅ、本気ではないとはいえ、我が力に歯向かうとは。中々に面白いモノを飼っているな? 何、顔もかなりの美形ではないか。ラヴァリアに取られる前に我が──」

『やめなさいっ!くぅ、……アルリムに、手を出す事はっぐうぅ、私が許さない!!』

 

 それは母の純粋な叫び。我が子への無類の愛情の表れ。

 

 それを見たハルモニアは……ニヤリと笑う。

 

「……なるほど。こういう劇も悪くない」

 

 そして、今にも立ち上がりそうなアルリムの頭をポンポンっと叩く。

 

「──さぁ、見せてもらおうか。最愛の母の死に際に、最愛の息子がどう母を救うのか」

 

 フハハッ、と笑い声を上げてハルモニアの姿が、宙へと溶け込み消える。

 

 その瞬間、アルリムの身体が自由を取り戻す。すぐに苦しむ母の下への駆け寄る。

 

「母さん! 大丈夫!? しっかりして!」

 

 すぐに、回復作用のある魔法を施すが、オラトリアの容態はまったく良くならない。

 

 一体何をされたのか、今のアルリムには分からなかった。

 

『ッ!……ぅ……大丈夫よ、アルリム』

「何処が!? 全然、大丈夫じゃないだろ!」

 

『大丈夫よ。……もう、治らないから』

 

 アルリムの身体が硬直した。すぅーと体から熱が逃げていく。しかし、心臓はバクバクと忙しなく動き続けていく。

 

「やめてよ、母さん……こんな時に、悪い冗談なんてさ」

『ッ、ふぅー……私は、悪い冗談なんて言わない、でしよ?』

「……嘘だ。……嘘に決まってるっ」

『嘘、じゃないわ……ハルモニアの言葉、は絶対。、……私には生死の概念はなく、ただ存在するだけのモノだった』

「やめて、母さん……今、新しい術を考えるから、だから」

『ダメよ。例え、出来たとしても、死とは取り除いていいものではないのよ? 神様でもない限りね』

 

 この世界には、死を取り除く方法がいくつか存在する。基本的には神頼みになるのだが、確かにある。

 

 しかし、それは神のみ許された領域だ。アルリムが踏み込んでいい場所ではないし、母親としてあんな神々の仲間入りなどさせたくなかった。

 

「どうして! 母さんは何も悪くないのに!? 全部あいつだ、あいつ──ハルモニアが悪いのに!!」

『そうかもね。でもね……ッ……生死に誰かのせい、なんてないのよ?』

 

 ただ、ちょっとだけ関わったてだけの話よ、と彼女はアルリムを説得する。

 

 このような事になっても神を恨まないのは、彼女の慈悲の心あってこそだろう。

 

「……。……どうすれば、いい? 母さんを、救えるの?」

『……そうね。もう、この死の痛みから、私が解放されるには──存在を消されるしかないわ。そして、それが出来るのは、貴方だけよアルリム』

「……何でも燃やせる魔法」

『、……そうよ』

 

 違う。こんな為に。こんな事の為に。

 こんな事の為に創った魔法じゃない!

 

 母さんを、殺して(消して)しまう為に、創ったんじゃないのに!

 

 泣け叫びたかった。母親を救えない能無しの自分に、あの神をどうにも出来なかった無力な自分に、悔しい思いが一杯で、どうしようもなくて、ボロボロと涙を流す。

 

 けど、死を与えられた母親が泣いていない以上、自分が泣くわけにはいかない。アルリムはギュッと歯を食いしばる。

 

「分かったよ、母さん」

『……ありがとう。貴方のお陰で私は死ぬ事が出来る。ようやく、夢にまで生と死を迎える事ができる。本当に、ありがとう。愛しい愛しい我が子よ。私を救って(・・・)くれて、ありがとう……』

 

 ポッと、彼女の体に青い炎が灯った。アルリムの魔法の炎だ。

 

 概念を、理を燃やす炎。それは優しくオラトリアの身体を包み込みながら、徐々にその存在を滅していく。

 

 熱くはなかった。ただただ、心地の良い熱さを彼女は最後まで感じていた。

 

 

 

 

 

 白い灰になってしまったオラトリアを、それでもアルリムは握り締めていた。母の、最愛の家族の死を嘆き、そこから一歩たりとも動けずにいる。

 

 オラトリアはもう一つ、アルリムに教えてあげられていない事があった。それが、死別。

 

 それは、アルリムとってとても重要な事だったのだが、彼女はもう逝ってしまった。

 

 もし、オラトリアが彼にもっと死について、多くの事を教えられていたら、彼はもっと別の道を歩んでいたのかも知れない。

 

 神々とその数多の眷属種を殺した血に濡れた英雄ではなく、もっと美しいそれこそお伽噺に出てくるような勇者になっていただろう。

 

 誰も殺さずに、創世記から続いていた神々の怠惰と戦争に終止符を打った勇者に。

 

 しかし、もうそんな未来はあり得ない。

 

 

 ──殺す。……殺してやる。彼女を苦しめ奴を。彼女の敵を。俺の母の敵は、俺の敵。敵は殺す。邪魔するヤツも皆に敵だ! 絶対に殺してやる!!

 

 英雄の優しかった心は黒く染まり、青い炎が黒くなる。

 

 とある世界の英雄は、復讐者として神殺しの道へと突き進む。優しい少年は、もう居ないのだろうか?

 

 

 




 
 上手く心理描写とか書ききれませんでした。

 ただ、神様はクソ野郎! と思って頂ければ……。
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