ありふれた転生で世界救済   作:妄創

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 またまたテキトーにやっております。

 誤字脱字ありましたら、申し訳ないです。
 ご報告のほど、お願い事します。

 次回から、ていうか、次回一気に奈落編終了するかもです。


ありふれた最後

 

 

 

「──そして、ついに最後の一柱であるカルデナスを倒して、俺は十二の神殺しを終えたんだよ」

 

 あまり詳細には過程は話さなかったが、十分過ぎるほど内容が分かるように、レンジは自分の前世で成し遂げた偉業、いや犯した禁忌を語り尽くした。

 

 すると、どうだろうか。

 

 ユエは完全に涙を流して泣き、ハジメも目元をゴシゴシしているではないか。

 

「……グスッ……壮絶な、人生だった……」

「……ああ、まさか……そんな前世が」

 

 レンジの思っていた反応とは、少し違った。もっと、こう、怖がられたりするものかと思っていたのだ。

 

 復讐の為に始まった、神殺し。しかも、その延長線にある者達も殺したのだ。あの世界にいた八十億の生命の内、三十億以上をこの手に掛けている。

 

 ただでさえ、神殺しという禁忌を犯しているのに、その足掛かりの為に数多の眷属を絶滅させている。ただの大量虐殺者であると思われても仕方ない。

 

「……怖がらないんだな」

「? ……怖がる、なんで?」

 

 ユエは首を傾げて聞き返してきた。まるで怖がる要素が思い当たらないようだ。

 

「俺は、直接復讐に関係無い者も殺してるんだよ?それも、一人や二人じゃない」

 

 いや、もしかしたらそれがどういう者達だったか、それを伝えれば彼女も恐怖を抱くかも知れない。

 

 やはり言うべきか、と口を開こうとした時、それを止めたのはハジメの言葉だった。

 

「始まりは復讐だったかも知れないが、お前はちゃんと皆を救ったよ。ガキの俺が、そっちの世界の事情を知らない俺が聞いてても分かる。お前は、レンジは、立派な英雄だったよ」

 

 それはハジメの本心。同情から、気休めからの言葉ではない。ユエもハジメに同調するようにコクコクと頷きている。

 

 その姿に心からレンジは、ありがとう、と思った。そして、彼はの心は救われ──ない。

 

 まだ、レンジの前世は、“アルリム”の人生は終わってはいない。人生の続きを、その最期を言わなくてはならない。

 

「さて、ここまでの話は“アルリム”の英雄譚だ。次は──」

「いや、待て待て。ちょっと、待てよ」

「え? むしろ、ここからの話も重要なんだけど……」

「マジかよ。どんだけ濃い人生なんだよ……」

 

 途方にくれる浪人のような声を出すハジメ。ユエもまさか続きがあろうとは思わず、目をパチクリさせている。

 

 別に、二人がレンジの前世の話に飽きた訳ではない。しかし、十二柱の神殺しに続いて、さらに重要な事があるとは思わなかった。

 

 壮絶な前世につい、神殺しを終えてハッピーエンドだとばかり思っていたのだ。だが、そんなのはお伽噺での話だ。偉業を為そうが、禁忌を犯そうが、死ぬまで人生は続く。

 

「ハジメ、ユエ。俺を英雄だと言ってくれて、ありがとうな。……けど、前世の人達はそうは思わなかったんだよ」

「──ッ」

「何?」

 

 そうは思わなかった。そこ言葉を聞いた時、ユエは背中に冷たいものを感じた。ハジメは首を傾げただけだったが、ユエの中には、まさかまさか、という思いが沸き上がってくる。

 

 レンジはいつもの微笑みを浮かべたまま、次の言葉を紡いでいく。

 

「──俺はさ。その三ヶ月後に裏切られる。……生き残った全ての人達に」

 

 再び、ユエの瞳からポロポロとおおつぶの涙が零れ落ちる。察してしまった。彼の死因を、英雄の最後の姿を──。

 

 英雄は禁忌を犯して偉業を成し遂げた。そして、最後には、化け物と呼ばれる。

 

「その日は祝典が開かれる筈だったんだ。神々の支配から解放された祝いがね。でも、祝砲は放たれなかった。代わりに、出席者から無数の魔法が飛んできたよ」

 

 それはあまりにも唐突だった。関係諸国の王族や重鎮達、獣人族の長とその一団。他にもエルフやドワーフ達。まだまだ数多くの者達がそこには居合わせていた。

 

 それなのに、誰一人としてアルリムに攻撃しない者は居なかった。それは共に神殺しの旅へを歩んだ仲間達も、最愛の婚約者も。誰もかも、アルリムに攻撃を行った。

 

「まぁ、訳が分からないまま、成されるがままだったよ。神を殺し過ぎて、もう自分が神みたいな超越存在になっていたから、魔法攻撃自体は大した事はなかったんだけど……どう手に入れたのか『死病神(ベイングラ)の小太刀』を持ってた奴が居てね』

 

 “死病神(ベイングラ)の小太刀”。それは地球で言うならば、死神の持つ大鎌(デスサイズ)である。

 

 切り付けた全ての存在に“死”という概念そのものを付与する、絶対死のナイフ。

 

 そこでユエが話に口を挟む。例えそんな神の武器でも、当時のレンジ“アルリム”ならば何とかなったのでは?

 

「……どうにか、どうにか……ならなかった?」

「うん、どうにかはなったんじゃないかな。でも、しなかった」

 

 どうにか出来たが、どうにもしなかった。レンジはそう語る。“死”から逃れる術は、二つある。

 

 同じ、死病神ベイングラの力で取り消すか、あるいは相対する蘇生神アライフラの力で掻き消すか。

 

 どちらもアルリムならば可能だったが、彼はそのどちらも選ばなかった。

 

「俺は、神のようにはなりたく無かったからね。一人の人間として精一杯生きて、そして最後には死ぬ……母と同じように」

 

 しかし、既にアルリムは神の端くれのようなもの、如何に“死”という概念が付与されたとしても、その場でポックリ逝ってしまう訳でも無かった。

 

「──そう易々と死ねない存在に成ってしまっていたし、どうやって小太刀を手に入れたのかも気になっていたから、俺はそこから再び世界を回って、神々の聖遺物なんかを回収した」

 

 しかし、それは短い旅であった。途中、命を狙う刺客に襲われる事も多かったが、全て軽くあしらってササッと回収して回ったからだ。しかし、約九ヶ月は時間が必要だった。

 

 そして、裏切らはれた一年後。

 

「──一年後、今度こそ、神々からの解放を祝う宴が開かれた。俺抜きで全員が集まっていたよ」

「なるほど。それを機に裏切り者達を皆殺しにしたんだな? 流石だわ」

「ん! レンジはすごい!!」

 

 そこで口を挟むのがハジメクオリティー。そして、同調するのがユエクオリティー。なんとも仲の睦まじいことで。

 

 そんな様子に微笑みを深めるレンジは、いいや違うよっとハジメの予測を否定する。

 

「──俺はその日は終わり(死に)に行ったんだよ。皆が確りと俺の死を確認できるよう、集まる日にね」

 

 いつもの優しい美笑でそう語る彼の顔には、ほんの少しだけ黒いモノが宿っていた。

 

 それは、怒りや悲しみではない。それをハジメは悟った。レンジに生き方を諭されたハジメだからこそ、理解することができた。

 

 生産と消費で終わる人生。

 

 英雄の偉業は、人々の恐怖で清算され後には何も残らない。いや、残ってはいるのだろう。神殺しの英雄ではなく、神喰らいの化け物として。

 

 英雄の意志も英雄の物語も、彼の生き方は後世へと正しく残らない。人々の恐怖で、その全てが悪意あるものへと改竄され、間違った形で残り受け継がれていく。

 

 間違いなく、英雄だった筈なのに。間違いなく、救いだだった筈なのに。彼は、間違いなく化け物として見られた。

 

「どうせ死ぬなら、愛した人に殺されたかった。だからってのもあるんだけどね。……彼女には、悪い事をしたよ」

 

 結局、その日は祝典にはならず、英雄(化け物)の首が落ちた断罪の日に変わった。

 

 彼の断頭を担ったのは、彼の婚約者。それをさせてしまった事をレンジは悔いている。まさか、愛した人にそんな事をさせるとは……。

 

 

「肉体が死ねば魂魄が抜け落ちて、輪廻転生の循環に加わる。煉獄の炎で記憶が焼かれ、魂の外郭して焼き付く。そして、また新しい肉体に宿り生まれる……筈だったんだけど。……その循環を司るフェイロトが、俺に言ってきたんだ。傷の報酬をあげよう……ってね」

 

 そして、英雄の答えは“平和に生きたい”。

 

 母のように優しいままでありたかった。

 けど、それは出来なかった。

 その意志を誰かに伝える事も出来なかった。

 

 だから、もう一度生きたかった。

 

 戦いなんてない平和な世界で、誰にでも優しい生き方をしてみたい。でも、誰かの歩み生き方を歪めたくもない。

 

 矛盾した二つの思いに苦しみながら、アルリムはレンジとして新たな生を受け取った。

 

「──これが、蓮ヶ谷レンジの経緯かなぁ」

 

 簡略化されているものの、その全てを聞いたハジメとユエ。二人の顔は暗い。

 

 そして、ハジメには一つの疑問が浮かぶ。その疑問はどうしても聞かなければいけない。ハジメ自身の為にも、知らなければならない。

 

「……どうして、裏切り者を、敵を殺さなかったんだ?」

 

 もっともな質問だ。レンジの前世であるアルリムの時にも、“必殺と死守”の誓約を立てている。

 

 しかも、それを生涯破った事はないというのだ。だが、最後は裏切り者、強いては敵を殺していない。矛盾が生じている。

 

 そして、今世に於いてもレンジはハジメと、“必殺と死守”の誓約を立てている。ハジメは、これも破られてしまうのでは? と危惧しているのだ。

 

「ああ、それか。簡単な話さ」

「簡単な話?」

 

 おいおい、まさかテキトーな理由で破った訳じゃないよな? と警戒心を強めるハジメ。まあ、そんな言われ方をすれば仕方ないものか。

 

「裏切り者と表現したけど、説明するにあたっての便宜上の言葉さ。彼らは俺の仲間だよ」

「……殺されたのに?」

 

 今度はユエが問い質す。

 

 ユエは裏切られて、この奈落に囚われた身だった。裏切り者を仲間なんて、到底思えない。しかし、同じような状況にあったレンジは、裏切り者を仲間だという。

 

 何故なのか、彼女が疑問に思わない筈がない。

 

「俺の“死”はさ、仲間の総意だったんだよ。俺の余りの力に、俺の余りの徹底っぷりに、仲間達は恐れてしまったんだ。神々が居なくなったあと、俺の怒りは何処へ向くんだろう? 力の矛先は誰に向けられるんだろ? ってね」

 

 自分達を支配していた神々を殺す力。しかも、その最初の動機は復讐だ。

 

 歴史を振り替えれば、英雄の母オラトリアを傷付けたのは、神だけではない。自分達もだ。

 

 なら、次は自分達だ。

 

 恐らく、そう思って生き残った者達は自分に攻撃したのだろうっとレンジは考えいる。

 

「俺自身の存在が、仲間を脅かした。それは即ち敵だ。そして、仲間の敵は俺の敵だ。仲間は死んでも(・・・・)守る。敵は必ず(・・)殺す。」

 

 英雄は誓いを破らなかった。

 

 ハジメとユエは、何とかその言葉に納得した。本当はいろいろ言いたいが、もう終わってしまった話だし、ハジメの危惧する裏切りも、レンジはしていない事がわかった。

 

 それでいい。それでいいっと、納得してやることしか二人には出来ない。

 

 神殺しという禁忌の代償は、ハジメとユエが思っていた以上に、重たいものであった。

 

 

 しかし、それでも英雄は隣で微笑んでみせる。彼らに同じ悲しい人生を歩かせない為に。

 

 

 

 





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