そして、今回も6000文字を超える駄文という暴挙!?
マジすいませぇーーーん!!!
香織お手製の爆弾発言で一時教室が騒然としたが、始業チャイムが鳴ったところでそれも収束する事になり、いつものように授業が進行していく。
件のハジメはやはり大物というか、直ぐに居眠りを始めてしまう。どうやらまともに授業を受けるつもりはないらしい。
いくら卒業できるだけの単位があろうと、勉強とは学べる内に学んでおいた方がいい。一見役に立ちそうにない知識でも、人徳を深める役には立つのだ。
勉強とは単に学力を上げるものではなく、数多ある知識から博学を学び、自身の人としての価値を養うものであるのだ。
だから、レンジはわざわざノートを二冊用意して、一冊はハジメ用に黒板の内容を丸写し、黒板には書かれない教師の言葉も事細かに纏めて書いておく。
ハジメ用のノートに凝るあまり、自分用ノートがざらになる事もあるが、ハジメにノート渡す前に携帯端末で写真取りすればいいので大した問題ではない。逆に凝る分、自分の勉強の為になる。
まぁ、寝ているハジメの為にそんな事をしているのも、ハジメがクラスメイトに良く思われない理由の一つではあるのだが……。
そもそも、レンジも何だかんだでビックネームの一人だ。白崎香織、八重樫雫、天之河光輝、坂上龍太郎の四人のビックネームに次、いや同等で蓮ヶ谷レンジもビックネームである。
日本人らしい漆のような黒髪に、包容感の中に強い力を宿す黒い双眸。身長百七十八センチという高身長に細く締め付けられた柔軟な筋肉。さらに、何処か浮世離れした落ち着きのある性格。
学力も学校内、いや県内トップクラス。更には、剣道では非公式ながら光輝に圧勝し、雫すらも危なげ無く倒すほどの腕前。本人からすれば、神を殺せる程なのだから負けたら大問題だが。むしろ、神を殺したという自負があるのだからこの平和な世界の誰にも負けてはならないのだ。
さて、そんな天之河光輝と甲乙付けがたい蓮ヶ谷レンジに人気がない筈もなく、女子から圧倒的な人気を獲得している。
だが、誰にも告白された事はない。そのあまりの凄さに女子達が震えてしまって、告白の言葉を詰まらせているからだ。
むしろ、レンジに話し掛けられて普通に会話が成立するのはこのクラスでは香織と雫、それからあと二人くらいだろう。
前世の年齢も含めれば、もう五十近くなる筈のレンジが周囲が自分に向ける感情やその状態に気が付かない訳もなく、ある意味では手を焼いている。何せ、レンジに好意を寄せる大部分の女性は彼の三分の一しか生きていない子供なのだから。
レンジは残念ながらロリコンではないし、今生なら親と子供くらいの年齢差だが、前世だと祖父と孫くらいの年齢差になってしまう。そんな歳の差だとロリータ・シンドローム通り越して、ペドフィリアの領域である。
そんな妙に生々しい恋愛事情は一旦隅に置いて、白崎香織が主な原因で蓮ヶ谷レンジが副次的な要因となり南雲イジメが起きている訳だ。
この状況を打破するにはかなりの努力が必要だが、そこはハジメのやる気でカバーすれば良いっとレンジは思っているので、これ以上事態を悪化させないように然り気無く力を貸すだけだ。当人のハジメは解決する気は無いようではあるが……。
午前中の最後の授業が終わり、昼休憩を迎える教室がにわかにざわめく。それと同時に居眠り常習犯ハジメが意識を覚醒させる。
彼は突っ伏していた体をもぞもぞと起こして、颯爽と十秒で必要な栄養価をチャージできる定番のゼリーを口に咥える。
──じゅるるる、きゅぽん!
そしてレンジも同じく商品を一気に飲み干していた。十秒どころか、五秒飯。なんと恐ろしい肺活量か。
──ぎゅるるる、ぽぉんっ!
「おはよ、ハジメさんや。これ、午前中のノートね」
前日はかなりの苦戦を強いられたのか、約四時間眠ってもまだ少し眠そうなハジメにノートを渡す。
「……レンジ君。いつもごめん」
「そこは『ありがとう』じゃないか?」
「うん。そうだね、有難う」
レンジとの短い会話を済ませるとハジメは内心「しまった」と呻いた。月曜日ということもあり少し寝ぼけ過ぎていたようだ。いつもなら香織達と関わる前に教室を出て目立たない場所で昼寝というのが定番なのだが、流石に二日の徹夜は地味に効いていたらしい。
そうこうしている内に、女神降臨である。
「南雲くん。珍しいね、教室にいるの。お弁当? よかったら一緒にどうかな?」
不穏な空気が徐々に教室に立ち込める中、ハジメが心の内で悲鳴を上げているのをレンジは確かに感じ取った。ま、だからと言って助けたりはしないのだが。
しかし、ここで簡単に観念するようなハジメでは今頃は連れションに強制同行させられている。彼は必死の抵抗を試みた。
「あ~、誘ってくれて有難う、白崎さん。でも、もう食べ終わったから天之河君達と食べたらどうかな?」
そう言って、中身を吸い取られて干からびたミイラのようなお昼のパッケージをヒラヒラと見せる。だが残念、それは地雷だ。
女神の前ではその程度の抵抗など障壁どころか、全くもって意味をなさない。むしろ、致命的な追撃がくるだけだ。
「えっ! お昼それだけなの? ダメだよ、ちゃんと食べないと! 私のお弁当、分けてあげるね!」
(……ハジメェ。骨は拾ってあげるよ)
刻一刻とクラスメイトからの圧力が増していくのに比例して、ハジメが流す冷や汗の量も加速していく。
自爆だとしても少し可哀想だと思い、レンジが助けてやろうとした時、珍しく別の角度から救世主が現れた。なんと意外な事にそれは光輝達だった。
「香織。こっちで一緒に食べよう。南雲はまだ寝足りないみたいだしさ。せっかくの香織の美味しい手料理を寝ぼけたまま食べるなんて俺が許さないよ?」
爽やかに笑いながら気障なセリフを吐く光輝にキョトンとする香織さん。しかし、若干天然が入っている女神様には、光輝のお得意のイケメンスマイルやギザギザなセリフも効果はあまりないようだ。
「え? 何で、光輝くんの許しがいるの?」
これまた、香織クオリティーの為せる技か。まさかの素で聞き返すという暴挙。思わず、レンジは雫と同時に「ブフッ」と吹き出してしまった。危なかった、十秒飯さんが胃袋から奇跡の生還をするところであった。
何やら、光輝が苦笑い混じりにあれこれ話しているが、香織クオリティーの反動が強すぎてレンジの耳には全く入ってこない。
そんな事より、学校のビックネーム五人に囲まれて、尚且クラスメイトから持続的刺される眼光でハジメは生きた心地していなかっただろう。
その時、レンジがほんの少しハジメの座る椅子の脚を蹴る。ハジメはレンジと顔を合わせずともその意味を確りと咀嚼して、これを機に退散するべく腰を上げようとしたところで……凍りついた。
ハジメの目の前、光輝の足元に純白に光り輝く円環と幾何学模様が現れたからだ。その異常事態には直ぐに周りの生徒達も気がついた。全員が金縛りにでもあったかのように輝く紋様、俗に言う魔法陣らしきものを注視する。
そんな中、レンジは一人冷静に前世の経験からこの魔法陣が強制度の高い転移魔法を発動するものだと看破する。
転生した今も、肉体はともかくその魂魄はそのままなので、身体にかなりの負担と数分の時間さえあれば、割りと簡単に対抗術式で効力を無効できる。更に、転移魔法使用者に手痛いしっぺ返しを食らわせる事も可能なのだが、残念な事にもう時間がない。
まだ転移こそ始まっていないものの、もう転移魔法の術式が完成してしまっている。既に、転移する為のエネルギーをチャージしている最終段階なので、今から対抗術式を宛がえても意味がない。相手は中々に魔法の腕に長けた術者なのだろう。
レンジが魔法陣に対する処理を諦めて放置していると、その魔法陣は魔力を徐々に溜めているのか輝きを増していき、一気に教室全体を満たすほどの大きさに拡大した。自分の足元まで異常が迫って来たことで硬直から解放された生徒達が悲鳴を上げる。未だ教室にいた担任の愛子先生(二十五歳)が咄嗟に「皆! 教室から出て!」と叫んだのと、魔法陣の輝きが爆発したようにカッと光ったのはほぼ同時。
数秒か、数分か、閃光によって真っ白に塗りつぶされた教室が再び正常な状態を取り戻した時、そこには既に誰もいなかった。蹴倒された椅子、食べかけのまま開かれた弁当、散乱する箸やペットボトル、教室の備品はそのままで、そこにいた筈の人間だけがどこにも居なかった。
この事件は後日、白昼の高校で起きた集団神隠しとして、大いにお茶の間を沸かせるのだが、ここでは割愛とさせてもらおう。
目に焼き付いた残光が晴れると、レンジの目には巨大な壁画が飛び込んできた。
縦横十メートルくらいの巨大な芸術品なのだが、そこに描かれていたモノはレンジの機嫌を損ねるようなものだった。
別段、大きさを除いてしまえば大した事のない壁画だ。後光を浴びる金髪の中性的な顔立ちの人物と、草原や湖、山脈などの大自然をが背景として描かれている神秘的で美しい壁画。
人目で分かった。この大自然を擁護するように両手を広げて描かれる人物が、神であるっという事が。そして、前世からの経験則でこのような描かれ方をされている神にはまともなモノは一柱とて存在しなかった。
つまり、何の神かは知らないが、これに描かれている人物が最低の糞野郎だという事は直ぐに理解できた。
せっかく、平和を求めて地球に転生したのに、異世界に呼び出されてクソ神の顔を拝見する事になるとは……。もしかしたら、最悪この地で十三回目の神殺しを決行する羽目になるかも知れない。
そんな事を思い、レンジは一人溜め息を吐き出す。
周囲を見渡すと、どうやら自分達が巨大な空間に居る事が分かった。周囲は質の良い大理石で囲まれており、支柱となる巨大な柱には細かな装飾が施されている。
どうやら、壁画の神の為に建てられた大聖堂あるいは神殿のような施設のようだ。
レンジ達転移者はそこの最奥にある台座のようなものの上にいるようで、少し周囲を見下ろすような感じになっている。
レンジの視界の隅でハジメが何やら周囲を観察しているようだったが、似たような結論に至るであろうから取り敢えず放置しておく。その間に、教室にいた者全員が無事に転移しているか確認を行う。……何人かは未だ放心しているが、全員居るようだ。
「ようこそ、トータスへ。勇者様、そしてご同胞の皆様。歓迎致しますぞ。私は、聖教教会にて教皇の地位に就いておりますイシュタル・ランゴバルドと申す者。以後、宜しくお願い致しますぞ」
ん? 今、あいつ、ランゴ○タって言った?
台座の周囲を囲んでいた法衣集団の中でも、服装の派手さが一回りと二回りも違うご老体が一歩前に出て名乗り出したのだが、レンジは首を傾げただけだった。
いや、絶対ランゴス○って……。
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ラン○スタもとい、イシュタル・ランゴバルドによて異世界へと転移させられたレンジ達は、十メートル以上の長さがあるテーブルが複数台並べられた大広間へと通された。
広間は調度品や芸術品が多く飾られており、その数と品質の傾向から大広間が晩餐会などで使用する場所だというが伺える。上座下座で言えば、担任である畑山愛子(二十五歳)と光輝達四人組が上座近くに席を取り、その後ろは取り巻き順に適当に座っている。ハジメは最後の方である。
レンジ? 彼は上座から逃げるように、ハジメの隣に座ったよ。香織さんに何故か恨めしい視線を送られたが、軽々とスルーした。
ここに案内されるまで、クラスメイトが騒ぎを起こさなかったのはイシュタルが事情を説明するっと言ったり、カリスマレベルMAXの光輝やレンジが皆を落ち着かせたからだ。
流石のレンジも、この事態で傍観を決め込むほどの鬼のような教育方針は掲げていない。子供の光輝だけに任せるのは些か不安だったので、自分も動いたのだがどうやら大丈夫だったようだ。
むしろ、レンジが皆を落ち着かせようと行動したところ、一部の女子生徒が腰砕けになるという事件が起きていたのだが……彼は気が付かないふりをした。
まぁ、そんなお陰で無事に移動ができたのだが、自分よりも仕事のできる光輝とレンジに一人の成人女性がほんのりと涙を流したのは秘密だ。
全員が着席するとその時を見計らっていたのか、カートを押しながらメイド達が入室。なんと、生メイドである! 地球の某聖地に蔓延るなんちゃってメイドや海外のいるような小太りした家政婦擬きではない。正真正銘、男子の夢を体現してくれている美女美少女で構成されたザ・メイドである!
こんな異常事態にも関わらず、クラスの男子達の大半は熱い視線でメイドさん達を凝視している。……それを見た女子達に、氷河期の到来を予感させるような視線を送られているのを気が付かずに。
そして、隣のハジメも傍に来て飲み物を置いてくれたメイドを見つめて───ないで、さっと姿勢を正した。何故か背筋に悪寒を感じたからだ。チラリと悪寒を感じた方に視線を移すと、満面の笑みの香織さんが居た。ジッとハジメを見ている。そう、ハジメだけを見ている。ハジメというその一点を。ハジメは何も見なかった事にした。
メイドさんの登場でクラスメイトの大半がギスギスした雰囲気(大半は男子のせい)の中、レンジは平然としていた。
何せ、美女美少女メイド集団は元々前世で見ているし、『英雄色を好む』という言葉の通り前世譲りで美女美少女に限らず女性から好意を寄せられていた。まぁ、その中の一人しか彼は愛さなかったが。
それ故に、レンジは一人だけメイドが登場しても身動き一つしなかった。
それに少しムッとしたのか、レンジの所に飲み物を配給に来たメイドさんが、ムニィっと然り気無く本当に自然の動きの中でレンジの二の腕に胸を押し当てた。
メイドさんに女子の鋭い眼光が!
しかし、レンジはこれと言って反応がない……ように思われたのだがレンジは一言だけ発した。
「───なにか?」
「ッ!!!」
たった一声の短い言葉。しかし、振り向き様のそれはあまりにも美しい声。鴬の囀ずりよりも美しく、朝露よりも透き通った魅惑の声音。
聞く者の心にいつまでも木霊し、至福の余韻を残す官能的な美声だった。
思わず、メイドさんの腰が砕けそうになる。だが、メイドさんもプロだ! ここで折れる訳にはいかな──
「──君、大丈夫?」
飲み物を置いて退散しようと、メイドさんの手が引っ込む前に、レンジがその手を優しく包んだ。
「……ひゃあい」
メイドさんの腰が砕けた!
メイドさんはメロメロだ!
メイドさんは目の前が真っ暗になった!
薔薇色に頬を染めてその場にへたれ込むメイドさん。レンジは他のメイドに声を掛ける。
「彼女を休ませてあげてくれないか? きっと、疲れているんだろう」
腰砕けにされたメイドさんは二名のメイドさんに抱き上げられて救出された。そして、そのまま大広間から脱出。
レンジは──勝った! っと心の中で勝利を称えた。一体何の勝負だったのだろうか?
そして、レンジはその場の皆から凝視されている事に気が付いた。男子からは一種の尊敬の眼差し、女子からはまるで何かを懇願するような眼差しであった。
レンジはハジメに習い、気が付かないふりをした。
「ゴホンッ! ……さて、あなた方においてはさぞ混乱していることでしょう。一から説明させて頂きますのでな、まずは私の話を最後までお聞き下され」
一つの咳払いと共に、教皇イシュタルが話を始めた。その時、レンジは確かに感じ取った。イシュタルの視線が自分に向いていた事に。そして、それが危険物を観察するかのようなものだったという事を。
ラ○ゴスタめっ。中々に切れ者らしいな
そうして、イシュタルの話が始まったのだがその内容がなんというか、実にファンタジーでテンプレートでどうしようもなく身勝手なものだった。
それには思わず、神殺し英雄も長い溜め息を吐き出さずにはいられなかった。
できれば、今夜中にもう1話っ。
唸れ、俺の左脳!荒ぶれ、俺の右脳!