遅くなりました。すいません。
そして、また短いです。
バイクの上でハジメとユエがイチャイチャし、サイドカーから身を乗り出して混ざろうとするシア。だが、シアの目論見が成功することはなく、必ずハジメに纏雷アババされるか、ユエに蹴り戻されている。
どうやら、二人はシアがレンジに対する認識を改めない限り、仲良くするつもりはないらしい。と言っても、認識を改めて、はいそうですか、と人が変わったように仲良くなる訳ではない。
まあ、ハジメとユエが拒絶するその理由にシアは、いまいち気が付いていないようである。彼女が二人と打ち解ける日は来るのだろうか……。
アババや蹴りでサイドカーに戻るところか、サイドカーから落っこちそうになるシアを支えてあげるのは、共にサイドカーに乗るレンジ。
なんというか、気のいい近所のおじさんや娘に甘い父親のようである。……時折、というかほほ常に視線がシアの頭の上で揺れ動くウサミミに向いていなければ。
さて、毎度毎度ハジメとユエに突撃していくシアだが、ハジメにアイアンクローや纏雷アババされたり、ユエに蹴られたりまた蹴られたりしても、ものの数秒でまた元気に特攻するという意外なタフネスさを見せてくる。
ゾンビだろうか? 超失礼な残念ウザゾンビウサギとか嫌すぎるっとハジメはこっそり思うのだが、レンジはむしろそのタフネスと諦めない意志の強さに感心していた。
方向性は全く持って違うが、かつての自分と同じくらい硬い意志だろう。いや、場合によっては超えているかも知れない。……いや、超えてもらっては大変困る。このウサギはお友達欲しさに、あるいはお友達の為に神の軍勢に喧嘩を売る、なんて事をしてしまうかも知れない。
揺れるウサミミを見ながら思い浮かんだ自らの妄想に、レンジは苦笑を浮かべる事しかできなかった。
どんな悪路でも錬成でスイスイと走り、疑似エンジン・マフラー音を響かせて、疑似白煙の尾を引きながら魔力駆動二輪シュタイフを走らせること数分。
時々、魔物が襲ってくる事もあったが、敵意を向けた瞬間には弾丸に頭を吹き飛ばされて絶命していく。ドンナー・シュラークとフルミネ恐るべし。
さて、そうしていると前方にピョコンとウサミミが見えた。まあ、見えたのは文字通り人外の視力を持つレンジだけだったが、確かにウサミミだけが岩影から見えている。
もう少し近付けば、ハジメやユエでも発見できるが、元々兎人族は隠密が得意なので、多少発見しにくいようである。
だが、レンジはもはや視界に兎人族が居なくても、近くに居れば直感的に分かるのだ。そのウサウサしたウサミミがあれば。ウサミミ狩りの異名は伊達ではない。
「ハジメ、前方1800だっ! 隠蔽のウサミミが八十本!!」
「え? 隠蔽のウサミミ八十本?? どういう事だ!」
「……ん、レンジが言いたいのはたぶん……ウザウサギの仲間がこの先に四十人居るって事……」
「流石、ユエ。レンジの翻訳係だな」
「きっと、私の仲間ですっ、助けてください!」
レンジの遠回しな言い方にハジメが困惑し、すぐにユエが翻訳する。流石、奈落チーム。培ってきた絆の強さが違う。
レンジはサイドカーから立ち上がると……
「どうやら、魔物に襲われているみたいだから、先攻しに行くっ!」
「えっちょっ、おまっ──」
それはユエからの翻訳を聞いて、急ぐかっとシュタイフをフルスロットルにした時だった。
レンジは先攻宣言と共に、サイドカーから飛び降りていた。レンジもシュタイフの最高速度には勝てないと思っていたハジメは制止しようとしたのだが……
「器を超えよ、『
英雄がまた、人外の片鱗を見せた。
外界魔術『
いや、まるで使えない失敗作ではないのだが、この魔術だけで神と互角になれる筈もなかった。
それでも、この魔術の効果は超絶無比。肉体を持つ超越存在、つまりは神獣や使徒天使などとなら渡り合う事も不可能ではない。
まあ、何にせよレンジの望む効力が得られる程の魔術ではなかったので、失敗作である。
しかし、この魔術で強化されたレンジの初速は、優に音を置き去りにする。つまり、ハジメの制止の声が聞こえる前に、レンジは既にその場から消えていた。
──待ってろよ、ウサミミ! 俺が駆逐しゲフンゲフン、助けてやる!!
一瞬過去の出来事が脳裏に過るレンジであったが救済の決意を胸に、英雄は地面を踏み締め……そして、跳んだ。
超加速からの超跳躍。ドゴォン! っと地面を破壊し塵埃を巻き上げて跳びあがるその様は、空高く砲弾を撃ち上げる迫撃砲である。
砲弾と化したレンジはその狙い違わず、ウサミミ達を襲っていたワイバーンによく似た翼竜型の魔物に直撃した。
魔物に直撃した程度ではレンジの持つ運動エネルギーは無くならず、そのまま魔物の体を貫通する。
血と臓物で体を汚しながらレンジは、ついでにっと言わんばかりに魔物の体から腸を引きずり出す。それで素早く投げ縄を作ると、別の
他のワイバーン擬きを巻き込むように、全力で振り回した。
──ゴキンっ!
───スパパパパンッ!
────ブチィン!!
「……あり?」
ワイバーンは一周しか回せなかった。途中で千切れてしまったのだ。まあ、魔物の腸ぐらいでは、魔術で強化されたレンジの腕力に耐える事が出来る筈もない。
しかし、全六匹居たワイバーン擬き達は、
まあ、上出来か? と思いながらレンジは重力の力に負けて、みるみる地上へと落ちていく。普通ならば着地の際に五点着地で衝撃を緩和するのだが、レンジには必要なかったりする。
ハジメ達の乗るシュタイフもかなり近くまで来ているが、先に兎人族に挨拶しておこうと思い、レンジが隠れているつもりであろう彼らに近付くと……
「「「「「「ぎゃあああ! 悪魔だー!?」」」」」」
魅惑的にウサミミをうっさうっささせながら、蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。
ウサミミ狩りの英雄は、おや? 何故だろう?? と首を傾げるが、すぐに血塗れなのが悪いのかと思い魔術で綺麗にする。血の汚れだって綺麗サッパリ、『
さて、染み一つ無くなった訳だが、何故かウサミミ達との距離が縮まらない。レンジが近付くと、その分逃げてしまう。むしろ、近付く素振りだけで逃げてしまう。
その様子が、シアの失礼さと重なる。レンジは少しムキになって……
「なるほど……よろしい! 鬼ごっこを御所望とな! では、僭越ながらウサミミが唯一無い私が鬼役を務めさせて頂こう! さて、鬼ごっこのルールは知っているかなぁ、諸君! そうっ、鬼役に捕まると、鬼の仲間にされてしまうんだ! つまり、そのウサミミ……」
───どうなるか、わかるな?
英雄はゲス顔でニンマリと笑う。ウサミミ狩り……、降臨。
このあと、ハウリア族は死ぬほど追い掛けられた。
そろそろ、レンジの原作介入が本格化して、改変が増えてくるかも知れません。