ありふれた転生で世界救済   作:妄創

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 思い付いたので、やってしまった。

 しかも、かなり話をはしょった。

 申し訳ねえ……。


“歪みはじめた運命の環”
英雄と帝国


 

 

 

 ヘルシャー帝国、帝国軍参謀本部。

 

 今現在、レンジはその参謀本部の高官専用会議室で、帝国軍上層部の指揮官と顔合わせをしていた。

 

 会議室にある椅子の数は二十一で、現在は空席は五席ある。レンジはその五席の何れかに就くことになる。

 

 ヘルシャー帝国は実力至上主義であり、それは国民や貴族、さらには皇族もそうである。つまりは、スラムのゴミ溜めから皇帝になる事も可能である。

 

 それは、政府機関や軍隊でも変わりなく、実力=権力・発言力・決定権である。特に、力を求められる軍ではそれを手っ取り早く表すために、階級と席次が使われている。

 

 要するに、五つの空席は軍内の二十一位以内であり、そこに着くという事は軍内外、つまりは帝国全土に置いて最高クラスの権力・発言力・決定権を有するという事である。

 

 そして、現在の空席五つは、最高位席次である第一席次から五席次までである。

 

 なぜ、上位席が全員空席なのか? その答えは簡単。というか、会議室のほぼ全員がレンジに酷く怯えている事を見れば明白である。

 

 そもそも、ワイバーン擬き──翼竜型の魔物ハイベリア六頭を始末した後、ウサミミ狩りの英雄として再降臨したレンジが、何故か彼らを狙っていた帝国、それも最上位層に組み込まれようとしているのか。

 

 理由はこうだ。

 シュタイフで追い付いてきたハジメとユエ、そしてシア。レンジは若干暴走状態のところをユエの魔法“嵐帝”で吹き飛ばされて落ちてきたところに、ハジメのフルパワーボディブローでようやく正気に戻った。

 

 なまはげのようにハウリア達を追うレンジに姿には、流石のハジメとユエも、やれやれだぜっと言わずにはいられなかった。

 

 さて、シアの一族と合流を済ませてたのだが、ここで事件発生。またしても、シアがヤラかした。レンジには何も言わずに、ハジメとユエにお礼を……それに見習いハウリアの皆さんもハジメとユエだけにお礼を言ったのだ。

 

 相変わらず、レンジは気にしないっというか、ウサミミ狩りとして最降臨してしまった事にショックを受け、未来の暗殺者が使う卿モードの解除後のようになっていた。かなりショックだったらしい。あとは、ボディブローのせいか。

 

 そんな事からレンジ自身は気にしない、というか気に出来るような状態でもなかったのだが、やはりハジメとユエが憤慨。

 

 ハウリア族は魔物から助けられたが、ドンナー・シュラークから放たれる非殺傷弾(ゴム擬き製)の餌食となった。

 

 お仕置きが終わったところで、ハウリア族を連れて移動していたのだが……運が悪いことに帝国兵一個小隊と鉢合わせてしまった。帝国兵達とハジメ一行、どちらが運が悪いのかは言わなくても分かるだろう。

 

 帝国兵の敵対宣言でハジメがドンナー・シュラークを撃つ──より早く、またまたレンジがプッツンした。帝国兵の言葉の中に、ユエに対する侮蔑が含まれていたからだ。

 

 それを口にした小隊長は神の声で、自分の首を自分で締め上げ苦しみながら死んだ。残りの帝国兵は、ドンナー・シュラークとフルミネが頭を炸裂させて、戦闘は終了。

 

 最後に一人だけとなった帝国兵から、捕らえた兎人族が帝国に送られた事を知り、レンジは一人行動を提案した。ちなみに、帝国兵さんは情報と引き換えに天国への片道切符を差し上げた。

 

 ハジメとユエは特にその提案を断ろうっという考えはなく、むしろレンジの兄貴が居なくても大丈夫! という姿を見せたくて奮起するのだが、それは別のお話。

 

「さて、でもどうした方が良いものか……」

 

 さて、ハジメ達と珍しく別行動になったレンジだが、ハウリア族をどうやって救うのか、迷っていた。

 

 いや、帝国に喧嘩を吹っ掛けるのは、彼のポリシーに反する。帝国全てがレンジの敵ではないし、潜在的な敵対組織っという訳でもない。

 

 隠密での救出は難しい。いや、暗殺や施設破壊なら可能だが、救い出した者を大人数連れて動くとなると、何処かしらで綻びが生じるのは当たり前。

 

 ──短期で彼らを連れ戻す方法。

 

 一か八か、レンジは賭けてみる事にした。

 

 ──パチィンっ!

 

 久々に鳴らすフィンガースナップ。そして、またレンジでも気付かぬ間に背後に現れるメイド。“すごくよく訓練された”メイドさんこと、クーリア・リベリオである

 

「大変お久しぶりでございます、我主(マイマスター)。この不肖のメイド、マスターに再び呼ばれる事を求めてしまいました」

 

 従者がその主に望み事をしてはならない。これは、“すごくよく訓練された”メイドさんにとって絶対の規律であったのだが、どうやら待ち望んでしまったらしい。

 

 クーリアにとってそれは主への不敬。罪悪から頭を深々と下げる彼女。

 

 しかしまあ、レンジがそんな事で怒る筈もない。だが、彼女が信念と埃を持ってその矜持を抱いていたのなら、それは尊重すべき、いやされるべきなのだ。だから、彼が言うのは……

 

「これで、二回目だね。……君はやっぱり、悪い子だ」

 

 そう言って優しく頭を撫でてやる。

 

「……はい。不肖ではありますが、貴方様だけのメイドでございます。どうか、見捨てないで頂けると幸いにございます」

「俺こそ、君に見捨てられないよう頑張るよ」

 

 英雄とメイドが再会した。些細な事だったかも知れないが、ヘルシャー帝国の歴史が変わる一つの原因……というかほぼ根源であったのだ。

 

 再会の挨拶もそこそこに、レンジは彼女を一か八かで呼んだ理由である、ハウリア救出方法について意見を求めた。

 

 異世界人の自分より、現地の人で博学的である彼女が適任だと思ったのだ。そんな彼女が出した答えとは……

 

「──ならば、皇帝になってみては如何でしょうか?」

 

 実力至上主義の帝国は、それが侵略者だろうとなんだろうと、実力があれば皇帝になれる。ただし、自国民だろうと他国民だろう、力が無ければ最底辺まで堕ちるだけ。

 

 故に、レンジでもヘルシャー帝国の皇帝になる事が可能ではある。しかし、皇帝の座に就いてしまえば義務が生じるのだが……

 

「やりたい事だけやって、あとは旧皇帝に丸投げ……任せればいいのです、皇帝陛下」

 

 すでにこの時には、クーリアの中ではレンジは皇帝だったらしい。

 

 他にもいろいろ問題があったのだ、クーリアの回答はなかなかに現実味のあるもので、仕方なくレンジは帝国を乗っ取る事にした。

 

 さて、ならばやることは実態は簡単で、現皇帝であるガハルド・D・ヘルシャーを屈服させれば良いだけだったので、さくっと会いに行った。

 

 その際、帝国への入国事態は普通に済ませ、王城には正面から「皇帝になりにきましたー」っと宣戦布告。駐屯中の兵士達をボコボコにして、ガハルドに会いに行った。

 

 その時、ガハルドは何やら軍事会議の真っ最中だったのだが、レンジとの決闘に笑いながら受けてくれた。

 

 そんでもって、ガハルドはボコボコにされた。

 

 この決闘事態と決闘の結果に納得出来なかった軍の上層部が、レンジを殺害すべく動いた……動いたのだが、上位席次の五人が死亡する形となり、さらに神の声によって鎮圧された。

 

 ガハルドにはそのまま皇帝の座に座ってもらい、レンジは皇帝よりも更に上の席、上皇を設けてそこに就任。

 

 そして、上皇特権を執行して、国内にいる兎人族を解放させた。勿論、反抗する貴族やら商会やらがあったが神の声で……神の力の大安売りだった。

 

「チィ! やりたい放題だなっ」

「いや悪いねぇ~、ガハルド君」

 

 この時、英雄はかなり悪どい顔をしていたとか、いなかったとか。

 

 ともあれ、一国のあり方を変えてしまったレンジ。お陰で帝国は混乱に満ちていた。流石、そんな混乱状態を無視するレンジもなく、帝国各地に回って対処に当たっていた。

 

 そんな重労働(神の力の酷使)のお陰で、血ヘドを吐き出したり、数時間意識がぶっ飛んだりしていたのだが、優秀極まりないクーリアがレンジの気絶最中にサクッと解決してしまった。

 

 そして、最後にヘルシャー帝国軍部の掌握に入ったのだ。軍部はトップ五人を失い、皇帝ガハルドと上皇レンジの二人から、「とりあえず、いつも通りに働け」っと言われて放置されていたのだが、五日目にしてようやく上皇より新たな命令があった。

 

 簡単に言うと、富国強兵を掲げたのである。

 

 いや、帝国は前から富国強兵を掲げていたが、それは個々の競争によってであり、要は足の引っ張り合いだったのだ。

 

 それでは咲く花も咲かなくなってしまうと、それら改正すべくレンジは軍部の上層部にのめり込む事にした……という経緯で冒頭へと至った訳である。

 

 実に滅茶苦茶なやり方だが、すべてはメイドさんが悪い。ちなみに、現在彼女は皇帝より上の権力者となったレンジに近寄ってくる薄汚いハエ共を叩き落としている最中だったりする。上皇としてのレンジとお近づきに成りたければ、ハジメ達を経由するか、メイド軍団を経由するかの二択しかない。

 

 まあ、そんな事は知らないレンジは上皇として、ハウリア族の解放と、再度隷属化させる事を禁じた以外は、皇帝ガハルドに好きにさせて、今は軍部の最高司令官になっている。

 

 まさか、上皇としての自分に、すでに三百人以上の側室(候補)が居るとは思うまい。ちなみに、正室は未定である。

 

 それはさておき、レンジが軍部の最高司令官に就任すると、やはり反対の声が上がり、暴力的な手段で阻止しようとした数名の者達が殉職した。

 

「見せしめに裸で吊るしておくべきだっただろうか?」

「マスター、汚物は吊るしてはなりません。すぐに排除するのがベストでございます」

「頼むから、そう極端な事はしないでくれ! 優秀な奴らだったんだぞっ!」

 

 殉職者の事もあってか、軍上層部はレンジの最高司令官就任を認めた。裏で、ガハルドが滅茶苦茶頑張っていた事をレンジは知らない……ふりをしていた。

 

 さて、軍の最高権力者になったレンジだが、いきなり軍の規律を変えるような事はしなかった。そんな事をすれば、軍からクーデターが起きるは簡単に予想出来たからだ。神の力も使いすぎて体調を悪くしたので、使うことはせず、仕方なく兵士二千人を対象に試験的な改善軍法の下、働かせた。

 

 つまり、それはそれは滅茶苦茶訓練した。ハイリヒ王国での訓練とは比較にならない程に訓練した。

 

 朝叩き起こして牛乳飲ませて、体操させて訓練させて、シャワーを浴びさせ牛乳飲ませ、朝飯食わせて訓練させて、座学させながら牛乳飲ませて、訓練させて訓練させて昼飯食わして体操させて、訓練させて軍事演習させて牛乳飲ませて訓練させて訓練させて、夜飯食わせて夜行演習させて、シャワーを浴びさせ牛乳飲まし、強制的に寝かせる。

 

 確かそんな感じだった筈だ。レンジ自身途中から意識がなく、幾つかの過程をぶっ飛ばして訓練させ続けたり、眠らぬ夜行演習させ続けたり、あと牛乳飲ませ続けたり、したのだが……彼の記憶には全くない。

 

 ちょっと超人を量産しようとした結果だった、とだけ言っておこう。ちなみに、その時のレンジの顔は例のゲス顔だったのだが、それを惚れ惚れと見つめるメイドの姿があったのは……軍部の皆さんが知っている。

 

 さて、レンジの特殊訓練を受けた二千人の兵士は、まあ逞しく成長した。今では自主的に牛乳飲みながら体操と訓練をする程だ。まるで呪われたように。

 

 そして、その強さも凄まじく一人で一個小隊の密集陣形(ファランクス)なら突破、そして壊滅させることが出来る。

 

 しかし、彼らの真価は、個々の強さではなく……ハジメとレンジと同じく“必殺と死守”の誓いによる、断固な連帯力である。

 

 一人一人が狂戦士のように敵と戦い必ず殺す。誰かが負傷すれば必ず助け、変わりに次の者が敵を殺す。傷が癒えればまた敵を殺しにいく。まるで、狼の群れのように。

 

 彼らは、“ウルフヘズナル”。そう呼ばれるようになった。

 

「流石、我主(マイマスター)。十日間でここまでの事を成すとは……」

「なんだろう……凄い乗せられた感が……」

 

 

 

 

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