ありふれた転生で世界救済   作:妄創

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 囚われていたハウリア族達の再会。

 その時、ハジメとレンジは……?

 そして、シアが仲間入り……?


義兄と義妹の対立

 

 

 

「「いや、なんだそれは」」

 

 ハジメは、黒光りする執行の鎧に身を包む百の兵士を見て。

 レンジは、温厚平和主義だったハウリア達の完全武装を見て。

 

 お互いに、呆れたように呟くのだった。

 

 ハジメとユエ、それからシアとは十日ぶりの再会となるのだが、実際は技能の念話で連絡を取り合っていたので、ある程度はお互いの状況を把握していた筈だった。

 

 まさか、帝国を支配して最強軍隊を作っていたり、ハウリア族を生粋の戦闘民族に魔改造していたとは、互いに思っていなかったが……。

 

 今日この日に合流した理由は、帝国全土に散らばっていた兎人族を全員が集め終わり、輸送の準備が整ったからだ。感動の家族、仲間との再開はハジメのお陰で、かなりカオスな事になってしまったが……。

 

 ───こんなの俺の家族じゃねぇー!

 ───うわっ、うわっ! なんて恥ずかしい奴らだ!

 ───お前とはもう縁を切るからな! 正気じゃねぇ!

 

 そんな声が時々、いや頻繁に聞こえてくる。ハジメとレンジは耳にそっと蓋をした。

 

「……あー、ところでレンジ」

「何だい? 新しい問題かな?」

「いやー、問題…っちゃあ問題なんだが……、シアも連れていく事になった」

「……何で? いや、理由は大体わかるけど、なんで??」

 

 どうやらレンジは、ちょっと怒ってらっしゃるらしい。

 

「お、おう。いや、悪い……」

「……ん。私が悪い。賭けをして負けてしまった」

「賭け?」

 

 どうやら、ユエの話によると、ハウリア族地獄のブートキャンプ十日間で、シアがユエに傷を一つでも付けられたら、ハジメを説得して一緒に連れていって貰えるよう計らうっという約束をしたらしい。

 

 結果、その賭けをシアは意志の力で乗り越えたらしい。

 

 何でも、身体強化すれば素のハジメとほぼ同じ筋力とか……化け物か?

 

「そうなんだ」

「……だから連れて言ってあげて欲しい」

「うん、却下」

「……え?」

 

 ちょっとお兄ちゃん? ユエ、何言ってるか、分からないよ? みたいな感じにキョトンと首を傾げるユエ。

 

 シアも、まさか幾ら無視しても優しかったレンジに断られるとは思っていなかったので、下顎が外れて取れてしまいそうなほど口を開けて驚いている。

 

「ななな、何でですかー!?」

「……ん。シアは頑張った連れていく」

「いや、ハジメとユエより弱いのに連れていく訳ないでしょう? これから挑む大迷宮は基本的に、奈落と同等かそれ以上なのに、二人より弱いシアを連れていく訳にはいかない」

 

 ごもっとも、正しく正論である。しかし、ユエは食い下がらない。

 

「……それは大丈夫。シアにはまだ伸びしろがある。まだまだ強くなる!」

「ゆ、ユエさんっ」

 

 あくまで、シアを庇うユエ。その姿に思わずシアがうるうる。

 

「未来の話をしているんじゃない。今現在弱い事が問題なんだ。今すぐ強くなれ、少なくとも無強化のハジメを超えてみせろ」

 

 その時、いつも優しいはずのレンジは全く優しくなかった。いや、甘くなかった。

 

「「っ!」」

 

 今すぐ、無強化とはいえハジメを超えることは、シアには難しい。はっきり言うなら絶望的である。

 

 魔力を全て注ぐ全力で、ハジメの素に勝てないのだ。

 

「……おい、レンジ……どうしたんだよ? いつに無く厳しいじゃないか??」

 

 いつもの優しさから予想できない厳しさに、ハジメがつい口を挟む。もしかしたら、何か不測の事態が起きているのかも知れない。

 

「ん。ハジメもっと言ってあげて。レンジ、意地悪」

「そうです! 意地悪ですっ」

 

 ……超失礼ウサギは黙りなさいっと思うハジメ。とりあえず、後でシアにはレンジに謝罪させよう、と心に誓う。

 

「……はっきり言うが……俺は今、“神通力”と“神格”が使えない」

「……は?」「……え?」

「神通力? 神格? なんです、ソレ?」

「力を酷使し過ぎたんだ。しばらくの間は使いたくても使えない。魂魄のレベルでロックが掛かってるからな。……だから、ハジメとユエ、お前達の事も満足に守れはしない。その上、自衛もできないようなウサミミは連れていけない」

 

 帝国改変での神力酷使で、レンジは体に重度の負荷が掛かり、本能的に神通力と神格に使用制限が掛けられてしまった。

 

 神格を所有しているだけで効果のある微弱なものなら常時発動しているが、本来の力はしばらくは引き出せないだろう。

 

 それと、外界魔術の威力や効力も落ちた。はやり肉体的な負荷が大きいだけでなく、外界魔術の根源たる魂も消耗したらしい。

 

「じ、自分の身くらい自分で守れますよ!」

「ん。シアはそんなに弱くないっ」

 

 ここでハジメは、はて? と思う。

 

 ユエとシアが言う通り、今のシアでも奈落の魔物を倒せなくとも、自衛程度なら問題ないっとハジメも思ったからだ。

 

 ハジメにも分かる事だ。英雄であるレンジが分からない筈がない。

 

 では、一体何故……まさか、ハジメはその可能性に至った。これは言わば言うならば、ユエに対する親離れならぬ、兄離れをさせる為かもしれい。

 

 シアが見た未来で不在の英雄。そして、今回の神力酷使による弱体化という代償。

 

 レンジも未来を見ているのか? 自分の居ない未来の為に、ユエに対して布石を置こうとしているのか?

 

 ハジメの思考はその答えに至り、三人の会話を邪魔しないように、レンジに念話をしようとしたが……

 

「そうかい。なら、証明してもらおうか?」

 

 その言葉に遮られてしまう。レンジの挑発。

 

「ん。望むところ」「望むところです!」

 

 ユエとシアはその挑発に乗ってしまったのだった。

 

 ハジメは一人焦った。非常に不味い状況である。ここは仲裁に入るべきだろうか? と妙なところで昔みたいに悩む自分が腹立たしく思う。

 

 これは、仲間割れの原因になりかねないし、レンジもユエが兄離れ出来てしまえば……なんというか、気が緩んでしまうっと、そう焦りを感じた時、

 

(──ハジメ、大丈夫だよ)

 

 頭に響く優しい声。正体は勿論、レンジである。

 

(お前が思っているような事にはならないし、させない。約束しただろ? “必殺と死守”の誓いは忘れないし、破らない)

(……あぁ、そうだったな)

(だけど、そこにシアは入ってない。……お前はどうしても優先的にユエを守るだろう絶対に。っていうか、そうじゃなきゃ俺がお前をぶちのめす)

(お、おう、当たり前だろ?)

(そうだ、それでいい。シアは俺が守ればいいんだが、誓約があるし、それに今は弱体化してる。正直、三人同時に全員守るのは難しい)

 

 あくまでも、三人を無傷(・・)で守るのは、という意味深だったりする。

 

(だから、少なくとも一人で奈落の魔物と対等、あるいはそれ以上の実力が欲しい。そして、ユエとの連帯も)

(どうして、ユエなんだ?)

(え? だって今の弱い俺でも実力が全く追い付かないだろうし、ハジメも結局ユエとの連帯ばっかりだろ?)

(……その通りです)

(だから、ユエとの連帯を鍛えたい。ユエは近接は苦手だけど、中・長距離での殲滅力は俺に次ぐ。シアが盾役になれば、中々いいコンビネーションが出来ると思うんだよ。それに、ユエと連帯していれば二人とも仲良くなるし、そうすればお前も──いや、こりゃ余計なお節介だな、忘れてくれ)

(なるほど……)

 

 最後に何やら気になる事を言われたハジメだが、言われた通りに聞かなかった事する。

 

「……そうと決まれば、決闘だな。ユエとシア、二人で掛かってきなさい」

「ん? レンジは一人なの?」

「それは舐めてま──はっ! まさか、ハジメさんとタッグを!?」

「ッ! ……ハジメ、今まで黙っていたのはそういう事……」

「いや、それは酷い言い掛かりだぞユエ」

 

 ジト目でユエに睨まれて、すぐに弁解するハジメ。

 

 しかしまあ、流石にユエとシアの二人に対して、弱体化しているレンジ一人では、少しハンデが効き過ぎている気がする。

 

 それは皆が思う事なので……、レンジはパチィンと指を鳴らす。

 

「じゃあ、俺はクーリアとタッグを組もう」

「マスターの思うがままに」

 

 音も光も、全く何の異変も起こさず、気が付けばレンジの斜め後ろに控えていたメイドさん。そんな謎過ぎるメイドに三人は……

 

「「「え? 誰??」」」

 

 そんな様子の三人に“ものすごくよく訓練された”メイドさんは、とても素敵にカーテシーをして見せる。

 

「皆様、お初御目にかかります。私は、レンジ・ハスガヤ様の忠実なる従僕、クーリア・リベリオと申す者にございます。以後、お見知り置きを」

 

 ミニスカートのメイド服に、ハジメがこっそりガッツポーズ。

 

「レンジ、いつの間にこんな女を」

「ふわぁ~、メイドさんですぅ」

「……あ。ハイリヒ王国のメイドか」

 

 ハジメは王宮で何度か見た事があったのを思い出した。流石は、メイド服フェチである。

 

「……でも、その人戦えるの?」

「ええ、私のハンマーでぺしゃんこになりそうな……」

 

 二人の心配した様子に、クーリアがクスッと笑う。ユエとシアは、自分達の見た目から弱いと判断されたのだろうっと思い、忠告しようと……

 

「……おい、ユエ、ウザウサギ」

「? どうかしたの、ハジメ?」

「ウザウサギって……名前で読んで下さいよぉ」

 

 ゴクリッとハジメが息を呑み込む。

 ハジメの右目、義眼である魔眼石には恐ろしいものが映っていた。

 

 魔力の濁流。とても一人の人間に制御出切るとは思えない、圧倒的な魔力量。それも全属性が混じり合う魔力だ。正しく、魔力の濁流と呼べる代物を、クーリア・リベリオから見てとったのだ。

 

 ちなみに、技能のお陰で魔力を蓄積できるレンジの魔力量は更に相当なモノなのだが、常に隠蔽系の外界魔術で隠しているし、その魔術でさえ技能で隠蔽されている為、ハジメの魔眼石では捉えることは出来ない。

 

 もし、その蓄積された膨大な魔力を見たら……多分白目を剥くだろう。

 

「この人、魔力量が尋常じゃない……。俺よりも高いぞ?」

「「ッ!」」

 

 それを聞いた二人がビクッと肩を震わせる。ユエよりもハジメの方が魔力量は遥かに多い。才能は比べるまでもなく、ハジメの方が低いが。

 

 そのハジメより魔力量が多い、このメイドは一体……。

 

 その言葉に、スゥっと目を細くしてハジメを観察するクーリア。ハジメはまるで、体を切り開かれて内部を見られているような気分になる。

 

「……なるほど、ハジメ様もそれなりの魔力量をお持ちのようですね。……まぁ適性の方は非常に残念ですが」

「やかましいはっ」

「ステータス、いくつなの?」

 

 少し恐る恐るといった様子で聞くユエに、はい? とメイドが首を傾げる。

 

「教える義理はないと──」

「クーリア」

 

 彼女の頭に自然にレンジの手が置かれる。そして、自然にそのまま頭を撫でる。その様子にユエは少し複雑な心境になった。

 

 ほんのりと赤く染まるクーリアは、ゴホンっと咳払いをして、自らの言葉を言い直す。

 

「──失礼致しました。ステータスの魔力だけお教え致しましょう。約25,000でございます」

 

 ハジメがもうすぐ15,000、ユエは未だ9,000台なのだ。魔力量だけで言えば、絶望的な格差がある。

 

 このクーリア・リベリオとは一体、何者なのか?

 

 だが、幾ら魔力量が多くとも、魔力を直接操作できる分、ユエの方が攻撃速度では勝る筈、勝ち目がない訳ではない。むしろ、短期戦ならユエが圧倒的に有利なのだ。

 

「まぁ、今すぐここで戦うのもありだが、少し時間を設けるか。……二日後でいいか?」

「……ん。構わない」

「上等です!」

 

 こうして、初めての兄妹喧嘩……いや決闘の約束がなされた。

 

 

 

 




 
 次回は、ユエ、シアvsレンジ、クーリア。

 バグウサギ、英雄を超えていけっ。

 あと、読者の皆様で兄弟姉妹の居る方は、喧嘩はほどほどに。
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