ありふれた転生で世界救済   作:妄創

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 昨日は更新無くて申し訳ないです。
 データが消えて立ち直れなかったんです。

 


ウサミミ少女の奇跡

 

 

 

 もし、奇跡なんてモノがあるとすれば、正しく彼女は奇跡を起こしたのだろう。その天性の才能と揺るがぬ意志の強さで。

 

 レンジはそう思わずにはいられなかった。

 

 シア・ハウリア。兎人族の少女。獣の特性を持つ亜人族ではあるが、身体能力は人並み。唯一、優れていると言えば、気配を隠すのが上手いこと。

 

 それが、トータスの兎人族達。レンジ(アルリム)の世界では、獣人族の一部と認識されており、身体能力もそれなりに高く、肉体強化関連の魔法を使えるそれなりに強い種族だった。

 

 比べるまでもなく、かつての世界の兎人族の方が強いのだが……今、シア・ハウリアはその壁を超えようとしている。

 

 というか、すでに魔法強化無しの素の身体能力なら超えている。種族の特徴を、シア・ハウリアは超越しているのだ。

 

 もとより、トータスの兎人族や、その他一部の亜人族は魔力を持たない。これは遺伝の問題なので、どうやっても魔力を持つことは出来ないし、魔法も使う事はできない。

 

 だが、シア・ハウリアは突然変異の為か、本来ない筈の魔力を持って生まれてきた。そして、未来を知ることの出来る“未来視”という固有魔法も所持している。

 

 それに付け加え、強化魔法に対する絶対的な適性。その強化倍率はレンジですら驚きの声を漏らすほど。

 

 そして、何よりも、その意志の力が、決して折れぬ心が、彼女の持つ力を最大限に引き上げている。

 

「行きますっ!」

「はいよ~」

 

 そう、最大限の力なのだが、まだまだレンジは及ばない。素のレンジのステータスは、推測ではあるが各能力が軒並み20,000前後。しかし、シアは最大強化時でも、

約12,000。

 

 シアの強化時でも約8,000の差があるのだ。しかも、最大強化であるので、現状これ以上の強化は望めない。

 

 付け焼き刃の体術では、当然武闘神(バルトロス)を倒したレンジに勝てる訳はないし、隠し玉的なドリュッケンのギミックは使う前に破壊された。

 

「少し遠心力に頼りすぎかなぁー。もっと体を柔らかくしてエネルギーを移動させたり、体幹鍛えてドリュッケンごと体重移動したり、足の親指で力んだりしよーか? 体を上手く使わないとね」

「は、はい! ──ってアレ? なんか主旨変わってませんか?」

 

 決闘の筈が、段々シアへの稽古に変わっていたのに、シアが気が付いたようだ。それに対して、レンジはニッコリと微笑む。

 

 正直なところ、レンジはシアを置いていくつもりはない。すでに、最大強化時では無強化のハジメをほんの少しではあるが、超えている。

 

 レンジの想像以上にクーリアが強くて、ユエとの連帯力は見れていないが、開幕での一言や咄嗟にユエを庇う行動を見れば、信頼度が高いのは分かる。

 

 シアに対して問題はない。ユエも問題はない。

 

 今も、レンジとシアの周りで、クーリアとドンパチドンパチピチューンっと魔法戦を繰り広げているが、世界一の魔法使いであるユエだ。そう簡単には破れないだろう。

 

「私に攻撃を当てたければ、その三倍の弾幕数は撃ってこいっ」

「……むぅ、生意気っ」

「私にダメージを与えたければ、その三倍の魔力量を込めてこいっ」

「……魔力のお化けっ!」

 

 ハジメとレンジの耳に付くような、気になる台詞でユエを煽りたくるクーリア。

 

 当てるのに、通常の三倍の数の魔法。当たったにしろ、通常の三倍の威力で無ければ、ノーダメージ。しかも、大体の魔法は相殺されるし、時々黒いナイフで魔法を切り裂いてくるのだ。何なんだろう、あのメイドは。

 

 まあ、三百年前は居なかった格上の魔法使いとの戦闘は、ユエにとっては良い経験になるだろう。

 

「……はぁ、はぁ」

「……どうやら、大部分魔力が減っているようですね」

「くっ! “嵐帝”!!」

「やあっせいっとうっ」

 

 今までのテキトーなナイフ術が嘘のような、目にも止まらぬ太刀筋で、最上級魔法を切り捨てるメイドさん。どうやら、武術の方もかなりの腕前らしい。

 

「い、今の三太刀見えましたか、レンジさん?」

「え? 六回だぞ??」

「ふえぇぇぇ、このメイドさん、ヤバいです! 絶対ただ者じゃないですよ! きっと特別に訓練された暗殺者か何かですよ!?」

「……いや、むしろシアちゃんに割りと余裕がある事に、俺は驚きのなんだけど……?」

「え? 余裕なんて無いですよ? ただ一瞬横目でチラッと……」

「それで、三太刀見れれば大したもんだね……」

 

 こんな会話をしつつも、二人は攻防を続けているのだ。レンジはシアくらいの相手なら、視覚に頼らず聴覚だけでも対応出来るので、ユエとクーリアの様子を伺う事は余裕だが、まさかシアが横目で確認しているとは思わなかった。

 

 まあ、太刀筋が見えなくとも、戦闘中にでも一瞬だけなら視線をずらして周囲を見る事は出来る。出来るというか、ある局面に於いては勝敗を分ける大切な要素である。

 

 それを手加減しているとはいえ、レンジと戦いながら出来るのは、すごい事である。

 

 いや、初めは出来ていなかった。だが、このウサギ、今は出来ている。この決闘の中で、レンジとの高速戦闘の中で、さらに実力をつけている。

 

 さらに、ほんの少しずつではあるが、肉体強化の効率が高くなっていく。最上強化を少しずつ超えているのだ。

 

「……本当に限界を超えてきてるなぁ」

「え? 何か言いましたか?」

「ああ、いや。……ただの残念ウサギだなぁーって」

「ひ、酷いです!」

 

 恐らくだがシアは今、技能の壁を超えて派生技能を習得しようとしている。これはシア本来の天才的適性のお陰か、それてもレンジの影響力か、あるいはその両方か。

 

「何にせよ、面白いウサミミだっ」

「うわっ! 急にペース上げないで下さいよ!」

「むしろ、それに驚いた程度で普通に対応してくるお前は反射神経がおかしいと思うんだ。頭の病院に行ってこいっ」

「きゃぁあああ! またギャグマンガみたいに~~~!」

「……マジかよ。もうさっきよりも防御上手くなってるのか……全く飛ばせねえ」

 

 前のように、キラーンっ! とまでいかないが確かに吹き飛ばされるシアに、英雄は呆れたように呟く。

 

「では、貴方もお仲間と御一緒にどうぞ」

「え? ──あっ」

「あっ、ユエさん」

 

 クーリアは素早く転移魔法でユエをシアにぶつかる様に送り込む。同時に、仕切り直しの意味を込めて、自分はレンジの横に転移。

 

 しかし、シアは空中で体を回転させて姿勢を直すと、実に余裕の動きでユエをキャッチしていた。

 

「……マスター」

「何だい?」

「あのウサミミは、本気ではなかったのでしょうか?」

「……いや、急成長したんだよ」

「なるほど、天才っという奴ですね」

 

 ユエを片手に抱き、ドリュッケンの重量を利用して垂直落下、そして着地寸前でドリュッケンを振るった反動でフワッと着地するシアに、メイドさんは呆れ顔を浮かべる。

 

「……ユエさん、試したい事があるんですけど……」

「ん? どうしたの?」

「今なら出来る気がするんです。それが出来れば、レンジさんをギャフンと言わせられます」

 

 ハジメ式ボディブローだろうか? とユエは思うのだが、ドリュッケンのギミックが壊れている今、シアにはあの威力を再現する事は出来ないだろう。

 

「出来る?」

「はい! やってみせます! だから時間稼ぎをお願いしてもいいですか?」

「わかった」

 

 さて、ここから第二ラウンド。取り合えず、ユエは時間稼ぎを、

 

「その必要はないよ。クーリア、彼女と外へ」

「畏まりました、我主(マイマスター)

 

 クーリアはレンジの言葉に従い、ユエと共に場外へと転移した。二人ともしっかりと場外への地面に足を着いていた。

 

「──ッ! やられた……」

「お疲れ様でした」

 

 まさかの一瞬で場外へ転移させられるとは思っていなかったユエが悔しそうな顔をするが、クーリアは洗礼されたお辞儀するだけだった。

 

「では、ハジメ様の所へ転移いたします」

「ん。お願い」

 

 そうユエが口にした時には、ハジメの膝の上に居た。

 

「お疲れ様、ユエ」

「ん、ハジメ」

「どうだった?」

「強い。凄く強かった。……何も出来なかった」

 

 ギュッと握られた拳と今にも溢れ落ちそうなほど潤む瞳。ハジメはそっと、握られた拳を包む。

 

「確かに、あのメイドさん強いな。多分、神代魔法の類いを幾つか覚えてるんだろう」

「ん。転移魔法は間違いない」

「……あの魔法で帰れるかな?」

「多分無理。レンジが知らない筈ないし、知っていればとっくに帰ってる」

「だよなぁ。……やっぱり、無理か」

「他の神代魔法と合わせれば、帰れるかも」

「まぁ、地球から喚び出したんだ。帰れない筈はない。……もっと強くなって、残りの大迷宮もクリアしに行こう」

「……うんっ」

 

 さて、ハジメとユエがイチャイチャはじめる前、ユエとクーリアが退場した時。

 

「え、ええ!? そんなのありですかぁ!?」

「まぁ、ルール上では問題はないね」

 

 納得出来るかどうかは別だが、皆で決めたルールだ。問題は特にない。心情以外では。

 

「まぁやりたい事があるんでしょ? 待っててあげるから、気が済むまでどうぞ」

「なんて言って、攻撃して来ませんか?」

「そこまで人畜ド畜生じゃないよ」

「ホント~ですか~?」

「……」

「何で今、目を逸らしたんですか!? え? してきませんよね? してこないですよね!?」

 

 かつての自分、前世の時なら余裕でやっていたレンジ。思わず、視線を逸らしてしまった。

 

「大丈夫大丈夫、大丈夫だよ。……だが、あまりウサミミを動かないでくれないか?」

「ひえぇぇ、ウサミミ狩りですぅ!」

 

 ハウリア族を追い掛けまわした件でウサミミ狩りの異名は洒落になっていない。というか、前世では本当にウサミミ狩りをしたので、洒落も何もなくただの事実なのだが……。

 

「やめろ、ウサミミを手で隠さないでくれ。……逆に血が滾る」

 

 彼のウサミミへの執着は完全に病の域である。これも、血に染まった英雄の残酷な運命という訳か。

 

「も、もう、ヤられる前にヤれですぅ!」

「さぁ来い! 限界を超えてみせろ!!」

 

「きっと詰めの甘い術式になりますけど、無礼講でお願いしますっ──健全なる精神は健全なる身体に宿る。ならば頑強なる意志もまた、頑強なる身体に宿るっ。この意志は神に至り超えゆくモノなり。ならば、この肉体も精神・意志・魂と共に、神の領域に踏み込み超えてゆくモノ!」

 

「……まさか……、おいおい冗談だろ……?」

 

「今こそ、それを証明せよ! 器を超えよ、『神体昇華(フィジカル・バースト)』っ!」

 

 十二日前、一度だけ見た外界魔術をシアは使ってみせた。ユエでも生活魔術しか習得していないのに、難易度が跳ね上がる肉体強化系の、それも英雄(アルリム)魔改造術式(アレンジバージョン)を。

 

 ウサミミ少女は、バクの化身となり、超える。英雄を。

 

 

 

 




 

 多分、ご本家様のシアちゃんより強いんじゃ……いや気のせいですね。そんな訳ないそんな訳ない。

 でも、一つだけ。私はシアちゃんが好きだ。


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