ありふれた転生で世界救済   作:妄創

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 本日3話目もなんとかなりました~

 あぁ、奇跡的だっ。
 


ろくでもない奴だろう(確信

 

 

 

 異世界トータスにある宗教、聖教教会の教皇イシュタル・ランゴバルドの話は長ったらしいので簡単に要約すると、

 

 敵対種族が強すぎてもう手に終えません。殲滅して下さい、エヒト様の名の下に。

 

 という事をだとレンジは解釈した。

 

「あなた方を召喚したのは“エヒト様”です。我々人間族が崇める守護神、聖教教会の唯一神にして、この世界を創られた至上の神。おそらく、エヒト様は悟られたのでしょう。このままでは人間族は滅ぶと。それを回避するためにあなた方を喚ばれた。あなた方の世界はこの世界より上位にあり、例外なく強力な力を持っています。召喚が実行される少し前に、エヒト様から神託があったのですよ。あなた方という“救い”を送ると。あなた方には是非その力を発揮し、“エヒト様”の御意志の下、魔人族を打倒し我ら人間族を救って頂きたい」

 

 唯一神エヒト。まあ、ろくでもない神である事は間違いない。だってそりゃ、自分の世界の為に他の世界、しかも上位世界にわざわざ介入してくる程だ。

 

 本当に善良な神ならば、そんな事に労力は使わずに、自分の世界の中で神の使徒を作る筈だ。コスパ的にそちらの方が断然いい。

 

 世界通しを繋げる穴を作るよりも、現地の一個人に神託や加護を授けた方が確実である。この事はその経験からレンジは大変良く知っている。

 

 それなのに、わざわざ異世界の者を使うっという事は、神エヒトはどうやらゲーム好きなのだろう。そして、そんなゲームが好きな神様にはやはりまともな奴は居ない。

 

 まあ、まだ他の神と争っていないだけ幾分かは増しかっとレンジは思う。神対神では、その過程で起こる被害が尋常ではない。二柱の眷属種が絶滅するまで戦争するのだから。

 

 しかし、かく言うレンジも神殺しの際には、いくつかの種族を滅ぼしている。敵対する神の眷属種とは、ほぼ全てが狂信者である為、対立は回避できない定めなのだ。

 

 それでも、レンジは滅ぼした種族よりも救った種族の方が遥かに多い。……最後には救った全ての種族に裏切られるのだが。

 

「ふざけないで下さい! 結局、この子達に戦争させようってことでしょ! そんなの許しません! ええ、先生は絶対に許しませんよ! 私達を早く帰して下さい! きっと、ご家族も心配しているはずです! あなた達のしていることは唯の誘拐ですよ!」

 

 話を聞き終えて、ぷりぷりと怒りだす愛子先生(二十五歳)。今年で二十五歳の社会科教師で、悲しいかな百五十センチという低身長にしかも童顔。しかし、ボブカットの髪を跳ねさせながら、生徒のために何処へでもっと走り回り、それでいつでも一生懸命で、でも大概が空回りしてしまう残念さのギャップ萌えに人気の秘訣である立派な大人だ。可愛いとか言って頭撫でてやるな、泣くぞこの人。

 

 生徒達からは“愛ちゃん”と愛称で呼ばれており、とても親しまれているのだが、当の本人はそう呼ばれると何故か直ぐに怒りだす。何でも、理想の教師像は威厳ある教師だとか。レンジは無理だと思うっとは、絶対に言わない。絶対にだ。

 

 今も生徒達の為に怒り、ウガーと立ち上がってくれた。まぁ当の生徒達からは「ああ、また愛ちゃんが頑張ってる……」と、ほんわかした気持ちで見られているのだが……。

 

 しかし、そんなムードも続くイシュタルの言葉で掻き消される。

 

「お気持ちはお察しします。しかし……あなた方の帰還は現状では不可能です」

 

 静寂がその場を支配した。皆、その真実を受け止めたくなかったのだろう。だが、残念な事に現状では不可能である。

 

 それはレンジでも同じ事。前世ならばともかく、今の身体機能では魔法の使用もままならないのだ。世界間を移動する大魔法なんて使用できる筈もない。

 

「ふ、不可能って……ど、どういうことですか!? 喚べたのなら帰せるでしょう!?」

「先ほど言ったように、あなた方を召喚したのはエヒト様です。我々人間に異世界に干渉するような魔法は使えませんのでな、あなた方が帰還できるかどうかもエヒト様の御意志次第ということですな」

「そ、そんな……」

 

 愛子先生がその事実に押し潰されてストンと椅子に腰を落とす。そしてついに、周りの生徒達が口々に騒ぎ始めた。

 

「うそだろ? 帰れないってなんだよ!」

「いやよ! 何でもいいから帰してよ!」

「戦争なんて冗談じゃねぇ! ふざけんなよ!」

「なんで、なんで、なんで……」

 

 パニックになり始める生徒達だが、レンジは落ち着いたものだった。

 別に、今の段階では帰還が不可能なだけであり、身体を確りと作り直して、万全の状態にすればエヒトとかいうゴミクズのような神に頼らずとも転移魔法で帰れる。

 

 まぁ、その魔法という術式を構成するには魔力と魔法を司る神、魔術神アンブロトの力を執行する必要があるので、神通力に耐えうる肉体が必要となるので、かなり月日を要する事になるだろう。

 

 レンジの今の肉体には、かつての程の力は宿っていない。だが、その魂魄は別だ。前世で神を殺した事で獲得した十二柱分の神通力と、十二個の神格がその魂には宿っている。

 

 均一と善悪の神である裁定神カルデナス。

 生命と繁栄の神である蘇生神アライフラ。

 死滅と疫病の神である死病神ベイングラ。

 戦いと狩りの神である武闘神バルトロス。

 魔力と魔法の神である魔術神アンブロト。

 太陽と蒼天の神である鳳凰神フレアデス。

 満月と星空の神である月光神ルナトリア。

 大地と火炎の神である地脈神グランドル。

 海域と寒波の神である海流神アクエリア。

 音楽と調和の神である芸術神ハルモニア。

 遊戯と混沌の神である狂宴神ケイリオス。

 愛憎と美徳の神である恋愛神ラヴァリア。

 運命と循環の神である因果神フェイロト。

 

 レンジはこの十三柱の内一柱のみを残して、あとは全て斃した。

 

 最初の一柱目であった芸術神(ハルモニア)と、蘇生神(アライフラ)死病神(ベイングラ)には特に手を焼かされた。

 

 それはともかく、レンジの魂魄はある意味、十三分の十二が神であると言っても差し支えない。そんな強大なモノが人体に宿っているだけでも奇跡の中の奇跡なのに、その力を無理に使おうとするのだから体に負担が掛からない筈がない。

 

 一応、力の一パーセント以下の執行ならば、無視できる程度の負担で済むだろうが、その程度の出力では地球に帰還する事は難しい。

 

 チャレンジはできるが、時空の狭間に取り残されて体にひしゃげたり引き千切れたりするのが目に見えている。最悪、そんな状態でもレンジは蘇生神(アライフラ)の力があるので生き残れるが、他の仲間はそうはいかないのでやる気は毛頭ない。

 

 隣に座るハジメにふと目を配ると、彼も他の生徒よりは幾分か落ち着いていた。やはり、大物だなっとレンジは改めて思う。

 

「……ハジメ。誰に聞かれるかも分からないし、小声で少し話そう」

「……うん。分かった」

 

 正直、ハジメと話したからと言って解決できる事はないのだが、落ち着きのある人間と情報交換ないし意見交換するのは大切だ。

 

「……○ンゴスタ、いやごめん。イシュタル・ランゴス○、いや違うな」

「イシュタル・ランゴバルド?」

「そう。それだよ、南雲くんっ。……そのランゴ○タについて、どう思ってる?」

「……。……ラン○スタについては、弱い敵だけど通常の倒し方だと剥ぎ取りがほとんど出来ないから、素材が貴重ってイメージかな? 体液とか、膿汁とか。……イシュタルさんについては、何だが不気味って感じだよね」

 

 どうやら、ハジメもイシュタル・ランゴバルドの異常な信仰心に気が付いているようだ。

 

 今も、狼狽して怯えている生徒達に声を掛ける訳でもなく、静かに侮蔑しながら見下ろしてくるだけだ。今までの言動から察するに「エヒト様に選ばれておいて何故喜べないのか」と疑問を抱いているのだろう。

 

 やはり、神がクソだとその信者達もクソなのだなあっとレンジは思う。ラフレシアに集まる蠅か、貴様らは。

 

「……レンジ君は、この状況どう思ってるの?」

 

 どう思っている。何と答えていいのか悩む質問だ。

 

 レンジの前世をしているならば、素直に今の心情を話す事も出来ただろう。「エヒトまじクソ死ね。俺の傷の報酬返しやがれバッキャロー」と。

 

 せっかく手にした平和に過ごせる第二の人生だった筈なのに、まさかの異世界転移。しかも、相手は大嫌いなクソ神だ。

 

 割りとマジで神殺しを決行したくなるが、その気はない。大した理由もなく神殺しはするべきではないのだ。

 

 神を殺せば、その神通力と神格が殺した者へと譲渡される。それは強大無比な力となるが、同時に責務も背負う事になるのだ。

 

 世界そのものを管理する、という他のものとは比べ物にもならない巨大な十字架を背負う事となる。

 

 レンジもかつてはそれを背負ったのだが、それを認めようとしない者達、つまりはその世界の全種族に敵対されて命を落とす事となった。守った守ろうとした全ての者に裏切られた訳だ。

 

 その強大無比な力もそうだが、課せられる十字架はさらに厄介なものなのだ。……まぁ、今のレンジのように残った神に全ての押し付けるのも有りだが。

 

 しかし、それには押し付けてもその権限を悪用せず、確りと世界を管理できる人物で無ければならない。でなければ、次はその者が命を狙われる事になる。

 

 そういう意味では、因果神(フェイロト)は条件に一致する唯一の神であった。何せ、かの神が司るのは、運命と循環。流れを保つことこそ、彼の至福のなのだから。

 

 そんなレンジの前世の経緯も、神殺しという禁忌破りの対価も知らないハジメに、今レンジが思っている事を素直に話しても変人扱いされるのがオチだ。

 

 だが、レンジはある種の本心を話す事にした。

 

「……正直、本当は良く分からない。どうすれば皆にとって最善か、今は良く分からない」

 

 皆にとっての最善?そんな事は分かっている。全員で、誰一人欠ける事欠く、無事に日本に帰る事だ。

 

 その為に“どう行動したら良いのか”が分からないのだ。

 

 正直な話、転生者である自分が彼等の人生に於いて特異点になってしまっている事は自覚している。

 

 それは転生した当初から危惧していた事だっし、転生させてくれた因果神(フェイロト)も言っていた事だ。

 

 ──「君の運命力、因果律は少し強すぎる。君は例え、どんな世界へと行こうとその世界の歴史や人物にとって、特異点に成りうる存在だ」

 

 十二柱もの神を殺せば、もはや運命の神すらも干渉を許されない運命力を有するらしい。

 

 だから、ある意味このハジメ達の人生もレンジという転生者のせいで“if”のようなものに書き変わってしまっているのかも知れない。

 

 それはレンジとしては、とても悲しい事なのだ。子供達には笑顔で自由に生きてほしい。何かに縛られずに自由意思の下、様々な事を学び感じ取り、大人へとなってほしいのだ。

 

 神のまやかしを信じるのではなく、本当の自分自身が信じたいモノを信じられる人間になってほしい。そうすれば、前世で起きたような悲劇の数々は起きなかった筈なのだから。

 

 本来、自由意思で歩む筈だった道を、自分(レンジ)の登場で歪めてほしくはない。故に、出来る限り表立った干渉をレンジは避けているのだ。

 

 それは今回の異世界転移でも変わらない。どうやら勇者として招かれたのは天之河光輝である。ならば、自分はあまり力を使うべきでは無いのでは?

 

 もし、自分が勇者として呼ばれていたのならば、蓮ヶ谷レンジの運命として受け止めて魔王暗殺でも神殺しでも請け負うことは構わないが、これは彼等の運命なのだ。

 

 どうにも深く干渉するような事は、してはいけない気がするのだ。

 

 だから、蓮ヶ谷レンジとして何処までやっていいのか、何処まで動いて良いのか分からない。

 

「……それは、僕も同じだよレンジ君」

「え?」

「今、この現状に対して何が最善なのかは分からない。僕達は確かにイシュタルさんからこの世界の事を聞いたけど、何処まで正しくて何が間違っているか、なんて事はちっとも分からない。だから、どうしてすれば最善かなんて僕にも分からないし、誰にも分からないんだよ。でも、僕達は何かしなくちゃいけない。分からない事だらけで大変良くだけど、慎重に一歩ずつ踏み出さなきゃいけないんだ」

 

 ハジメが出したそれは、答えとしては不出来なものだった。

 

 ただ、自分も分からない。っと言っただけの話だ。でも、そうだ。誰にも分からないのだ。

 

 レンジが居る居ないの“if”の世界の事など、この世の誰にも分からない。だからそう、彼が言うように一歩ずつ確かめなければいけない。

 

 彼らも自分も今を生きているのだ。立ち止まる事は許されない。例え、“if”の世界だろうとも今を必死に生きなければいけないのだ。

 

 生きて、生きて、生きて、そしてまた生きて。生き続けなければ。それは、それだけは“if”だろうが、そうじゃなかろうが変わる事のない命の価値であり責務だ。

 

「……そう、だね。決断する事を恐れてはいけないね」

「うん。きっと、このトータスは僕達にとってとても厳しい世界になると思う。けど、精一杯できる事をやらなくちゃね」

 

 まさか、こんな大切な事を子供に思い出させられるとは、自分にも焼きが回ったものだ。

 

 そう、全ての結果を背負うと決めて、俺は禁忌を犯し偉業を成し遂げたのだ。その記憶を受け継いで生きる限り、その決意と責務は忘れてはいけない。

 

 取り敢えず、最優先は皆の安全。次が、皆一緒に帰る事だ。必ず、皆を家に返す。

 

 

 パニックが収まらない皆を見かねてか、光輝が今日一番のカリスマ性を発揮して、皆をまとめてあげた。

 

 実に不思議な事に、彼に鼓舞されたクラスメイトは皆が戦う意志を見せた。レンジはそのことに少しばかりの不安を抱くのだが、今から水を差す訳にもいかない。

 

「──なら、大丈夫。俺は戦う。人々を救い、皆が家に帰れるように。俺が世界も皆も救ってみせる!!」

 

 いや、一個人じゃあ無理だろっとレンジは思ったのだが、貴方は一人で十二柱の神殺してますよね?

 

「へっ、お前ならそう言うと思ったぜ。お前一人じゃ心配だからな。……俺もやるぜ?」

「龍太郎……」

「今のところ、それしかないわよね。……気に食わないけど……私もやるわ」

「雫……」

「え、えっと、雫ちゃんがやるなら私も頑張るよ!」

「香織……」

 

 気が付けば、ビックフォーのメンバーが一つに纏まっていた。まあ、いつもの事ではあるのだが。

 

 しかし、それだけではなく彼らは何やらレンジの方に視線をやる。それに釣られて他の者達もレンジに視線を……。

 

「……はあ~、まぁ乗り掛かった船──というより乗せられた船だけど、俺も最後までやるよ」

 

 必要とあらば、“神殺し”までやってやる。覚悟しろ、クソ神エヒト。そして、後悔しろ。俺を呼び出した事を。

 

 久しく、本当に久しく、英雄の心に闘争心が芽生えた。かつて程の苛烈さは無いものの、その炎は弱まる事を知らず、徐々にその勢いを増していく。

 

 彼が再び神殺しを行うのも、そう遠くない内にかも知れない。

 

 そんな戦う事を決めた光輝と、心の内で新たな決意と共に立ち上がったレンジをイシュタル・ランゴバルドが注意深く観察している。どうやら、この二人がこの集団の中でも強い発言力と影響力を持っている事を見抜いているようである。

 

 その事に唯一気が付いたハジメは、油断ならない人物だと、頭の中の要注意人物リストにイシュタルを書き加えるのだった。

 

 

 




 
 そして、今回も6000文字超えの長文となりました。

 読むにたえない駄文ですが、お付き合い下さい。

 あと、誤字脱字がありましたら、是非教えて下さい!時間の合間をぬって修正していきますので。
 
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